カメンライダー   作:ホシボシ

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平ジェネファイナル最高や( ^ω^ )b



最終章『仮面ライダー』
第24話 今日も皆はエグゼイドを探してる


 

 

「さあ、実験を始めようか」

 

 

ビルドは両手を地面につけ、腰を上げた。

新ライダー。生まれたばかりの炎に皆の注目が集まる。期待のルーキー、神々の目も今一番の注目どころではないか。

世界のスポットライトを浴びて、ビルドは仮面の奥でニヤリと笑った。

とは言え、その笑みに秘められた想いは複雑のはずだ。

ここから一歩でも足を前に出せば、それは永遠の地獄に足を踏み入れるということ。

戦いの輪廻、無限の批評。けれどもやはり、エキサイティングな痛みが胸を刺激してくれる。

痛みも、興奮も、全てが胸の中で混じり、一つの液体になっていくようだ。

 

 

「分かってる」

 

 

その言葉の先は他のライダー達であり、エピローグであり、自分であり、どこぞの神様であり。

それは全てに向けて放たれた意識。

 

 

「俺達の答えは――」

 

「!」

 

「戦いの中にしかない」

 

 

クラウチングスタートの構え。

エピローグもまた拳を構える。刹那、地面に赤い波紋が広がったと思えば、ビルドが目の前に迫っていた。

ラビットジャンプ。兎の力を得たビルドは、その驚異的な跳躍力で移動を開始する。

だが力がありすぎたのか、高い。エピローグは僅かに身を屈め、ビルドはその上を虚しく通過していく。

 

 

(勢い任せのジャンプなど!)

 

 

だが――、視えた気がする。

真下を見たビルドの仮面の奥はまだ笑っているのだ。

 

 

「フッ!」

 

「!」

 

 

タンク(青)側の装甲が光る。

すると、まるで主砲から弾丸が放たれた様なけたたましい音が鳴った。

同時にビルドは青いエネルギーを纏いながら急降下を開始する。

 

なるほど、着地機能も万全と言うわけか。

ラビットのジャンプ力をタンクの力で制御し、かつ攻撃に変換する。相性抜群、『ベストマッチ』は伊達ではないようだ。

しかしエピローグは地面を転がりそれを回避。立ち上がるとすぐに伸ばす拳。ビルドとエピローグのパンチが互いの頬を掠める。

瞬間、ビルドの脳内に広がる数式。拳の位置、足の向き、腰の捻り、それを計算して次の一手を予想する。

 

 

「ほッ!」

 

「!」

 

 

跳躍。

エピローグの攻撃を回避し、掴み取るのは専用武器、"ドリルクラッシャー"。

文字通り回転するドリルがエピローグに向けて突き出された。

 

 

「………」

 

「あ、あれ?」

 

 

だがエピローグはドリルを掴み取ると、力を込めてドリルの回転を止める。

 

 

「お? お!? お!?!?」

 

「フン!」

 

「ぉおおおおおおおお!?」

 

 

ビルドは投げ飛ばされ、ライダー達のもとへ返された。

 

 

「俺達も行くぞ!」

 

 

走るディケイドに続くライダーたち。

そんな中でビルドはダブルに掴まれると、その場に起立させられた。

 

 

『残念だけどビルド、今のキミではエピローグには100%勝てない』

 

「は? なんで?」

 

『この世界で重要視されるのはスペックはもちろんだけど、何よりもクロスオブファイアだ』

 

「く、クロス――?」

 

 

頷くダブル。

普通なら現行ライダー様が来てくれたならば有利になるのは当然だ。

なんだか初の顔見せは体の調子がよくなる。ダブルとて今にして思えば、なぜ自分たちがシャドームーンを一人でボコボコにできたのかは分かってない。

本当に調子が良かった。それだけ。

 

要するに、まあ、『流れ』が来ていたのだろう。

モモタロスも口にしているノリとでも言えばいいか。

だが今回はそうじゃない。エピローグは観測者、メタな展開を熟知している。

ビルドは今、クロスオブファイアこそ滾っているかもしれないが、スペックが上がろうとも油断は禁物だ。

 

 

「そう、つまりココってこった」

 

 

ダブルはビルドの胸を叩く。

胸と言うよりも心臓の位置だ。その奥にあるハート、さらにその奥にある魂の炎。

ライダーは皆、例外なくそれを持っている。逆を言えばクロスオブファイアさえあれば誰でもライダーになれる。

それは今までを見れば明らかだ。だからこそ、ただのクロスオブファイア所持者か、それともその上になるのか。

それはまだ、ビルドとて分からない。

 

 

『ビルド、キミの炎は灯ってまだ間もない。炎はとても綺麗で、思わず見とれてしまう。けれども火力が足りないのさ』

 

 

有利にはなれるかもしれない。けれども倒せないんじゃ意味はない。

そんな事を言っていると、ダブルの傍にライダー達が転がってきた。

それを見てダブルはやれやれと首を振り、肩を竦める。

 

 

『まあ、燃え上がっているはずの僕たちもこの状況だけれど』

 

「……どうすればいい?」

 

 

その問いに答えたのはビルドではなく、転がって来たディケイドだった。

剣を地面に突き刺し立ち上がると、一息つく。冷静になれば、活路が見えてきたかもしれない。

 

 

「感謝するぜビルド。いいヒントになったし、お前のおかげでコッチに流れが来てるのは確かだ」

 

「?」

 

「お前はブックメイカーにとっても未知数の存在。そう、観測者にとって知らないものは、都合が悪い」

 

 

見ているから。知っているからこそ攻略本というのは作れる。

初見のゲームの攻略を作れる人間はいない。ましてや普通にクリアするのだって大変だ。ディケイドはそこに活路を見た。

 

 

「フィリップ、例のアレで行くぞ。向こうが怯んでる間に、もっと場をかき回す」

 

『なるほど、あれを試すんだね』

 

「ああ。ビルドのヤツもそれでなんとかなる」

 

 

炎が足りないなら、貸してあげればいい。

ダブルのソウルサイド、フィリップが側が光ると、その体から無数の光が射出される。それは"ページ"だ。光の紙は空中に巻き上がりディケイドの周りを飛びまわる。

その間にコンプリートフォームへ変身するディケイド。胸にはライダー達のカードはなく、代わりにそのページが次々に吸い込まれていった。

 

 

「聞こえるかライダー共!」

 

「!」

 

 

ディケイドを見るライダー達。

エピローグも視線を向ける。

 

 

(何をする気だ? チッ、面倒だな……!)

 

 

エピローグとしては当然リボルギャリーを破壊したい。

とは言え、レイドラグーンを向かわせても次々に破壊されていくのが見える。

流石にあの程度で落ちるものでもないか。ならばライダー達を突き抜けるしかない。

とは言えその先が難しい。それはディケイド側も同じだろう。果たしてこの概念飛び交う世界で"どうやって完全に相手を叩きのめすのか"だ。

そう思っていると、空中に飛び交う巨大な光のページ。

 

 

「適当に混ぜるけど! しっかりやれよ!!」

 

 

ディケイドが叫ぶと、ページが各ライダーに吸い込まれていった。

 

 

『クウガ!』『アギト!』『リュウキ!』

『ファイズ!』『ブレイド!』『ヒビキ!』

『カブト!』『デンオウ!』『キバ!』

『ダブル!』『オーズ!』『フォーゼ!』

『ウィザード!』『ガイム!』『ドライブ!』

『ゴースト!』『エグゼイド!』『ビルド!』

 

 

ページが消滅し、電子音が終わる。

しばらくの間、パラパラとカードが捲れる音が続いていた。

しかし何の事はない、エピローグの周りにはただライダーたちが立っているだけで、おかしな事はない。

おかしな事は――?

 

 

「!?」

 

 

いや、あった。一つだけ。

エピローグはそれに気づき、息を呑む。

ライダー達の立ち位置が、先程とは全く違っているではないか。つまりライダー達が立っていた場所が変わっている。

例を一つ言うなら、ゴーストが立っていた場所に、現在はクウガが立っていた。

 

 

「え? え?」

 

 

ライダー達はそれぞれ頬を触ったり、掌を見ている。

そして、ファイズが叫んでいた。

 

 

「えええええええええええええ!?」

 

 

そしてエピローグは、ましてや他のライダー達も理解した。

ファイズから聞こえてきた声は、巧ではなく映司だったのだ。

ディケイドの脳裏に、いつかの記憶が蘇る。

それは映司にコアメダルとセルメダルを埋め込む前の会話だった。

ある意味で死、そうだ、映司は死ぬ。それを前にして映司はジッとオーズドライバーを見ていた。

 

 

『後悔しているか? オーズになったことを』

 

 

そんな事を士が聞いた。すると映司は笑ったのだ。

もちろん楽しそうなものではなかったが、悲しんでもいないようだった。

 

 

『おれさ、明日のパンツさえあればいいって思ってたけど、ちょっと違うね』

 

『?』

 

『パンツだけじゃ捕まっちゃう。だから、パンツを隠すズボンと、それがずり落ちないようにするベルトが無くちゃ』

 

 

でもベルトなんて皆つけてる。

 

 

『べつに特別なことじゃないから。オーズになったのは』

 

『………』

 

 

あの時、映司がどんな心持ちでそれを言ったのかは分からない。

しかし何となく、ディケイドにはその台詞が引っかかっていた。

それはヒント。だからこそ、フィリップに一つのプランを口にしていた。

今、ビルドと言うイレギュラーが現れたことで実践してみる価値はあると踏んだ。

 

映司はオーズになった。なれた。

しかしそれは特別なことじゃないのかもしれない。

火野映司以外がオーズになる可能性は十分にあったはずだ。

ましてやファイズの世界なんてもっと分かりやすい。別に巧じゃなくてもファイズになれた。なれるのだ。

たぶん、『ソレ』が来たのはたまたまなのだ。だからありえるはずだ。もっと大きな、他の可能性が。

 

 

「"ライダーシャッフル!" 全てのライダーの変身条件を無視し、適当に振り分けた。さあお前ら! 気合入れて立ち向かえよ!!」

 

 

その言葉がスタートとなる。

一勢に走り出すライター達。一方で思わず後ろへ下がるエピローグ。

 

 

「グッ! 面倒なッ!」

 

 

しかし既にライダー達はすぐそこに。

到達したライダー達は次々に拳を突き出す。

それを打ち弾いていくエピローグだが、その脳内は穏やかなものではなかった。

 

 

(――ッ! 落ち着け!)

