鷺沢さんがオタク化したのは俺の所為じゃない。   作:バナハロ

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ふみふみの修学旅行(3・4日目)

 3日目、千秋が額に手を当ててコンビニから出て行った後のコンビニ。奈緒と加蓮は文香に気まずそうに聞いた。

 

「………二人でトイレで何してたの?」

「………いえ、なんでもありません」

「いや、なんでもないじゃなくて」

 

 今更になって、コンビニのトイレで大胆な事をしてしまったなぁ、と全力全開で後悔してる文香だった。

 すると、「まっ、まさかっ……!」と奈緒は一歩後ずさった。

 

「トイレでシたのか⁉︎エロ同人みたいに!」

「………?エロ同人?」

「奈緒、何言ってんの?」

 

 聞きなれない言葉に文香も加蓮も首を傾げた。直後、まるでむっつりスケベがバレた男子中学生の如く、奈緒は顔を赤らめて目を逸らした。

 

「なっ、なんでもない………」

「ねぇ、奈緒もそのエロ同人っていうの持ってるの?」

 

 加蓮の攻撃対象が奈緒に変わった。

 

「なっ、何だよ!持ってないって!」

「ふーん?じゃあ帰ったら奈緒の部屋探索しようっと」

「や、やめろよ!無いから!プリキュアもSEEDもナルトの同人誌なんか無いから!」

「あるんだ!」

 

 ナルト、と言う言葉が出た直後、文香も一瞬で奈緒の前に移動して肩に手を置いた。

 

「ナルトの同人誌ってあるんですか⁉︎」

「いきなりどうした文香さん⁉︎」

「kwsk!」

「わ、分かったから落ち着け!」

 

 何とか文香を落ち着かせ、奈緒は「とりあえず」と加蓮を見て言った。

 

「加蓮は先に戻っててくれ」

「なんで⁉︎」

「………加蓮が聞くべき話じゃない。オタクの闇と言っても過言ではないからな」

「え?あ、う、うん……?」

 

 仕方ないので、加蓮は買い物を済ませてビーチに戻った。

 で、奈緒はため息をついて説明した。

 

「えーっと……まぁ、その、何?あるよ?ナルトの同人誌」

「どんなのですか⁉︎」

 

 すっげー興奮してるなー、と若干引きながらも奈緒は確認した。

 

「えっと……その、何?引かない?」

「引きません!」

「本当に?」

「本当に!私は千秋くんのことで多少引くことがあってもナルトとキリトさんのことで引くことはありません!」

「その答えにあたしはドン引きなんだが……。もう少し鷹宮に優しくしてやれよ……」

 

 そこを注意してから、奈緒はコホンと咳払いして言った。

 

「…………BL

「………はい?」

「……………BL」

「………あの、聞こえないのですが」

「だから!BLって言ってんの!」

「……びーえる?」

 

 お婆ちゃん発音で返すと、奈緒はガクッと項垂れた。で、どうせ説明する羽目になるんだろうし、と思って説明を始めた。

 

「………だから、その……ボーイズラブの略だよ」

「……ぼーいずらぶ、ですか?」

「ああ、その……つまり、ゆるゆりの反対というか……むしろガチ百合の反対というか……」

「………あの、結論を話していただけませんか?」

「………つまり、男同士の恋愛だよ」

「………………はい?」

 

 キョトンとした顔で文香は首を傾げた。イマイチ理解してないのか、それとも本能的に理解しようとしないのか分からないが、その反応にイラっとした奈緒は焦れったくなってヤケクソになった。

 

「だーかーらー!ナルトのウィンナーをサスケのピーチにねじ込むんだよ‼︎ローシ(自主規制)を塗りたくって、後ろからガンガンと腰を振(自主規制)」

「っ⁉︎」

 

 シーンとする店内。気が付けば、店内にいる人は全員、奈緒と文香を見ていた。

 その視線に気づき、奈緒と文香は顔を真っ赤にした。

 

「………とりあえず、お店を出ましょうか」

「…………だな」

 

 店を出た。撮影現場に戻りながら、文香はボソッと呟いた。

 

