とある転生屋敷しもべ妖精の努力話   作:零崎妖識

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就職

どこにホグワーツがあるのかはわからないので、自身に〈目くらまし術〉をかけた状態でキングズ・クロス駅、九と四分の三番線へ向かう。

あとは、列車に轢かれないことを祈りながら線路の上を〈姿現し〉で高速移動。半日ほどかかったが、ホグワーツに到着した。今は夏休み中なのか、城に活気がない。門も閉まっているから、入っていいのかもわからない。

暫く門の前でウロウロしていると、門の中から誰かが出てきた。キラキラした目の、背の高い老人──アルバス・ダンブルドアだ。

 

「よかった、まだここにおったか。君が門の前でウロウロしているのを、ほれ、あの廊下から見かけてのう。どうしたのかと、話を聞きに来たんじゃ。わしはアルバス・ダンブルドア。この学校──ホグワーツ魔法魔術学校の校長をしておる」

 

俺は大げさにお辞儀をして、自分の屋敷しもべ妖精としての名前がないことに気がついた。そして、自分がトーガのように来ているカーテンに、名前が刺繍されているのを見た。

 

「私はギヴァーと申します、ダンブルドア校長先生。私は仕事を持っていないのですが、ここでなら仕事を貰えるかと思い、やってまいりました。どうか、わたくしめに仕事を与えてはくれないでしょうか」

 

「おお、それなら大歓迎じゃよ。人手はいくらあっても多すぎることはないじゃろう。一つだけ質問させてもらうが、これは形式的なものであって、決して、君を不快にさせるつもりのものではない。君は給金と休みは欲しいかね?」

 

少し悩んだ。屋敷しもべ妖精の本能は必要ないと言っているし、俺は少しぐらいは必要だと思う。確か、ドビーが一週間に一ガリオンと、一ヶ月に一日の休みだったはずだ。

 

「では、二週間に一シックル、二ヶ月に一日の休みをお願いいたします。本来ならばここまではいらないのですが、どうしても必要となる場合に備えたいのです」

 

「よかろう。他のしもべ妖精達に仕事内容は聞くとよい。一日に二時間の休みがあることも伝えておこうかのう。その時間は自由に行動してよい。仕事についても、君がすべきだと思ったようにしてよい。なんなら、わしのことを老いぼれ偏屈じじいと呼んでもよいぞ?」

 

この人をそう呼べる妖精がいたら見たい。きっと勇者だろう。

 

「明日から仕事をしてもらおうかの。最後に、質問はあるかな?」

 

「今が、何年の何月何日かを教えていただきたいです」

 

「1960年の八月一日じゃよ」

 

1960年……ハリーの入学どころか、ジェームズ・ポッター達の入学より十一年も前だ。これなら、色々と実験や細工ができる。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

それからの五年は、本などで読んだり、ネットで見た知識の実践に当てた。そしたら、屋敷しもべ妖精達に慕われ始めた。

 

その後の二年は、料理の改善に当てた。具体的には、日本食を作ったりした。そしたら、マクゴナガル教授が厨房に突撃して来て、カレーを作ったのは誰かを問い詰めた。俺が作ったと正直に答えたら『また作ってください』と言われた。

 

三年は俺の魔法がどこまで万能になるかを実験してみた。

ホグワーツ内ではマグルの機械は使えないと書かれていたが、実際には少し違う。電気を使うような機械が使えなくなる。でなければ、機械式時計とかも使えなくなってしまうだろう。

話は変わるが、魔法効果を物品に付与することは普通にできる。クィディッチの箒は座りやすくなる魔法がかけられているし、クァッフルは落ちるスピードがゆっくりになる魔法がかかっている。ならば、条件付での魔法付与もできるのではないか?

そう考えて実験した結果、電熱ストーブもどきが完成した。スイッチと熱の発生場所を魔力で繋ぎ、スイッチを押したら加熱魔法が発動する。マインクラフトでいうレッドストーン回路のようなものだ。上手く組み合わせれば、電磁加速砲(レールガン)の再現も可能かもしれない。

調子に乗ってIH調理器もどきや掃除機もどきを作っていたら、今度は屋敷しもべ妖精達に胴上げされた。なぜだ。

 

そして、1971年八月、俺はなぜか、ホグワーツの屋敷しもべ妖精達のリーダーになっていた。




ホグワーツで車(魔法的改造がされている)は動く。だが、あくまでも魔法的改造がされている車だ。
では、ホグワーツ城にある巨大な時計はどうだろう。映画版では、あれは振り子時計だったはずだ。元々はマグルの技術のはずだから、機械式時計は動かないはず。ならば、なぜ動いている?ハリーの腕時計は動かなくなった。腕時計には電気が使われている。
なら、ホグワーツの敷地内では、電気製品が使えない、ということではないか?
恐らくは、ホグワーツの隠蔽をしている結界に、電気製品無効化の効果も含まれるのだろう。電気を使わない発信機はなかったはずだ。ならば、電気製品無効化だけでホグワーツの位置が知られることはなくなる。

よし、電気を使わずに電気製品再現しよう。魔法を使えば可能だろうし。

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