梅雨も過ぎ、夏の暑さが身を焼く頃になってきた。
雨のジメッとした空気も嫌いだが、体の水分を奪い尽くすような蒸し暑さも俺は嫌いだ。
何より、家には冷房なんてものは存在しない。日陰とアイスと水と、路上で配っている団扇が俺の夏を支えているのだ。
と、まぁ夏の暑さ対策も重要だが。
俺達にはそれよりも、まず向かい合わなければならない問題が差し迫っていた。
「やなぎ様、かがみ様。どうか私めに勉強を教えて頂きたい!」
気怠そうに欠伸を掻く俺の横で、あきはやなぎとかがみに土下座をして頼み込んでいた。
そう、今は期末試験の勉強期間中なのだ。
ミスターレッドラインこと、あきはギリギリまで勉強せず、毎度のようにやなぎ達に勉強を教えてもらおうとしていた。
「いや~、私からもお願いしますよ~」
そしてもう1人、こなたもまた頭を下げる。
コイツ等との付き合いも1年以上経つからか、この光景も見慣れたもんだ。
「「だが断る」」
しかし、学年トップクラスの秀才達はバカ共にNoを突きつけた。
厳しいねー。ま、当然だろうけど。
「そ、そこを何とか~!」
断られ、涙目になりながらも頼み続けるこなた。
あきなんて無言で頭を床に擦り付けている。プライドないのか、お前等。
「はやと君は、随分余裕そうだね~」
いつものやり取りを退屈そうに眺めていると、つかさが声を掛けてきた。
つかさも勉強は苦手なタイプな為、姉であるかがみによく勉強を見てもらっていた。
こなた達と違って、勉強する意思自体はあるしな。
「……ま、そうだな」
かくいう俺は、今回の期末テストに不安要素を感じていなかった。
その根拠は、屋上にあまり多く行かなかったことだ。
本人の前ではまだ言えないが、俺はつかさが好きだ。
意中の相手が同じクラスにいると、当然気になる訳で。屋上で授業をサボるよりは、つかさの姿を眺めていたかったのだ。
おかげで、例年よりも授業中の勉強時間が増え、内容の理解に繋がった。
これでボーダーラインぐらいは行けるだろう。
「俺は上を目指すつもりもないしな」
大学進学を考えていない俺は、必死に上を目指す必要もない。
無難なところで楽した方がいいに決まっている。
「いいな~。私なんてお姉ちゃんに教えてもらってもさっぱりだよ」
それはそれでどうかと。
ってか、お前は俺よりも授業を真面目に受けてたはずなんだが?
「まぁまぁ、今度も皆で勉強会でもしようや」
つかさと話していると、交渉中だったあきは俺達まで巻き込もうとしていた。
俺は不便ないから要点だけまとめて、家でゆっくりしたいんだけど。
「だったらウチでやろうよ。ゆーちゃんもいるし」
あきに便乗する形でこなたが提案する。
ゆーちゃん……以前あきが言ってた、こなたの従妹か。
「……そうね。ゆたかちゃんになら教えてもいいわ」
「お前等の見張り役も増えるしな」
ゆたかを引き合いに出され、2人も提案に乗る。最も、こなたもあきもゆたかの前で下手な真似が出来ないからだろうけど。
「んじゃ、ゆーちゃんに連絡入れとくね~」
冷や汗を掻きつつもスルーし、こなたはメールを打ち始めた。
そういや、ゆたかと同学年の知り合いがいるが、奴等はどうしてるだろうか。
☆★☆
高校生活で最初の期末テストが近付き、教室内もピリっとしたムードが漂い始めてきた。
最も、ガヤガヤと煩いことに変わりはないが。
「テストかぁ……俺の嫌いなワードだぜ」
周囲の騒がしさに気を滅入らせながら弁当を食う俺に、ふとかえでが喋り掛ける。
苦手だろうな、お前バカっぽいから。
何かとよくつるむ面子と昼を供にすることも、大分馴染んできた。
かえでが喋り、小早川と田村が相槌を打ち、俺とさとる、岩崎は黙々と食べる。端から見れば奇妙な光景だろう。
「知恵試しだろう? テストの何に苦手意識を抱く必要が」
「さとるはいーよなぁ! 記憶力いーから!」
「今だけ石動君が羨ましいッス……」
疑問符を浮かべるさとるに、かえでと田村が羨望の視線を向ける。
知識欲の塊であるさとるは、記憶力も相当いい。なので、当然吸収した勉強内容も難なく引き出すことが出来る。
この時期なら、俺でも欲しくなるぐらいの能力だ。
「……メール?」
「うん、お姉ちゃんから」
そのすぐ横では、小早川が箸を置き、携帯を開いていた。そういや、3年生に従姉がいるって言ってたな。
