Outsider of Wizard   作:joker BISHOP

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これから語られる話は、小章 A Window to The Past と関係する内容になり、また小章同様に、現段階では謎が多々残る内容ともなっている・・・





新章-第二幕 思惑たち

特に理由があるわけではない。

ただ、さっきからなんとなく不安が消えない・・・

 

それは部屋の電気が消えていて暗いからではない。

ただ、幼いながらも何かしらの感覚を感じる。

これは初めて味わう感覚だ・・・

 

訳のわからない不安感を抱えている時、遠くの方から安心感のある声が聞こえた気がした。

 

何を言っているかはわからないが、すごく落ち着く・・・そうだ、あれは母の声だな。

 

更にその声に混って、別の声も聞こえてきた。

これは父だ。

 

聞きなれた声を聞いたからか、さっきから感じている不安な感情は少し薄れたように思った。

そう思ったのもつかの間だった。

 

突然の事で何がなんだかわからない・・・

ただ、騒音と一緒にあっという間に自分の視界が塞がれたのだった。

 

意味不明すぎる状況な故か、泣きわめくことはなかった。ただ、混乱するしかない。

だがこのままこうしていても何もわからないのは当然だ。

 

とにかく必死で自分の前にある何かを退かし、周りがどんな状況なのかを確認しようと力をふりしぼる・・・

 

嫌な予感は急速に増していく・・・・

 

そして更なる異変に気がついたのは、目の前の物体を退かそうと小さな腕に力を込めている最中だった。

 

物体の隙間から、微かに赤っぽい明かりが暗い部屋を照らしているのがわかったのだ。

その明かりの出現と同時に湯気のようなものも徐々に現れる。

 

外から騒がしい音も聞こえてくる。とても大きな音だ。

 

それもそのはずだ。

なんとか視界を邪魔する物体を退かしきったときに今の部屋の状態がわかった。

 

目の前には壁の至る所が穴ぼこになり、そこから吹き流れる風が部屋中の炎を揺らしている光景が広がっていたのだ。

 

この時に初めて命の危機を感じた。

このまま火が燃え続ければ、確実に死ぬ・・・

待てよ、両親は無事なのか・・・?

 

声の限りに二人を呼ぶが、幼い声は部屋を飲み込もうとする炎の音にかき消される。

圧迫する熱風に体力も奪われ、自分を囲む煙も増して声が出せなくなってくる・・・

 

とにかくここから動きたいが、足が何かに挟まって動かない。

 

魔法が使えたら・・・魔法でなんとかできたら・・・・

 

ひたすらそう願うも叶いはしない。やがて意識もだんだんと遠退いていくのだった。

そんなときに、四方で人の声が聞こえた気がした。

同時に、大きく崩れた壁の向こう側から黒い影がこっちに近づいてくる・・・

 

消え行く意識のなかで目の当たりにしたのは、銀色に輝く仮面をつけた黒衣の人物だった。

 

その何者かは自分を見つけるなり近寄って、その手に持つ長い棒状のものを振って瓦礫を一瞬で退かし去ったのだった。

そうだ、これは紛れもない魔法だ・・・

 

これから自分はどうなるのか・・・助かったのか?

意識はこれ以上保つことができず、まぶたは閉じ、徐々に視界が暗くなる。

 

そして何かに気づいたかのようにパッと目を開けると・・・・

 

マックスは一瞬、訳がわからなかった。

だが周囲をぐるりと見回し、そこが見馴れた光景だと認識したとき、自分が夢から現実に引き戻されたのだとすぐに理解した。

 

「そうか・・・まさか、あの時の夢をみたのか・・・・」

 

そして夢のお陰で思い出した。あの時の、自分を助けに来てくれた何者かの姿・・・・

 

「そうだった。顔は仮面で見えなかったんだ。あの不思議なシルエット・・・思い出した。いったい何者だったんだ・・・・」

 

彼は、たった今まで見ていた夢の光景を頭に刻み込んだ。

だが現実に戻れば他にも思い返すことは嫌でもある。

 

昨日・・・あの後すぐにデイヴィックは立ち去った。

 

いつ帰ったかは明確にはわからない。

後ろを振り返って、気づいた時にはもう地下にはいなかったのだった。

 