 

 

龍騎が前に見える。体術が交差するが、エピローグは防御に徹している。

と言うのも、エピローグ――、ブックメイカーは士同じく各ライダーをくまなく観測し、その攻撃のクセや特徴を把握、学習、そして対処を行っていた。

城戸真司のクセや弱点を学び、反映する。しかし今の龍騎はそのクセが全く無い。それはそうだ、今の龍騎は真司ではないのだから。

 

 

(落ち着け、この攻撃パターンは――)

 

「ハァアア!!」

 

 

龍騎が体を捻り、跳んだ。

クルクルと回りながら振るわれる足。

この動きはエクストリームマーシャルアーツ。だから――、そう、ウィザードだ。

 

 

「操真ッ、晴人!!」

 

 

オーバーヘッドキックで足と足をぶつけ合う。

弾かれ、地面を滑る龍騎。素早く立ち上がると、地面をターンしながら両手を広げる。

 

 

「ッしゃあ、ショータイムだ――、ってな」

 

 

デッキに手をかける龍騎。

カードを引き抜き、バイザーへ。

 

 

「……あれ?」

 

 

ストライクベントが欲しかったのにガードベントが出てきた。

そういえばと腰を見る龍騎。デッキからはどう見ても中のカードが確認できない。

 

 

「おいおい、なんだよ」

 

 

もう一枚引く。アドベントが出てきた。

いや、や、そうじゃない。欲しいのはストライクベントで――

 

 

「いっで!」

 

 

光弾が胸に直撃する。エピローグの攻撃だ。

すぐに他のライダーが助けに来てくれたからアチラさんは現在、格闘中。

その一方で攻撃を受けた龍騎は地面に倒れ、カードを撒き散らす。

 

 

「あ、それ頭の中で念じたらそのカードが一番上に来るから」

 

 

ふと、キバが呟く。中身は真司だ。

 

 

「マジか? マジで?」

 

 

倒れた龍騎はデッキに手をかけて一枚引き抜く。

すると本当にストライクベントのカードが出てきた。

 

 

「マジだ!」

 

「ねえ、それよりコレめっちゃジャラジャラする。めちゃジャラジャラするんだけど」

 

「おお」

 

「ジャラジャラする。すっごいジャラジャラする! なんかちょっとッ、気が散るなぁ。いやッ、これッ、いやこれすごッ、ジャラジャラって!」

 

「おお」

 

 

聞いてない。

立ち上がった龍騎は、とにかく慣れない手つきでカードをバイザーに装填した。

 

 

『ストライクベント』

 

「うぉ、あぶね」

 

 

空中からドラグクローが飛んできた。

思わず体を捻って回避する龍騎。だからドラグクローはそばにいたキバの頭部に直撃。

 

 

「ぎゃあああああああああああああ!!」

 

 

火花をあげて地面を転がるキバ。

 

 

「………」

 

「や、マジでわざとじゃない。これマジで。いや本当マジで」

 

 

ドラグクローが頭にかぶりついているキバは、無言で龍騎に詰め寄っていく。

一方で両手を広げて後退していく龍騎。あまり注意していなかったが、武器を掴み取る行為もしなければならないのか。忘れていた。忘れていた。本当だ。マジなのだ。

 

 

「おい! これどうやってフォームチェンジするんだ!?」

 

「ベルトでかいな! 仰向けに倒れたら腹が苦しい!」

 

「可動域狭くないか? お前よくこれで戦ってたな!」

 

 

そんな声があちらこちらから聞こえてくる。

 

 

「うわー、大丈夫かなー?」

 

 

ココにも一人、そんなライダーが。

アギトになった五代は、手を握って開いてを繰り返している。

なんか言い方はおかしいが、アギトの方が少々ぴっちりしている気がする。感覚はやや違うと言うか――、うぅむ。

 

 

「大丈夫ですよ。五代さん」

 

「え? でも」

 

 

鎧武がアギトの肩を叩く。

まぎらわしいが、鎧武が翔一で、アギトが五代である。

 

 

「同じじゃないですかクウガと」

 

「え?」

 

「アギトはクワガタでしたよ」

 

「………」

 

 

まあ。とは言え!

慣れないのはエピローグも同じだ。彼もまた心を持つ者、染み付いた感覚をいきなり崩されると混乱してしまう。

ゲームで例えよう。何度も倒してきたボスが、いきなり攻撃パターンを変えたら混乱する筈だ。

 

 

「グッ!」

 

 

話を整理しよう。

そも、まず、エピローグとはライダー一期の敵を集合させたキメラだ。ジョーカーの力によりエピローグは『不死』となっている。

それを消滅させる力があるのは、やはりブレイドと、ディケイドか。

ディケイドはどうやらシャッフルの装置となっているようで、今は不動である。

ならばブレイドが最も危険な存在であると思われる。だからこそエピローグはブレイドを探そうと思うが、そこで強烈な違和感。

 

 

(いや、それとも――)

 

 

ブレイドではなく、『剣崎一真』が危険な存在なのか?

どっちだ? キングフォームは剣崎だからこそ融合係数が――、いや、しかしキングフォームになる事が大切なのでは?

であれば、やはりブレイド。いや、いや、剣崎の魂があれば消滅の力を使える?

ちょっと待て。そもそもの話、ブレイドは、剣崎は――

 

 

(どれだ!?)

 

 

どれがどいつだ!? 周りには迫るライダー。

しかし中身が誰なのかは分からない。そうしていると、突如衝撃を感じて、エピローグは振り返る。

赤い影がちらつく。クロックアップだ。グリラスの足を振るい、エピローグもクロックアップを発動していく。

 

 

「ウェイ!」

 

 

特徴的な掛け声と、声。

どうやら剣崎がカブトになっていたようだ。振るわれた武器、しかしブンブン振り回せど全く当たらない。

踏み込んでみるが、少し後ろへ体を逸らしただけで簡単に回避されてしまう。

 

 

「アホが!」

 

「グゥウ!」

 

 

エピローグに蹴られ、後退していくカブト。

そこでクロックオーバー。イライラしたように武器を睨む。

べつに? 俺わるくねーし。なんかこの変な武器が悪いし。いつも使ってるやつなら勝ってたし。は? ビビッてねえし。

などと子供じみた言い訳を叫びたくなるくらい慣れてない。

 

 

「短いな! なんだこの剣は……ッ!!」

 

「剣じゃない、クナイだ」

 

 

フォーゼから天道の声が聞こえる。

使ったことのない武器は、どうにも心地が悪い。

結局カブトはクナイガンを捨てて殴りかかっていた。一方でフォーゼはロケットステイツに変身。

両腕のロケットを噴射させ、空へ舞い上がっていく。

 

 

「………」

 

 

ブースト最大。

あっと言う間にフォーゼは宇宙へ。隕石の欠片に腰掛けて、太陽を見る。

 

 

「やはり素晴らしい。太陽は塵さえも輝かせる」

 

 

隕石の上で寝転び、手を組んで頭を乗せる。そして足を組み、目を閉じた。

 

 

「………」

 

 

太陽が照らしてくれる。星は、太陽には勝てない。

 

 

「………」

 

 

暖かいものだ。

 

 

「………」

 

 

心地よいものだ。

 

 

「………」

 

 

………。

 

 

「………」

 

 

………。

 

 

「zzzzz」

 

「戦えッッ!!」

 

 

脳内にディケイドが叫ぶ声が聞こえてきた。

フォーゼは星の欠片の上で、寝返りをうつ。

 

 

「落ち着け。お祖母ちゃんが言っていた。男はクールであるべき、沸騰したお湯は蒸発するだけだってな」

 

「―――」

 

 

一瞬、間。

 

 

「だからどうした!!」

 

「………」

 

 

以後はディケイドの叫びを無視するように、フォーゼは無言で宇宙を見つめていた。

一方でフォーゼ――、ではなく弦太朗は叫び、走っていた。この状況を危惧したエピローグがレイドラグーンだけではなく、ダークローチを生み出したのだ。

無限に湧き出る兵隊は次々にリボルギャリーを目指していく。それを止めるために、ライダー達は走っていく。

 

 

「オラオラオラァアア!!」

 

 

弦太朗はブレイドに変身していた。

故に、ひたすらにッ、頭を――ッ! 振る。振る! 振るッ! 振るッッ!!