「……あのー」
メール内容を確認すると、小早川は全体に話し掛ける。
「今度の日曜に、お姉ちゃんがお友達と勉強会を開くみたいなんだけど、皆もどう?」
なるほど、従姉達の勉強会に誘われたらしいな。
けど、そんなに大勢で参加してもいいものか。
「おお! 地獄に仏とはこのこと! 是非お願いします!」
「……うん」
かえでと岩崎は参加するようだ。岩崎はかえでと違って勉強出来る方だけどな。
「俺はいい。興味が湧かない」
「うぅ、今度の日曜は漫研が……」
一方で、さとると田村は不参加のようだな。
田村は確か漫画研究会、略して漫研に所属している。だからか、最近は締め切りがどうのこうのとよくボヤいている。ご愁傷様、だ。
「湖畔君は?」
純粋な笑顔で、小早川は俺に尋ねてくる。
俺は勉強に不自由していなかった。というのも、小早川にノートを写させる手前、必要以上に内容を細かく纏めていたからだ。何もしなくとも頭の中に入る。
「……大勢で押し掛けても仕方ないだろう」
思わぬ収穫もあり、俺は小早川の申し出を断った。
すると、小早川は残念そうに笑った。
「そっか……湖畔君のノート、綺麗に纏まってたから教えるのも上手だと思ったんだけど」
全く、どうも小早川は俺を過大評価することがよくある。
人が良すぎるのか、それともただのバカか。
「そのお姉ちゃんに教えて貰え」
そう言って、俺は話を終わらせた。
その日の帰り。
アパートの前で、偶然にもはやと先輩と遭遇した。
俺とはやと先輩は、当然生活ペースが違うので、登下校中に出会うことは滅多にないのだ。
「ん? よう、奇遇だな」
「どーも」
向こうも俺に気付き、手を挙げる。
特に話す案件もないし、俺は軽く挨拶をしてから部屋の鍵を開けた。
「そーだ、つばめ。お前、今度の日曜暇か?」
すると、はやと先輩の方は何か用があるらしく、尋ねてくる。
今度の日曜……小早川の顔が浮かぶが、すぐに消した。
「ないです」
「よし、んじゃあ勉強会だ。付き合え」
強制的に勉強会に組み込まれてしまった。
そういえば3年もテスト期間か。
けど、1年とは勉強範囲が違う。後輩の俺を誘うメリットはないだろう。
「何でですか」
「ああ、1年も参加してるから安心しろ。知り合いの知り合いだそうだ」
「聞いてません」
はやと先輩は俺の質問を無視し、頭の中で気にしたことに対して答えた。
時々考えを読むから、この先輩は困る。
だが、1年も参加してるなら、無駄にはならなそうだ。
第一、はやと先輩の性格では、そこまで多く友人はいないはずだ。
「……分かりました」
「よろしい」
俺が頷くと、先輩は満足したように部屋へ戻っていった。
しかし、あの面倒臭がりな先輩でも勉強はするんだな。
「……小早川達よりは気が楽そうだ」
俺の知らない人間ばかりが集まるであろう勉強会。
俺は誰とも関わらず、静かに勉強をするとしよう。いざとなれば、はやと先輩を扱き使えるかもしれないしな。
この時、俺は気付いていなかった。自分が既に過ちを犯していることに。
日曜日。
俺ははやと先輩の案内で、ある一軒家に向かっていた。
ここは先輩の友人の家で、本日の勉強会の会場だそうだ。流石に「夢見荘」でやるには狭いしな。
「そういえば、何人参加するんです?」
「具体的には知らんが、10人以上だ」
かなり大勢が参加するらしい。これは俺が一瞬たりとも絡まれない可能性が出て来た。
いいぞ。俺に話題が降り注がれなければ、周囲のざわめきぐらいなら我慢しよう。
「うっす、はやとと他1名だ」
〔ほいほい、今開けるよ〕
インターホンを鳴らすと、スピーカーから聞こえたのは女子の軽い声。
騒がしそうなテンションの人間が中にいると感じ、俺は少し顔をしかめる。
ドアが開き、中から迎えたのは高校生とは思えない程小柄な少女だった。
「いらっしゃいま……あれ?」
が、相手を見て俺は絶句した。想像と全く違う、よく見知った人間が出て来たからだ。
その少女、小早川ゆたかも俺に気付いて目を点にしていた。
「どうも……って、お前等知り合い?」
唯一、状況が分かっていないはやと先輩は固まる俺達を交互に見る。
まさか、はやと先輩の言っていた1年生が小早川達だったなんて……!