愛想をつかしたのだろうか・・・それは無理もない事だろう・・・・

 

リーダーがこれなら、チームもうまく機能しなくなるだろう・・・・

 

マックスは昨日に引き続き、また落ち込み始めるのだった。

 

 

一方では、より行動的になっている少年がいた。

 

「やっぱりロドリュークの奴は来てないみたいだな。」

自分達の正しくあるべき未来を決意した少年は足早に歩いている。

その隣に肩を並べて、長いブロンドの髪を揺らしながら歩いている女子もいた。

 

「当然よね。あいつの仲間はもうここには居ない。ロドリュークが学校に来る理由は無くなったわ。」

「まぁ、俺達もこれからはあまり学校に顔を出す暇は無くなるかもな。」

 

二人は幅広い大理石の廊下をコツコツと歩き続ける。

 

「アカデミーのエレナ達の都合が合えばいいんだがな。皆で彼らとしっかり作戦を立てる必要がある。」

その少年、デイヴィック・シグラルは真剣な表情でそう言い、歩くスピードが少し上がった気がした。

 

「焦ってる感じがするけど、どうかした?」

横を歩く女子、リザラ・クリストローナが彼の様子を見て言った。

「ん?いや、焦ってるつもりはなかったが・・・でも、そうなのかもしれない。」

この時、デイヴィックは昨日の地下隠れ家でのマックスを思い浮かべたのだった。

 

「今度は俺達ががんばるんだ。あいつらの分まで・・・」

ほぼ自分に言い聞かせるかのように、彼は静かにそう言った。

 

間違った方向へ進んでいた自分達を正してくれた・・・

自分だけではなく、数少ない友達も救ってくれたのだ。

それがマックス・レボットと彼の仲間のやったことだ。

宿敵であったはずなのにだ・・・・

 

デイヴィックは、マックスと彼のチームと出会ってから昨日までの出来事を思い返しながら考えた。

 

今、マックスが機動力を失っているのは言うまでもない。

ならばそのカバーは自分達がやるべきだ。

彼が立ち直り、彼のチームの力が戻るまで、自分のチームが代わりに動く。

 

ロドリュークはグロリアの指令通りに動き続けるだろう。

ならばこっちも早くナイトフィストの為になる行動を起こさなければいけないんだ・・・

 

デイヴィックは今一度、リザラが言ったことに脳内で答えた。

俺は、確かに焦りだしている・・・焦りは危険だ。

 

その時、デイヴィックが何かに気づいたようにポケットをあさった。

そしてすぐにズボンのポケットから小さな手鏡を引っ張り出した。

 

ふたをカパッと開けると、早速彼は口を開く。

「早かったな。今日いけるか?」

鏡に向かって喋りかけると、次は鏡の中から聞き慣れた声が返ってきた。

「ロザーナも大丈夫そうよ。奴らに早く仕返ししてやりたいって言ってた。」

 

デイヴィックは歩く足を止めることなく喋った。

「じゃあ決まりだな。俺達は今、例の場所に向かってる所だ。そっちも準備できしだい向かってくれ。早速チームの活動開始だ。」

 

そして手鏡のふたを閉じると、リザラの方を向いた。

「行けるそうだ。早速今日からあの場所を使えるぞ。」

 

そうしてこの後すぐ、二人はこの廊下から姿をくらますのだった。

 

 

場所は大きく変わり、ロンドンの中心街から外れた人気の少ない地区にて・・・・

 

レトロな雰囲気の二階建ての建物の中で、二人の人物が向かい合っていた。

 

「今日の情報は無しか?」

一人のスーツ姿の男が言った。

 

「俺は鼻が利くからよ。事件の臭いがしたらすぐわかんだよ。あんたも知ってるだろ?俺の洞察力をよ。」

この男はスーツの男より若く、独特な柄のシャツを着て全体的にラフな格好だ。

 

「ああわかってるとも。私が捜査助手として雇ったんだからな。」

「まぁ、今日のところは異常無しってわけだ。平和で何よりじゃねえか。」

男は足を組みながら言った。

 

「それも今のうちさ。」

「またあのグロリアってやつの事かい?あんたに会うまではそんな組織聞いたこともなかったよ。」

「知らんほうがいいさ。さてと、これから考える事がある。今日のお前の仕事は終わりだ。」

そう言って彼は立ち上がった。

彼が片手を玄関の方に伸ばすと、ガチャリと玄関の扉が勝手に開いた。

 

