沖田さんにお任せあれー!コフッ!   作:ヘイ!タクシー!

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評価いただいたので書く




決着

「うわぁ!」

 

「ぐっ………!」

 

「総司、充!」

 

当真・奈良坂コンビによる必殺の射撃が総司の利き腕を破壊し、時枝の頭を貫いた。

同時に、放たれた出水のフルアタックが木虎に暴威を振るう。

 

「シールド」

 

落ちながらシールドを削られていく木虎。足を撃ち抜かれ、トリオン体も徐々に削られていく。

 

そんな木虎目掛けて、空中で満身創痍にさせられた時枝が、体当たりで彼女を退かし出水の弾幕から逃した。

 

いつもの無表情で自分の役割を最低限やり遂げた時枝の身体にヒビが広がっていく。

 

「すいません嵐山さん。先に落ちます」

 

「木虎の脚と時枝一人。それに沖田の腕を落とせたんだ。十分な仕事だろ」

 

『『トリオン体活動限界。ベイルアウト』』

 

三門市の無人住宅地の夜を、二つの光の線が迸った。

 

その光景を見ることなく嵐山達は一気に後ろへと下がり、遠征部隊は三人を追いかけ始めた。

 

『あー………最悪ですね。木虎ちゃんを餌に私達を釣るとか、性格悪すぎです』

 

『なっ!………それは、私が悪いと言うことでしょうか?』

 

『ケンカ止めろ。状況は一気にあっちに傾いたんだ。となれば連携するしか勝てないぞ』

 

喧嘩腰の木虎を嵐山が諌める。

確かにこの戦況だと連携して事に当たらなければならない状況だろう。

それがわかっている木虎は渋々と言った様子だが引き下がる。

 

ただしこの女は違った。

 

『いえ嵐山さん。そろそろ私との連携は止めるべきです』

 

『!ほう………』

 

『なっ!?それは私が足手まといだからと言う意味ですか!?』

 

総司の言葉に、嵐山は興味深そうに反応し、木虎はこの状況で自分勝手に行動しようとする総司に激昂する。

しかし総司は木虎の激昂など何処吹く風で自分の意見を曲げなかった。

 

『近接戦闘の連携はガンナーとの連携よりシビアです。木虎ちゃんはガンナーと言うより接近して相手を叩くスタイルでしょう?なら、嵐山さん達で連携して私は別行動を取るべきです』

 

『…………確かにそうだな。だがいいのか?』

 

建物の影に隠れて出水の弾幕を遣り過ごしながら、嵐山は沖田の利き腕に目を向ける。

言外にその腕で一人戦えるのかと問うかのようである。

 

だが総司はあっけらかんとした態度で利き手をプラプラさせて言った。

 

『沖田さんがただ一芸に特化しただけのアタッカーと見られたら心外ですって。やりようは幾らでもありますよ』

 

そう言って彼女はだんだら模様の羽織を出現させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________

 

 

 

「路地裏から出てこねーな」

 

「だからと言って突撃するなよ出水。むやみに行けば袋の鼠だ」

 

今にも飛び出そうとする出水を三輪は諌める。

嵐山のテレポートを思い出した出水は渋々と言った様子で引き下がるが、三輪の身体を見て、じゃあどうするんだと尋ねた。

 

「つってもお前はそろそろトリオン量限界だろ?メテオラでこの辺更地にするか?」

 

『おいおい出水、過激だな』

 

「じゃあ当真さんはなんか作戦あんのかよ」

 

『それを考えるのが三輪の仕事だろ』

 

二人の話を無視して三輪はこれからの作戦を練っていると、オペレーターの月見から通信が入った。

 

『三輪くん。レーダーから一人トリオン反応が消えたわ』

 

「なに………?」

 

「この状況でバックワームってことは………総司か?昔のアイツならスナイパー狙いか………」

 

過去の総司の戦闘方法を知っている出水が呟く。そんな彼の発言に古寺が質問を返した。

 

『え、なぜ沖田さんなんですか?それにスナイパー狙いって………どうやってこっちの位置が………?』

 

「あいつのサイドエフェクトは『直感』だからな。本人いわく違うらしいが………まあ、ようするにあいつの第六感でスナイパーを見つけられる可能性があるのさ」

 

『そんな凄いサイドエフェクトなんですね』

 

古寺はこのメンツの中で一番後に入隊したために知らなかったが、彼女のサイドエフェクトはスナイパー・ガンナー界隈では有名だった。

当然、古寺を除く周りのメンバーは全員彼女のサイドエフェクトを知っているため、警戒だけは決して怠らないのだ。

 

そんな二人の話を他所に三輪は迅速に作戦を立てる。

 

「俺のトリオンもそうもたない。このまま玉狛に直行する」

 

『………なるほど。釣る作戦か』

 

奈良坂が納得したように呟く。普段共に部隊で連携しているため、三輪の作戦を瞬時に理解したようだ。

奈良坂の発言を聞いたメンバーも納得した表情になる。

 

「なるほどな。このまま玉狛に行ってブラックトリガーを回収するも良し、追ってきた所を迎撃するも良し、ってところか」

 

『いいんじゃねーの。嵐山さん達ならぜってー出てくるだろうし。まあ沖田がどういった感じで来るかわかんねーのが怖いけどな』

 

彼の作戦は中々に良い作戦だと思われたのだろう。出水と当真からもお墨付きをもらった。

他のメンバーもそれを了承し、各々がその作戦を行うために動き出し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その直後だった。

 

『っ!?警戒!』

 

