努力家と天才の茨道〜歌姫を添えて   作:椿姫

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紗夜「そう言えば作者さん。本編はあと2回で完結と言ってましたけど番外編とかはどうなるんです?上げる予定は?」

…………考え中です。あ、それと今回は次回への伏線を兼ねてるのでかなり短めとなっています。最終回は今以上に頑張っていきますのでよろしくです。

紗夜「見てくれてるみなさん、次回で完結ですけどよろしくお願いします。episode24となります」



episode24 「2人の決意 in Whiteday」

紗夜side

 

 

いつもと変わらぬ日々。私は学校に行く準備を整える。忘れ物は…無いわね。

 

「おねーーちゃーーん!!」

 

ドアをノックせずに日菜が入ってきた。

 

「ちょっと日菜!ノックぐらいしなさいってあれほど…はぁ、何かしら?」

 

部屋に来たのだか何かしらあるのだろうと思いながら日菜の方を見ると手に包を持っていた。

 

「これ!おねーちゃんにバレンタインのお返しだよー!!」

 

そう言って日菜は私の机にその包を置いてさっさといなくなった。お返しってことは…今日は3月14だから、ホワイトデーね…

 

「私も…和都からホワイトデーのお返しを…」

 

一瞬だが想像してしまった。そして顔が赤くなる。

 

(わ、私ったら朝からなんで和都の事をっ/////お、落ち着きなさい氷川紗夜……よし、落ち着いた!)

 

気分を落ち着かせてカバンを持って私は学校へ向かった。

 

(帰ってきたら日菜にちゃんとホワイトデーのお返しをしないといけないわね…せっかく用意したのが無駄になっちゃうわ…)

 

 

和都side

 

 

「これで…最後っと」

 

疲れた…バレンタインにチョコをもらった女子達へのホワイトデーのお返しだけでまさかこんな重労働するとは思ってなかったぜ…朝から放課後まで頑張って贈り主の名前を書いたり贈り物にこだわったりして授業休みも昼休みも殆どなかったぞ!しかもバ薫のやつがホワイトデーには複数人で儚いミュージカルだの言い出すし忙しいったらありゃしねぇ!

 

「づがれだ…」

 

腰を下ろして自分の荷物を背負う。さっさと友希那達と合流するかぁ…そう思い俺は教室を出る。

 

「あ、あのっ!」

 

突然、後ろから声をかけられる。振り向くとそこには俺からホワイトデーのお返しを貰った女子の一人がいてその後には別の女子が何人かいた。

 

「んぁ?俺になんか用か?」

「お、お時間よろぴぃでひょうがぁっ!ぐぎゃっ!?」

 

緊張してるのかガチガチになっていてそのせいか舌を思いっきり噛んだ。周りの女子が心配して駆け寄る。

 

「お、おい…本当に大丈夫なのか?」

 

流石に俺も心配になって舌を噛んだ女子に話しかけると顔が茹でダコみたく赤くなっていく。

 

「ふぇっ!?だ、大丈夫でがすよっ!?」

「いや、でがすって…どこの方便だよそりゃ」

 

方便混じりの女子は立ち上がって埃を払う。

 

「あ、大丈夫そうだな…で、俺になんか用があるんじゃなかったのか?」

 

当初の目的を聞くとその女子は「はっ!そうでした!」と言って咳払いする。

 

「で、では改めまして…は、華宮和都くんっ!」

 

真剣な目で俺を見てくる。後ろの女子達は頑張れ!だの、ファイトだよっ!と応援している。なんかこのあとの展開わかっちまった。

 

「あ、あなたのことが好きですっ!!も、もしよろしかったらつ、つ、付き合ってくださいっ!!」

 

そう言って俺の返答を待つ。告白してきた女子は確かに可愛い。普通の人間や俺じゃなかったらOKと出してしまうだろう。でも俺には心に決めた好きな人が…紗夜がいる。だからこの告白は断るしかなかった。

 

「……気持ちはすっげぇ嬉しい」

 

俺のその言葉に女子はキャーキャーと言うが俺は「けど」と、付け足す。

 

「でも……ごめん。俺、本命の相手がいるんだ…こんなことしか言えないけど…本当に、ゴメンな」

 

