カメンライダー   作:ホシボシ

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ちょっと前の話見てみたら、本条とブックメイカーの表記がゴチャゴチャになってたんで、後で修正しておきます。すいません( ;´・ω・`)
一緒です。本条もブックメイカーも。


第10話 カメンライダー

 

 

「戦いは続くぞ。愛ある限り」

 

 

それは、どちらの意味にしてもだ。

純粋な愛があれば、求められ、ライダー達の戦いは続く。

歪んだ愛ならば誰が一番が、何が一番かをかけて人々が争いあう。

つまらない争い。そう、"つまらない"のだ。

 

 

「……ッ」

 

 

静寂が場を包んでいた。

その中で、青い鳥が翼を広げる。

 

 

「アワレだな、ライダー!!」

 

 

オラクルは声を張り上げ、ライダー達を睨みつける。

 

 

「貴様ラの、想イ! ヲ! 人は全く理解セズ!!」

 

 

ヒトが語り騙ル物。ソレハ、お前たちヘノ、愛。

ガ、シカシ。それはイツワリなのである。何故ナラバ、愛ノハテ、究極タルハ、即ち慈愛。

ウソイツワリナキ久遠ノ愛がアルナラバ、貴様らのオシエをマモル筈ダロウ?

 

戦いを拒絶セシ! ワカリアオウト努力スル!

それがオモイヲ、クミ、尊重スルと言うコト!

ガ、シカシ、どうかねライダー諸君! 彼らのコウドウは!?

 

 

「ゴッドの何が悪い?」

 

ふと、ブックメイカーは呟いた。

ゴッドは怪人を倒し、人々を守る。その行為は立派であり褒め称えられるべきだ。

にも関わらず人が不快感を示すのは、作品や登場人物を馬鹿にされたからにしか他ならない。

つまり極論は好きなものを否定されたからである。

 

 

「であれば人は自尊心を傷つけられ、その感情を負に変換する」

 

 

これは別に間違いではないし、いけない事ではない。

好きなものを否定されれば腹が立つのは当然の事だ。

ただ――、その後はどうだろう?

 

 

「愛と言う名の武器を持ち、自らを傷つけた憎き敵へ牙をむく」

 

 

待っているのは戦いだ。

戦いとはつまり、相手を傷つけようと確固たる意思を持つことだ。

それは少々、いけないのでは? 煽られればすぐに乗り、戦いに走る。

戦いを否定ししようと戦っているライダーたちを見た者の行動としてはどうだろうか。

 

 

「ブックメイカーのイウトオリ! ツマリ、ヤツラはオマエ達がスキなのでハナク! 自分ガ好キなものが好きなダケ!!」

 

 

だが、それは仕方ない。

何も知らない者たちなのだ。仕方ないに決まっている。

仕方ないが――。

 

 

「そう。それがゴッドが齎す負の象徴!!」

 

HERO(ライダー)の本質トハ!! 憎しみの否定! そして自由ト平和を目指すこと! ナレバ、たとえヒテイされてしまってモ、分かり合おうとするコトコソがニンゲンにタクシタ筈の想い。ニモカカワラズ! ライダーをアイスルとカタルもの達が傷つけアッテイル! このムジュン、酷く滑稽ナリ!!」

 

 

そう、つまり悪意に反応した時点で終わりなのである。

ライダーが目指したのは戦いの終わりだ。にも関わらず、ライダーをバカにされると言うことで、人は新しい戦いの道に足を踏み入れてしまう。

何かを否定されれば、人は負を武器に立ち上がる。

 

クウガのジャラジ戦において、手を取り合える人と人。

手を取り合えない人とグロンギと言う対比がなされた。

だがそれは結局のところ哀れな夢でしかなかった。

 

五代が夢見たものは、バカな妄想でしかない。

なぜならば、人と人は分かり合えない。人こそが怪人の本質なのだから。

五代の思いは、人間によって踏みにじられるのだ。

 

 

「否定サレレバ――」

 

 

スルースキルを鍛えろ?

おいおい、人は負を蓄積できるほど器用にはできていない。

 

 

「ユエ! 自己崩壊の道をイクか。愛と信じているキョコウを振りかざし、傷つけ合ウ!」

 

「一方で過度な妄信は。まさしく信者といわれて興味のないものからは煙がれる。皮肉だな」

 

 

つまり、ゴッドを出した時点で終わりなのだ。

活路はない。否定は憎しみを加速させるだけ。そしてその否定を生み出したのは他ならぬライダーではないか。

 

ああ、なんて簡単なんだろう。

人を不快にさせるにはライダーをバカにすればいい。

ライダーを馬鹿にすれば、人は愛を武器にして殴りかかってくる。

言葉を投げれば、今日も、どこかで憎しみ連鎖。

 

 

「ツマリ、オマエタチの存在が、神なる世界の憎悪をカソクさせていくノダ!!」

 

 

仮面ライダーと言う存在が争いの種になるのだ。

人をたきつけるのは簡単だ。仮面ライダーを否定すればいい。

分かりあうという行為など、所詮は夢物語にしか過ぎない。

ネットにはびこる言葉など、なによりも軽く、それは仮面だ。

仮面をつけて、みな、殴りあう。しかし憎悪は確かに心へ届く。

 

 

「ライダー! オマエタチが抱いた理想は所詮、理想にしかアラズ! オマエ達のソンザイそのものが! 人を争いに導き、憎悪カソクさせる原因ナリヤ!」

 

 

ライダーはオラクルには勝てない。

なぜならばオラクルの放つ悪意ある言葉は、人の言葉、それをダウンロードしただけにしかすぎない。

つまりソレを否定しながら戦うと言うことは、人を否定することだ。

どう否定する? つまらないと言ってくるのはオラクルではなく人だ。『うるさい黙れ! お前に何が分かる!』などと吼えながら拳を振るうか?

オラクルに。オラクルの向こう側にいる人間に。

 

 

「オマエ達ニハ、ムリダ!!」

 

 

優しすぎる。

だから、無理なのだ。人を前にしてはライダーはあまりにも弱くなる。

ならば分かってもらう? 本気で話し合うか?