そうか、そうだったのか! 俺はロッカーだ! 弦太朗は気づいた。それはあまりにも純粋な悟り。

ロックとは魂。だからこそ、身を任せる。そしてひたすらに、ひたむきに振る頭。

それはまさにヘッドバンギング、ブレイドはただひたすらに頭の先っちょにある尖った部分でダークローチを斬りつけて――

 

 

「違う違う違うッ! そういう戦い方じゃないから! ブレイドってそういう意味じゃないから!!」

 

 

剣崎カブトが訂正を行う。

先程から弦太朗ブレイドはブレイラウザーを全く使わず、『剣』の形をした仮面の装飾で相手に切りかかっている。もはやそれは斬るというよりは頭突きだ。

 

 

「オォ! すまねぇ先輩。オレ頭を使うのはあんまり得意じゃねーんだ」

 

「頭しか使ってないけど!」

 

「だったら上等だ! 頭に勇気! 戦う剣ってなァア!!」

 

 

ローチの群れに突っ込んでいくブレイド。すぐに火花があがるが、それは何も一箇所ではない。

 

 

「盛り上がってきてるみたいだな! 俺達も行くぜ良太郎!!」

 

 

ドリルクラッシャーを持ったモモタロスは、ウキウキと声をあげてローチを蹴り飛ばしていく。

そう、ビルドだ。ラビット側の複眼が光り、モモタロスの声が響く。

 

 

『ちょっとちょっと先輩! 調子に乗ると後が怖いよ!』

 

「って、おわわ! んだよッカメ!」

 

 

タンク側の複眼が光るとウラタロスの声が。

 

 

『アホは後先考えずに突っ込むからな! ま、ここはオレに任しとき!』

 

「あイデ!!」

 

 

黄色いフルボトルが勝手に動き、ビルドの頭を小突く。

さらにラビットのボトルを強引に引き抜くと、代わりにその黄色いボトルがセットされる。

 

 

『あー! いいなぁ! ボクもやるやる!』

 

『あ! ちょっとリュウタ! ダメだってば! ちょ、ちょっと!』

 

(ニンジャ)!』『漫画(コミック!)

 

【N】『(ベスト)(マッチ)!』【C】

 

 

既にモモタロスの意識はない。

レバーをまわすと、黄色と紫のビルドが姿を見せる。

 

 

『忍びのエンターテイナー! ニン! ニン! コミックゥ!』『完成(イェーイ)

 

「マンガのオモロさに! お前が泣いた!」

 

『忍ぶけどいいよね! 答えは聞いてない!!』

 

 

走り出したビルドの手には、漫画を模した剣。四コマ忍法刀が握られている。

黄色い斬撃の中、紫のマフラーを靡かせて走るビルド。だがそれで己の中の魂が納得できるわけもない。

 

 

『ふざけんな! 今は俺のターンだろうが!』「あ! おい! やめッ、なんすんねん!」『(ラビット)!』『そうそう! 僕もたまには暴れたいし!』『あ、ちょっとやめてよカメちゃん!』『戦車(タンク)!』『あの、みんな……! 喧嘩はダメだよォ!』『そうだ、ここは私に任せろお供たちよ』『針鼠(ハリネズミ)!』『手羽野郎は黙ってろ!』『今はハリネズミだ!』『うるせぇ! ああもう! 俺がやるって言ってるだろうが!!』『(ラビット)』【R】『飛・蝗』【T】『鋼の――』

 

 

ギャーギャ言い合うビルドたち。

レバーを激しくメチャクチャにかき回しながらラビットタンクに変身――

 

 

バキンッッ!!

 

 

「おろ?」

 

 

なんだか、聞こえてはいけない音がした。気がする。

ゆっくり、それはもう、ゆっくりと視線を下に向けるビルド。

 

 

「ぁらぁ……」

 

 

すると、レバーがあった。千切れたレバーが。

 

 

「とれた」

 

「あああああああああああ!! 何やってんだよお前ェエエ゛!!」

 

 

戦兎オーズが叫びをあげてビルドに掴みかかる。

 

 

「ガッツリいってんじゃねぇか! ふざけんな!!」

 

「イヤッ、これちょ……! だああもう! ちょっと回したくらいで壊れるコイツが悪いんだろーが!」

 

『ダメだよモモタロス! ちゃんと謝らなきゃ!』

 

『そうだよ先輩! 先輩が悪いんだから!』

 

『モモの字、お前……』

 

『モモタロスさいてー』

 

『お供その1、堕ちたな……、貴様も』

 

「さりげなく俺一人に擦り付けんなッッ!!」

 

 

ビルド――、モモタロスはバツが悪そうに何度もオーズと取れたレバーを交互に見ている。

だがその時背後に迫るダークローチ。するとビルドは叫び声をあげて取れたレバーでダークローチをぶん殴る。

 

 

「何してんだ! そういう道具じゃねぇから!!」

 

「こういう使い方もできるだろうが! 乗ってきたなァおい! じゃ、ま、そういう事で、ね」

 

「おい! ごまかすな! ふざけんなよモモタロス!」

 

 

とは言え、敵はオーズにも迫っている。

仕方なく戦兎オーズはビルドを追いかけるのを止め、体勢を低くしながらジグザグに後退、爪や蹴りを回避していく。

 

 

「仮面ライダーオーズ。動物系の力か。だったらまずは知ってるヤツでいくか!」『タカ!』『ゴリラ!』『バッタ!』

 

 

兎もバッタも似たようなものだろう。オーズは、拳を振り回しながら走っていく。

しかし倒せども倒せども、地面を突き破りダークローチは出現していく。あっと言う間に増殖していく兵隊達に、エピローグの姿が消えていった。

 

 

「………」

 

 

エピローグは後ろに下がりながら冷静に展開を予想、そして考察。

敵の狙いはバックルに眠っている竜斗たちへの干渉。それを防ぐにはリボルギャリーを破壊すればいい――、か?

 

 

(………)

 

 

すると敵意。

視線を向けると、カブトがローチを掻き分けてやってくるのが見えた。

そして銃声。見ればウィザードがハリケーンスタイルとなり飛行してくる。

 

 

「ブックメイカー! ココで終わりとさせていただきます!」

 

「その声……! 紅渡か!」

 

 

さらに血が飛び交う。

刃を振り回し、すり足で迫る鎧武。

 

 

「俺もいますよ。ブックメイカー」

 

 

覚えている、あれは翔一だ。

エピローグは舌打ちと共に走り出し、飛び回し蹴りで挨拶を一つ。

 

 

「眼が揃ったか! 無駄な事を!」

 

「貴方のやっている事は世界の規律を乱す行為です。いい加減に理解し、今すぐにカメンライダー計画を放棄しなさい」

 

「バカが! するワケがないだろ! これはお前達のためでもあると言うのに!」

 

「俺達はもうそれを望んでいない!」

 

「ウソだねブレイド! だったらどうしてこの場に鳴滝はいないのかな!!」

 

 

誰も答えない。

決まっている。鳴滝はライダー達の敗北を予想したからだ。ライダーが終わると考え、鳴滝は自らの役割を放棄した。

 

 

「結局弱い人間! 今もッ、強がってる!」

 

 

エピローグは強引にカブトを蹴り飛ばし、デスイマジンの鎌を出現させると鎧武とつばぜり合いを始める。

 

 

「この戦いの裏にもある否定ッ! キミ達は常に人の眼に晒され――ッ! そして虐げられ続ける! 望む訳ねぇだろうが!!」

 

「それも、人の形では?」

 

「そう思うかい津上翔一? 本当に、本当にッッ!」

 

 

裏拳がウィザードを捉えた。蹴りがカブトを打つ。鎌が鎧武を抉った。

無言だ。無言でしか返せない想いもある。三人の"眼"は、ただ足をそろえ、エピローグに食いついていく。

殴りあうカブトたちと、一方で尚増えるローチたち。

 

 

「仮面ライダーは――ッ!」

 

 

エピローグは腕を交差させ、クロスの形を作る。

腕から炎が溢れ、その火の粉は次々にダークローチやレイドラグーンに吸収されていく。

すると直後、炎が吸収されたモンスターの姿が『変身』した。たとえばそれは仮面ライダーG3Xだとか、仮面ライダーナイトやゾルダ。たとえばそれは仮面ライダーカイザやギャレン。

まだいる。仮面ライダーアクセルや、メテオ、バロン、ネクロム――

 

 

「なんだ?」

 

 

リボルギャリー周辺でメテオはその光景を確認した。

そう、流星のメテオはココにいる。しかしメテオは向こうにたくさん見える。

 

 

「仮面ライダーは全ての人のものだ!!」

 

 

エピローグが叫んだ。

思えば初めにタケルが竜斗と知り合い、そこで敵に追われていた時、ショッカー怪人はスカルやゼロノスに変身していた。

あれはつまり、そういう事である。クロスオブファイアさえ与えればどんな者も、どんなヤツだって仮面ライダーになれる。

そこから広がる『愛の輪』こそが、人が次のステージへと昇ることができる唯一の方法だ。

 

 

「その為にはお前達の存在は邪魔なんだよッ!!」

 

 

吼え、それに合わせて走る無数のサブライダーたち。

しかし中身は怪人なのだ。それを忘れてはいけない。

なんとか殲滅しなければ。そう思った者が何人か。まずは映司ファイズだ。巧がアクセルフォームで一気に敵を蹴散らしたのを見たことがある。

そうだ、あれをやろう。と言うワケでアクセルフォームに変身しようと思うのだが、なかなか上手くいかない。

 

 

「えっと、あれ? あ、そうか、メモリをセットしなくちゃいけないのか。あれ? でも」

 

 

そうしているとドライブが駆け寄ってくる。

どうやらこれが巧のようだ。

 

 

「なにやってんだ。だからこのメモリを、携帯の方にセットしてだな――」

 

「あ! そっかぁ!」

 

 

そこで衝撃。

気づけば空には何人ものギャレンジャックフォームが飛行している。

その中の一体の突進に二人は弾かれ、ファイズは持っていたメモリを地面にぶちまけてしまう。

 

 

「あーッッ!」

 

 

すぐに拾おうとしたが、見えたのは無数の脚。

だがあっと言う間にダークローチやライダー達が視界を埋め尽くし、メモリに手は届かない

 

 

「あぁぁ! どうしよーッ!」

 

「諦めろ! 戦うぞ!」

 

「あッ、でも今のおれたちってクロスオブファイアが大事なんでしょ? だったら別に設定どおりにフォームチェンジしなくても、変身できるんじゃないかな!」

 

「は?」

 

「はい変わったー! はい速くなったー! はいもうアクセルフォームゥ!」

 

 

踏ん張るファイズ。

その頬にグリドンの拳がめり込んだのは言うまでも無い。

虚しく倒れる『自分』を見て、ドライブはため息を漏らす。

だが飛来するトライドロン、ダークローチや先程のグリドン、つまり敵ライダーを囲むように猛スピードで駆け回り、ドライブは手首をスナップさせた後に腰を落とす。

 