通信から焦った月見の声が届く。

その言葉に皆が反応する前に、出水の背後から突如現れた総司が、後ろから彼の首を飛ばした。

 

「ッ!!?」

 

『トリオン体活動限界。ベイルアウト』

 

無機質な音と空に上がる一条の光を無視して、三輪は総司から距離を取る。

通信から古寺の焦った声が届いた。

 

『そんな!?どうして急に………!?』

 

『………カメレオンよ』

 

古寺の質問に答えたのは、今までマップを監視していた月見だった。ただしその声色はどこか固い。

 

『やられたわ………バックワームで気付かれないように接近。そこからカメレオンで瞬時に近付いて奇襲………。私の警告が間に合わなかったのも計算の内でしょうね』

 

カメレオンと呼ばれるトリガーは、トリオン体を周囲の景色と同調させるステルス機能のトリガーだ。

ただしその機能上、トリオン反応を隠すことはできず、使用中に他のトリガーを使うこともできない。

よって上記の理由から、単独での奇襲はあまり成功例がない。

 

しかし総司は例外だった。

 

彼女にはある程度の距離でも瞬時に間を詰められる歩方技術と、出現と同時に素早く相手を斬る技術があった。

そして奇襲を成功させることができたのは、彼女が使うトリガーのお陰だろう。

 

「スコーピオンか………」

 

三輪は彼女の無くなった右腕から伸びるブレードを見て、忌々しそうに呟いた。

 

「ふっふーん、どうですか三輪さん。沖田さんのカメレオンの技術は。風間隊も真っ青な、完璧に使いこなす沖田さんのハイスペック力!」

 

『うぜぇぇぇ………』

 

通信越しから、今しがた離脱した出水の声が三輪に届く。

三輪も同じ気持ちだったが、今はそれに応じずに彼女に向かって叫んだ。

 

「沖田!なぜお前はネイバーを庇う!あのネイバーはお前にそこまでさせる程の何かがあるのか!?」

 

三輪の叫びと同時に二つのライトニングの弾が総司を襲う。

が、総司はそれがわかっていたかのように避けると、スコーピオンを刀状に伸ばして三輪に接近する。

 

三輪はレッドバレットを撃ちながら弧月で応戦した。

 

「私はただ命令に従ってあなた達の相手をしているだけです。そこに私の主義主張なんて介在しませんよ」

 

「なら!何故お前は忍田本部長派に着く!何故ネイバーを許す!お前は………ッ!!」

 

三輪の捲し立てるような口調と同様に、彼の持つ弧月が荒々しく振るわれる。

激情する三輪の剣撃を、彼を援護する銃撃を、総司はスコーピオンで避け続ける。

 

「お前もわかっているはずだ!ネイバーがどんなに危険で無慈悲な奴等かを!なのに何故助ける!」

 

「…………」

 

総司は一際大振りになった一撃を避け、彼の腹に蹴りを放ち距離を取った。

 

仕切り直しとなった二人。緊張が高まる中、再びお互いが衝突しようとした直後だった。

二つの光が空高く上がり、本部へと向かっていった。

 

「!?」

 

「任務完了ですねー。嵐山さん期待してますよー」

 

通信をしているのだろう。総司は誰もいない虚空におねだりする。

状況から見るに、通信越しで嵐山に和菓子か何かを奢って貰おうとしているのだ。

了承を得たのか嬉しそうな表情になる総司。ただすぐにその顔を引き締めると、三輪に視線を向けた。

 

「さて三輪さん。たった今、奈良坂さんと古寺さんが落ちましたが………どうします?当真さんも撤退しているみたいですけど」

 

「クッ………」

 

状況を理解した三輪は、これ以上争っても勝てない事を悟ると、憤怒の表情で彼女を睨んだ。

 

「迅は何にもわかってないんだ、ネイバーの恐ろしさを。なのに何故お前は迅の味方をーーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなはず、ないじゃないですか」

 

唐突だった。いつものおチャラけた態度ではなく、普段見たことがないほどに怒りを滲ませた声。

三輪が言った一言を否定するように、拒絶するように、総司は彼の言葉を途中で遮ったのだ。

 

「何を………」

 

「迅さんが何もわかっていない筈が無いと言ったんですよ」

 

彼女は三輪のそばまで近寄ると、真っ直ぐ彼の顔を見て言った。

 

「貴方の言いたいことはわかります。家族の死はとても悲しい。それに、私も()()だから………」

 

少しだけ悲しそうな表情になる総司。それでも彼女は迅のために言葉を届けた。

 

「確かに迅さんは身内贔屓です。信じられない事だってあります。嫌いになる事だってあるでしょう。それでも………迅さんにだって、大事な人がいたんです………!かけがえの無い人がいたんですよッ。それでもあの人は……………」

 

総司の言葉が少しずつ泣きそうな声色に変わる。

それが段々と冷静になってきた三輪にはわかった。彼女がどれだけ真剣なのかを理解した。

 

「………あの人は大切な人をもう二度失っています。三輪さんは知らなかったとは言え、何も感じてないみたいにあの人を悪く言わないでください」

 

「……………」

 

無言になった三輪を一度流し見ると、総司はその場から離れていった。

彼女が離れていった後、三輪は固く握りしめた拳を地面のアスファルトに叩き付ける。

 

「………くそッ!」

 

その場には敗北感とやり切れ無い気持ちで一杯となった三輪だけが残った。

 

 

 




ONE PIECEで海軍or七武海の女主人公ちゃん誰か書いて欲しい。ルフィ達と関わらない感じのルートで。

ONE PIECEって女主人公増えないんですよねー。需要ねーのかなー。

もう私が書くか………

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