GATE 幻想郷防衛軍彼の地にて斯く戦えり   作:にょろ35106

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作者はレモンかけない派です


唐揚げは国民食、異論は認めない

一方、場所は変わり自衛隊アルヌス駐屯地。

 

構築された陣地の正面門。

 

当番の自衛隊員は目を擦った。

 

空間に亀裂が入ったように見えたからだ。

 

だがいくら目を擦っても亀裂はそこにある。

 

その亀裂は広がり、幾つもの目が浮かぶスキマの内側から日傘をさした紫が藍と共に出る。

 

紫と藍が出てすぐにスキマは閉じ、亀裂も消えた。

 

「御機嫌よう、自衛隊の皆さん。私は八雲 紫、あなた達が第二ゲートと呼ぶ内側より参りました。上の方とお話をしたいのですが?」

 

 

 

「何?第二ゲート側の代表者が?」

 

電話での連絡を受けた狭間が突然の事態に緊張する。

 

ちょうど報告に来ていた柳田も動揺した。

 

「防衛ラインの隊員はその二名に気付かなかったのか?・・・・そうか、分かった。応接室にお通ししてくれ」

 

受話器を置き、柳田を見る。

 

「第二ゲート側の代表者二名が正門前に現れたそうだ」

 

「現れた・・・・?」

 

「空間に亀裂が走り、その内側から出て来たそうだ・・・・」

 

「なんと・・・・」

 

 

 

「日本国特地方面派遣部隊指揮官、狭間 浩一郎です」

 

「同じく日本国特地方面派遣部隊幕僚、柳田 明です」

 

狭間と柳田が最初に名乗った。

 

「これは御丁寧に。私は八雲 紫・・・幻想郷の代表者です」

 

「私は八雲 藍、紫様の式です」

 

藍の自己紹介に狭間と柳田が顔を見合わせる。

 

「すみません、その式と言うのは・・・?」

 

「藍は私の使役する式神ですの」

 

「式神・・・ですか」

 

「九尾の狐をご存知ですか?」

 

紫の問い掛けに狭間は頷く。

 

「確か、狐の妖怪でしたか?玉藻前と言う名の九尾の狐ならその話を聞いた事があります」

 

「藍はその九尾の狐に私の組み上げた式を取り憑かせたのです。しかし、玉藻前ですか」

 

少し遠くを見るような感じになる紫。

 

「あ、あの、何か御気分を害してしまいましたか・・・?」

 

「いえ、少々昔の事を思い出してました。ふふ、玉藻前ですか、懐かしい名を聞きました」

 

「懐かしい・・・・ですか?

 

「ええ、結構無茶な事をする子だったのを覚えています。結局、無茶しすぎて退治されてしまったんですけどね」

 

女性に年齢を聞くのは失礼だ。

 

だが、玉藻前は確か平安時代の・・・・つまり、目の前の貴婦人は1000年以上生きている事になる・・・。

 

「あの、お話を進める前にお尋ねしたい事が・・・」

 

「あら、何でしょう?」

 

「その、幻想郷に東風谷 早苗と言う神社の巫女をしている方がいるのかお聞きしたいのですが・・・」

 

日本国総理より届いた指示書の中に、もし第二ゲート側の勢力と接触した場合に確認し報告が欲しいと書かれていたのだ。

 

「早苗・・・・守矢神社の巫女ですね。去年辺りに幻想郷で異変を起こしたのでよく知っています。博麗の巫女に解決されてからは大人しく信仰集めをしているのを人里で見かける事が多いですね」

 

「その、この写真の中に写っていますか・・・?」

 

嘉納が調べていた時に手に入れた学校の集合写真の紫に見せる。

 

「ええ、この子ね」

 

セーラー服を着用しており雰囲気的に若干異なる早苗を紫はあっさりと見つけて指で指し示す。

 

「ありがとうございました」

 

話はしばらく続く。

 

「外界とは、結構面倒なところなんですね・・・」

 

藍が呆れたように言う。

 

「ええ、でも、幻想郷とは違うのだから仕方がないでしょう?」

 

紫が諭すように藍に言う。

 

幻想郷では基本的に勢力ごとにルールがあり、幻想郷存亡に関わる自体でなければ幻想郷全体の総意と言う形を取ることはない。

 

妖怪が勢力同士で争っても紫は干渉せず、人里に被害が出なければ霊夢も無視している。

 

 

 

「あら、そうだったわ。お近づきの印に、手土産を用意したんでしたっけ」

 

紫が思い出したとばかりに言う。

 

「何処かに、少し開けた場所ありません?」

 

紫が聞いてきた。

 

「屋外でよろしければ」

 

狭間が案内し、陣地内の空き地に案内する。

 

「ええ、十分な広さね」

 

そう言い、紫はスキマを開いた。

 