「あっ、えと、どうぞ!」
疑問符を浮かべたままの小早川は、とりあえず俺達を招き入れた。
こんなことなら、最初に断らなければよかった……!
☆★☆
少しばかり空気が凍ったように感じたが、ゆたかの招きを受けて俺達は泉家に上がる。
こなたの家に入るのは初めてだが、2人暮らし(今はゆたかがいて3人だが)をするにしては大きい。
……羨ましくなんてないぞ。ほんの少しだけなら。
「でも、湖畔君が来てくれてよかったよー」
「……そうかよ」
ほんわかと話すゆたかに対し、つばめはバツの悪そうな表情をしていた。
コイツ等が同じクラスだったとは予想外だったな。
何でも、先にゆたかに誘われて断っていたんだそうな。
けど、結果的に一緒に勉強することになってしまった。まったく、奇妙な縁だな。
「うっす」
「よく来たね~」
ゆたかの案内で広い茶の間に通される。
俺は既に揃っていた連中に軽く挨拶した。
因みにみちるとみゆきは用事があるらしく、今回は不参加だ。
「あれ!? つばめじゃん! 何でいんの?」
「放っとけ」
「……はやと先輩も」
一方、1年生2名は来ないはずのつばめがいることに驚いていた。
霧谷かえでと岩崎みなみ。以前、俺がちょっかいを出した後輩達だ。
つばめとゆたかが知り合いであることから、参加メンバーはコイツ等だろうと予想していた。
「ゆたかちゃん、1年はこれで全員?」
「あっ、はい」
あきがゆたかに尋ねる。コイツはゆたかと顔見知りだっけか。
全員揃ったようで、俺達はとりあえず空いた場所に座った。
「はやと君、頑張ろうね」
俺の隣では、つかさがいつものぽわわんとした笑顔を向けていた。
どうでもいいが、俺以上にお前が頑張んなきゃいけないんじゃねぇのか?
