GATE 幻想郷防衛軍彼の地にて斯く戦えり   作:にょろ35106

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人里事件

 

 

 

 

 

幻想郷、人里。

 

「なんだ、これ?」

 

昼近い時間の人里の中心とも言える繁華街に奇妙な現象が発生していた。

 

時間が経つにつれ、それは実体を持ち姿を現わす。

 

誰もが思った。

 

また「異変」かと。

 

異変なら博麗の巫女の出番である。

 

「おい、おめぇひとっ走り博麗神社まで行って来い」

 

「えぇっ!?お、おらがだか村長!?」

 

「おめぇが一番足早いでねぇか。つべこべ言わずに行け」

 

「わ、分かっただよ・・・・」

 

この男は運が良かった。

 

悲劇が起きる前に村を出たのだから。

 

 

 

「う、うわぁっ!?妖怪だぁっ!!」

 

「ひ、ひぎゃああぁっ!!」

 

逃げ惑う人、ワイバーンに喰いつかれたが即死できず悲鳴を上げながら死を待つ人。

 

オーガの棍棒で叩き潰され、兵士の剣で体を斬り裂かれ・・・・。

 

阿鼻叫喚の地獄。

 

人里に出来上がる骸の山。

 

その骸の山に兵士が旗を突き立てる。

 

「蛮族どもよ!」

 

指揮官の勝利宣言にも似た台詞が炎を上げて燃え盛る民家や商店の間の民間人のいなくなった通りを抜けていった。

 

「ふむ、しかし・・・」

 

足元に転がるうつ伏せの死体を蹴り飛ばし仰向けにさせる。

 

「やはり蛮族だな。まともな服も作れぬらしい」

 

「家々も木で出来ている上に紙の窓です。火を付ければあっという間に燃え尽きてしまいますな」

 

「「「ははははははっ!!」」」

 

周りの兵士達がその言葉に笑った直後だった。

 

「貴方達ね?殺戮と略奪を行なっている野蛮人って」

 

どこからともなく聞こえた女の声。

 

発生源を探そうと辺りを見回していた彼等は見た。

 

何もない空間に亀裂が出来上がっていた。

 

その亀裂は広がり、その奥には奇妙なものが見えた。

 

無数の目。

 

兵士の誰かが悲鳴を上げた。

 

 

 

その亀裂の中から現れたのは二人の女。

 

二人とも金色の髪をしており、だが辺りの死体とは異なる見栄えのある服を着ている。

 

「ほう、野蛮人の中にも見目麗しいご婦人がおられるとは」

 

下卑た笑みで二人を見る。

 

「あら、お上手ね?」

 

一人は笑顔を浮かべつつも目は笑っていない。

 

「下衆が・・・」

 

嫌悪感を露わにするもう一人の女。

 

その女には幾つものが尻尾が生えているのに気付く。

 

「怪異どもの同類か?」

 

「・・・・・っ!!」

 

「あら?私の藍をそこにいる連中と一緒にされたらたまったものではないわね・・・。藍、見せつけてあげなさい」

 

「はい、紫様」

 

一瞬。

 

藍は紫とは直線上の反対の位置にいた。

 

その間には数体のオーガ。

 

藍が振り向くと同時にオーガはスライスされた所がズレ落ち地面に汚い染みを作る。

 

誰かが気付いた。

 

爪が鋭い光を反射している事に。

 

オーガ達はこの爪で斬り裂かれたのだと。

 

「藍、適当に残して後は貴女に任せるわ」

 

一方的な殺戮劇が始まった。

 

スペルカードの弾幕は弾幕ごっこの制限を解除され殺傷力を持ち異界の軍団を蹂躙する。

 

弓兵が弓を射ち、ワイバーン兵が上空から襲撃する。

 

それらは藍を中心に放たれた手加減無しの弾幕で無力化され、さらにそのまま弾幕の餌食になる。

 

 

「もういいわよ、藍」

 

紫の言葉と同時に数分間の殺戮劇は終わった。

 

「申し訳ありません紫様。幾人か逃してしまいました」

 

いくら圧倒的な戦力差があろうとも一対多数。

 

当然討ち漏らしがあり、門の中へ逃げたもの、門から離れた所にいた一部の者は人里から森へ山へ逃げて行った。

 

「構わないわよ。門には結界を張ったから再度出てくることはないでしょうし、森や山で逃げた連中は遅かれ早かれ山や森の妖怪達が始末してくれるでしょう」

 

そう言いながら紫は門を見つめながら何かを考えていた。

 

 

 

幻想郷の何処かにある八雲家。

 

「紫様、門の向こうへ行くの?」

 

式神の橙がつい先ほど紫の下した決定を聞き返す。

 

「ええ。あの門を調べたんだけど、異界の神が関わってるようね。それと、これを見て」

 

八雲家のお茶の間に紫がスキマからテレビを出した。

 

電源を入れると映ったのは外界の放送だった。

 

《銀座事件から1ヶ月がたちました。犠牲者遺族の痛みは心中察して余りあります。現在の世論調査ではこの“ゲート”と呼称される物体の爆破を求める意見もあり・・・・》

 

「外界にもあの異界門が・・・・」

 

「出て来た軍勢の数も外界の方が桁違いだったらしいわね」

 

そんな紫と藍の会話に割り込む者がいた。

 

橙ではない。

 

「あ、あの~、俺は一体何をすれば・・・あははは・・・」

 

男の声だった。

 

「伊丹、貴方には間も無く結成される幻想郷防衛軍に参加してもらうわ」

 

「え?えええ~~~っ!?」

 

 

伊丹耀司。

 

それがこの男の名前だった。

 

かつては外界において自衛隊と呼ばれる国防組織に属していたが休暇中のある日幻想郷に迷い込んだ。

 

運良く博麗神社に行こうとしていた魔理沙に見つけられるも元の世界に帰るか暫く悩む。

 

悩んだ結果暫く幻想郷で過ごしてみようと思い立ち帰るのを保留にしていた。

 

尚、自衛隊には霊夢経由で休職の旨を手紙で郵送済みである。

 

 

「指揮官は私だけど、いくつか貴方にも指示を出してもらうわ」

 

「無理無理!無理ですって!」

 

「安心なさい。外界の軍隊みたいにガチガチじゃないわ。いくつかの勢力ごとに分けて基本はその勢力任せ、大体の方針を指示すればいいのよ」

 

「その、拒否権は?」

 

「無いわ(はぁと)」

 

「そーなのかー・・・・」

 

思わずルーミア口調になってしまう伊丹であった。

 

 

 

 






皆さんはどのキャラが好きですか?

作者は八雲紫です。

そして何故か伊丹は幻想郷勢力側なので外界での銀座事件には関わっていません。







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