申し訳なさそうにそう答える。告白してきた女子は、そうですか…とそう一言だけ言って去っていった。俺はそれを見送り見えなくなったところで再び誰もいない廊下を歩き出した。

 

(申し訳ねぇな……せっかく勇気振り絞って告白してくれたのにな。もし俺も紗夜にあんな風に言われたら…俺は…一体どうすれb)

 

そんなことを考えてると携帯が鳴る。

 

「おわっ!?な、なんだぁ?はいもしもs」

『和都、もうみんなスタジオに集まってるわよ』

 

へ?まじで?そう思い俺は時計を確認するとガチだった。

 

「やべぇ!すぐ行くから練習先におっぱじめとけ!」

 

俺は電話を切って急いでSPACEに向かう。ぜぇぜぇと息を切らしながらスタジオ入りすると全員練習している最中だった。

 

「ふはぁ…めっちゃ遅れだぁ…」

 

床に座り込み荷物等を置いて演奏を見守る。演奏が終わると友希那になんで遅れたか追求されので俺は素直に、

 

「ホワイトデーのお返しを配りまくってたらこんな時間になった」

 

と説明した。告白の件は流石に言えるわけないだろ。言ったら絶対空気悪くするだろうしな。俺もその後練習に混ざり時間いっぱいまで演奏を続けた。

 

「それじゃ、今日はここまでよ」

 

友希那の一言で疲れきったあこと燐子さんはその場に力なくへなへなと足をつく。

 

「ふぅ…」

「りんり〜ん…暑いねぇ…」

「うん…今日はちょっと…激しかったからね…」

 

直に新曲を発表するらしいからかなり今回はHARDだったな…。友希那もリサもクタクタになってるし。ん、渡すタイミングは今がいいかもな。そう思い俺は荷物を持って立ち上がる。

 

「みんな、今時間いいか?」

「どうしたの和都?」

「今ぐらいしかタイミングないからよ、ホワイトデーのお返しをと思ってな…ダメか?」

 

そう言いながら友希那達に配っていく。

 

「うわ〜、これめっちゃ高いやつじゃん!?」

「いやリサ、それ市販品じゃなくて俺が作ったやつ」

 

リサは驚いて開いた口が塞がらない状況になっていた。

 

「えっ!?これワトが!?もしかして全部手作り!?」

「?何当たり前のこと聞いてんだ?」

「て、手作り……高かったんじゃないんですか…?材料とか色々…」

 

燐子さんが俺に聞いてくるので、俺は平然と答える。

 

「ん?そんなでもないですよ?材料費とかリボンやヒモ、小物からあれこれ総額…配った文兼ねて300万円くらいしかしなかったので…」

「イヤイヤ!!さ、さん、300万円って高すぎるからねワト!?」

 

リサが反論してくる。え?そんなに高いのか?

 

「なぁ友希那、300万円って安いほうだよな?」

「な、なんで私に振るのよ…」

「いやだってほら…」

 

指を向けた先にはあまりにも高価すぎるのかどうかは知らんが、膠着状態になったあこと燐子さんがいた。

 

「リンリン……サ、サンビャクマンエンダッテサー」

「アコチャン、ワタシタチ、キンセンカンカクオカシクナッチャッタミタイダネ…」

「ハハ…」

「……ハハ」

『アーッハッハッハッハ』

「あこ、燐子!目を覚まして!?和都が規格外のお金持ちなだけよ!?」

 

世にも珍しい友希那のツッコミを見たところであとはこれを紗夜に渡すだけだが…

 

「あれ?紗夜どこ行った?」

「そう言えば紗夜、外の自販機に飲み物買いに行ったよ☆」

「サンキュー、リサ」

 

ホワイトデーのお返しを持って外の自販機まで行くとテーブルに座っている紗夜を見かけたので紗夜の元に走っていく。

 

「おーい、紗夜ー!」

 

声に反応して紗夜が俺の方を見る。

 

「わ、和都!ど、どうしたんです?」

「そんな驚かなくてもいいから…これ、渡してなかったから」

 

俺は紗夜にそう言ってホワイトデーのお返しを渡した。

 