「んじゃ、始めましょ」
かがみ大先生の号令で、勉強会が開始された。
それから暫くして。
予想以上に、全員黙々と勉強していた。
あのあきとこなたですら、かがみ達にちょっかい出すことなく静かに頭を捻っていたのだ。
恐らく、後輩勢がいるから先輩として格好悪い面を見せられないからだろう。
特に、コイツ等にとって可愛い妹分のゆたかがいる以上、下手にふざけられない。
ギャラリーがちょっと違うだけでこうも効果があるなんてな。今頃、かがみもやなぎも内心でほくそ笑んでいるだろう。
「湖畔君。ここ、教えて欲しいんだけど……」
「ったく、何処だ」
更に面白いことに、そのゆたかは隣にいるつばめに勉強を教わっていた。
かえでに聞いた話だと、ゆたかは体が弱く、保健室で休むことがあるという。
つばめはそんなゆたかによくノートを見せているんだそうだ。だから分からないところもつばめに聞いている、と。
「ありがとう」
「フン」
教わって礼を言うゆたかに、つばめは素っ気ない態度を取る。
しかし、さっきから一度も断っていないところを見ると、素直じゃないのがバレバレだ。
「つばめ君。ここ、教えて欲しいんだけどー」
「黙れ」
かえでがゆたかの真似をすると、つばめは鬱陶しそうに一睨みする。
確かに今のはウザかった。
「何だよー、差別反対!」
「黙れ、殴るぞ」
「チクショー……岩崎、教えてくれ!」
ブー垂れるかえでだが、つばめに拳を向けられ大人しくなる。
代わりに、側にいたみなみに教わることに。
本当に分かんねぇならおちょくんなよ。
さて、つばめがゆたかに教えていることに気に入らなそうなオーラを出している人物達がいる。
「あの後輩、ゆーちゃんとどんな関係だろ……?」
「純粋無垢なゆたかちゃんを誑かすとは、万死に値する……」
ゆたかを溺愛している、こなたとあきだ。つーか、あきは多分人のこと言えないだろう。
「はやと君、ここ分かる?」
周囲の連中の様子を傍観していると、隣からつかさが小さな声で話し掛けてくる。
見せてきたのは、数学の教科書だ。って、勉強の質問ならかがみにすればいいだろ?
「何で俺に聞く?」
「だって、はやと君順調そうだし……ゴメン、迷惑だった?」
つかさは俺の手元を見ながらそう返した。確かに、俺は今回特に手の詰まる箇所に当たらなかった。
そのことに気付き、俺を頼ってきたのだろう。
まったく……こういうところがあるから、放って置けない。
「はぁ……いいか、ここは」
内心で惚れた弱みの所為にしながら、俺はつかさに勉強を教えた。
面倒だが、いざやってみると好きな女子に教えるのは役得だと思える。
頼られているという充実感もあり、俺のテンションはみるみる上がっていった。
「って訳だ」
「分かった。ありがとう」
教え終わると、つかさは嬉しそうに礼を言った。……いいな、これ。
時につばめの周辺を観察し、時につかさに教えながら、勉強会は着々と進んでいた。
そして、外は日が沈みかける頃合いになる。
「もうこんな時間か」
やなぎの声に、全員が時計を確認する。
時刻は6時ちょい過ぎ。それにしては外が明るいのも、夏の訪れの証拠だ。
「電車で来てる奴もいるし、今日は解散しようぜ」
「そうね」
頭の使い過ぎでバテるあきの言葉に、かがみも頷く。ま、長く居すぎても泉家の迷惑になるだけだし。
「んじゃあ、俺はこなたの家に泊まりで」
「じゃーねあき君! また明日!」
続くあきのアホな発言を、こなたが満面の笑みで遮る。
追い出す気満々らしく、指をバキバキ鳴らしながらだが。
「先輩方はもしや……」
「付き合ってるよ」
「まぁね」
2人の掛け合いに勘を働かせるかえでだが、こなた達はあっさりと暴露した。
コイツ等の息の合い様は度々感心させられる。
「おぉ! その辺、是非とも聞かせてください!」
「いやー、それならあっちのもやしとツインテに聞くべきだよ、後輩君」
「かがみん達ならきっと面白い反応が返ってくること請け合いだね」
「なるほど、それはそれは」
恋花の矛先をかがみ達に変えようとするヲタカップルに、かえでも同調するかのように笑みを浮かべる。
この先輩後輩の組み合わせ、もしかしたら相性いいかもな。
「へぇ、みなみちゃんってゆきちゃん達と幼馴染なんだ~」
泉家からの帰り道。