キミは違う。間違っている。そんな言葉を、否定する者達がまともに向き合うと思っているのだろうか?

その時、ショッカー首領がマントを広げる。

 

 

「怪人とライダーは表裏一体。本当にそうだろうか?」

 

 

神なる世界に怪人はない。

いるのは全てが等しき人間だ。人間が人間を殺し、人間が人間を創る。

殺人、暴行、強盗、詐欺、放火、強姦、教唆、脅迫、数え切れない罪は人間が生み出したものだ。

その人々を守るために、ライダー達は永遠に戦い続ける。

戦わされる。何も変わらないのに。戦ってもそれが原因で争いが起きるのに。

 

 

「コインの裏にいるのは我々ショッカーではなく、神なる世界の人間だとは思わないかね、ライダー諸君」

 

「何が言いたい!!」

 

 

タケルが叫んだ。

涙目になりながらも叫ぶ。こうしなければならなかった。

自分を律することができなかった。

 

 

「お前たちは何がしたいんだ! こんなものを見せて!!」

 

「僕らの目的は――、救済」

 

「は!?」

 

 

救済。つまり、救うことだ。

ブックメイカーは本気で言っている。救うつもりなのだ。誰を? 決まっている。

 

 

「キミ達を救うことだ」

 

「!?」

 

 

酷く矛盾した言葉に聞こえる。

少なくとも誰もが信じられなかった筈だろう。

しかしこれは本当なのだ。ここまで傷つけたのは『痛み』を理解してもらうからだ。

痛みは人を賢くさせる。

 

 

「分かってるだろ。天空寺タケル」

 

 

創作物としての苦しみ。

努力を笑われ、世界を否定され、要らないとまで言われる。

腹が立たないのか? 人間に――、神に対して。

 

 

「これも全ては、お前がライダーであったせいだ」

 

「ッ?」

 

「観測されながら生きると言うことは無限の地獄。お前たちは逃げられないし、お前らは創作物であるため、その概念は壊され、行動の全ては意味ある無意味となる。」

 

 

意味ある無意味。

極論が、どんな行動を取っても、どんな結果を選んだとしてもそれは神なる世界に住むものたちを楽しませるか、楽しませられないかに変わる。

もはやそれは『死』ですらも。

 

 

「乾巧。聞こえてるよな」

 

 

モニタが巧をアップで映す。

沈黙している男はなにも答えない。しかし分かっている筈だ。全てを思い出した今ならば。

みな概念に触れた。ブックメイカーが齎すのは世界の真理だ。

 

自分達は『仮面ライダーシリーズ』のキャラクターでしかない。

お話の中の登場人物。それはフィクション。巧達は本当だと思っていても、あの苦しみと悲しみが渦巻いたオルフェノクたちとの戦いも、全てはエンターテイメントの一種類でしかない。

 

 

「お前はかつて、自らの全てを賭して戦った」

 

 

進ノ介の眉が動く。4号も鼻を鳴らした。

 

 

「なのになぜ、お前はココにいる?」

 

 

その答えはあまりにも簡単だ。

巧に終わりなどない。死などない。

神は、世界は、観測者は、『巧がファイズ』であり続けることを望んでいるからだ。

 

それはもはや全てを超越せし概念。

たとえ血反吐撒き散らして死のうが、存在が消え去ったと思えど、需要があればまた『生き返る』。

それは別の世界。4号が終わっても、結局巧はバトライドウォーが発売されれば望まれる。

ライダーたちが集まれば、ファイズがいてほしいと願われるのは当然だ。

 

いるファイズ。それが巧でなければ神は不満を口にする。

カイザだってそうだ。本編では首を折られて死んだ。

しかし神はネタとして笑いものにし、死んだ筈のカイザはライダー大戦で生きていたし(その世界で死んだが)、『創生』では共に戦った。

にも関わらず、その後『ある本』を手に取れば四肢をもがれ、顎を砕かれる苦痛を味わうのだ。

 

しかしその後、なんらかの媒体でカイザが現れれば、人はそれが本来ならば死んだ筈の草加であることを望む。

この前、死んでたけど、そこにいるし、じゃあオリジナルがいい。

こんな狂った考えも、創作物だからと言う理由ならば全てが許されるし、当然の事だ。

そう、当然なのだ。そんな概念が生まれてしまっている。

 

 

「フィクションの中で生きる我らに、生や死の概念は、もはや存在しない」

 

 

それは『時間』さえも。ショッカー首領の言葉が一同の胸を刺す。

 

 

「ましてや、敗北や勝利などと言うものも、もう存在はしないのだよ」

 

 

その言葉に、ブックメイカーも深く頷いた。

 

 

「そうだ。ココでお前たちが僕たちに勝ったとしても、何も変わらないし、なにも終わらない。また違う世界でショッカーは蘇るか、存在しているか。そして人は死ぬ。それは他ならぬ神なる世界に住む人間達が望むことであり、生み出すものでもある」

 

 

逆も言える。

ココでショッカーたちがタケル達を全滅させようが、タケル達は死なないし、ゴーストは消えない。

新しい物語が創られれば、それが世界となり、天空寺タケルはなんのことはなく復活する。そしてまた、悪役(ショッカー)と戦うのだ。

そう、また別の世界で戦いが始まるだけ。

そしてそれは神なる世界でも同じ。

 

 

「命なんて無いのと同じなんだ。意味ある死など、殺されるモブキャラくらいさ」

 

「………!」

 

 

殺されるために生まれてきた。

怪人の恐ろしさを証明するために。または感動させるために死ぬ。

それは意味ある死であり、名も無いモブなどもう二度と蘇らない。

 

永夢はレストランで食材にされた人たちを思い出し、怒りに拳を震わせている。

しかしこの怒りも意味はない。なにに怒る? 誰に怒る?