「そんじゃ、また俺の力が必要になったらお願いしますわ。」

そして彼も立ち上がり、この建物から出ていったのだった。

 

出ていった後に再び閉まった玄関の外側には、探偵事務所と書かれたプレートが貼り付いている。

そしてこの事務所にいるスーツの男はサイレントであった。

 

さっきまでの男がいなくってからは、彼はずっと二階の個室にこもって机と向き合っていた。

 

「第二魔光力源の起動法・・・・長くその時を待つ者によって扉が開かれ、運命を担う子に託せ・・・か。」

サイレントは、広げた手帳に走り書きした文字を読み上げながら色んな事を考えていた。

 

どういうことだ・・・何故こんな書き方を?誰が何を意図して・・・・

 

彼は推理を更に働かせていく。

 

一度マックス達に第一魔光力源の部屋を案内してもらった時に見た感じからすると、あの部屋は元からの設備とは思えない。

あのチャンバーだけは、後から取って付けたような構造だった。

それは奥の六枚の開かずの扉からも想像できる・・・・

 

それから、あのチャンバーへの到達および、更なる魔光力源へのヒントを本や図書室に残したことも引っ掛かる。ヒントの隠し方もおかしなものだ。

 

何故か学校の本に魔光力源に関する事が記されてあり、魔法で文字が細工されてあったり・・・

本だけでなく、わざわざ図書室にも小細工を・・・

こんな綿密にヒントへの謎解きを用意した者は、いったい何を考えていた?いつの時代の人間の仕業だ・・・?

 

彼は、以前マックスから色々と聞かされた事を参考に考える。

 

フィニート・レイヴ・カッシュなる独自の呪文と、それでしか開けられない第一魔光力源への扉・・・・

ヒントを残した者とこれらの仕掛けは同一者か、あるいは密接な関係者で間違いはない。

 

彼は手帳を閉じ、机に置かれたコーヒーカップを手に取った。

「敵か味方か・・・」

そしてコーヒーを一口すすった。

「過去に起きたあらゆる事件を探ってみるか。」

 

それからは、部屋に設置された棚に並んだ、数多くのファイルを一冊ずつ手に取って見ていくのだった。

 

サイレントが一人、調べものをしている間に、あのチームも早々と行動していた。

 

一人ずつ姿現しで目的地へと到着するデイヴィック、リザラ、それにエレナとロザーナ・・・・

 

「すぐにここを活用できて嬉しいことだ。それも全員揃ってな。」

デイヴィックが言った。

 

「でもまさか、あたし達にナイトフィストの隠れ家の一つを紹介してくれるなんて思いもしなかった。」

エレナが彼に続いて歩きながら言った。

 

「それはつまり、あの三人はあたし達を信用しているって事よね。」

リザラが言った。

 

暗くほこりっぽい空間で、床をきしませながら歩いていると、突き当たりに扉が見えてきた。

 

迷いなく扉を押し開け、デイヴィックから先に奥へと足を踏み入れる。

 

そこは先ほど同様の雰囲気で、全体が薄暗く、窓ガラスから外の光が微かに照らすだけだ。

更に天井を見上げれば木の骨組みが何本も組まれ、三角形の高い屋根だということがわかる。

そしてここがどこなのかを証明する極めつけは、正面の壁に面して設置された巨大な円形の文字盤と、いくつかの歯車だ。

 

そう、ここは時計塔最上部の内側だった。

だが巨大な時計の設備の裏側にあるこの空間には、普通では絶対に必要のないいくつかの椅子やテーブル、そして棚とそこに置かれた数々の小道具が存在している。

 

それは、ここが他ならぬナイトフィストの隠れ家の一つだということである。

 

デイヴィックら四人は、とりあえずそこに置かれた椅子に腰かけた。

時計の歯車の音がコツコツと鳴り続ける部屋をぐるりと見渡して、エレナが話し始めた。

 

「面白いわよね。公園の下とかこんな所に活動拠点を造るなんて。ナイトフィストは上手くマグルの世界に紛れて動いてきたのがわかるわ。」

 