 

「ハァアア!」

 

 

ドライブは飛び上がり、群れるグリドンやカリスを蹴った。

その反動で後ろへ飛び、目の前に移動して来たトライドロンを蹴って、さらに相手を蹴り飛ばすスピードロップを――

 

 

「あ?」

 

 

トライドロンを蹴る筈だった。筈だったのだが――、肝心のトライドロンは明後日の方向にてタイヤを回している。

 

 

「あ」

 

 

何の事はなく地面に着地するドライブ。

右を見ると、トライドロンが走ってくるのが見えた。

 

 

「あー……」

 

 

ドライブは走ってきたトライドロンに轢き飛ばされると、空中を舞いながら吹き飛んでいく。

 

 

「――マジで間違えた。ああ、クソ」

 

 

言い訳といわれたらそれまでだ。

地面に倒れたファイズはその後もブツブツ間違えたと連呼している。

どうやら蹴るタイミングを誤ったようだ。簡単にやっているようでも、真似してみると難しい。

一方で飛び上がった電王。中身はヒビキだ。呼び寄せたデンライナーの操縦席に乗り込むと、マシンデンバードのアクセルグリップを捻る。

 

 

「ようし、殲滅してやるぞー!」

 

 

車は――、まあ少々アレだったが、電車なら大丈夫だろう。

バシっと決めて、カチッと最年長の威厳を見せねば。

 

 

「行くぞベルトさん!」『OK! マキシマムドライブと行こうじゃないか!』

 

 

ソウルサイドの複眼が光り、ベルトさんの声が聞こえる。

仮面ライダーダブルは迫るレイドラグーンやハイドラグーンを蹴り飛ばし、マフラーを靡かせる。

 

 

「さあ! お前の脳細胞を数えろ!」『ジョーカー! マキシマムドライブ!』

 

『……ちょっとしまらないな、その決め台詞は』

 

 

ベルトさんの声はとりあえずスルーさせていただこう。

蛇行運転の後、墜落していくデンライナーの下を駆けて来るのはリボルギャリー。

現在のタワーディフェンス状況でいうのならば守るべき城なのだが、それが思い切り走ってくる。

ローチや敵ライダー達を轢き潰しながら、さらにリボルギャリーはスピードをあげて旋回を始めた。

 

 

「ぎゃあああああああ! めっちゃ回ってるし! 気持ち悪いし!!」

 

「……うっ」

 

「ヴハハハハハハハハ!! いいぞ! 私の脳細胞が巡りに巡るぅう゛ゥ!」

 

(うるせぇ……)

 

 

適当な場所にしがみ付くのは、みーたんこと石動(いするぎ)美空(みそら)

たまたま戦兎と一緒にいたところをディエンドに呼ばれ、ついてきた。が、ついて来るんじゃなかったと今は後悔している。

近くにいたハナも口を押さえて青ざめていた。一方無数のゲンムたちは遠心力で車内を転がりまわるが、PCだけは手放さずにタイピングを行っている。

 

ジョウジもまた同じ様な状況でモニタに目を向けていた。

しかしその表情は険しい。別に酔っているワケじゃない。純粋に展開がよろしくないのだ。

ゲンムの知識や才能は確かに凄いが、それはあくまでも『電脳』の部分に特化しており、専門知識外の拡張はジョウジが行わなければならない。

今、チューニングしているのはアンチハーメルンを使ってバックルに『穴をあける』部分だ。

竜斗達にコンタクトを取るための方法はある程度形にはなったが、肝心の干渉部分がいまひとつ弱い。

 

 

「ディケイド、聞こえるか」

 

『ああ。あとどれくらい掛かる?』

 

「もう少し必要だ。壁を突破する方法が複雑で手こずっている」

 

『なるべく早くしてくれよ』

 

 

早く――、スピードがより速くなっていく。

リボルギャリーは高速で移動し、軌跡を残しながらグルグルグルグル円形に移動していく。

ダブルは地面を蹴り、飛び蹴りで敵を蹴り飛ばすと、その反動で後ろへ移動。そこには回り込んでいたリボルギャリーがあり、ダブルはそれを蹴ってさらに敵へ飛び蹴りしかけていく。

 

 

「スピードサイクロップ!!」

 

 

敵が漏らす断末魔が聞こえ、爆発が起きる。

レイドラグーン達を吹き飛ばしたダブルは、地面に着地し、リボルギャリーは再びレーザーたちのほうへ戻っていく。

さらに前に出るのは仮面ライダーゴースト。ガンガンセイバーで敵を切り抜けながら移動するが、やけにこなれている印象だ。

それもその筈、中身はタケルではなく紘汰である。ずっと剣を使ってきた分、ガンガンセイバーは使いやすい。

とは言え、せっかく他のライダーになったのだ。その力を使おうではないか。

 

 

「えーっと、タケルは偉人の力が使えるんだよな」

 

 

やはり――、そうだな、男と言えばな英雄がある。

ベタかもしれないが、紘汰も好きな英雄があった。そのアイコンを取り出すと、ゴーストドライバーへ装填を行う。

 

 

「うっし、きたきたぁ!」『アーイ!』

 

 

飛来するパーカー。

英雄の力を借りるとはどんなものか、ワクワクしながらレバーを引く。

 

 

『カイガン! リョウマ!』

 

 

やはり坂本竜馬はドラマでも何度も見たことがあるし、豪快な生き方には紘汰も感銘を受け――

 

 

『インクレディブル・リョーマ!』

 

「………」

 

 

あれ?

こんな音声だったか?

すると気づく。パーカーは黄色だった。よく見ればレモンに見えなくも無いような。

まさか、と、全身に悪寒が走る。いやいやそんなまさか。そうしている間にパーカーはゴーストにかぶさり、意識を侵食していく。

 

 

『久しぶりだね、葛葉紘汰』

 

「―――」

 

 

白目をむく紘汰。

いや、リョウマは呼んだけどアンタじゃねぇよ。坂本だよ、坂本のリョウちゃんだよ。戦極の凌馬じゃねぇんだよ。

などと思ったが、時既に遅しである。ゴーストアイコンに紛れていたのは、死者の魂を封印したアイコン。

それはかつて紘汰の前に立ちはだかった戦極(せんごく)凌馬(りょうま)であった。

 

 

『友の気配を感じてね。地獄から舞い戻ってきたんだ。いや本当に久しぶりで心が――』

 

「う、うそつけ! 誰が友だ! 何が狙いだよ……!」

 

『別に。ただの興味だよ。カメンライダー計画は、死後の世界にも届いているからね……』

 

 

研究者としての血が疼いたのだと。

 

 

『安心してくれ。別に体を乗っ取っているワケじゃないだろう?』

 

「それは……、まあ」

 

 

あくまでもパーカーとしてかぶさっているだけ。

話はできるが、別に体を支配されているワケでもない。

まあ気を緩めれば凌馬が自分で動けるようだが、そもそも紘汰は神だ。凌馬に乗っ取られるということはありえないだろう。

 

 

『提案があるんだ。私をあそこに連れて行ってくれないか?』

 

「え?」

 

 

示すのはリボルギャリー。どうやら研究者としての共鳴を感じたらしい。

 

 

『私にも一応魂の炎はあるんだ。今はキミ達に協力するよ』

 

「ほ、本当か?」

 

『ああ。私が天才であると言うことを、無かったことにされるのは耐えられない』

 

「………」

 

 

やや訝しげな様子を見せながらも、たしかに頷くゴースト。飛翔し、リボルギャリーを壁をすり抜けて行く。

ヴェハハハハハ! そんな声が木霊する車内。ゴーストはそこら辺でタイピングを行っていたゲンムを押しのけると、パソコンを奪い取る。

 

 

「ぬぅなにをするッッ!!」

 

『素晴らしい。やはり、研究者はダイナミックでなければ!』

 

 

とにかくとコレで、ジョウジが危惧していた穴を埋める人物が追加された。

一方で外。斬撃音の中に混じる咆哮。そしてドス黒い殺意。クロスオブファイアが歪な共鳴を始める。

 

 

「エグゼイドォオオオオオオオ!!」

 

「ッ! アイツは!」

 

 

ダークローチやサブライダーをを切り伏せながら姿を見せるのは、カラーリングが違うパラドクス。

いやあれは知っている。ディケイドは思わず前のめりになって確認を行った。

あれもダークローチかドラグーン系のモンスターが変身したものかと思ったが――、違う。そもそも喋っているし、なによりパラドクスじゃない。

 

 

「パラ――、ゼイドだったかッ、なぜヤツが!?」

 

 

するとディケイドの脳内にフォーゼ天道の声が。

 

 

『すまない。ポッピーピポパポを助けたときにヤツを取り逃した』

 

「早く言えッッ!!」

 

 

極論、パラゼイドに勝てたのはポッピーが死んだからだ。

その事実が変わったのだから、未来も姿を変えるのは当然である。

なるべく大きな矛盾が起きないようにカブトも細心の注意を払ったが、いかんせん完璧にとはいかなかった。

 

それが敵であるパラゼイドの生存である。

そもそもパラゼイドはエグゼイドを始末するために作り出されたショッカー怪人だ。

そこへブックメイカーがアマダムを使い、クロスオブファイアを埋め込んだ。

とは言え、今はもう魂の炎が不安定となり、暴走状態にあるのか。エグゼイドをひたすらに追いかける戦闘マシーンと化しているらしい。

邪魔者を斧で斬り、銃で吹き飛ばし、パラゼイドはエグゼイドを見つける。

ずんぐりむっくりとしたマイティブラザーズの状態。パラゼイドは上ずった笑みをあげて斧で切りかかっていった。

 

 

「死ねェエ!」

 