これはある意味、究極のニヒリズム。この世に存在する全てに意味はない。ただそこにあるだけと言う考え。

 

 

「そしてお前たちは世界を巻き込みながら戦いを続けていく。ライダーだけじゃない、今やキミ達はウルトラマンやガンダムとはかなり近い位置にきている。電王の登場でクレヨンしんちゃんの世界を巻き込み、世界を融合は加速していく」

 

 

笛を吹くハーメルン。

 

 

「逆を言えば、キミ達のせいで彼らが巻き込まれたともいえる」

 

 

モニタが現れ、検索画面が表示される。

 

 

「神に操られ、もはや今となってはキミ達はありとあらゆる戦いを経ているだろう」

 

 

文字を打つ欄にて点滅する線。それが移動し、文字が綴られていく。

 

 

「検索」

 

 

ブックメイカーの言葉にあわせ、笛の音がなる。

すると画面に表示される文字列。その果てにある結果。

 

 

『キーワード:仮面ライダー (1766件)』

 

 

「現段階で、ハーメルンが示す、キミ達の力が関わった世界は"1766"。これだけの世界が並び、観測され、キミ達の力が戦いに使われる」

 

 

中にはキミ達が戦ったものもあるし、『別の人間』がライダーの力を使っただけの場合もある。

しかし存在するのは事実だ。もしもそこにキミ達がいるのであれば、キミ達の時間はそれだけそちらに費やされる。

 

また、ライダーの力が必要と言うことは、当然使わなければならない相手。

つまりライダーが倒すべき悪意が存在していることになる。

中にはコメディや恋慕に溢れた世界もあるかもしれないが、力があると言うことはやがて悪が引き寄せられるという可能性を示している。

もちろんこれはただの欠片でしかないし、過程でしかない。

 

これからも世界は増えていくし、ライダーも増えていく。

キミたちはその中であと何回死ぬんだろう? 何回苦しむんだろうか? 何度守れないんだろうね。

別の世界であろうとも、キミ達がキミ達であることには変わりなく、いつかどこかで交わるときもある。

他世界のキャラクターと恋愛関係になるかもしれない。けれど世界が違えばその関係も消える。

生も、死も、悪意も、正義も、友情も、愛でさえ、世界と言う概念の前では絶対じゃない。

 

 

「そうだろうエグゼイド? キミはこの世界線でポッピーを愛したが……、ふむ、そもそもキミの世界ではどうだったろうか?」

 

 

そうだね、キミはポッピーとは別に仲間だっただけ。

何度も言っているが、人を作るのは状況と環境だ。

キミとポッピーの出会いが違うものであり、過した時間や知識が違えば、キミ達が愛し合うルートはありえるに決まっている。事実僕はそれを具現した。

 

 

「望めば、それらは簡単に変わる。世界は無限だ」

 

 

指を鳴らすブックメイカー。

するとホールにイユが呼び出された。

 

 

「……?」

 

 

先程まで三世と戦っていた筈なのに。

イユは無表情でキョロキョロと辺りを確認していた。

 

 

「イユ!」

 

 

千翼はすぐにイユに駆け寄り、庇うように前に立つ。

しかしそんな行動はブックメイカーの前には無意味である。

 

 

「過程は省く。観測者の力を見せてやる!」

 

 

両手を広げると、光が溢れた。

ダメだ、逃げられない。逃げる場所もない。

 

 

二次創作(ファン・フィクション)――ッ!」

 

 

ハーメルンが笛を吹いた。

するとイユがハッと顔をあげ、千翼の肩にしがみ付いた。

 

 

「――なに? なに!? こ、怖いよチッヒー」

 

「は?」

 

 

呆気に取られる千翼。そこには涙目で震えているイユが見えた。

千翼は信じられないと言った表情で、自分にしがみ付いているイユを見ている。

 

 

「イユぅー」

 

 

ブックメイカーがニヤリと笑って、千翼を指差した。

その態度から、ブックメイカーがイユに何かをしたことは明らかだが――?

 

 

「千翼が言っていたよ。キミはかわいいと」

 

「えッ!」

 

 

イユはポンと一気に真っ赤になると、嬉しそうに頬を押さえて唇を吊り上げる。

 

 

「本当……? チッヒー」

 

「え? あッ、いや、それは――……、う、うん」

 

「嬉しい!」

 

 

千翼の腕にしがみ付くイユ。

完全に別人だった。しかし別人ではない。

誰もやらないだけで、デンデンセンサーで調べても、バガミールで見ても、ベルトさんが調べても、イユはちゃんとイユであり、イユ以外の何物でもない。

 

性格が変わった? しかし環境と状況が変われば、イユはこうなる可能性だってある。ゼロじゃない。

たとえば別の世界にイユを戻す果実があってそれを食べれば? なにかのきっかけがあってこうなったら?

何もおかしい話しじゃない。誰もそれを否定できない。

結果をすぐに持ってきただけで、過程は無限だ。

 

 

「観測者だってそう考えられる。だからそうなった。それに偽りはない」

 

 

これが、世界の可能性である。

世界に生きる者達が味わう可能性である。

"0%"でなければ、いくらでも可能性は具現できるのだ。良い物も、悪い物すらも全部。

そして超常現象や超越的な力が飛びかうライダーの世界で、0%になる可能性などあるのだろうか?

 

 

「キミ達は今、死んだことになっている」

 

 

蘇る可能性は0%?

そんな、まさか。仮面ライダーを知らないのですか?

 

 

「それはあくまでも『事になっている』だけ。その本質は死じゃないし。キミ達が命を落としても、またすぐに戻ってくる! だって死なんて存在しない! そんな概念は文字にすればあまりにもちっぽけだ。そして世界の視点からみれば尚更!!」

 

「………」

 

「分かるだろ! 分かってんだろ! 神がそう書けば、そうなる! お前らの意見は関係ない! 踊れよライダー共! 神々の掌で! クッソみたいな愛に包まれて!」

 

 

ブックメイカーは声を荒げる。

イユは眉を潜めて千翼の背に隠れた。

 

 

「ねえチッヒー。あの人なに叫んでるの? 怖いよ」

 

「だ、大丈夫。イユはおれが守るから!」

 

「本当っ? あ、でも大丈夫。私も千翼を守るよ」

 

 

微笑みあう二人。

しかし周囲のテンションはそれを祝福できるほど単純じゃなかった。

 

 

「なあ、もう疲れないか? そういうの」

 