「それはナイトフィスト情報管理所の一つだってそうだな。」

デイヴィックが話だした。

「でもそこをピンポイントでグロリアが襲撃した。ロンドンのビルの最上階をだ。何でだと思う?」

 

「裏切りだね。」

それにはリザラがいち早く答えた。

 

「同じ考えだ。いくら隠れられていても、それを知る誰かが口を開けば意味は無い。全て失うことになるんだ。」

 

話しをしていると、落ち着いた空間に突如空気の歪みが起き、風で床のホコリが舞った。

 

「ザッカスか。一瞬驚いたぜ。」

デイヴィックはその場に現れた一人の人物を見て言った。

彼らの目先には、一人の40代ぐらいの男が立っているのだった。

 

「君達のほうが早かったか。待ったかな?」

男はゆっくり歩きながら言う。

 

「俺達もたった今来たところだ。今日は三人じゃないんだな?」

デイヴィックが男に言った。

「いつもいつも三人組じゃないよ。それに今日は、あの二人はサイレントとやることがあるみたいでな。」

そう言いながら一つの丸椅子に腰かけた彼の名はザッカス。サイレントの指示でセントロールスを見張っていた、警官に扮したナイトフィストの三人のうち一人である。

 

ザッカス達はデイヴィックと仲間をグロリアから引き離した人達であるが故に、彼らを正式なナイトフィストへとしっかり導くことを約束したのだった。

 

「さて、君達全員が揃ったのは嬉しいことだ。時間の許す限り互いの情報交換と、これから先の行動をプランしようじゃないか。」

ザッカスが早速話しを進めた。

 

「まず気になるのは、サイレントに導かれた彼らの現状だな。何でも魔光力源とやらに近づいたそうじゃないか。」

「ああ、マックス・レボットのチームのことか。」

何気なく言ったデイヴィックだったが、この時ザッカスの表情が変わった。

 

「何?!マックス・レボット・・・だと・・・」

「あいつを知ってるのか?」

デイヴィックが言った。

 

「名前だけはな。忘れはしない・・・ギルマーシスの息子だからな・・・・」

「あいつの親と知り合いだったのか?」

 

ザッカスは過去の記憶を思い起こしながら話すのだった。

「マックスの父、ギルマーシス・レボットは俺達のグループの一人だったんだ。俺とライマンとマルスは知っての通り、今も三人組でよく動いてるが、もしギルマーシスが今も生きていればなぁ・・・四人で昔のように活動出来るのにな・・・」

 

「ということは、やっぱりマックスの父親はグロリアに・・・」

エレナが口を開いた。

 

「はっきりとはわからないが、たぶんな。殺されたのは間違いないことだ。サイレントから報告を受けて駆けつけた時にはもう誰もいなかったから犯人は定かではない。」

 

「ちょっと待ってくれ。サイレントって、あのサイレントのことか?」

デイヴィックが突っ込む。

 

「そうだ。当時同じグループのメンバーではなかったが、彼とギルマーシスが仲が良かったと聞いている。」

 

「ならばサイレントは、マックスがギルマーシスの子供だと知ってたわけだ。」

デイヴィックはそのまま質問につなげる。

「そうだ、サイレントからマックス達の事を何か聞いてないか?俺達はまだあいつらがやってきたことを詳しく知らない。マックス達が魔光力源の在処にたどり着いたんだ。何かしら魔光力源に関する情報も持っているかもしれない。」

 

「その事に関しては私も詳しく知りたいよ。ただ、サイレントから少しは話を聞いている。」

ザッカスの言葉にデイヴィックは関心をよせる。

 

「最近、マックス達の活躍で第二魔光力源の存在がわかったそうだ。なんでも、二つの魔光力源が起動しないと意味が無いとかな。」

「二つ・・・初耳だな。」

デイヴィックは言った。

 

「魔光力源をもっと知りたいのなら、少し情報を付け足そうか。」

ザッカスがデイヴィックの熱心さを読みとった。

「14年前、ナイトフィストサウスコールドリバー支部で、私達のグループは主にグロリアの人間の行動を探るのが仕事だった。それで調査を進めた結果、奴らが何かを探し続けている可能性を掴んだんだ。更にギルマーシスは、今までには無かった何か強大な力を獲ようとしているとにらんだ。つまり、サウスコールドリバーではナイトフィスト撲滅の裏で、もう一つ大きな計画が動いていたということだ。」

