【ふみかがログインしました】
アークスシップロビーに「ふみか」がログインした。とりあえず、シップをSH207に移動した。
デイリークエストを確認してると、ピコンと画面の上にパーティ申請のアイコンが出た。それを開くと、「Tulip」からパーティ申請が来たので、承認した。
Tulip:ガンナーLv64
ふみか:バウンサーLv70
Tulip『こんばんは、文香』
ふみか『……奏さん、こんばんは』
Tulip『あら、文香のコスチューム可愛いのね』
ふみか『………はい。もうすぐハロウィンですので、その限定コスチュームです』
Tulip『私も新しいの買おうかしら』
ふみか『……奏さんのキャラ、とても可愛いので似合うと思いますよ』
Tulip『そうかしら?………あ、楓さんが来たわね』
フレンドリストのオンラインに知り合いの文字が増えた。それにも、パーティの招待をした。
たのsea:ブレイバーLv50
Tulip:ガンナーLv64
ふみか:バウンサーLv70
たのsea『こんばんは、二人とも』
ふみか『……あ、楓さんこんばんは』
たのsea『文香ちゃん、こんばんは。………あの、一応聞くけれど「ふみか」っていうのあなた?』
ふみか『………そうですけど』
たのsea『意外とレベル厳ついのね………』
ふみか『……そうでしょうか?私よりも、これから来る方の方が厳ついですよ?』
たのsea『あら、私のレベリングを手伝ってくれるって人?』
ふみか『………はい。もうすぐ来ると思うんですけど……あっ、すみませんL○NEが』
Tulip『楓さん、彼かなり強いけれど、少し人見知りなのよ』
たのsea『あら、そうなの。そういう事なら分かったわ』
ふみか『………あの、すみません。千あ……鷹宮くん、少し遅れるそうです』
たのsea『あら、そうなの?』
ふみか『……後から入って追い付いてくれるそうなので、私達で始めましょうか』
と、いうわけで、三人はおすすめクエストにあった浮遊大陸(SH)に入った。とりあえず、これでデイリーを終わらせる事にした。
キャンプシップから降りて、浮遊大陸の上に移動した。三人のアバターは早速、ゴールに目指して走り出した。………のだが、たのseaは早い話が、ボスに好かれる系な人だった。つまり……。
Tulip『ま、またラグネ⁉︎ちょっと!まだエリア1も抜けてないのに3体目よ⁉︎』
たのsea『なんか、私がフリーフィールドに出ると毎回こうなのよね。………あ、カウンター失敗』
ふみか『……ちょっと待って下さい!レスタ掛けますから楓さんこっちに来て下さい‼︎』
Tulip『ちょっと!ガンナーにタゲ取らせる気⁉︎』
ふみか『……ほんの一瞬ですから!ていうか、ガンナーは近距離職です!』
Tulip『ガンナーなのに⁉︎』
と、まぁカオスになっていた。よくよく考えれば、三人ともソロでやった事ないし、ふみかもTulipもほぼ毎回、セルスリット(千秋)とやっていたので、プレイヤースキルが高いわけでもなかった。
すると、ふみかがラグネの足を壊して、ダウンさせた。
ふみか『……今です!後頭部を狙って下さい!』
Tulip『了解よ!』
たのsea『ラグネの攻撃って荒くね?』
ふみか『……すみません攻撃に集中して下さい!』
そのまま後頭部を殴り続け、何とか討伐に成功した。ドロップの塊を壊すが、レアドロの表記はない。
Tulip『あれだけ苦労させられてレアドロ無し……キツイわね』
ふみか『……ほんと、苦労する時は大体落ちませんよねこのゲーム』
たのsea『大丈夫よ、もうマップに次のエリアへのアイコンが出てるから』
ふみか『………まだエリア1なんですけどね』
Tulip『嘆いても仕方ないわ。さっさと行きましょう』
Tulipがそう言って、エリア1のゴールに向かった直後だった。三人の目の前にラグネっぽいのが降って来た。
ヒルダ『緊急事態だ、よく聞け』
【虚の骸ダーク・アグラニ】←赤文字