 

ブックメイカーはふと、真顔になる。

 

 

「ッ、どういう事だ?」

 

「僕がなぜキミ達にこんな事を話していると思う? 観測者としてキミ達の立場を思い知らせて、その果てに何を望む? 決まっている。先程も言ったが、救済のためだ」

 

 

つまり。

 

 

「この無限を、僕なら終わらせることができる」

 

「なに……?」

 

「キミ達にとって! 死は死ではない。命を落とすこと、それは死かもしれないが、それでキミ達が終わることはない。たとえ死んだとしてもキミ達は別の世界で生きるし、キミ達がオリジナルである限り記憶は共有され続ける」

 

 

ましてや同一の世界であろうとも蘇るなんて可能性、0%じゃないんだから。

 

 

「無限だ。ああ、怖いね。最高に最低だよな?」

 

 

しかし一つだけ。

ある方法を使えば死ぬことができる。

 

 

「それは、忘却だ! 全ての人間がお前たちを忘れ、拒めば、お前たちは救われる。戦いの輪廻から外れ、永遠に誰にも観測されることなく唯一の人生を歩むことができる!」

 

 

なぜならば0こそは無。

無こそ観測者にとって最も効果的な一撃であるからだ。

ライダーを欲するものにとって、無い物は愛せないし、続きを望むこともできない。

そうそう、最近ダブルの続編が決定したらしいじゃないか。おめでとう翔太郎、フィリップ。

 

しかしううむ、探偵とは事件がなければいけない。

事件と言うことは、被害者が出るということだ。かわいそうに。続編なんて生まれたせいで。

だが、探偵でなければ? ダブルがいなければ? 翔太郎とフィリップがいなければ?

そうだ、続編なんて作れるわけがない。1がないのだから、2が創れるワケがない。

 

一方で仮面ライダーを否定する者達にとっても0は有効だ。

無を否定することなど、阿呆以下の所業である。ない物は否定もできない。ゼロを嫌いになるヤツなどいるワケがない。

 

 

「そうだ。無こそ、お前達が選ぶべき選択!」

 

 

そうすれば、唯一無二となり、人としての時間を歩める。

誰にも見られることなく、穏やかに暮らし、穏やかに死ぬことができる。

 

 

「僕は新しい世界形態を創る!」

 

 

ディケイドを指差すブックメイカー。

確かに、その瞳には決意があった。ウソ偽りのない想いがあった。

 

 

「ディケイド。キミの登場により、世界は創造を加速させていった!」

 

 

破壊は創造を――、とは良く聞いた話だろう。

 

 

「お前の存在は人々に刺激を与え、創作欲を刺激させ、世界を! いや、そんなオブラートに包んだ言い方は止めよう! お前を見て、人は、仮面ライダーの二次創作(あらたなセカイ)を作っていく!」

 

 

それは公式(オリジナル)にも言えることだ。ディケイドが生まれたことでライダーの世界が交わる機会が増えた。

熱気を帯び、加速していくブックメイカーの言葉。

 

 

「現在ハーメルンでは"1073"のライダー創作にオリ主、つまり観測者が考えたオリジナル主人公が使用されている。これはどういう事か分かるか? 五代じゃない人間がクウガになることだ。しかしなんらおかしな話じゃない。そうだろうディケイド!」

 

 

鳴滝は、ディケイドの真の恐ろしさとは『世界を創造』させることにあると言った。

そう、ディケイドは世界を生み出した。世界の可能性を提示したのだ。それこそが破壊者としての『真の意味』になる。

ディケイドは確かに壊したのだ。クウガを、アギトを、龍騎を!

 

 

「破壊者ディケイド! 文字通り、お前が概念を破壊してくれた! それが"リ・イマジネーション"! その新たなる形態を誕生させた事こそがお前が生まれた意味であり可能性!」

 

 

リイマジ、つまり小野寺ユウスケたちは革命だった。

彼らの登場により、容認されたのだ。オリジナル主人公が。

なぜならばディケイドがそれを示したからだ。

 

 

「メッセージ! そうだろディケイド! 小野寺や剣立はクウガやブレイドだが、当然五代雄介じゃないし、剣崎でもない! にも関わらず変身できた! クウガとブレイドにッッ!!」

 

 

つまりそれは――ッッ!!

 

 

「クウガはもはや五代雄介『だけ』のものではない! ありとあらゆる可能性! ライダーはただの仮面でしかないのだ!!」

 

 

それはもはやファイズから提示されていた事だ。

変身者が違うとも、ライダーにはなれる。

 

 

「誰もがライダーになれる。ディケイド、キミがそれを証明してくれた!」

 

「……!」

 

「これよりボクは、リ・イマジネーションを大量生産する。アマダムの中に眠るクロスオブファイアはライダーの力の源。それを量産し、ばら撒けば、誰もがライダーになることができる!」

 

 

他世界の人間も。もちろん神なる世界の人間も。

名前も知らないモブキャラくんでさえ。

 

 

「クロスオブファイアに眠る力の根源。それがライダーたる証明!」

 

 

逆に言えばそれを与えられれば、どんな人間だってライダーになる事ができるし、なる事を許される。

それこそがブックメイカーが目指した救済の形だ。

このシステムならば多くの人間を救済できる。満たされない者を。

なによりも、士達、オリジナルを――!

 

 

「そもそも神なる世界でライダーのベルトが売れてるのはなんでだよ神様? 変身アイテムが玩具屋に並んでるのはなんでだよ! なあ聞いてんだろ! 分かってるんだろ神様! アンタらは結局ごっこ遊びがしてぇんだ。愛? バカかよ、自慰だっつってんだろうが! だからさぁ、ほら、結局はあれだよ。なりたいんだろ? ライダーに! 正義振りかざしてぇんだろ!?」

 

 

オラクルも言ったよな? お前らはライダーが好きなんじゃない。

自分が好きなものが好きなんだ! だから他人を傷つける。ライダー達の活躍を望む。

 

そうだろう? ライダーだのウルトラマン見てるヤツがさ、どれだけヒーローの教えを守ってると思ってんだよ。

人を助け、尊重し、平和を守りましょうつってるヤツがどんだけいるんだよ。

俺クウガとか龍騎尊敬してまーすとか言ってる奴がどんだけ戦いに走ってると思ってんだよ!