 

ザッカスは続ける。

「今となってはわかる。あの時サウスコールドリバーで奴らが探していた物・・・・さすがはギルマーシスの息子だ。子供達だけでその一つを見つけ出すとはな。」

 

「そういうことか。14年前、グロリアはサウスコールドリバーで魔光力源を探していたわけだ。」

デイヴィックは頭の中で一つの結論に結びついたのがわかった。

「二つあるって言ったな。もし本当にサウスコールドリバーに魔光力源があるならば、セントロールスにあるやつとで二つ揃うじゃないか!」

 

「そういうことになる。だがもし奴らが見つけているならば、後はセントロールスに強襲を仕掛ければそれで終わる。奴らが圧倒的に有利な立場なわけだ。」

 

ザッカスが言うことは最もだった。

 

「だがグロリアはまだ本格的にセントロールスに襲撃しに来ない。それどころか情報管理所を団体で襲った。」

彼はデイヴィックを見て言う。

 

「情報を欲している・・・セントロールスの魔光力源の事を知らないとでも言うのか?」

「同じことを考えたよ。考えてみろ。セントロールスにグロリア側の人間が侵入したのは、オーメットの指示で動いた君達と、奴自身だけじゃないか。」

 

「そうだな。何か変だな・・・」

 

確かに考えてもみれば、これまでセントロールスで行動していたのはテンペストことバスク・オーメットと彼に従って動いた子供達だけだった。

すでにもう一つの魔光力源を占拠しているのならば、セントロールスにあと一つがあるとわかれば喉から手が出るほど欲しいはずだ・・・・

 

オーメットはグロリアの仲間にセントロールスの事を報告していないとでもいうのか?

知らないとなれば、情報管理所を襲撃したのもうなずける。

 

一体バスク・オーメットという奴は何を考えている・・・・

 

デイヴィックが色々と考えていると、ザッカスが話しだした。

 

「それにしても不思議だ。ギルマーシスの子が当時の彼のようにチームを組み行動して、彼が目をつけた魔光力源を見つけるとはなぁ・・・運命というものはあるのだな。」

 

「俺達も、あいつらともっと話をしたいと思っていたところだ。でも、今はマックスが話し相手になるかどうか・・・」

「と、言うと?」

「マックスの、個人的に辛い出来事があったんだ・・・」

 

 

ナイトフィストの時計塔隠れ家にて、デイヴィックのチームとザッカスとの会話が行われている最中、別の場所であの二人の会話が始まろうとしていた・・・・

 

「来たわよ。」

黒いワンピースを着た少女が部屋の暗がりから姿を現した。

 

「ようし。早速ではあるが、今から行う計画を立てた。その説明をする。まあ掛けるんだ。」

重低音な渋い声が薄暗い部屋中に渡る。

その男、バスク・オーメットは部屋の奥の窓際に立っていた。

 

そしてそこへと近づく黒服の少女はレイチェルだ。

 

彼女は部屋の中央に置かれたテーブルまで歩き、オーメットもまたこちらへ近づく。

二人が同時にテーブルの椅子に腰掛けた時、彼は話し始めた。

 

「我々の目的は大詰めに入る時だ。だがどうしても最後の一手が打てないのが現状だ。意味はわかるな?」

「ええ。最初からそれは気がかりだったでしょ?」

「ああ。だからこそ部下に奴らの情報管理所の事を教え、大胆に襲撃させたのだからな。だが結果、我々が欲していた情報は手に入らなかった。」

 

彼はテーブルの上で腕を組んだ。

「襲撃の際、いくつかの資料は奴らが持ち去ったと聞いている。持ち去られたのは間違いなく重要データだろう。そこに我々がやるべき最後のピースに関する情報も含まれている可能性は無視できん。そこでだ・・・」

 

オーメットはレイチェルをまっすぐ見て続ける。

 

「単刀直入に言おう。マックス・レボットを私の所へ連れて来るのだ。」

「マックスを・・・何で?」

「これから彼には人質となってもらうからだよ。」

 

この時から、バスク・オーメットの新たな計画は始まるのだった・・・・

 

 

 

 

 


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