「………」『ガッチャーン』『レベルアーップ!』『マイティマイティブラザーズ! ダブルエーックス!』

 

 

しかし振るわれた斧を回避するようにエグゼイドが分裂。

オレンジと青緑に別れたエグゼイドは、裏拳と蹴りでパラゼイドの背中を打った。

 

 

「グッ!」

 

「申し訳ない。僕らはエグゼイドじゃないんだ」

 

「なにッ!?」

 

 

肩の装甲を合わせ、二人のエグゼイドは人差し指でパラゼイドを指し示す。

 

 

「「さあ! お前のコンテニューを数えろ!」」

 

 

その瞬間、パラゼイドはエグゼイドの中身が翔太郎とフィリップであると理解した。

同時に青緑のエグゼイドはガシャコンキースラッシャーを持ち、オレンジは拳を構えて走りだす。

 

 

「クソ!」

 

 

殴りかかるオレンジは翔太郎。切りかかる青緑はフィリップだ。

パラゼイドは斧で剣を弾くと、体を捻ってオレンジの拳を交わす。

そして見た。空中から飛来する響鬼、音撃棒を両手に構えているアレは――

 

 

「ボクが永夢だ! パラゼイド!!」

 

「お前ェエエ!!」

 

 

着地した響鬼は音撃を棒を振るい、火と火花を撒き散らす。

もみ合い、殴り合い、両者はライダーや敵の中を掻き分けて傷つけあう。

 

 

「今度こそ終わりだエグゼイド! 奇跡は二度も起きない!」

 

「もうッ、ポッピーは、犠牲にしない!!」

 

 

だが斧が音撃棒の一つを吹き飛ばした。

呆気に取られている所に抉りこむ拳。ノックアウト・クリティカルスマッシュ。

脳がゆれ、響鬼は大きくよろけてしまう。そこに繰り出される回し蹴り、もう一方の手にあった音撃棒も宙を舞う。

さらにアシストに様々なライダーの飛び道具が響鬼の背中を撃った。走る痛みに、永夢は大きく表情を歪ませる。

 

 

「死ねェエエ!!」

 

「う――ッ!」

 

 

響鬼の肩に斧が入った。肉を引き裂き、侵食していく刃。

だが永夢は仮面の奥で強く歯を食いしばる。確かに――、エグゼイドを捨てたい時はあったし、事実捨てていた。

だが、それだけだ。それを未来には連れて行かない。

ポッピーが見ているのが分かる。だから、負ける理由は一つもなかった。

 

 

「お前は――ッ! もう、いい!!」

 

「!」

 

 

魂の炎が燃え上がり、響鬼の体が紅に染まる。

刃の侵食が止まった。硬い筋肉が進行を防ぎ、刃を推し進めることも引き抜くこともできなくなる。

なんだこれは、パラゼイドが怯んでいると、その腹部に響鬼の掌底が叩き込まれた。

響鬼・紅は音撃鼓を押し当てなくとも攻撃を当てることで『炎の音撃鼓』を展開させることができる。

さらに永夢の名を呼ぶ声。オレンジと青緑のエグゼイドが、弾かれた音撃棒を拾っており、それを投げたのだ。

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

音撃棒を受け取った響鬼はひたすらにバチを太鼓に撃ち当てる。

炎の波紋が広がり、パラゼイドは身を焼き焦がす衝撃に言葉を失った。

さらにその間にオレンジと青緑のエグゼイドはキースラッシャーにガシャットを装填。必殺技を発動し、パラゼイドを狙う。

 

 

『タツジン!』『アクション!』『クリティカルフィニーッシュ!』

 

 

銃口からエネルギーが発射され、パラゼイドに命中。

すると響鬼の頭上に『和田どん君』と、『和田かつ君』が出現し、スコアを計算し始める。

見ればいつの間にかパラゼイドに収束するように和田どんたちの顔が飛来してくるではないか。

その顔とパラゼイドが重なったときに音撃棒を当てると、『OK』判定となり、威力が上がるらしい。

 

 

「50ッコンボォオオオオオオオオ!!」

 

 

ゲーマーは太鼓が叩くのが上手い。らしい。

響鬼はあっと言う間にスコアを重ねていき、頭上にいる和田どん達は興奮したように腕を振り回している。

太鼓の達人ガシャット、これもまた世界融合の産物だ。

斧が――、落ちた。パラゼイドは信じられないと言った様子で首を振っている。

 

 

「なんだこれは――ッ! 以前とはッ、感じる力が――ッッ! 何をしたお前ェエ! なんでッ、なんでェエエ!!」

 

「分かったんだ。ボクが、仮面ライダーエグゼイドだって! あの時よりも、もっと、もっと!!」

 

「そんなバカな――ッ! そんなバカな事がァアアアアア!!」

 

 

フィニッシュの一撃は、両手の音撃棒を同時に叩き込むものだった。

大量の火の粉を撒き散らしながら、パラゼイドは自分の身を確認する。

音撃鼓が収束していくのが分かる。衝撃が収束していくのが分かる。乾いた笑いが漏れた。そして激しい憎悪が巻き上がる。

エグゼイド。お前が――、ああ、邪魔なヤツだ。

手を伸ばす。その手が真っ赤に燃えていた。

 

 

「ガアアアアアアアアアアア!!」

 

 

粉々に爆発するパラゼイド。

だが――、気のせいだろうか? 何か粒子のような物が見えたような……?

とは言え、皆の注目はすぐに別の方向へ集まる。はじまりはアタックライドの音声だった。

ディケイドが何かをしたのかと思えば、どうやら音声の発信源はディエンドだったようだ。

銃を天に撃つと、そこに巨大なオーロラが出現、そこから姿を見せたのは――

 

 

『ビッグマシン!!』

 

「フフフ」

 

 

骸骨とペガサスを融合させたような巨大マシンが独りでに咆哮を上げる。

笑うディエンド。かつてはアレに乗ってライダーと戦隊の頂点に立とうとしたが、失敗に終わった。

とは言えどうやらディエンドはちゃっかりビッグマシンは回収しており、修復していたようだ。

以前よりも自立機能を強化しており、ディエンドの意思一つでビッグマシンはレーザーの攻撃や、巨大な豪腕を振るって眼下にいる敵ライダーやダークローチ達を虫でも殺すように蹴散らしていく。

 

あれならば――、と思ったときにさらなる朗報。

リボルギャリーからジョウジが姿を見せたのだ。

どうやら凌馬が加わったおかげで、『アンチハーメルン』の進化バージョンが完成したらしい。

 

 

「自分が持ってく。ゼロ速!」『ガッチョーン』『ガッシューン』『ガッチャーン!』『レベルアーップ』『爆走バイクゥー!』

 

 

レーザーはレベル3からレベル0・レーザーターボへ。

数字的には下がったが、鎧が取れた分、身軽で動きやすくなっており、走力も上がっている。

体を慣らすために柔軟運動をはじめるレーザー。

 

 

「お前も来るか? ポッピー」

 

「うん! 行く!」

 

 

さらにポッピーも頷き、二人はそれを――、ガシャットの形をしたアンチハーメルンを永夢へ届けることに。

 

 

「誰か加勢してくれ。まだ敵ライダーが多い」

 

「フム」

 

 

すると前に出るディエンド。

その手には、青色のケータッチが。

 

 

『ジーフォー』『リュウガ』『オーガ』

『グレイブ』『カブキ』『コーカサス』『アーク』『スカル』

『ファイナルカメンライド』『ディッエーンド!!』

 

 

ライダークレストが光り輝き、胸部アーマーにカードが捲れる音が響く。

ディエンドコンプリートフォーム。変身を完了させると、すぐに指で一つの紋章をタッチする。

 

 

『ジーフォー』『カメンライド――』

 

 

その時、異変が起こる。

ディエンドを中心に広がるオーロラ。周囲の景色が荒野から『怪しげな研究所』に変わる。

景色は夜。ライダー達の複眼が光る中、ディエンドの隣にG4が召喚される。

 

 

『プロジェクトG4』

 

 

そこで気づく。召喚されたのはG4だけではない。

ディエンドが広げた『G4エリア』、仮想現実の世界に出現していく無数の『蟻』。

地面を突き破って現れるのは"アントロード"たちだ。それは全てディエンドの兵隊。

アントロードは次々にサブライダー達やダークローチ、レイドラグーンに襲い掛かり、戦闘を開始する。

 

それだけじゃない。走り出すG4。

どうやらディケイドとは違い、ディエンドの動きにシンクロすると言うことではないらしい。

そんな召喚G4が突如戦闘を開始する。誰と? それは同じく召喚された召喚体である"G3X"とだ。

さらにこのG4エリア内にはアギトとギルスも召喚されている。

 

 

「なんだこの力は!」

 

 

エピローグやウィザード達は、なにやら司令室のような場所に転送されていた。

そこには仰々しい機械に拘束され、怪しげなヘッドギアを被せられた少女が見える。

もちろんこれもディエンドが召喚した『偽物』の一つでしかない。

 

ディエンドコンプリートの能力、それはアギトからダブルまでの『劇場版』といわれる世界を再現することだ。

通常のディエンドはライダーのみしか召喚できないが、コンプリートフォームになるとライダーだけではなく『エリア』と呼ばれる空間を再現するための小道具(機械や木、食べ物や車などなど)、さらには『人間』までもをデータで構成して召喚する事ができる。

 

いや、それだけじゃない。

走り、G4に重なるディエンド。すると文字通り合体。

ディエンドはG4に変身(カメンライド)を行った状態に。こちらはディケイド式となっており、ディエンド=G4の構図である。

 

 

『ファイナルフォームライド』『アアアアギト!』

 

 

まだ終わらない。ディエンドは召喚したアギトをアギトトルネイダーへ変える。

そこへ飛び乗るディエンド。その手には既にギガントがあり、空中を飛びまわりながら群れる敵を爆撃していく。

敵が散り、レーザーたちが通れる道ができていった。

 