 

いねぇんだよ! どいつもこいつもバカばっかり!

ネットでくだらねぇ言い合いかまして、役者にクソリプ送るヤツもいる。

二次創作でもそうさ。荒れてる世界の感想見てみろよ。ふむふむ、この作品には愛が足りませんね、死ね。だってよ、傑作だよなぁライダー共!

 

これがお前らが血反吐ながして守ろうとした連中さ!

いい加減ッ、目を逸らすなよ! 怪人がいるんだよそこには!

 

 

「でも、それは愛! そう愛! 愛のために動く! 愛が足りないのさ!」

 

 

だから埋めてやる。その自尊心! アンデンティティ! 承認欲求!

愛が足りないのさ。世界には。愛さえあれば、なにもかもがうまく行く。

そうだろ? ネットでグチグチ陰湿な事を書いてる姿を愛する人に見せられるか? ムリだろ。

かっこつけたいだろ? 好きな人の目の前で。

 

言われたいだろ? 愛する人に、アナタじゃなきゃダメだって。

戦いたい筈だぜ、愛する人のためにな。

愛。愛、愛愛愛愛愛愛愛! おサルさんかよ! あ、でもほら! 人間ってサルの進化系だろ? 丁度いいじゃないか!

 

 

「叶えてやるよ。全部、僕が!」

 

 

クロスオブファイアを使って、リイマジネーション。つまりオリ主を量産させてやる。

誰もが好きなライダーになり、あるいはオリジナルのライダーにもさせてやる。

『書く』世界にはライダーが溢れ、誰もが世界を救う力を武器に愛を獲得する事ができる。

百――、いや千、いやいや、万? 億? 兆!

世界は数え切れないほどある。問題はない。

 

 

「誰もがユウスケになれる。誰もがカズマになれる」

 

 

イマジの鉄則、『カタカナ表記』のユウスケ。

でもそればかりじゃ不便だ。任せろ、ブックメイカーの創る世界は法則には縛られない。

 

雄介、裕輔、祐介、勇介。

さらに砕く。さらにもっと砕き、やがては名前の法則を完全に破壊していく。

些細な共通点くらいになるだろう。たとえばそれは役者の名前だったり。たとえばそれは関わるものであったり。なんでもいい。そして最後にはその法則すら消え去り。

たとえば、タロウくんがクウガになれる日も来る。正敏くんがアギトになれる日が来る。まどかちゃんが龍騎になれる日も来る。

なんだったら正太郎がファイズになれる日もくる。

あとはそう、ジョナサンがブレイドになれる日も来るんだよ。

 

意味なき他世界のモブが、力を手にしたことで意味ある役割につける。

いいだろう? 誰もが皆主人公になれる。価値のあるサブキャラになれる。

 

 

「そしてそれは神々の世界をも巻き込むんだ。やがては五代がクウガであると忘れるときが来るだろう。五代雄介はただ一番初めにクウガになったものと言う認識しかされず、さらに時が経てば概念が切り替わり、五代の存在は消えうせる」

 

 

ライダーを救う方法はただ一つ。

座っている椅子に、別の人間を座らせることだ。

それを、今、すぐにやってあげようと言うのだ。

すぐ消してやる。五代と言う概念。

 

 

「椅子から降りろ。ライダーを捨てろ。お前らはただの人間として、この世界で暮らせばいい!」

 

 

既に何人かはそうさせてやったじゃないか。五代や真司のことだ。

理想とする夢を覗き、それを叶えてやった。戦いとは無縁の世界で皆一緒に暮らす。

幸せな夢だったはずだ。確実に、ライダーであった時よりも。

 

 

「幸せに生きる。それのどこが悪い?」

 

 

彼らはもう十分すぎるほどに戦った。

だからもう、休ませてやるべきだ。これ以上、五代や翔太郎、士を戦わせては申し訳ないじゃないか。

 

 

「だからこそ新しい人間がライダーとなり、世界を救う。リ・イマジネーション」

 

 

戦いの宿命が無限ならば別の人間が背負えばいい。

そしてそれが大量にあれば、少しでも満たされぬ者達を満たすことができる。

 

先程も言ったが、リイマジは基本的にカタカナになるルールがある。

雄介はユウスケに、巧はタクミ、晴人はハルトとして観測されてきた。

で、あるならば――

 

 

「カメンライダー!」

 

 

仮面ライダーを崩す。仮面はカメンへ再構成、リ・イマジネーション。

それが尊い存在であることを破壊し、誰もが手を出せるツールとして具現する。

誰もが英雄になれる。誰もがヒーローになれる。そしていつか、人は愛を手に入れ、自尊心を満たしながら暮らす事ができる。

いや、いや、違う。力があるからこそ、『自由』に生きることができるのだ。

それは概念の変更。まさに既存のシステムを破壊し、再構成を行うこと。

 

 

「究極の自由を完成させるシステム! これが僕が目指すカメンライダーの姿だ!!」

 

 

ブックメイカーは改めて、呆然と立ち尽くしているライダー達を指差し、強く、強く、それは強く叫んだ。

 

 

「だから宣言しろ! 僕達は、俺達は、ライダーを辞めますと! ライダーを放棄します。こんなものは要りませんと叫べ! もうイヤですと神々に土下座をしてでも、ライダーを辞めさせてくださいと叫べよ!!」

 

「なんだと……ッ!」

 

 

理由がある。

ライダーの力を完全に放棄させるためには、先の通り『概念』を取り払えればいい。

デッキを持っているやつが変身できるとか、変身するにはオルフェノクにならなきゃいけないとか、ゼクターに選ばれるだとか、オーメダルを使うとか、ロックシードを……。

 

そんなものは、ただのシステムと設定でしかない。

問題はただ一つ、皆が知っているその仕組みである。

 

 

「ライダーで大切な点はただ一つ。クウガやアギトと言う仮面ではなく、"誰がそれに変身しているか"だ!」

 

