わにゃわにゃ ワドルディ   作:にゃもし。

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ワドルディの旅立ち

 

 

 ヒグマによる誘拐事件が未遂に終わった数日後。

 

 村の港に一隻の船が泊まっている。その船はワドルディたちと村人たちが共同で作ったものであり、ルフィたちは念願の船を手に入れたのである。

 

 

「「 わにゃわにゃ! 」」

 

 

 ワドルディたちは跳び跳ねて喜び、村人たちも歓声の声を上げる。その中でもルフィの喜びようは一際大きく、彼は諸手を挙げて言い放った。

 

 

「よし、お前ら 海賊旗 を掲げるぞ!」

 

やめんかバカたれ!

 

 

 すかさずウープが杖でルフィの後頭部を叩く。誘拐事件の件もあり、ワドルディたちを思っての彼なりの配慮なのだが、そんなウープの心情をよそにワドルディたちは船の帆に麦わらを被ったドクロマークを描き終えていた。

 

 

もうすでに出来てるのかよ!?

 

 

 ウープはワドルディたちの行動に呆れつつも船をつぶさに観察してみる。竜を象った船首の下には巨大な槍が設置されており、上で操作すると飛び出す仕組みになっている。甲板には幾つもの大砲とバリスタ──据え置き式の大型弩砲、さらに捕鯨でもするつもりなのか捕鯨砲なんてのもあり、素人目から見ても十分過ぎる武装である。ちなみに立案はワドルディたちであり船の名前はドラグーン号。

 

 

「まあ、お前さん方がそれでいいなら、これ以上とやかくは言わんが……」

 

 

 半ば諦めるようにウープは言う。それから村人総出で航海に必要な物資を船に積み込む作業を行い、その甲斐あってか、ものの数時間で翌日には出港できる準備を整え終えた。

 

 

──そして……

 

 

「じゃ!! おれ行くからよ!!!」

 

 

 船の甲板に立つルフィが見送りに来た村人たちやダダン一家に挨拶を交わす光景が見られる。そのルフィの周囲をワドルディたちが忙しなく動き回る。ほどなくして準備が終わり、船が大海原へと動き出す。

 

 

「このままこの船で航海するのも、わるかねぇけど……やっぱしリベンジはやっておかねーとな?」

 

 

 船首の上に乗って海面に目を向けるルフィの目には海面下を漂う巨大な海蛇の影が映っていた。それは10年前、彼を襲った近海の主と呼ばれている巨大生物だった。

 

 ……とはいえ、さすがに近海の主といえども武装した船舶には手を出さないのかゆらゆらと海面下を泳ぐだけで一向に襲ってくる気配は見られない。ゆえにルフィは動く。

 

 彼が本来、航海に使う予定だった小舟に乗り換えると一人、主の下へと舟を漕いで近づいていく。そこへ待ち構えていた主が海面から顔を覗かせ、蛇のように鎌首をもたげて睨み付け──小舟ごとルフィを呑み込まんばかりに大口を開いて襲いかかってくる。

 

 しかしルフィは海面すれすれを泳いで来る主を見て慌てるどころか、余裕綽々の表情で「ゴムゴムの──」と腕を体の後ろへと引くと……

 

 

(ピストル)!!!!

 

 

 拳を前に突き出すと同時に腕が急速に長く伸び、轟音とともに先端の拳が近海の主の頬に突き刺さる。

 

 ルフィの拳を喰らった主は白目を剥いて気を失い……ゆっくりと後ろ向きに倒れていき……激しい水飛沫を上げながら海中へと沈んだ。

 

 その一部始終を見届けるとルフィは両手を高々と掲げて宣言する。

 

 

海賊王におれはなる!!!!

 

 

 海原に向かってそう声を張り上げるルフィ。彼の後ろにある舟の甲板からは傍観していたワドルディたちが何やら感慨深くコクコクと頷いていた。

 

 

 

 

 港から遠ざかっていくドラグーン号。小舟に乗り換えるルフィらしき人影。現れる近海の主。打ちのめされて海中に沈む近海の主。

 

 そんな様子を見たウープはルフィの祖父であるガープとの会話を思い出し……「昔、ガープから聞いた話なんじゃがな……」と前置きを置いてから、隣にいるマキノやダダンたちに言い聞かせるように話し始めた。

 

 

「ゴールド・ロジャーの船員に丸っこい小さい三人組がいたそうだ……」

 

 

 いろんな人種が乗っていた海賊王の船。その中でも異彩を放っていた存在。

 

 

「彼の海賊王の船員の中には偉大なる航路(グランドライン)にある島々を出身にしている者がいることを聞いておる。海賊王の船員にいた三人組がワドルディと同じ種族ならば……」

 

 

 「ワドルディたちの故郷は偉大なる航路(グランドライン)にあるかもしれん……」と締め括くる。ドラグーン号が見えなくなったころ、ウープは騒ぐ村人たちを静めさせ、さっさと家に戻った。ルフィに対する愚痴をねちねちと言いながら……

 

 

 そんなこととは露知らず、ドラグーン号の甲板には船員が一同に集められて話し合いをしていた。

 

 

「よし、グランドラインに行く前に仲間を作るぞ

 

「「 わにゃ 」」

 

 

 威勢良く方針を言うルフィに敬礼で応えるワドルディたち。そのうちの一体が片手を上げながら「わにゃわにゃ」言う。ワドルディの言動にウンウンとルフィは頷くと……

 

 

「うーん。なに言ってるのか、わからん」

 

 

 ……とワドルディたちをずっこけさせる。もっともルフィはワドルディたちとの意志疎通も「ま、なんとかなるだろ」とあっけらかんに応え──

 

 

「先ずはここから近くの町を目指すか あ、でも途中の島を冒険するのも、わるくないな……とりあえず行くぞ 出港だ~~~ぁ!!!!

 

 

 船を手に入れたのが、よほど嬉しいのか子供のようにはしゃぐルフィの言葉を実行に移すワドルディたち。短い手足をじたばた動かしながら慌ただしく甲板の上を動き回る彼らを見てルフィは……

 

 

「おれもなんか手伝おうか?」

 

「「 わにゃ!! 」」

 

 

 示し合わせたかのように片手で抑えるような仕草をしつつ声を揃えた。

 

 こののち、ルフィは仲間を増やして偉大なる航路(グランドライン)へと進むことになる。その傍らには常に小さな船員たちがいたという。

 

  




(´・ω・)にゃもし。

2話目のあとがきの通り、ひとまずここで完結。
オリ主とかオリキャラって大抵、強いから弱いやつを作ってみましたが、いかがでしたか? 楽しめてくれれば幸いです。

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