スキマの中から布で覆われた小さな部屋ほどの大きさのある物体が取り出され、地面に置かれる。

 

「お近付きの印に、幻想郷より日本政府への贈り物です」

 

「これは・・・・なんでしょうか?」

 

「ふふ、覆いを取れば分かります。藍、お見せしてあげなさい」

 

「はい」

 

藍が紫の指示で覆いを取った。

 

中身は檻であり、その中には数十羽の鳥が入っていた。

 

すべてちゃんと生きており、同一の種類だと想像が付いた。

 

「ま、まさか・・・・」

 

柳田がその鳥の特徴に気付いた。

 

「し、失礼します!すぐに戻ります!」

 

柳田は大慌てで宿舎に戻った。

 

「見事な鳥ですな」

 

「ええ、幻想郷で6〜70年程前から急増した鳥です。意外と唐揚げにしても美味しいんですの。人里でもよく食べられている鳥です」

 

お一ついかがですか?とばかりにスキマから揚げたて状態の唐揚げを取り出し、自らも一つ食べながら勧める。

 

「では、失礼しまして・・・・」

 

断るのも失礼かと、唐揚げを一つ食べる狭間。

 

「おお、これはいけますな」

 

「ええ、お酒のつまみにもいけますのよ」

 

バタバタと柳田が戻って来た。

 

その手には分厚い鳥の本。

 

必死にあるページの鳥と目の前の鳥とを比較していた。

 

何か必死だった。

 

「柳田、八雲さんから唐揚げを頂いたぞ。お前も一つ食べてみろ、すごく美味いぞ」

 

心を落ち着かせようと柳田も唐揚げを一つ食べる。

 

「お、美味しい・・・・。何の唐揚げですか?」

 

「目の前のこの鳥だそうだ」

 

途端に噎せ出す柳田。

 

「お、おい、どうした柳田?この鳥がどうかしたか?」

 

「こ、この鳥・・・・・トキです・・・」

 

ピシッと狭間も硬直した。

 

トキの唐揚げ・・・・・すごく美味しかったですと意味不明の言葉が頭に浮かんでいた。

 

 

 

日本、首相官邸。

 

「そうか、分かった」

 

スピーカーモードで室内にいる全員が電話での連絡を聞いていた状態だ。

 

「嘉納さんの予測、当たりましたね・・・・」

 

「ああ、例の巫女さんがいるって事と、自衛隊が入手した情報が事実なら・・・・」

 

幻想郷は日本国内の内陸部に存在するが互いに互いの存在を知覚する事は出来ない。

 

「しかし、幻想郷・・・・ですか。にわかには信じられませんな・・・・」

 

「しかも休職中とは言え、現職の自衛隊員が向こう側にいるなんてな・・・」

 

「伊丹 耀司三等陸尉、レンジャー資格所有者か・・・。まさか、拉致・・・・?」

 

「いや、この情報によると“神隠し”と呼ばれる現象はその幻想郷に迷い込んで消えてしまった人間を指す場合もあるとか・・・」

 

「それに、現地での・・・いわば妖怪に遭遇しその、食い殺される事がほとんどだそうで・・・。運良く逃げ延びた後に結界を管理する博麗の巫女とやらに頼んでこちら側に送り返してもらうことも出来るらしいがその場合、幻想郷での記憶は消されるそうだ。少数だが、向こうに住み着く者もいるらしい」

 

「警察に捜索願の出ている人物の写真や情報を渡して向こうで確認してもらうのはどうだろうか?もし向こうで暮らしている人物がいれば、捜索対象から除外できるし家族も安心するのでは?」

 

閣僚達が各々意見を言い合う。

 

プルルルルッ。

 

再び電話が鳴る。

 

「本位です」

 

総理が電話を取りる。

 

「そ、それは本当か・・・・?うん、分かった。ありがとう。引き続き、新しい情報が来たら報告をしてくれ。以上だ」

 

受話器を置き、閣僚を見回す。

 

「たった今、特地からの連絡が来た。しばらく前、幻想郷の代表である八雲氏から日本政府へと鳥の贈り物がされたらしい。自衛隊が鳥類学者の協力を取り付け、確認したそうだが・・・・」

 

「鳥?一体どんな鳥なんだ?」

 

嘉納が興味深く聞いてくる。

 

「トキだ・・・少なくとも三十羽はいるらしい・・・・」

 

「な、トキ!?生きていたのか!!」

 

「なんか、某世紀末救世主に出てくる台詞みてぇのが聞こえたが・・・」

 

「幻想郷では6〜70年前程から急増したそうだ。今では幻想郷で普通に食べられているとか・・・。唐揚げが美味いらしい・・・」

 

トキの唐揚げ・・・




え?
トキは美味いのかって?
食べたことないから分からない(当たり前だ)

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