 

「す、すげぇな」

 

 

ビルド――、モモタロスたちまでも爆発に揉まれて吹き飛んでいく。

とは言え、道はできた。爆煙を踏みつけて走るレーザーとポッピーピポパポ。

だが景色が変わってしまったために永夢――、つまり響鬼の姿も見失ってしまった。

するとエンジン音。レーザーたちの前にギルスレイダーに乗った、仮面ライダーギルスが姿を見せる。

 

 

「な、なに!? なんだ! 敵か!?」

 

「いや、僕が召喚したライダーだ」

 

 

レーザーたちに並走するディエンド。

どうやらギルスが永夢のところまで案内してくれるようだ。

レーザーもポッピーも幸いと人間じゃない、息を切らさず走ること数分、本当に響鬼が見えてきた。

 

 

「永夢!」「えむぅ!」

 

「貴利矢さん! ポッピー!」

 

「受け取れ永夢! アンチハーメルンだ!」

 

 

黎斗が手を加えたからなのか、それはガシャットの形である。

マイティブラザーズやマキシマムマイティXのように二つのガシャットを重ねたような厚さだった。

響鬼がそれを受け取ると、ディエンドはカメンライドを解除する。

全ての『G4エリア』が消失し、景色は元の荒野に戻っていった。

 

 

「ッ!」

 

 

間違いなく、ココが好機。

ディケイドは永夢周りのシャッフルを解除。永夢はエグゼイドに、翔太郎達はダブルに戻る。

その適応力は一瞬だった。エグゼイドはキースラッシャーを取り出すと、そこへ素早く受け取ったアンチハーメルンを装填していく。

 

 

『ガシャット!』

『アンチハーメルンんんんん゛! クリティカルッッ! アハァ――ッ! フィニーッシュ!!』

 

 

音声もしっかり入れるのが神と凌馬の拘りである。

キースラッシャーの銃口に収束していく光。どうやらリプログラミングのように多少のチャージを要するようだ。

当然ソレをエピローグがみすみす許すわけがない。回し蹴りで群がっていたウィザードやカブトたちを弾き飛ばすと、手にエネルギーを集める。

 

 

「潰す! エグゼイド!」

 

「――ッ」

 

 

だが大地を踏みしめる音。

走ってくるのは、アギト雄介だ。

 

 

「俺が隙を作ります! 超変身!」

 

 

炎が溢れ、フレイムフォームへ。

超感覚の剣士、まさにペガサスとタイタンの融合だ。アギトは走ると、すぐにエピローグへ剣を伸ばした。

感覚を研ぎ澄まし、避けられない場所に突きを繰り出す。

しかしだったら避けなければいいだけの話。エピローグは蹴りで突きを弾くと、アギトのわき腹を殴り、足を払う。

 

 

「雑魚が!」

 

「だったら――ッ! 助け合う!!」

 

「!」

 

 

背後を振り返ると、そこにはクウガが。

中身はタケルだ。ペガサスへ変わっており、ボウガンを振り絞っている。

超感覚に怯まないのはタケルがロビンフッドを憑依させているからだ。英雄の集中力が、超感覚の代償を凌駕し、なおかつ矢の命中率を上げる。

ブラストペガサス。風の矢が、猛スピードでエピローグに迫った。

 

 

「こんなものが――」

 

 

矢を、指で挟み取る。

直後、目の前にクウガが立っているのが見えた。

瞬間、理解するエピローグ。風の矢は囮。本命は矢を発射したと同時に走ったクウガこそ、その本体であり攻撃の本命。

クウガは拳を握り締め、思い切り猛スピードのストレートパンチを放った。

だが――ッ!

 

 

「通用するか!!」

 

「あッ!」

 

 

思わずクウガからマヌケな声が漏れた。

エピローグは体を逸らし、そのパンチを回避。

本命の一撃が外れた。焦るクウガ。だがまだだ、意地でも食いつきたい。だからこそ我武者羅に体を前に出して腕を振るう。

なんでもいい。何かはしなければ。その想いが手を動かすことに繋がる。故にクウガはエピローグの肩を掴むことに成功した。

ここから投げ飛ばしてやれば、抵抗の一つでもできるだろう。

 

 

「―――」

 

 

土石流。

 

 

「え?」

 

 

思わず、クウガは自分からその手を離してしまった。

 

 

「な、なッ、なんで……? なんッ、なんで――ッ!?」

 

「………」

 

 

エピローグもエピローグで逃げればいいのに、なぜか足を止める。

立ち尽くし動揺しているクウガを見て、エピローグはただただ沈黙を貫く。

何かを考えている。ジッと立ち、ジッとクウガを見ている。

 

 

「なんで……? え、え? え――ッ!? あれ!? え? でもあれは――ッ!」

 

 

クウガが怯んでいる。それがエピローグに答えを齎した。

 

 

「忘れろ……」

 

「――ッ」

 

「忘れろォオオ!!」

 

 

怒号を上げる。

それは純粋な怒りと焦り。

エピローグは動きを止める。ただ目の前にいるクウガだけを見てしまう。

だからこそ、カブトがエピローグの右腕を、ウィザードが左腕を、鎧武が足を掴んだのは必然だった。

 

 

「ッ! しまった!!」

 

「冷静さを欠きましたね! ブックメイカー!」

 

「利用させてもらいますよ、このチャンスは!」

 

「覚悟しろ! お前のゲームはもう終わりだ!」

 

 

(ウィザード)翔一(ガイム)剣崎(カブト)の三人がガッチリとエピローグをホールド。

その間に飛び上がるのは五代(アギト)だ。グランドフォーム戻っていたアギトがクロスホーンを展開させ、足に光を集中させる。

 

 

「オリャアアアアアアアア!!」

 

 

"眼"達がエピローグから手を離し、蹴りで怯ませつつ自分達は蹴った反動で後方へ。

一方でアギトのライダーキックがエピローグの胸に入った。衝撃でエピローグは地面から浮き上がり、後方へ吹き飛ばされる。

 

 

「グガァアッ!」

 

 

地面に叩きつけられた際の痛みなどはどうでもいい。

ただ頭を支配するのは――、焦りと、恐怖。

 

 

「ヤバイッ!」

 

 

すぐに立ち上がるが、もう遅かった。

キースラッシャーの銃口に宿った凄まじい光が、既に解き放たれている。

回避を。回避を――、回避……。意味はあるのか? だとか、する必要は、だとか、なぜかネガティブな思考がエピローグを包んだ。

ムリだ。ムリ。なにが? 分からない。でも、たぶん、いや、だって、あいつ等は――、ああ、ちくしょう。アレを見られた――、のか。だったら、アイツは――、ああ、ああ。

 

 

「グッッ!!」

 

 

様々な事を考えている間に、光は直撃した。

エピローグを包む輝きは、すぐにバックル一点へ集中していく。

すると開くのは『クラック』、凌馬の知識が穴を空ける技術を可能にしたのだ。

さらにココで貴利矢とポッピー、そしてエグゼイドが粒子化し、クラックを通してバックルへ吸い込まれていく。

 

 

『カメンライド――』

 

 

ディエンドが銃口から『二つ』、光弾を発射。

おまけだ。それも一緒にバックルに吸い込まれていく。そこでクラックは完全に閉じた。

 

 

「―――」

 

 

エピローグは膝を付き、息を荒げる。

ゆっくりと、ゆっくりと、目を閉じていく。

ビッグマシンが暴れる音がなにより耳障りだ。雑魚をライダー化させたところで、所詮は雑魚か。

ビッグマシンがあればあと一分以内で全滅だろう。あとはどれだけ兵士を増やしても変わらない。

あとはバックルか。

あれは、どうだ? クソ、なんだかもう考えるのさえ面倒に――……。

 

 

「………」

 

 

グッと、歯を食いしばる。

こういう時ほど、昔を思い出してしまうものだ。どうでもいい事とか、大切な事とか。

背中に回した腕とか、触れた唇とか、シャンプーの匂いとか、照れた表情とか、そのクセに頬の痛みは今でも――、ああ、いや。こういうのは違うんだろう?

だから、ほら、あるんだよ。今もまだハッキリと思い出せる。

 

 

『どんな世界が良かった?』

 

『ボゲグ、ボ――、ボボボ』

 

 

あの醜い。醜悪な声。耳障りで、汚い声を――

見ているんだ。聞いているんだ。だから、今も、視てる。"俺"は、僕は。

 

 

「ガァアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

叫ぶと、炎が溢れた。

腕には、サジタリウスの矢が装備され、炎の矢がライダー達を次々に射抜いていく。

倒れた所に振るわれる『理想郷の杖』。重力を操り、ライダー達を地面に叩きつけると、理想を奪い、希望を奪い、自らの力にしようと試みる。

 

 

「コチラにも――ッ!」

 

 

エピローグの目は、まだ死んでいなかった。

呼吸を荒げながらも、地面に膝をつけれども、目の輝きは死んでない。

 

 

「負けられない理由はあるッ!」

 

 

だが、その言葉に反発するように、ディケイドが立ち上がった。

 

 

「それは俺達も、同じだッ!!」

 

 

ライダー達は頷くと、再び立ち上がり、エピローグを目指して走った。

 

 

「!」

 

 

一方で永夢は、目を開ける。

そこは虹色の宇宙が広がっていた。横も、下も、上も、虹色の銀河が広がっている。

その中で永夢は立っていた。プリズムの床を歩きながら、永夢は気づく。自分以外にも人がいた。

 

 

「よ!」

 

「貴利矢さん!」

 

 

永夢の肩を叩き、微笑むのはアロハシャツにジャケットを羽織った貴利矢だ。

やはり怪しげなサングラスをつけており、にやりと笑っている。

 

 

「永夢! 起きたんだね!」

 

「明日那さん!?」

 

 

