一時間の睡眠の後、俺は行動を始めた。尖った木片と布を手に取り、自室を出る。
俺の目の前には銀の甲冑。さあ、仕事の時間だ。
「お疲れ様でございます、ギヴァー班長。我々が起きるよりも早く起床し、甲冑磨きをしているとは……わたくしたちも見習わせていただきます!」
「いえ、これは私が好きでしていることなのですから、自分一人にやらせてください。あなた方はすぐに厨房へ向かって朝食の準備を、そちらの皆さんは洗濯を、残りの皆さんは各教室と大広間、玄関ホールの掃除を担当してください。くれぐれも、手を抜くことのないように」
『わかりました!』
同僚に指示を出し、目の前の甲冑を磨く作業を再開する。これまでは装飾の溝の汚れを上手く落とせなかったから、気分が清々しい。
ふと、俺はこれまでのことを思い出していた。なぜ俺がここにいるのか、そして、これから俺が何をしたいのかを。
◇◇◇◇
俺は平凡な日本人の男だった。強いて特徴を言うなら、他の人よりも活字が好きだったことだろうか。
俺の最後はあっけないものだった。どこぞの珍しい合作ラノベ風に言うなら、『ある日唐突に、俺は死んだ』。
トラックに轢かれるわけでもなく、犯罪に巻き込まれたわけでもなく、不治の病に罹ったというわけでもない。気づいたら死んでいた。
ともかく、俺は死んだ。
では、なぜ俺がこうして意識を保っているのか。
それは、俺がいわゆる転生をしたからだ。
神様に会ったわけでもなく、いつの間にか転生していた。多分、輪廻転生する魂がたまたま記憶と自我を保ったままだったんだろう。
俺は新たな人生を謳歌することを決めた──その直後、自らに嘆いた。
ああ、運命よ。この世界──ハリー・ポッターの世界に転生させてくれたのは嬉しい。だけど……だけど!
何も『屋敷しもべ妖精』じゃなくてもいいじゃないか!
◇◇◇◇
こうして、俺の第二の人(?)生が始まった。
人間として暮らせないのは寂しいが、案外充実している。
妖精の呪文は人間の扱う呪文よりも使いやすいのだ。おそらく、魔法体系が違うのだろう。あちらは知っている呪文しか使えない。だが、屋敷しもべ妖精は本能的に魔法を使える。というか、効果の明確なイメージができれば何でもできる。さすがに死者蘇生は不可能だが、致命傷程度なら治療できるし、変身術だって扱える。
ただ、自由自在に魔法を使えるのは俺だけのようだ。しもべ妖精の固定観念がないからみたいだ。
以上を確かめた俺は、ある計画を立てることにした。
原作死亡キャラの救済──特に、ポッター夫妻とシリウス・ブラック、フレッド・ウィーズリー、セブルス・スネイプ、リーマス・ルーピン、ニンファドーラ・トンクス──とりあえず、ハリー・ポッターに関わる人物達を。
最終目標は──みんなが笑って、明日を迎えられる世界だ。今はただの屋敷しもべ妖精だが、やれる事をやり尽くして、この世界を改変してみせよう。
まずは、ダンブルドアの所に行って就職かな。今が原作の何年前かも知りたい。できる限り昔の方がいいな。その方が、ジェームズ・ポッターとリリー・ポッターを救える可能性が高まるから。
主人公
ギヴァー
種族:屋敷しもべ妖精
性別:男
備考:転生者、ホグワーツ魔法魔術学校所属屋敷しもべ妖精長
ハリポタ世界に転生した日本人男子。漫画、本、ラノベ、ネット小説が好き。活字中毒。
原作死亡キャラを助けようと思い、容易に近づけるホグワーツへ就職した結果、いつの間にかホグワーツの屋敷しもべ妖精達のトップに立っていた。
屋敷しもべ妖精の固定観念に縛られずに、独創的な魔法を使う。だが、結局はワーカーホリック。