「………つまり、千秋くんとキリトさんが……」

「やめてやれよ⁉︎」

「………でも、私、気になります!」

「いや、そんな風に言われてもな……。まぁ、とりあえずあたしの同人誌を後で見せてやるから、妄想はそれ見てからにしろよ」

「………持って来てるんですか?」

「…………お守りで。ナルト×サスケ」

「………見せて下さい」

「あ、ああ……」

 

 ホテルに戻って読んだ。満足した。

 

 ×××

 

 翌日、水族館にて。プロデューサーと千秋が二人揃っておっぱい談義によって追い出され、文香はご機嫌斜めだった。

 その文香に李衣菜が遠慮気味に言った。

 

「ま、まぁまぁ、怒らないであげてよ。男の人ならみんな胸に興味あるのは当たり前だし、文香さんだって大きいじゃん」

「………私は別に、胸のことを大声で話していたことに怒っているのではありません」

「? じゃあ、何に?」

「………もしかしたら、私は千秋くんの好みからは外れているのかも、と思ってしまったのです」

「………あー」

 

 李衣菜は車の中でのプロデューサーとのロリコン談義とさっきのおっぱい談義を思い出してしまった。

 それらを組み合わせると、単純に考えて千秋が好きなタイプは歳下巨乳女の子ということになってしまう。

 

「………いや、でもそれはないと思うけど」

「………そうでしょうか。千秋くんの好みは確かに小さい女の子なんです。WORKING‼︎では種島さんが好きみたいですし」

「そ、そっか……」

「そこは『ちっちゃくないよ!』って言うところですよ」

「えっ?あ、うん、ごめんなさい?」

 

 なんか謝ってしまった。

 すると、文香はかな子を見た。ビクッと肩を震わせるかな子。

 

「えっ?な、なんですか?」

「………かな子さん、身長いくつでしたっけ?」

「152cmですが………」

「………小さくて大きい女の子」

「ええっ⁉︎な、なんで私を見るんですか⁉︎」

「………千秋くんと修学旅行同じ班」

「それは私から誘ったわけで、鷹宮くんは……!」

「………かな子さんが千秋くんの好みを知っていたとしたら?」

「ええっ⁉︎」

「ち、ちょっと文香さん落ち着いて!」

 

 慌てて李衣菜が間に入った。なんか騒がしい三人を遠目で見ながら、トライアドプリムスの三人は顔を見合わせた。

 

「………どうする?アレ」

「………とりあえず、文香さんのあの状態は『バーサークモード』と呼ぶ事にしよう」

「いや、そういう話じゃなくて」

「バーサークモードの文香さん面倒臭いね……」

「あ、採用するんだ」

「とにかく、何とかしないと……」

 

 凛、加蓮、奈緒、凛、奈緒、加蓮と呟いた。最後の加蓮の呟きを聞くと、凛と奈緒は加蓮を見た。

 

「え、何」

「いや、この手の悪巧……作戦考えるのは加蓮の役目でしょ?」

「だな。そういうの加蓮得意だし」

「待って。今、凛悪巧みって言いかけなかった?」

「かけなかった」

 

 まぁ、言われた通り加蓮には作戦があった。

 

「よし、じゃあこの後は国際通りに行くけど、二人とも良い?」

「? 良いけど……」

「なんで?」

 

 この後、国際通りでスライド式のドアを食い止めるためのつっかえ棒を買いに行った。

 

 ×××

 

 風呂場。閉じ込められた文香と千秋。文香は壁一枚向こう側に千秋がいると思うと、どうしても心臓がバクバクとうるさかった。

 既に湯船に浸かって20分経過している。いつもより全然長風呂である。

 千秋を待たせてしまう罪悪感はあったが、それ以上に恥ずかしさがあったため、どうしても上がることが出来ない。……というか、千秋がほんの少しも覗こうとしないことが少し気に入らなかった。覗いて欲しいわけではないが、少しくらい興味持って欲しかった。

 

「…………」

 

 今、何をしてるのか気になり、声を掛けてみた。

 

「………千秋くん?」

「はい?」

 

 呑気な声。「こいつ、全く私のこと意識していない」と1発で理解した。

 