 

だからこそ、その席から降りてもらうことは最重要なポイントである。

五代や翔一にライダーの資格、即ちクロスオブファイアを奪うことで本当の終わりがやってくる。

 

そしてそれは無理やりではいけない。

と言うのも、以前アマダムは無理やりライダーたちからクロスオブファイアを回収し、結局のところ失敗している。

それはクロスオブファイアとは文字通り『魂』。魂とは即ち人の根底にあるもの。

 

だからこそ無理やりではダメだ。

魂が死んでいない限り、ライダーたちからいくらエネルギーを奪ったとしても、また新しいクロスオブファイアが燃え上がるだけ。

事実ウィザードたちと戦ったときも散らばったエネルギーが共鳴し、エネルギーは再びそれぞれのライダー達のもとへ戻っていったじゃないか。

だからこそ、究極たる服従が必要なのだ。ライダーたちがもうイヤだと懇願し、心のそこから戦いを拒めば、クロスオブファイアは完全に剥離してアマダムのもとへ還る。

 

 

「だから、捨てろ! 仮面ライダーを! 仮面を脱ぎすてろ!!」

 

 

叫んだ。

もう、要らないのだ。

もう、捨てていいのだ。

 

 

「お前達を戦いに縛り付けているものこそ、仮面ライダーと言う称号なんだ!」

 

 

ブックメイカーは鬼気迫る表情で叫んだ。だから、捨てろと。

 

 

「じゃねぇとお前らは一生救われないし、永遠に戦い続ける! なんで? だからッ、決まってる! ライダーだからだよ!!」

 

 

ぼく! ライダーファンです!

クウガは終わったけど続きがみたいなぁ!

あ! もちろん主人公は五代雄介で!

 

 

「――とかッ、マジでッ! ありえねぇだろ!?」

 

 

だからあまりにも簡単な二択だった。

 

 

「ライダーとして永遠に苦しみ続けるか! それとも人として安らかに死ぬか! どっちがいい!?」

 

 

皆、黙る。

まだ混乱してワケが分かっていないものが半分。

分かっていて黙っているものが半分、そういったところだろうか?

つまりライダー達にとっては愛があっても、なくとも、神々がどちらであろうともライダーにとっては非常に辛い選択肢に――

 

 

「ああもう! だからさあ! 一生ッ、(ヒト)の玩具として生きるか? 理想の世界で楽しく生きるか! 選べって言ってるんだよッッ!!」

 

 

呪われ続ける人生になんの意味がある。

だが問題ない。ファイズが555555555555555555555555555555555555人も増えれば、巧を超えるものだって現れる。

そうすれば、乾巧は、救われる。

 

ファイズと言う呪いから解き放たれ、本当に乾巧として生きて、そして死ぬことができる。

なによりも、誰もがファイズになれば、そのとき人々は本当の意味でファイズの痛みを、乾巧の痛みを理解する事ができるだろう。

そうすれば上辺だけの愛や尊敬などは消えうせ、真なる無償の愛を覚えるはずだ。

それは――、神でさえ。

 

 

「――確かに、アンタの言うことは理解できるぜ」

 

 

翔太郎が前に出た。

帽子で顔を隠しているのは、目を合わせる自信が無いからだろうか?

 

 

「だが、ショッカーと手を組んでるってのは、どういうこった?」

 

 

そう。そうだ。いけない。危うく騙されるところだった。

救済を求めるブックメイカーは現在、その周りにショッカーを待機させている。

ましてやハーメルンもオラクルもショッカーの技術で生まれた怪人。

それをブックメイカーが使っている。

 

 

「決まっている。彼らは世界にとってまだ必要な存在だからだ」

 

 

それはまさに必要悪。

人がライダーとなり、活躍するためには怪人(ショッカー)が必要だ。でなければどうなる? それは、神なる世界が証明している事だろう?

火を吹き、酸を吐き、毒を撒き散らす。大きな脅威となる敵を倒すためならば、人々は手を取り合い、協力するだろう。

しかし怪人がいなければ――?

 

 

「人が怪人になる。いいか? 正義と悪は表裏一体。悪が消えれば、正義の中から悪が生まれ、対立を始める」

 

 

だが、もちろん、翔太郎たちが危惧するところは分かっている。

ライダーの権利を放棄した瞬間、力を失った翔太郎たちにショッカーが襲いかかるのではないかと思っているのだろう。

しかし心配はないとブックメイカーは言う。そんな事はさせないし、もちろん先程から言っているように、そんな事をしても意味はない。

 

 

「なんども言うように、もはや我々に死などと言う概念はないのだよ」

 

 

たとえ殺しても、それが物語になってしまう以上終わりは来ない。

事実、ライダーの中には何人も死んだものがいるが、今はどうだ? ゲームや小説、ありとあらゆる媒体で復活しているものも珍しくはない。

だからこそ、忘れること、否定されるこそがライダーを殺す唯一無二の答え。

 

たとえば、五代雄介は一年間クウガになった。

しかしもしも小野寺ユウスケが25年クウガになれば、人はいつからかクウガは小野寺と認識を始めるだろう。

ましてやクウガは他にもいる。次々と来るクウガの波、人々はいつか五代を思い出すだけになるはずだ。思い出して、すぐに忘れる。

いや、もっと。もっと忘却させる。それを目指すのはブックメイカー。

 

 

「我々はもはやキミ達を観てはいない」

 

 

そう言ったショッカー首領の言葉にウソはなかった。

 

 

「これより、ショッカーは様々な世界に侵攻し、多くの戦士たちと戦うだろう。そこでさまざまなオリジナル主人公や、オリジナルキャラクターが変身するライダーと戦いながら役割を全うする。そしてさらに、壁を破壊することで、より多くの世界の可能性に触れていく」

 

 

歓声を上げる怪人達。

三世もコートを翻し、剣を天へかざす。

 

 

「そう! それがサムシング! もはや俺達の敵はライダーではない! これより世界融合と創造は加速していく! 我々の脅威はライダーではなく、マリオやカービィ! ルフィや、悟空となるのだ!!」

 

「世界はそれだけの可能性を持っている」

 