つまり、レア種二つ名の上にブーストが付いていた。三人はしばらく黙り込み、そのアグラニを眺めた。
やがて、Tulipが叫んだ。
Tulip『……無理よ。これ以上はさすがに無理!逃げましょう!』
ふみか『………でも、これ倒せばレアドロしますよね?間違いなく』
Tulip『ちょっ……文香?』
ふみか『……頑張りましょう!』
Tulip『文香ぁ⁉︎欲に目が眩んでるわよ⁉︎』
たのsea『アグラニの上に胡座』
Tulip『楓さんごめんなさい本当に喋らないで‼︎』
挑むふみかとたのseaを見て、Tulipも仕方なく援護しようとした時だ。ピコン、とログに文字が入った。
セルスリット:ブレイバーLv77
たのsea:ブレイバーLv50
Tulip:ガンナーLv64
ふみか:バウンサーLv70
Tulip『! これは……!』
たのsea『まさか?』
ふみか『……やっと来ましたか』
三人から安堵するような声が漏れると共に、
セルスリット『お待たせしました』
セルスリットが浮遊大陸に降り立った。早速、ふみかが叫んだ。
ふみか『……すみません千秋くん!早速で申し訳ないのですが、ラグネのレア種の二つ名のブーストが現れました!』
セルスリット『おk。今行きます』
セルスリットは未だにキャンプシップの前、三人は一番遠いエリア2に移動する目の前にいた。
その距離を、セルスリットはテッセン移動でスイスイと走って行き、直ぐに追いつき、そこからさらにグレンテッセンでラグネの脚を一撃で破壊した。
セルスリットは攻撃しながら、とりあえず初対面の人に挨拶をした。
セルスリット『よっ、と……。あ、あのっ……高垣楓さん、ですか?』
たのsea『そうよ?文香ちゃんと奏ちゃんのお友達なんでしょう?』
セルスリット『は、はい。鷹宮千秋っていいます……。今日だけかもしれませんが……その、よろしくお願いします』
たのsea『こちらこそよろしくね』
Tulip『ち、ちょっと!挨拶なんて良いから早く手伝いなさいよ!』
セルスリット『あ、終わった』
Tulip『…………へっ?』
アグラニは倒され、黒い煙となって消えたと共に、ドロップアイテムの赤い塊が現れた。
【たのseaはLv51になった】
たのsea『あら、レベルが上がったわ』
セルスリット『おめでとうございます』
たのsea『ありがとう。……あら、レアドロしたわ。☆10の弓ね』
セルスリット『おお、弓は最高火力とんでもないですよ』
たのsea『そうなの?』
なんて呑気な二人が会話してる中、ふみかとTulipは疲れ気味に呟いた。
ふみか『………私達が苦労して倒して来たラグネの上位互換を……』
Tulip『………あっさり持って行かれたわね……』
二人して盛大にため息をついた。ちなみに、二人に大したレアドロはなかった。
で、四人で攻略開始。次のエリアに入ると共に、たのseaがセルスリットに聞いた。
たのsea『それにしても、千秋くん来るのすごい早かったわね』
さりげなく下の名前で呼んだのに、ふみかが「むっ」と声を漏らすが、それに気付かずにセルスリットは聞き返した。
セルスリット『そうですね。テッセン移動っていう移動方があるんですよ。レベル関係ないので、高垣さんも出来ますよ』
たのsea『あら、そうなの?教えてくれる?』
セルスリット『良いですよ。まずは……』
二人の会話を聞きながら、ふみかは不機嫌そうにその辺にいる龍族を斬り殺した。それにいち早く気付いたTulipは二人に控えめに言った。
Tulip『ね、ねぇ?そのテッセン移動っていうのは、私達でも出来るの?出来るなら、みんなに教えて欲しいんだけど……』
セルスリット『や、無理です。ブレイバーじゃないと』
Tulip『……そ、そうなの』
察しろよ、と思ったが、察してくれなかったので黙ってしまった。と、思ったらふみかが朗らか且つ不愉快そうな声で言った。
ふみか『……そうですか。では、私と奏さんはお二人の邪魔にならないように、周りの敵の露払いをさせていただきますね?』