この集まりで分かった新しい事実。それは、みなみがみちるやみゆきと幼馴染だということだ。
そういや、以前みちるが持っていた写真にみなみらしき人物が写ってたっけ。
「はい……」
「意外なところで人の繋がりがあるもんだな」
かえでの言う通り、世界は意外と狭いモンである。
こなたの従妹であるゆたかの友達が、こなたの親友であるみゆきの幼馴染で。
同じようにゆたかの知り合いのつばめが、こなたの友人である俺と同じアパートに住んでいる。
そう考えると、人の繋がりは面白い。
「今度はゆきちゃんとみちる君も参加出来るといいね~」
……このほんわかと笑っている女子が、俺達の関係の中心点だと考えると、尚面白いけどな。
「…………」
そして、俺達の談笑を無言で見つめるつばめ。
コイツは未だに人との関係を積極的に作ろうとしない。
ゆたかみたいに、慕ってくれる奴がいるだけで違うってのにな。
「さーて、湖畔君はゆたかちゃんと何処までの関係なのか。洗い浚い話してもらおうか?」
孤立していたつばめに、あきが手をワキワキさせながら近寄った。
ムードメーカーであるあきは、誰かが孤立することを許そうとしない。誰彼構わず絡んでいける性格は、本当見習う点があるよな。
「べ、別に俺と小早川は」
「いいから吐け!」
尋問は本気でやるみたいだが。
結局、尋問にかえでも加わって、やなぎが制裁を下すまでつばめは追われる羽目になった。
それから、試験が終わり結果が返ってきた。
「ヒャッハー! 赤点なかったぜ!」
「ヨカタネー」
低い目標の達成に浮かれるあきに、平均より上の点を取ったこなたは冷たい視線を向けていた。
勉強会の効果は各々出たらしく、つかさも普段よりよかったと終始笑顔だ。
「いいなー、僕も皆と勉強会したかったな」
家の用事で不参加だったみちるは、未だに俺達を羨ましそうに見ていた。
ぶっちゃけ、トップクラスの点数を取っておいてそう言われると反応に困るけど。
「まぁまぁ、夏休み中は宿題の掃除が残ってるし」
そう言って、あきはみちるを宥める。
お前は宿題写させてもらうだけだろ、と言おうとしたが、俺も同類なのでやめた。
「さて、1年連中はどうなったかね」
「きっと大丈夫だよ~」
俺が呟くと、隣でつかさが答える。
まぁ、かえで除く全員が思ったよりも出来てたし、特に不安要素もないんだけどな。
☆★☆
試験の結果が返され、教室内は一喜一憂の声で溢れ返る。
もう何があっても騒がしいのは変えられないということか。
「ふぅ、ボーダーギリギリだったぜ」
前の席から、かえでが返って来たテストを見せてくる。
確かに、平均点スレスレの点数だ。勉強会に参加してコレか。
「で、つばめはどうよ?」
「ん」
隠す必要もないので、俺はかえでに俺の答案を見せてやった。
俺の結果は、上から20位までには入っていた。正直、自分でもここまで出来たのは驚いたが。
「何ィッ!? ズルいぞつばめー! 俺達親友だろ、何でそんなに成績いいんだよ!」
「黙れ」
俺との格差に僻み、声を荒げるかえで。第一、俺は親友になった覚えはない。
「個人の実力だ」
話に割り込んできたさとるは、学年トップ3に入る程だった。コイツが言うと説得力がある。
「あ、湖畔君」
そこへ、更に小早川達も集まってくる。
毎度のことだが、人と関わりたくないと言っているのにどうして俺の周囲にはこう人間が集まってくるのか。
「湖畔君のおかげで、成績よかったよ!」
「……ありがとう」
小早川と岩崎は俺のおかげだと礼を言ってきた。
はぁ……どうせ「俺は何もしてない」と言えばノートや勉強会やらと言い返してくるのだろう。
「……次からは、自分で何とかしろ」
「うん!」
視線を逸らして返すと、小早川は満面の笑顔で頷いた。
どうして俺みたいな奴を慕うのか。やりづらいにも程がある。
気付くと、教室内の話題は試験から夏休みへとシフトしていた。
夏休みになれば、暫くは静かに過ごせる。
どうも、雲色の銀です。
第9話、ご覧頂きありがとうございました。
今回は先輩と後輩が集合しての勉強会でした!
……はい、第1部でも似たような話をしたと書き終えてから思い出しました。
こ、今回は3年生と1年生が会うのがメインだから……(震え声)。
次回は、花火大会!