「………今、何してるんですか?」

「え?FGO」

 

 すごくムカついた。というか、どちらかと言うとMの文香的には、やっぱり少し覗いて欲しかった。

 

「………千秋くん」

「? 何?」

「………千秋くんって、私のことどう思ってますか?」

「どうって……超好きとか?」

「っ………」

 

 少し照れ臭かった。何の躊躇もなく言われ、顔を赤らめてお湯の中に顔を半分埋めた。

 

「………え、なんですか急に?」

「…………いえ、その……」

 

 聞かれて、顔を出してから答えた。

 

「………壁一枚向こう側に、お風呂に入ってる彼女がいるのに……その、全然覗こうとしない、から……」

「…………」

 

 そう呟くと、千秋は黙り込んでしまった。

 

「………あ、礼装落ちた」

 

 その呟きが、文香の沸点を怒りがブチ抜いた。ザバァッと上がって、ドアを開けた。

 ドアの向こうの千秋を見ようとすると、千秋はスマホから顔を上げようともしない。

 

「っ、ち、千秋くん!」

「………何?」

「………千秋くんは、私に魅力を感じませんか?」

「いや魅力しか感じないけど」

「こっちを見てください!」

「嫌だよ!」

「何でですか⁉︎国際通りでは私が二次元でも三次元でも4次元でも一番好きと言ってくれたじゃないですか!」

「だからこそだろ!」

「意味が分かりません!」

「だーかーらー!」

 

 千秋はスマホからようやく顔を上げて文香を見た。

 

「ゲームに集中してないと襲い掛かりそうなんだっつーの‼︎」

「っ………」

 

 顔を赤くして千秋は怒鳴ると、文香の裸を見たことを自覚して慌ててスマホに目を戻した。それに気付き、文香もなんか恥ずかしくなって、慌てて体を隠すように風呂場に隠れた。

 洗面所の出口の扉の向こうからガタッと音がしたが、文香も千秋も構わなかった。

 

「………じ、じゃあ、その……私に魅力がないわけじゃ」

「んなわけないでしょう!大体、付き合う前からだけど無防備すぎるんだよ!そのドスケベなボディを少しは自覚しろ!」

「あうう………」

「さっき裸を堂々と見せようとして来た癖に恥ずかしがるな!」

「っ…………」

 

 文香は顔を赤くして俯きながら壁に隠れた。

 

「………申し訳ありません、千秋くん……。千秋くんの事も考えずに………」

「いや、良いよ別に……。俺も、襲わないようにするためとはいえ、態度悪かったし………」

「…………でも、その……私は、襲っていただいても……」

「バカ言わないで下さい。アイドルでしょう」

「………そ、そうですが………」

「とにかく、さっさと風呂交代してください。俺も早く部屋に戻らないと………いや、怪しまれはしないや。存在認知されてないし」

「っ……わ、分かりました……」

 

 と、いう過去最大規模の惚気話を扉の向こうで聞いていた三人は、とりあえずブラックコーヒーを買いに行った。

 だが、まだアホな話は続く。攻守交代である。文香が上がり、千秋が風呂に入った。三人がコーヒーを買いに行ってしまったため、文香も外に出れない。つまり、今度は文香が大変だった。

 千秋が風呂に入ってる間、文香は想像以上の性欲に襲われた。特に、昨日は奈緒のエロ同人を読んだばかりのため、男性器とはどういうものなのかを理解してしまったため、なんか尚更だった。

 

「………………」

 

 千秋のもあんなんなのかな、と思う度に頭を振って煩悩を打ち払った。

 

「ちっ、千秋くん!」

「なんすか?」

「スマホをお借りしてもよろしいですか⁉︎」

「はぁ?………あっ(察し)。い、良いですよ」

「ありがとうございます!」

 

 千秋が察した事を察する事なく、文香は千秋のスマホでゲームに集中した。

 こうして、文香の修学旅行は終わった。

 

 




修学旅行編終わりです。長かったぜ………。
ちなみに、理性抑えられないくせに一緒に風呂入ろうとするな、とか思わないであげて下さい。

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