幼馴染みの女の子   作:サンデイクローズ

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中学編からはサブタイトルを(出来る限り)つけていきます。


再会

引っ越してからも、つかさとは電話や手紙でお互いにあったことを報告していたせいか、それほど距離を感じることはなかった。けど、やっぱりお互いに会えないのはキツくて、電話をすると無性に会いたくなって一度、貯金を崩して会いに行こうとしたことすらあった。

その度に母さんと父さんに止められたけど。

 

そしてついに父さんの仕事が片付き、またあの家に戻ることが出来るようになったのは中学一年の冬の事だった。去年の父さんは俺に約束が守れなかったことを頻りに謝ってくれてたけど、仕事なんだししょうがない事だと思う。

冬に仕事が片付いたからと言って、すぐ戻ることに行かないのがもどかしかったけどこれも仕方が無いと思うしかない。一年の冬に転入するよりは二年の春からの方が馴染みやすいと思うし。

 

「あー、早く会いてぇな。背も伸びただろうし、話の通りだと昔よりさらにモテてるっぽいしなぁ」

 

あれからもう四年も経ってしまった。お互い中学生になってから親に携帯を買ってもらって、金曜の夜と土曜の夜次の日ゆっくり寝れる時なんかは夜更けまで電話するようになった。

でも、つかさにはまだ戻れることになった事を伝えられていない。おばさんとおじさんには戻ることが決まったその日に連絡してしまったらしい。その時につかさにも伝えてくれればいいのに「つかさちゃんに伝えるのはりょーくんの役目だからねぇ」と丸投げされてしまった。

このまま伝えずに会うって言うのも面白そうだけど、そんなことしたらガチで嫌われる恐れもあるよなぁ。次の金曜に伝えればいいか。

 

 

そんなこんなで一週間が経ち、金曜の夜になってしまった。まだつかさにどう伝えるかさえ思いついていないのに。

こういう日に限ってつかさからの電話が早く来たりするんだよなぁ、と着信を告げる携帯を見て思った。

 

『もしもし、涼太?……なんかあったの?』

 

そしてこういう時、つかさの勘も鋭くなるのは心臓に悪いからやめていただきたい。

 

「なんでもないよ。それで、つかさの学校生活はどんなだ?そろそろバレンタインだろ」

 

『あっ、そっかバレンタインなんだっけ。そのせいで男の子たちがすっごい群がってきてアピールしまくるの!あたしじゃなくて他の子にそういうことすればいいのに』

 

電話の向こうのつかさが不機嫌な顔になっているのが伝わってくるようで思わず笑ってしまう。

 

『むぅー、笑うなんてひどいと思うな』

 

「ごめんごめん。でもそれだけみんなつかさのチョコが欲しいってことだろ。やっぱモテんのな」

 

『……』

 

「なに黙り込んでんだよ?」

 

『涼太はいっぱい貰えそうだよね、あの頃のままならイケメンだろうし?』

 

「なに怒ってんだか。……確かにチョコはもらうけどあんなんイベントだから正直、本気で渡してくれる子なんていないぞ?それにチョコを何個ももらうよりはつかさのチョコ貰える方がうれしいし」

 

『……っ!どうして涼太はそうあたしが嬉しくなるようなこと的確に言うかな!今年も送ってあげるから覚悟しとけよ!』

 

「なんで覚悟しないとなんだよ」

 

『あたしを本気にさせた罰よ!』

 

「訳わかんないって。つーか本気にさせたのはつかさが先だからな?っと、そんなことより大事なお知らせがあったんだ」

 

『お知らせ?どういうこと?』

 

「実はな、春休み中にそっちに帰ることになったんだわ。一年遅くなっちまったけどな」

 

そう告げた後、つかさから何のリアクションもなかった。てっきり質問攻めにあうと思っていただけに拍子抜けだった。

 

『そっか、戻ってくるんだ。……春休みの予定、開けとくから。いつでも呼んでね?』

 

「おう。……正直、もっと驚いてくれると思ったんだけどな」

 

『驚いてるし、嬉しいよ。でも、自分の目で見ないと信じられないって言うか期待しすぎてこの前は痛い目見ちゃったから。だから、待ってるね。涼太が帰ってくるの。……今日はもう寝よっか。おやすみなさい』

 

「あぁ、おやすみつかさ。風呂入れよ?」

 

『ふふっ、もう入った後だよ。じゃあ、帰ってくるの楽しみにしてるねっ!』

 

