九月。ジェームズ・ポッター達初代悪戯仕掛け人とリリー・エバンズ、セブルス・スネイプが入学した。
シリウスが入学したことで思い出したが、どうせならレギュラス・ブラックも救いたい。彼は不憫枠の一人だろうし。
その前に、まずは料理だ。
事前に下ごしらえは済んでいる。あとは調理して上に転移させるだけだ。
「班長、フライドポテト完了しました!」
「かぼちゃジュースいつでもいけます!」
「班長、ステーキに人員をお願いします!」
「調理が完了している所はまだの場所を手伝ってください!余りはデザートの準備を!去年のようにピーブズが来てもリカバーできるように!」
『はいっ!』
頭脳をフル回転させて指示を出す。
毎年、入学の時期とハロウィーン、クリスマス、学年度末は厨房は戦争状態に入る。特に作る量が多くなるためだ。
そして、去年は危惧していた事態が起こってしまった。そう、この時期の厨房へのピーブズの襲来。その年は新入生が多く、また、七年生の人数も多かったために、厨房では忙しさに対して全しもべ妖精がキレてしまい、怒声が響きわたっていた。そんな中でのピーブズ襲来だ。全員が無言になり、テキパキとリカバーに入る。そして、一番実力があるであろう俺がピーブズの前に立ち一言、
「出て行ってもらえますかな?次にこんな大迷惑を起こしてくれたら……ええ、あなたがいくら死んでいるとしても──絶対に殺す」
これ以来、ピーブズが俺に近づくことがなくなった。とある小説のセリフを真似ただけなんだがね。
その時以来、必ず一人が厨房の外を見張り、ピーブズが来ないようにしている。
『では、食事に移ろうかの』
「総員、料理の転送開始!」
ダンブルドアの声が響く。これを合図に、妖精達は料理を真上の大広間に転送する。
俺が来てから、毎年、入学歓迎会と学年度末パーティのデザートには特別なものが加わるようになった。それぞれの寮を模したケーキだ。ホールケーキの上に獅子の頭を乗せ、ブッシュドノエルに蛇を巻きつける。精巧な木の形のケーキには鴉が止まり、チョコケーキの中央には穴熊を。教師用はもっと特別なのにしてあるけど、それはまた今度紹介しよう。
他のしもべ妖精には悪いが、後片付けは任せることにしている。最近行なっている実験が完成に近づいているからだ。
死の呪文から逃れる方法はないのか。
物理的な防御なら防げることはわかっているが、それ以外では未だ方法がない。少しでも光線に当たってしまえば一貫の終わりだ。だから、ジェームズとリリーを守る方法がない。
なら、死を誤認させてしまうのはどうだろうと考えた。無理だという結論にたどり着いた。
そして、その失敗を踏まえて、できそうなことを考えついた。『例のあの人』ほどの死の呪文だと強すぎるかもしれないが、理論上は防げる。
魔法による光線は、本来の光ではない。だからなんだというのだ。見た目が光線なら、光の性質を持っていても不思議ではあるまい。その考えを押し付けてしまえばいいんだ。
ピーブズへの脅しとその前の状況の参考は、有川浩作『キケン』第四話『三倍にしろ!─後半─』より。
自分以外の人体に作用する攻撃魔法は光線を発する。しかし、それは魔法が通った道を示すだけで、光の性質を持っているわけではない。
だが、『そんなことは知ったこっちゃない』と、『魔法の光線は通常の光の性質を持つ』と思い込んでしまえば、それは光の性質を持つことになるだろう。そう、シュレディンガーの猫理論もどきだ。
相手の都合など無視してこちらの条理を押し付けてしまえばいい。『一定範囲内でのみ、魔法光線に光の性質を付与する』限定的付与魔法を設定すれば簡単だ。
最後に──光、特に光線って、捻じ曲げられるんだぜ?