「こ、これって…」

「もち、ホワイトデーだからな。バレンタインのお返しをしないといけないだろ?紗夜から貰ったの美味かったからさ、それに負けないように作ったんだぞ〜?」

「て、手作りっ!?」

「いやだから驚きすぎだってーの…」

「あ、ありがとうごだゃいまひゅっ!?ぐぇっ!?」

 

嬉しかったのか立ち上がった紗夜はその衝撃か何かで思いっきり舌を噛んだ。

 

「ひ、ひたかんでゃぁ……(し、舌噛んだぁ……)」

「お、おい!大丈夫か!?」

「だ、大丈夫でひゅ。問題ないでひゅ」

「全く問題ありにしか見えねぇ!!」

 

そんな茶番?はさておき、スタジオに戻っ手荷物を片付けた俺達はすぐに家に帰っていった。

 

 

紗夜side

 

 

「うぅ…舌を噛んでしまうとは…」

 

私は部屋で唸り続けそうになる。スノウが心配してくれていたから私は大丈夫ですと一言そう言って頭をゆっくりと撫でる。そして机に置いた和都から貰ったホワイトデーのお返しをじっと見る。

 

(何が入ってるんでしょうか…和都ってお金持ちだから宝石の入った指輪とかネックレスが入ってたらどうしましょう…それだとお返しのレベルじゃなくなりますがね)

 

恐る恐る和都のお返しを開けてみるとそこには…宝石でもなく指輪でもなければネックレスでもない、マカロンと生キャラメルが入ってた。2つとも崩れたり形が変わらないようにしっかりと固定している。

 

「……すごくキレイ…」

 

思わずうっとりとしてしまう。私は箱から取り出してマカロンを1つ取り出して口の中に含む。サクサクの生地としっとり感が口の中いっぱいに広がり幸せな気分になって思わずその場で飛び跳ねてしまいそうになった。顔がみるみる紅潮してくのが鏡なしでもわかってしまう。

 

「……お、美味しすぎる…じ、じゃあこっちの生キャラメルは…」

 

今度はキャラメルを1口。口に入れた瞬間トロットロになりあっという間になくなってしまう。

 

「…………和都、流石です」

 

私は貰ったキャラメルとマカロンを見てふと思った。ホワイトデーのお返しって確か何かしからの意味が込められていたはず…私はスマホを取り出し『ホワイトデー お返し 意味』で検索する。そしてキャラメルとマカロンの記事を読むと…

 

「……ふぁ/////////」

 

そこに書かれていたのは『あなたは特別な人』、『一緒にいると安心する』等と記載されていた。あまりにも衝撃が強くて私はベッドにダイブして転がってしまう。

 

「ふぇっ!わ、和都が私の事を特別!?た、た、た、一緒にいると安心んんんん!?あっう……落ち着け…落ち着いてください氷川紗夜……ふぁぁ/////」

 

落ち着くどころか余計悪化しました。でもこれではっきりしました。

 

「私は…本当に和都の事をこんなにも好きになってしまったんですね…」

 

そう言いながらカレンダーを見る。3月20日には誕生日と記載されてる他、太文字で『一世一代の大勝負!!』と書かれている。

 

(この日…私は和都に自分の想いを、『好き』だって事を伝える日っ!絶対に成功させて見せますっ!!)

 

私は静かに心の中で決意した。

 

 

和都side

 

 

「友希那達や紗夜へのお返し…喜んでくれるといいけどなぁ…」

 

俺は自室のカレンダーを見ながらつぶやく。3月20日には紗夜と日菜さんの誕生日と書かれている他、「大勝負!!」とでかく書いてある。

 

「……ここまで来たら…もう、あたって砕けろだ」

 

どんな結果が待ってようとも…俺は紗夜に告白するって決めたんだ。リサは友希那にはちょっと申し訳ない気がするが自分で決めたことだ。

 

「……ぜってぇ好きだって伝えてやる」

 

決戦の日まであと6日…最高のコンディションと舞台を整えて俺は勝負してやる!俺は意気揚々にそのままゆっくりと目を閉じて眠りについた。





最後まで読んでいただきありがとうございます。
ついに次回、『努力家と天才の茨道〜歌姫を添えて』が完結いたします。
投稿日は3月20日、氷川姉妹誕生日の日と決めております!

約1週間後にまた、お会いしましょう。

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