「「 わにゃわにゃ!!!! 」」
フーシャ村にある唯一の酒場。
ワドルディたちの目線に合わすようにしゃがんで向かい合っている青年がいる。
青年の名前は「ルフィ」
ワドルディたちは物語に出てくる主人公と出会って騒いでいるのだ。
もっとも彼らが発する言葉は例の「わにゃわにゃ」ゆえ、当人たち以外は誰にも通じない。
「わにゃわにゃ? 何を言ってるんだコイツら?」
「そいつらの使う言葉だろう。意味はわからないがな」
「ふーん」
「わしらがいる
コイツらはそこの生き物なんだろ。
どうせ、海に行くんだろ? ついでに送り届けてこい」
村長であるウープの無茶とも言える要望に「ああ、いいよ」とあっけらかんに応えるルフィ。
「それまではオレとお前たちは仲間だ」
しゃがんだ状態のまま「よろしくな」と手を差し伸べるルフィに、ワドルディの一体が指のない腕で握手を交わす。
「──で、コイツらの名前は何って言うんだ?」
「わにゃわにゃ言っておるから『わにゃわにゃ』じゃないのか?」
「「 わにゃわにゃ!!!! 」」
安直なウープのネーミングセンスにワドルディたちは腕をバタバタ振って全身で否定を表す。
しばらく「わにゃわにゃ」言い続けていたが、彼ら以外には通じない言語ではいつまでたっても伝わらないと悟ったのか、ワドルディたちは酒場のあちこちに分散して何かを探し始めた。
「「 わにゃ! 」」
探し当てたものを誇らしげに頭上に掲げるワドルディたち。彼らが手に入れたものは「紙」と「鉛筆」だった。
彼らはそれを床にいったん置くと輪になって「わにゃわにゃ」と話し合いを始め、やがて意を決した一人が紙に文字を次々と綴っていく。
『 ワドルディ 』
完成した紙を高く掲げて見せるワドルディ。
その紙にはでかでかとそう書かれていた。
「「 ワドルディ? 」」
用紙に書かれた文字を口に出すウープとルフィに「わにゃ」と元気よく返事をする。
「筆談でやりとりするだけの知性を持っているのか…
いや、それよりもワドルディというのが個人名なのか、それとも種族としての名なのか…」
アゴに手を添えて唸るウープ。
それを見ていたワドルディが紙の裏に文字をしたため、彼らに見せた。
『我輩たちはワドルディである。名前はない』──と、
それを見せた途端、隣にいるワドルディが後頭部をぺちっと叩いて窘める。
もっともウープとルフィにはワドルディたちの行動を理解しておらず困惑しているが… しばし、ルフィは腕を組んで考える素振りを見せたあと──
「よくわかんねーけど、ワドルディだからワドルディと呼べばいいのか?」
…という結論に達し、尋ねた。
「おい、ルフィ。どう見ても『ワドルディ』は種族としての名前だから…」
「「 わにゃわにゃ! 」」
ルフィの問いかけに対してピョンピョン跳ねて見せるワドルディたち。
「なんかそれでいいみたいだぞ?」
「それでいいのかよ!?」
ワドルディと彼らを指差すルフィに思わず大声を出すウープ村長。
「はぁ… まぁ、お前らがそれでいいんなら構わんが……船はどうするつもりだ? まさか
ルフィが航海のために用意した船はお世辞にも大きいとは言えず、むしろ無謀とも言える二人乗り用の手漕ぎボートだった。
ウープは一緒に乗るであろうワドルディたちを思っての発言だった。
「やっぱ狭いかなー?」
「お前一人ならば言うことはないのだが、さすがにワドルディたちも一緒になると無理があるだろ。どっかからか用意してこい」
「うん、わかった。そうするよ」
「お前たちもそれでよいな?」
「「 わにゃ! 」」
「相変わらず何を言っているのか分からんが反対はしてないだろ。
方針が決まったなら酒場からとっとと出ていけ、マキノの邪魔になるだろうが」
持っている杖で「しっしっし」と追い立てるウープにルフィはしぶしぶと従って出ていき、ワドルディたちはルフィの後をひょこひょことついていく。
入れ替わるようにしてカウンターの奥から現れた女性──マキノがウープに話しかける。
「あの子たちのために船ぐらい用意してあげても良かったじゃない?」
「ふん。海賊を目指すような輩に用意してやる船などないわい」
マキノはウープのムスッとしたその不機嫌そうな態度にクスクスと笑うと店を開店するための準備を始めた。
(´・ω・)にゃもし。
息抜きに執筆。
ドーン島。フーシャ村を出ていくところで終わらす予定よん。
原作沿いになるだけだろうしね。