隠密部隊side
「ん〜あの辺りが怪しいかな。」
ツナは一つの宿屋を見ながら呟く。
「とりあえず入るけど、明命はいつでも戦える準備をして、雛里ちゃんは俺から離れないでね。ナッツもよろしく。」
横にいる明命に注意するように促し、胸に抱いている雛里には危険だから離れないようにと声をかけ、雛里の帽子に座っているナッツにも防御を頼む。
「ツナヨシ殿には傷一つ付けさせません。」
「はい。これからもずっとここに居ましゅ。」
「ガウッ!」
ツナは雛里の返答に違和感を感じるが、戦場のためすぐに目の前に集中する。
戸を開けて建物に入り二階へと進むと、三人の女の子を守るように立っている賊の姿が目に入る。
「見つかった!天和ちゃん達だけでも逃げてくれ!」
「俺たちだって三人が逃げる時間くらい稼げる!」
賊達がツナ達に向かっていくが、明命に倒されてしまう。
「もしかして張三姉妹?」
「ならこの三人を捕まえれば反乱はおさまるとおもいます。」
ツナは最初人質かとも考えたが、賊達が守り始めたため首謀者の三人だと気がつき声をかける。すると明命が刀を構え、雛里も捕まえれば反乱がすぐに終わると言い明命に指示を出す。
「私はどうなってもいいから、妹達は許してあげて!」
「姉さん何言ってるの!?」
「天和姉さんだけを見捨てて生きていけない!悪いのはあいつでしょ!」
少し桃香に似ている女の子が二人を庇うように前に出て、ツナ達にお願いをする。残った二人もお互いを庇うように前に出てくる。
「あいつって誰?」
ツナは青髮の女の子が言ったワードに反応し、明命に刀を下げるように指示をだす。ツナ達が武器をしまったのを確認し、女の子達が語り出した。
女の子達が語った内容は
元は旅をしながら芸を磨いていたが、ある時一人の男から古い本を渡され、それを開いて念じると様々な道具が出てきた。それを使って歌を歌っていたら、いつの間にか反乱が起こっていたというものだった。
少し前にあの時の男が現れて本を持って消えてしまったらしい。
「なるほど(嘘ではないみたいだね。)」
「どうしますか?ツナヨシ様?」
「うん。三人共楽成城に来ない?」
「「「!?」」」
ツナは三人を保護することに決める。三人は驚いた顔をしてツナを見つめる。
「うちなら大丈夫だから。・・・明命!ここを頼んだ!」
ツナはニッコリと微笑むが、超直感が警報を鳴らし始めたため、炎を灯し慌てて外に飛び出す。出る際にナッツを明命に預けて三人と雛里の保護を託す。
明命と雛里は驚くが、ツナから誰かが危なくなった時の行動を事前に打ち合わせしていたため、冷静に状況を理解できた。
ツナに笑顔をむけられた三人は赤面していたが、ツナの炎をみて呆気にとられていた。
「もしかして噂の武神?」
「そうです。ツナヨシ様からお誘いがあった以上、私達も貴女達を歓迎します。」
「この猫?可愛い〜」
「ちぃにも抱かせなさいよ!」
「ナッツちゃんって言うんですよ。」
大人しそうな女の子が雛里に問いかける。他の三人はナッツを抱いたりしていた。
宿屋を飛び出したツナは飛びながら中央へと向かっていた。
(このままだと誰かが死ぬ!!)
「見つけた!」
中央付近の広場にて二人の武将が賊に囲まれていた。一人は武器もなく頭から血を流していて、もう一人も足を弓矢で射抜かれていた。しかも、
「くそ!間に合え!」
ツナが見たものは後ろから斬りつけられている姿であり倒れていく二人の姿だった。
「ウオオォォォォー!!」
夜の炎で正面に飛び二人を受け止める。その際に、白蘭のように背中から炎の羽を出し囲んでいた賊達を薙ぎ払う。
「きれい・・天使・・様?」
「あ・・迎えが、きたのですね。」
ツナの姿を見た二人は一言呟くと目を閉じてしまった。
ツナは慌てて二人を確認するが、気を失っただけであり、ツナの胸の中で安心したように眠っていた。
「なんとか間に合った。良かった。」
ツナは夜の炎を使い自陣天幕へと飛んだ。
「ツナヨシ様!」
「沢田様。そのお二人は?」
「凄い傷ですね。医療班を!」
「二人の治療をしてあげてほしい。残してきた明命と雛里が心配だから戻るね。」
「ツナヨシ!恋と霞と星が張三兄弟を討ち取ったからこの戦はもう終わるわ。」
「わかった!」
天幕内には桂花・月・朱里・詠がいて突然現れたツナに戸惑うが怪我をしている二人を見て医療班を呼び治療を開始する。
また、詠から首謀者はすでに討ち取っており、いまは残党狩りをしている最中だと戦況報告があった。
ツナは頷きながら明命達の宿屋へと戻る。
宿屋に着くと明命・雛里と張三姉妹は打ち解けており、ツナを含めて真名交換をした。