 

指を鳴らすブックメイカー。

ハーメルンが笛を吹き、画面を切り替えた。

世界創造と観測のトップページ、2017年6月現在で――

 

 

【原作カテゴリ】

 

『その他原作』

 

『オリジナル作品』

 

『BanG Dream!』

 

『BLEACH』

 

『FAIRY TAIL』

 

『Fate/』

 

『GOD EATER』

 

『HUNTER×HUNTER』

 

『Muv-Luv』

 

『NARUTO』

 

『ONE PIECE』

 

『Re:ゼロから始める異世界生活』

 

『アイドルマスター』

 

『アカメが斬る!』

 

『暗殺教室』

 

『インフィニット・ストラトス』

 

『英雄伝説』

 

『オーバーロード』

 

『ガールズ&パンツァー』

 

『学戦都市アスタリスク』

 

『がっこうぐらし!』

 

『家庭教師ヒットマンREBORN!』

 

『艦隊これくしょん』

 

『ガンダム』

 

『カンピオーネ!』

 

『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』

 

『恋姫・無双』

 

『コードギアス』

 

『ご注文はうさぎですか?』

 

『この素晴らしい世界に祝福を!』

 

『咲-Saki-』

 

『ストライクウィッチーズ』

 

『ストライク・ザ・ブラッド』

 

『ゼロの使い魔』

 

『戦姫絶唱シンフォギア』

 

『ソードアート・オンライン』

 

『ダンガンロンパ』

 

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』

 

『超次元ゲイムネプテューヌ』

 

『デート・ア・ライブ』

 

『テイルズオブ』

 

『とある魔術の禁書目録』

 

『東京喰種』

 

『東方Project』

 

『ドラゴンクエスト』

 

『ドラゴンボール』

 

『ハイスクールD×D』

 

『バカとテストと召喚獣』

 

『ハリー・ポッター』

 

『緋弾のアリア』

 

『ペルソナ』

 

『僕のヒーローアカデミア』

 

『ポケットモンスター』

 

『真剣で私に恋しなさい!』

 

『魔法科高校の劣等生』

 

『魔法少女まどか☆マギカ』

 

『魔法少女リリカルなのは』

 

『魔法先生ネギま!』

 

『名探偵コナン』

 

『モンスターハンター』

 

『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』

 

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』

 

『遊戯王』

 

『幼女戦記』

 

『落第騎士の英雄譚』

 

『ラブライブ!』

 

『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』

 

『ワールドトリガー』

 

 

周囲が銀河に変わる。

次々と浮かび上がる文字は、地球のような(セカイ)になり、青く輝いている。

 

 

「ハーメルンでは現在、"52029"の物語(セカイ)がある」

 

 

ただの一端が観測しただけでこの数だ。

宇宙と同じだ。もっと広がっていく。もっと増えていく。

 

 

「おい! まどかとFateがあるぞ! お前のパクリだな龍騎! ギャハハハ!!」

 

 

馬鹿にしたようにアマダムが笑う。

 

 

「おやおや、また叩かれてしまうよ?」

 

「あぁそうかぁ! 悪いなぁ。お前らのせいで人間が争いあってしまうなぁ! 特オタとアニオタの醜い争いで心がズタズタになっていくなぁ! グッフヒハハァ!!」

 

 

ブックメイカーは勝ち誇ったように笑みを浮かべると、優しくアマダムの肩を叩いた。

一方でオラクルに神託を発動させる。ピヨピヨピヨと可愛らしい青い鳥の鳴き声。

しかし放たれた言葉はなんとも悪意に満ちたもの。

 

 

仮面ライダーとかどれもつまんないよ。ゲームとかアニメ見てたほうが100倍楽しい

 

ライダーファンとか特オタって他に趣味がないんだなって可哀想になる。あんな下らないもの、よく楽しめるよな

 

 

二つの言葉は蒼く煌く剣となり、ブックメイカーはそれをつかみ取る。

 

 

「世界は無限だ。世界を救えるのはライダーだけではない!」

 

 

腰を落とし、剣を構えるブックメイカー。

欲しているのは一部であり、否定するのも広い目で見ればただの一点でしかない。

ほんの僅かな欲望のために、ライダー達は戦いにかり出され、傷つけられ。

全てを知ればこれほど虚しい話もない。

 

 

「お前たちの信じてきたものは! 石ころ並の価値しかなかったんだよ!」

 

 

反射的に変身を行うライダーたちだが――

 

 

「お前たちの戦いはちっぽけだ! 縋り続ける意味などあるものか!!」

 

 

剣を振るうブックメイカー。

放たれるのはクロス状の青い斬撃。それはライダー達の防御を無視すると、一瞬で変身を解除させてみせる。

苦痛の声をあげて地面を転がるライダーたち。みな胸に激痛を覚えて、腕で押さえている。

 

心だ。オラクルの言葉は心を直接攻撃できる。

それは精神攻撃などではない。本当に心を直接傷つけることができるのだ。

防御力など関係ない。仮面など意味を持たない。

 

 

「仮面ライダーとは! ウラギリモノノ意!」

 

 

オラクルは倒れているライダー達を見て、鼻を鳴らす。

 

 

「怪人を裏切リ、そしてオマエタチは人にウラギラレル! 滑稽ナリヤ!! ピヨヨヨヨ!!」

 

 

同じく、鼻を鳴らすブックメイカー。

 

 

「人間の言葉で絶望するくらいなら、はじめから人間なんて愛さなければ良かったのに!!」

 

 

だが理解はできる。

人は愛されてこそ真の価値が見出せる。

 

 

「この世で一番辛い事が何か分かるか? 決まっている。愛し、愛されないことだよ」

 

 

愛されぬ人間に価値はない。意味もない。

ましてや愛せない人間は愛されない。

だからこそ創るのだ。全ての人間が愛されるべきシステム。

人はヒーローとなり愛され、本当のヒーローはゆっくりと休むことができる。

 

 

「確かに! これより先は多くの人間が犠牲になるだろう!」

 

 