一方で永夢の腕に抱きつく者が。

ポッピー――、なのだが、衣装が変わっており、『明日那』の姿になっている。

注目するのはその衣装。ナースの姿であり、永夢は自分の姿が白衣である事を、より自覚する。

 

アンチハーメルンガシャットは簡単に言えば永夢達をエピローグのバックルの中に送り込む装置だ。

取り込まれた魂たちに文字通り、直接アプローチをかける。頷き、走る三人。すると予想通り見えてきたではないか。これまた虹色の十字架に磔にされている竜斗、ミライ、加古の三人が。

 

 

「みんなッ! 待ってて、今助けるから!」

 

 

竜斗達は虹色の鎖で繋がれており、永夢達は早速三人のソレを外そうと試みる。

ブックメイカーが魂を沈めたせいで、現在竜斗達は気を失っているようだ。

とは言え流石に耳元でガチャガチャと鎖を外す音が響いたからか、それぞれゆっくりと目を開き始める。

三人はしばらくは呆けていたが、事態を理解したのか、ハッと表情を変えて永夢の名を呼んだ。

 

 

「先生……!」

 

「気がついた? 待っててね、もう少しだから」

 

「――ッ」

 

 

竜斗達は皆、それぞれ戸惑ったような表情を浮べる。

視線を交差さえ、唇を震わせている。何を言っていいのか分からないようで、しばらくは黙っていたが、やがて冷静になってきたのか遠慮がちに声をあげ始める。

 

 

「あ、あの――」

 

「ん?」

 

「ぼ、ぼくたち……」

 

 

何を言いたいのかは、何となく分かる。

ハイパークロックアップの影響は竜斗たちにも出ているようだ。

自分たちが取った選択は自己犠牲。それを否定された上で、助けに来てもらうことの気まずさや申し訳なさはあるのだろう。

ましてや、そこに言い訳を隠した事もある。

 

 

「まだ怖いのか。元の世界に帰るのが」

 

「そ、それは――、だって」

 

 

貴利矢の問いかけに加古は目を逸らす。

 

 

「なんだよ、詐欺にあったなら、俺達が助けてやるって」

 

「え?」

 

「コッチにはほら、変な車に乗ってる刑事がいるんだ。必ず犯人を見つけてくれる」

 

「そ、それはでも――」

 

「金が無いなら、最悪くれてやるよ。なんか、ライダーの中にも金持ってるやついんだろ。つか自分も医者だから、結構持ってるぜ」

 

「そ、それは流石に――ッ」

 

「甘えとけ甘えとけ。お前らが体験してる事は、普通の人間よりもハードなことだ」

 

「で、でもでも」

 

「だあああッ! もう! 今はマジになるな。とりあえず、解決策はあるって事だ。はい、そういう事! 終わり終わり!」

 

 

本当に金を渡すかどうかはともかく、とりあえず何とかできるという安心感を与えるのは大切だろう。

貴利矢はそういうと、加古の鎖を外し終わる。

一方で明日那も同じ様な説得をミライにかけていた。

 

 

「勉強、大変だろうけど、だったら皆が教えてあげるよ。ライダーって賢い人も多いから」

 

 

頭のおかしい人も多いけど。それはグッと飲み込む。

とは言え複雑そうなミライ。すると明日那は鎖を外し終わり、ミライを抱き下ろすと背中をゆっくり摩り始める。

 

 

「生きてく事はね、確かに辛いよ。私もそれはすっごく思う」

 

 

ミライは、文字通り未来に不安を持っている。

それは仕方ない事だ。今が辛いなら、未来も暗いと思ってしまうのは仕方ない。事実、そういう人もいるかもしれない。

 

 

「でもね、やっぱり明るいって思ったほうが素敵じゃない? 私も――、すごく暗いところにいたけど、今はとっても幸せ」

 

 

明日那は、必死に鎖を外そうとしている永夢をチラリと見て、微笑んだ。

頬が桜色に染まっている。唇が無意識に釣りあがってしまう。そんな様子を見てミライもなんとなく明日那が永夢にどういう想いを抱えているのかを把握した。

 

 

「………」

 

 

ちょっと、羨ましいと思った。

とは言え、明日那の表情は真面目なものに変わる。それは何かを覚悟した、そんな様子に見える。

 

 

「人間ね、ちょっと環境が変われば大きく変わるよ。それに自分じゃムリだと思うことも、人に助けてもらって何とかなる場合がいっぱいあるよ」

 

 

辛いなら誰かが助けてくれる。きっとまだ、現実世界も捨てたものじゃないはず。

ましてや本当のミライはまだ言うても子供のはず。きっと周りにはいろんな人がいて、相談もできる。

 

 

「弱さを見せるのはね、とっても辛い事だけど――」

 

 

明日那はミライの頭を優しくなでた。

 

 

「助けてって言えば、きっと誰かが助けてくれる。ううん、今は私たちが絶対助けてみせる」

 

「……本当?」

 

「うん、もちろん」

 

 

明日那は生への渇望を誰よりも知っている。

だからダメ押しの一言を付け加えた。

 

 

「不幸ばかりを視てちゃ、本当に不幸になっちゃうよ。幸せなほうがいいでしょ?」

 

 

ミライは少々戸惑いがちではあるが、確かに頷いてくれた。

そして永夢。竜斗は現実世界では昏睡状態だ。目が覚める保障もない。

無へ戻るのは辛いだろう。でも今、竜斗は生きて、意識があってココにいる。

 

 

「しばらく幻想を生きて、どう思った?」

 

「え?」

 

「面白かったでしょ? 生きるって」

 

「でも……、それは本条くんが幸せな世界を――」

 

「つくれるよ。創作できる事は全部が全部現実にはならないかもしれないけど」

 

 

走る車とか、手からビームが出るとか、そういうのはムリかもしれない。

 

 

「だけど家族と過したり、友達と過したり、好きなものを見て笑っていた世界はムリにはならないよ」

 

「……!」

 

「どうしてボクらがココに来たと思う?」

 

「え?」

 

 

言ってしまえば、べつに永夢達じゃなくとも良かった。

刑事である進ノ介だとか、同じ眼の境遇にある渡達や、家族であった真司とか、なんだったら強引に引っ張ってきそうな士や天道とか。

でも選ばれたのは永夢だった。永夢と、貴利矢と、明日那がココにいる。

 

 

「ボク達は、ドクターなんだ」

 

「!」

 

「今は問診だよ。竜斗くんたちの具合が悪くなって、それを聞いてる」

 

 

事情はだいたい分かった。

加古は詐欺に合い、お金がない。だったらお薬は犯人を捕まえるか、なんだったらお金を用意してあげよう。

ミライは勉強がうまくいかず将来が不安だ。だったら勉強を教えてあげる。それがダメなら、勉強が全てではないと教え込ませてあげよう。

ライダーなんて結構な数ニートがいて――、ああいや失礼。まあとにかく現実世界だって、勉強ができる事が全てじゃないはずだ。

 

こんな風な荒療治。

大切なのはその方法じゃない。なんとかできる、してみせると言う意思を示す事だ。

それを口にするのは、それが通用すると思っているからに他ならない。

 

 

「夢を、夢で終わらせるのはもったいないと思う」

 

「!」

 

 

明日那とて分かることだ。

死を選んだつもりでも、間際になっていろいろと未練が湧き上がってきた。

尽きることのない欲望、だがそれが人間と言うものだ。

 

 

「死にたいなんて絶対ウソ。辛いからそう言ってるだけだよ」

 

 

ミライと加古は俯き、そして小さく頷いた。

そして永夢は、竜斗に向かって手を差し伸べる。

 

 

「キミは、ボク達が治すよ」

 

「えっ!」

 

「ボク達はドクターだけど、ライダーでもある」

 

 

自慢げに、永夢は笑った。

 

 

「奇跡くらいは起こせるさ」

 

「……!」

 

 

その時、粒子が降ってくる。

 

 

「軽い言葉だな。エグゼイド」

 

「!」

 

 

桃色と緑色の粒子は竜斗に吸い込まれると、その瞳をオレンジ色に光らせる。

 

 

「お前はいつもそうだ。上辺の希望を呟きッ、患者の視方をするフリをして、お前はいつも自分の視方だ」

 

 

竜斗は裏拳で永夢を打ち、地面に倒す。

小さな悲鳴が上がった。ミライと加古だ。その表情は紛れもない恐怖であり、思わず後ずさる。

それは死への恐怖、であるならば間違いなく生を望む様子。

だから明日那と貴利矢はまずミライ達の肩を持って後ろへ下げる。

 

 

「下がってて!」

 

「で、でも!」

 

「大丈夫! 大丈夫だから!!」

 

 

一方で地面を転がる永夢。

白衣を翻し、立ち上がる。

 

 

「お前は――ッ!」

 

「俺は、お前を否定し続ける」

 

 

竜斗が目覚めなかったのは、その実、彼が"病"であるからに他ならない。

幼稚園のときに事故に合い、以後はずっと昏睡状態が続いた。

それは死への恐怖が脳を侵食し、絶大な恐怖が『生きたい』と思わせる心をグチャグチャにしているから。

 

珍しいケースかもしれない。

事故にあったときの痛み、衝撃が『生』を塗りつぶし『死』を強くイメージさせたのだ。

けれども竜斗はやはり死にたくなかった、だが恐怖が生を死に上書きしていく。

 

生きると言うことは、つまり死ぬことだ。

楽しい事はいっぱいあるかもしれないが、どんな事を経験しても結局人は死へ向かって歩いていく生き物。

今や日本は二人に一人が癌で死ぬと言われている。病で苦しむ人を――、祖父だの祖母だのを竜斗は既に見ていた。それを味わいたくない。

ましてや事故、災害、殺人、いろいろな死の可能性が世界にはある。生きてもまた死の恐怖に晒されるかもしれない。

その圧倒的な恐怖が、『生きたい』と思う心にぶつかり、矛盾を生ませる。

 