 

 

 

そんな会話からもう二ヶ月がたち、山崎家は懐かしの我が家に戻ってきていた。

 

「いやぁ~同僚から売れ売れ言われてたけど残しておいてよかったよ。やっぱりここが我が家、って感じがするなぁ」

 

「まーくん、荷物運ぶの手伝ってぇ~」

 

「今行くー!涼太、つかさちゃんに会ってきたらどうかな。ここは僕たちでやっておくからさ」

 

「でも……」

 

「なぁに、今日で全部終わらせられないだろうし。それにつかさちゃんのこと僕のせいで余計に待たせてるんだから。……ほら、子どもは大人に遠慮しないで甘えとけばいいんだよ」

 

「ありがとう、父さん」

 

父さんに背中を押され、家から出たのはいいけど、やっぱり電話で話すのと実際に会うのとでは緊張の度合いが違う。自分の家からつかさの家まで歩いていると、小学生の時毎朝つかさのことを迎えに行っていたことを思い出した。そんな風に考えたおかげか、さっきよりは落ち着いてきたと思う。

 

 

それでも、いざつかさの家を目の前に立つとそんな落ち着きも意味をなさなくなってしまう。

いつまでも突っ立っているわけには行かず、意を決してチャイムを押す。昔だったら何も考えずに出来たことが、今じゃ指を震えさせてようやく出来ている。そんな自分が情けなくなりながらも、おばさんが出てくるのを待つ。これでつかさが居なければまた、覚悟を決める時間が必要になって疲れそうだ。

 

「はーい」

 

そう、返事をしながら出てきた女の子を見て、俺の思考は止まってしまった。あの頃から伸ばしていたのだろう、ショートボブだった髪型は、ロングになっていて一瞬、つかさだとわからなかった。

 

「……りょう、た?」

 

「綺麗になったな。つかさ」

 

「涼太っ!」

 

髪をなびかせて駆けてくるつかさに見惚れていて、つかさが抱き着いてくる衝撃に備えることをすっかり忘れていた。

 

「っ!勢い強すぎだって、もうちょい助走距離あったら倒れてるぞ?」

 

辛うじてつかさのことを受け止め、苦情を言うがそんなものは聞いてくれず、昔のように胸に顔を擦り付けている。

 

「ほんとにりょーたくん、だよね?背、伸びたんだね。昔はあたしよりちょっと大きいぐらいだったのに」

 

「フフフ、羨ましいか?でも、つかさも背伸びたじゃん」

 

「そういう事じゃないよ。……ちょっと羨ましいケド」

 

「おかえりなさいっ、涼太!」

 

4年ぶりの彼女の笑顔はあの頃よりも少し大人びていて可愛いってよりは綺麗な笑顔になっていた。

 

「ただいま、つかさ。待たせたな」

 

「ほんと!もうずーっと待ってたんだから!」

 

それから立ち話も疲れるってことで公園に行くことになった。

電話じゃしないような何でもないことを話しながら、近所の公園へとやって来た。空いているベンチに座り、何となくぼーっと空を眺めていた。

よく晴れているせいだろうか、いつもよりも空が青く澄み渡っているように見えた。

 

不意に、つかさが何かを決意したように口を開く。

 

「涼太が引っ越しちゃってからね、ずっと何かが欠けてたの。自分の中でとっても大切なものが消えちゃう感覚みたいなすっごく怖い感じ。でも、今日ドアを開けたら昔みたいに涼太が居て……。涼太のこと見たら不思議と欠けてた何かが満たされて、胸が暖かくなって」

 

だから、と俺の目の前に立ち言葉を続けるつかさ。

 

「これからずっと、ずーっとあたしと一緒に居てください。……西野つかさはあなたの事が大好きだからっ!」

 

顔を赤くして、それでも笑顔でそう言い切ったつかさは本当に美人で見蕩れてしまった。

つかさからのその告白に俺が答えられる言葉は最初から一つしか無いわけで。

 

「告白するなら俺からだと思ってたんだけどなぁ。──山崎涼太も西野つかさが大好きだ。だからこれからも一緒に居よう、ずっと」

 

「うんっ!」

 

 






ランキング見たら載っててチビった
なんでランキング入りしてるんですかね…(震え)

キリのいいところまでにしたら短くなっちゃいました。
作者の国語力がガバガバなんで言い回し間違ってたら教えてください。

次回は月曜午後7時に更新予定です。

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