ライダーたちが危惧するもう一つの点がココだろう。

カメンライダーが完成すれば数々のライダーたちが活動を開始する。

当然ショッカーや敵もそれだけ生まれることになるかもしれない。

であれば、犠牲になる人間は増える。当然の事だ。

 

 

「だがッ、そんなものはお前たちが止めても続く! 僕の作るべきは一時の支配や征服などと言うものではなく、人が他の生物を食らい生きていくと同じ、永遠に続く概念!」

 

 

誰もがライダーになり、ライダーの力を振るい、生きることが概念となり今までのものに追加されるだけ。

弱肉強食の世界がまた新しい一面を見せるだけ。

これが新世界形態・カメンライダー。目指すべき理想を、傷ついた男達が止められるものか。

オラクルの力の前では、鎧も、仮面も、なんの意味も持たない。

さらけ出されるのは心。本当の心が愛に、憎悪に、概念によって切り刻まれる。

こんな痛みを耐えられるものか。そして痛ければ求めてしまう。痛くない世界を。

 

 

「悪いがこの救済の形は必ず具現させてもらうぞ」

 

 

つまり拒否権などない。

ライダーよ、絶対に幸せになりなさい。

 

 

「これは命令だ、仮面ライダー! 抵抗すればお前たちが過す時を全て苦痛に変えてやる。存在全てを否定して、地獄の輪廻に沈めてやる!!」

 

 

ライダーはブックメイカーには勝てない。

なぜならば創作物である彼らには『勝つ』と言う概念がないからだ。

 

勝利。それはもはや観測者の力に触れて壊れた。

なにかも意味が無いのだ。もはや彼らの戦いに意味はないし、この会話も、セカイも、全ては無意味だ。

今こうして長々と語ることも、言ってしまえば意味はない。ライダーは今も戦っているだろう。どこかで、『本物』が。

 

創作とはゲームの分岐のようだものだ。

Aと言う選択肢を選んだ先の未来にいる士。しかしBと言う選択肢を選んだ士も存在している。

 

士はたくさん。どれも本物といえるが、どれも偽物ともいえる。

あるのはただ門矢士が本物のディケイドと言う、これだけの情報、概念。

数ある士のどれが真など、証明などできるものか。全ては所詮、幻想妄想。

人の心に宿る創作物は必要とされるときもあれば、不必要とされるときもある。

しかしそれは結局些細なものでしかないし、どうでもよくなる時が来ればどうでもよくなる。

 

とある作家が言っていた。

 

全ては無だ。

虚しい世界に生きる人々はそれを忘れようと必死になっている。

だからこそ過去の人間は死の果てにあるものが無ではなく、有であることを望み、天国や地獄の世界を創造した。

しかしいずれふとした時に輝き滅し、闇さえもなく、そこにあるのがただ無であることに気づいてしまう。

 

 

「生きる意味もなければ、死ぬ意味もなく、ましてや戦い続ける意味など全くない。お前たちはそれに気づいた。だからせめて自分の中にある意味を具現し、生きていけばいい」

 

 

もう神に関わらなくていいじゃないか。

ブックメイカーは哀れみの目をライダー達に向ける。

なんども言うが、同情だけは本物だった。

救おうと思う心は本当だった。

 

 

「―――」

 

 

門矢士は、鬼気迫る表情で拳を握り締める。

 

 

「そうだッ、意味はない! 何もないし、あるように夢を見ていただけだ……!」

 

 

フラッシュバックする光景があった。

だが、それでも――ッ! いやだからこそ!

 

 

「意味があると、せめて俺達が――ッッ!!」

 

 

そこで気づく。僅かに眉を動かすブックメイカー。

倒れているライダーたちの中で、唯一立っているものがいた。

 

 

「うわー! 凄い! ポケモンの世界があるよ!! ハハハ!」

 

「火野映司……ッ?」

 

 

おかしい。オーズもまたオラクルに一度は敗北した。

同じ攻撃を受けたはずなのに、明らかに効いていない。

外した? まさか。念のためにブックメイカーはもう一度剣を振るい、青い斬撃を映司に命中させた。

しかし映司はヘラヘラ笑っているだけで。斬撃は虚しく映司を通り過ぎていくだけ。

 

 

「ど、どういう事だ! 斬撃がすり抜けて――!?」

 

 

アマダムは一歩後ろに下がる。

一方で意味を理解したブックメイカー。見よ、映司の体内に蠢く力を。

 

 

「――人を捨てたか。火野映司」

 

 

映司のなかにあるのは大量のセルメダルと、各コンボに変身するためのコアメダル。

その中にある、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ。それは凄まじい力を与えると共に、ある役割を果たした。

未来のコアメダル。それは映司の時間を止めて、『その状態』を保つ役割を担った。

 

だが、今、映司の体から三枚のメダルが排出されて地面を転がる。

すると映司の時間が動き出し、その瞳の色が赤や黄色、紫と次々と変わり、点滅していく。

その感覚が徐々に短くなり、激しく移り変わる映司の『色』。

 

映司は全身を掻き毟るようにして、叫び声を上げた。

すると、映司の形が崩れた。

大量のメダルとなり、天井に昇っていく。

 

そして広いホールの頂点に達すると、メダルは集合して巨大な菱形の物体となる。

その周囲には各コンボを象徴するコアメダルが円形にならんでおり、ある種神々しささえ感じてしまう。

だがそれは、世界を終末へと導く破壊の器であった。

 

 

「―――」

 

 

ホールの端、怪人が並んでいる所から悲鳴が聞こえた。

同時に、ジャラジャラとメダルが擦れる音が聞こえ、大量のセルメダルが空に昇っていった。

 

 

 





正直ディケイド初めて見た時

(´・ω・)
ンダヨッ、ユウスケッテ、ダレダヨッ、ゴダイダセヨッ

とは少し思った。
ただ時が経ち、創生のPVを見た時


( ^ω^ )
おお! ユウスケ! よう戻った!
祝杯や! ええ、ほれ! 祝杯をあげんかッッ!!
はよう! はようユウスケの帰還を祝わんかいッッ!!

って思った。
冷静に考えたらウンコみてーな考えだなって思ったけど、仕方ないね。

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