だからこそ死んだように生きる道を竜斗は選んだ。

ずっと昏睡状態であることを心が望んでいるのだ。生きているけど、死んでいるみたい、これならば苦痛を感じることはなく生きられる。

永夢は理解していた。彼は精神科医とは全く違う位置にいるが、その実、裏で今回の件を解決するべく竜斗のことをずっと考え、調べていた。

その結果たどり着いた答え。なぜ子供の時に事故に合い、以後はずっと目覚めないのか。

 

それは、竜斗の診断結果が『タナトフォビア』であると言うことだった。

 

タナトフォビア、『死』恐怖症。恐怖こそが最大の病にして、ウイルス。

そしてそれは竜斗だけじゃない。程度はあるが、ミライは学校恐怖症(スクールフォビア)、加古は窃盗恐怖症(クレプトフォビア)である。

その実、永夢達の前に立ちはだかるのは奇病だったのだ。だからこそ、竜斗の体の中に入った『パラゼイド』は、そのウイルスたちと融合する。

加古は詐欺にあったことはもちろんだが、自分の持っているものを取られる事を異常に恐怖してしまう。

ミライは将来の不安はもちろんだが、なによりも学校と言う場所が怖くてたまらない。

竜斗が目覚めないのは死を異常に恐怖するからだ。

そう、この世で最も強い、ウイルスは『恐怖』。

 

 

『ヴゥウウアアアアア!!』

 

「!!」

 

 

衝撃波が発生し、永夢達は思わず地面に膝をつける。

 

 

『良いぞ! これだ、この力だ!!』

 

 

パラゼイドは死んでいなかった。

爆発時に核を粒子とし、エピローグのバックルに逃げ込んだ。

そして今、ライダーの本質、『怪人と同じ力』であるバグスターウイルスとなって、竜斗に直結する。

竜斗が最も強い『フォビア』を抱えていた。だからこそその体がモンスターへ変わっとき、異常なまでのエネルギーが迸る。

 

 

『生きとし生けるものは、やがて死へと誘われる。恐怖に塗れ! 苦痛に溺れ! 深い絶望の闇の中に消えていくのだ!!』

 

 

濁りきった声が聞こえる。

永夢達の前に現れたのは、最強のバグスター、ゲムデウス。

 

 

『それは決して変える事のできない――ッ、運命!!』

 

 

"ゲムデウス・フィアー"。

そのカラーリングはピンクと黄緑。まさにエグゼイドをイメージさせるものだった。

 

 

『人は病を恐れ、病は人を恐怖させる。それは純粋なまでの相互関係。それを拒むのは、死のみ!』

 

 

エグゼイドの否定。それはやはり、究極の絶望に他ならない。

 

 

『お前達は病を治す。なんのため? 次の病へ導くためだ!!』

 

 

ならばそれも一興か。

ドクターに対する最高の否定は、永遠にドクターであれと言う世界を創ること。医者が必要であり続けるほどの病を蔓延らせることだ。

 

 

「ハッ、くっだらねぇ」

 

『!』

 

 

ニヤリと笑い、立ち上がる貴利矢。

ジャケットを靡かせ、呆れた様に首を振る。

 

 

「大層なこと言っちゃってる風に聞こえて、結局人を脅かそうとする他の連中と同じじゃねーか」

 

『なに……?』

 

 

次は明日那が立ち上がる。

尻餅をついていた彼女は、お尻を払いながら、キッとゲムデウスを睨みつけていた。

 

 

「医療はね、患者さんを救う事はもちろんだけど、なにより病に打ち勝つ方法を探すことでもあるの」

 

『ハナエル……! 分かったような口を聞くな! お前は所詮――』

 

「分かるよ。だって私はポッピーだもん。あなた達がそうした」

 

 

かつては不治とされ、そして多くの人間が命を落としていた結核やHIVも、現在では発展した医療が治療の道を照らしてくれる。

全てはドクターや医療に関わる人たちが導き出した希望だ。

 

 

「――まあ、丁度いいか」

 

 

そして永夢が、立ち上がる。

その時、風がどこからともなく吹いた。永夢の前髪が上がり、赤い目がゲムデウスを睨みつける。

 

 

「切除する手間が省ける。一石二鳥だ」

 

『ッ?』

 

 

その時、足音が二つ。

白衣を靡かせた男達が、虹色の道を歩いてくるのが見えた。

 

 

「どういう状況だ。説明しろ研修医」

 

「おいおい、なんでゲムデウスのヤツが復活してんだよ」

 

 

永夢の隣に立ったのは(かがみ)飛彩(ひいろ)。そして明日那の隣には、花家(はなや)大我(たいが)が姿を見せる。

 

 

「え!? ふ、二人ともっ、どうしてココに!?」

 

 

驚き、目を丸くしている明日那だが、貴利矢と永夢は背後にデータ音がするのを聞いていた。

どうやらディエンドが撃ったの『おまけ』が飛彩達と言うわけだ。データ体の分身ではなく、ちゃんと元の世界から連れてきているらしい。

ヒイロは糖分補給の途中で。大我はニコお嬢様からの命令――、もといおつかいの途中でディエンドの声を聞いた。

急患がいるから来い。乱暴な言葉だが、クロスオブファイアに直接情報を撃ち込まれた。そして見せられる永夢達の『現状』。

 

 

「で、来てくれたってか? 仲間想いだねぇ」

 

 

貴利矢はからかうように笑いながら、ゲーマドライバーを取り出し、腰へ装着する。

 

 

「ふざけるな。俺が来たのはお前達のためではない。患者のためだ」

 

 

飛彩もまたゲーマドライバーを装着する。

 

 

「さっさと終わらせるぞ。じゃないと限定プリンがなくなっちまう」

 

「……何を買わされてんだよ」

 

 

貴利矢の冷めた視線を無視して、大我もゲーマドライバーを装着した。

 

 

「永夢、私も手伝うよ。いいでしょ?」

 

「ああ。頼む」

 

 

明日那は嬉しそうに微笑むと、バグルドライバーを装着した。

そして永夢もまた、ゲーマドライバーを装着すると、ガシャットを回しながら構える。

 

 

「覚悟しろゲムデウス!」

 

『!』

 

「竜斗たちの運命は、オレたちが変える!」『マイティアクション! エーックス!』

 

 

正面から見て右から大我、明日那、中央に永夢、飛彩、貴利矢が並び、ガシャットを起動させた。

飛彩は無表情で。大我は銃を撃つように。貴利矢はやはり笑いながら。

そして明日那。両足を広げ、構えるガシャット。

 

 

「………」

 

 

タイトルはイナンナケージ。

彼女は少し寂しげな表情を浮べると、グッと力を込める。

すると炎が迸り、そのタイトルが『ときめきクライシス』へと変わった。

 

 

『タドルクエスト!』

 

『バン! バン! シューティング!』

 

『爆走バイク!』

 

『ときめきッ! くらいしすっ!』

 

 

五人の背後に広がり、並ぶ、タイトル画面。

そこからはブロックが、宝箱が、ドラム缶が、トロフィーが飛び出して周囲に設置されていく。

中でもブロックはミライと加古を守る様に配置。

 

さらにそれらアイテムはゲムデウスにぶつかると、怯ませて後退させていく。

そして五人は同時にポーズを取った。永夢は腕を大きく旋回させ左手を開いて前に、その後ろにガシャットを構える。チャキっと音がした。ガシャットの向きを変えて左手に持ちかえた音だ。

そして一気に下に、ゲーマドライバーへ装填する。

 

飛彩はガシャットを胸の前に。

大我は銃を回すようにドライバーへ。

貴利矢は自身の体を回転させ、明日那は微笑みながらターン。

 

 

「変身!」

 

 

五つの声が重なる。ガシャットの音声もまた同じくして。

 

 

『レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム!』

【バグルアーップ!】『ドリーミングガール♪ 恋のシミュレーション♪ 乙女はいつも と・き・め・き・クライシス!』

『ワッチャネーム!?』

 

 

「これより、恐怖(フィアー)切除手術。ならびに竜斗たち眼の救助を行う。執刀医はこのオレ。究極の救済、仮面ライダーエグゼイドが行う!」『アイム ア カメンライダー!』

 

 

並び立つレベルワンと、青い複眼のポッピー。

 

 

「頼むぜ、みんな!」

 

「ああ。俺に切れない物はない」

 

「フン! ミッション開始(スタート)

 

「おお! ノリノリで行くぜー!」

 

「うんッ! 永夢の敵は、ポパピプペナルティだよ!」

 

 

上半身ごと頷くエグゼイド。

回転するエフェクトから、皆それぞれ自分の武器を掴み取る。

 

 

「よし! ノーコンテニューで、クリアしてやるぜッ!!」

 

 

大きな体のレベルワン達はドタドタと動き出し、仮面ライダーポッピーも大きく腕を振ってそれに続いていった。

 

 

 






『エネミーデータ』

・ゲムデウス フィアー

パラゼイドが竜斗と中にある『病』と融合した姿。
通常バグスターウイルスとはコンピューターウイルスの一種であるが、今回は『恐怖』から具現。
見た目は過去に2パターン確認されているゲムデウスと同じだが、カラーリングがエグゼイドを意識したものとなっている。


『ライダーデータ』

・ディエンドコンプリートフォーム

仮面ライダーディエンドの強化体。
ケータッチにある紋章をタッチする事で、劇場版を再現したエリアを作り出す。
ライダーだけでなく道具や人、怪人をも召喚可能であり、ディエンドが命令すれば思い通りに動く。
さらに仮面ライダーに重なることで、カメンライドを行うことが可能であり、ディエンドが自ら動くことも可能である。
純粋な火力や、攻撃の速効性はディケイドに劣るが、トリッキーな戦い方ではコチラの方が上である。


………

ちょっとまだ己の中のランキングは決められてないですが、現状夏映画だとプロジェクトG4が一番好き(´・ω・)b

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