Tulip『ふ、文香?落ち着』
セルスリット『そうですか?すみませんね』
お前も気付けよ!と思ったのは言うまでもなかった。
二人の楽しいテッセン教室の間、ふみかはディストラクトウィングによるオーバーキルを連発。その様子を引き気味に見ながら、Tulipは個人チャットで言った。
Tulip『文香、落ち着いてよ。楓さんにはあなた達の関係教えてないんだし、仕方ないわよ』
ふみか『別に怒ってませんよ?(怒)』
Tulip『怒ってるんじゃない……。あの、さっきも言ったと思うけど』
ふみか『……分かってます(怒)』
Tulip『わ、わかってるなら良いけど……それ分かってるのよね?』
途中、キャタドランサが二体出たり、クォーツが1体出たりしたが、それらを楽に倒しながら、四人はボスエリアに向かった。
セルスリット『おお、そうそう。そんな感じです』
たのsea『ふふ、でもこれ気を抜くとすぐに止まっちゃうわね』
セルスリット『まぁ、練習あるのみですよ。あとは』
たのsea『ありがとうね、千秋くん』
セルスリット『いえいえ』
道中のボスで、ブレイバーの立ち回りとかも覚えたたのseaは、かなり上手くなっていた。
セルスリット『じゃ、次のクォーツとかカウンター取りやすいと思うんで、試してみて下さい』
たのsea『はーい、千秋先生』
セルスリット『ちょっ……先生って……』
ふみか『メキッ』
Tulip『文香⁉︎今、なんかすごい音したけど⁉︎』
で、四人でクォーツに入った。とりあえず、セルスリットは後から助っ人に入るとして、三人で戦うことにした。
見事に3回ほど、たのseaがカウンターを取りまくり、Ζガンダムの如く紫色に輝いた状態で、他の二人の援護を受けながら無事に倒した。
たのsea『やった、倒したわよ!』
セルスリット『お疲れ様です』
たのsea『ふぅ……楽しいわね。今まではみんながやってたからやっていたけれど、自分の腕が上がった気がするわ。ありがとう、千秋くん』
セルスリット『いえいえ。どうします?この後、まだ何処か行きますか?』
たのsea『そうしたい所だけど、明日も仕事なのよ。だから今日はここまでね』
セルスリット『分かりました。じゃあ、お疲れ様です』
【たのseaがパーティーから脱退しました】
セルスリット『他のお二人はどうしますか?』
Tulip『……ごめんなさい、私も落ちるわ。なんか、胃が痛くて……』
セルスリット『そうですか?じゃあ、お疲れ様です』
Tulip『……お疲れ様』
【Tulipがパーティーから脱退しました】
残りはふみかとセルスリットの二人。すると、セルスリットが言った。
セルスリット『じゃ、やりましょう……あれ?』
いつの間にか、ふみかもパーティーから抜けていた。
×××
文香はソファーの上でクッションを抱いて寝転がっていた。本当はもっとレベリングしていたかった。だが、そんな雰囲気ではなくなってしまったし、何となく面白くなかったので無言で落ちてしまった。
「…………千秋くんのばか」
そう呟くと、文香は抱いてるクッションに顔を埋めた。
その直後だった。スマホが鳴り響いた。画面を見ると、鷹宮千秋の文字。
「………もしもし」
『文香さん?俺です』
「………オレオレ詐欺ならお断りです』
『いや、鷹宮ですよ』
「……なんのご用ですか。彼女を差し置いて初対面の女性とばかり話してた鷹宮千秋くん」
全開で不貞腐れてみると、困ったような声が聞こえてきた。
『あー……だから、その……彼女を差し置いて初対面の女性と話してたから、二人きりでもう少しゲームどうかなって思ったんですけど……』
「……………」
その言葉だけで、文香は少し嬉しくなってしまった。こんな簡単に彼氏を許してしまうなんて……みたいな事を思いながらも、微笑みながら言った。
「………もうっ、仕方ないですね。私が75になるまでやりますからね」
『えっ、それは逆に大丈夫なんですか?』
「……大丈夫です」
翌日、二人は当然のように寝坊した。