Outsider of Wizard 作:joker BISHOP
イギリス・ロンドンの街中・・・・
今日も人間達はいつも通りの行動を繰り返している。
いつも通り学校へ向かい、いつも通りの道を歩き、仕事や買い物、遊びに出かける・・・
行き交う無数の車と人で街中は満たされ、ロンドンの中心部はどんどん騒がしくなってくる。
そんな所にそびえたつ高層ビルのひとつに、今だかつてない危機が迫っているなど、ここにいる誰もが思いもしない・・・・
ガラス張りのビルの壁から太陽の光が射し込み、オフィスの廊下を明るく照らす。
その先には他のビル同様、スーツを着た複数の人間がうろうろしている何ら変哲の無い光景が広がっていた。
だがこのビルは決して普通ではない。最も、マグルにとっては・・・
一階二階、そして三階からずっと上の階までは同じような働く人々がいる光景が続いた。だが最上階だけは、そこにいる人間も場の雰囲気も、全く違っていた。
そしてその最上階へは、それ以下の階層の人間が誰一人として近づこうとはしないのだった。
そんなビルの最上階の一部屋にて、スーツ姿ではない人物が数人、机に向かい本を開いて文字をつづっている光景があった。
それも、ここで作業をしている皆が羽ペンを使っているのだった。
「今日も本部からは、これといった報告は無しだな。」
「グロリアの活動報告がないのは残念だけど、まぁそれだけ平和ってことで何よりね。」
二人の男女が会話を交わしながら、本の白紙のページに羽ペンで文字をつづる。
「必ずしも本部から送られてくる情報だけが頼りじゃないさ。」
ここで別の男が話した。
「各地の隠れ家で密かに活動している捜査員の情報が本部に送られ、そこからこの情報管理所に届けられるんだ。だから本部からの情報はどうしても遅れるし、本部に送られた情報が役にたたないと判断されたら、ここへ届けられない事もある。本当に頼るは現場で地道に捜査してる者達だよ。」
そして彼はまた羽ペンを動かした。
「だなぁ。まあ、ここでデータをまとめてる俺らも偉いことは言えんがな。」
また別の机で作業をしていた男がそう言い残して、羽ペンを置いて立ち上がった。
「じゃあ、先に行ってるぞ。」
そして彼は本を手にしてここを退室したのだった。
廊下に出た彼は、突き当たりのドアまでまっすぐ歩いた。
幅広い廊下のサイドにも、いくつかのドアが一定間隔を空けて列なっている。
これらの部屋にも同じように、本に文字を記述している者達がいるのだろうか。
やがて突き当たりまで来た男は、ドアを軽くノックして中へ入った。
そこはとても広く横長のオフィスで、様々な服装をした男女が複数人動いていた。
「今朝届いた報告、簡単にまとめ終わりましたよ。」
オフィスに入った彼はそう言って、中央に立つスーツ姿の男の方へ向かった。
「おお、早速出来たか。いつも仕事が早いな。」
オフィス中央に立つ男は彼を振り向いて口を開いた。
そのスーツ姿でぶしょうひげの男は他でもない、サイレントであった。
サイレントは男から本を受け取って、更に話した。
「お礼と言っては何だが、君達はまだ知らないであろう大きな情報を教えよう。」
「大きな情報?」
「ああ。昨日、私達の新たな同志を獲得したとの報告があった。それと、俺達の中に裏切り者がいたという事もな。」
「そんな!・・・いったい・・・」
男は驚きの表情を見せた。
「わかっている。テンペストというコードネームの男だ。今までずっと強力な仲間だと思っていた男だ。」
「テンペストという名は聞いたことはあります。でも会ったことは一度もない。」
「気をつけろ。本当に彼が裏切り者ならば強力な敵となる。テンペストの魔術センスは段違いだ。本気を出せば私でも敵うかどうか・・・」
そう言いながら、ふと、一面ガラス張りの壁の外に目が向いた時だった。
「チーフ?・・・どうしました?」
男は、遠くを見たまま固まったサイレントに話しかける。
「あれは・・・・まさか、これはまずいかもしれん。」
すると突然その場から動きだし、早歩きでガラス張りの壁の近くへ向かったのだった。
そしてガラス越しに見える、遠くの何かを察した彼はくるりと振り返った。
「皆、資料を護れ!敵が来るぞ!!」
突然叫ぶサイレントに反応し、その場にいた魔法使い達は慌てる。
しかし、事態に気づくにはもう遅かった。
遠くの空から、複数の箒に股がった者達が横一列に編隊を組み、とてつもないスピードでこちらへ向かって来ているのだった。
これを見た彼らはすぐに、これから起こり得る状況を察して一斉に杖を手にした。
そしてサイレントの速やかな指示の元、各々が動きだした。
ある者は棚に並べられた本を取りだし、仲間と手分けして持てるだけ持ち抱え、ある者はガラス張りの壁に向かって杖を構え立つ。
「重要なデータから持ち出せるだけ本部へ持って行くんだ!誰か一人は本部に状況を報告しろ!」
サイレントがそう叫んでいる間に、その時は訪れた。
猛スピードでビルに接近していた彼らは箒ごと姿を消してゆき、その一秒後に一人ずつオフィス内に姿を現すのだった。
黒い光をまといながら一人、また一人とオフィスのあちこちに出現する黒衣の魔法使い達は、現れると同時に容赦ない呪文攻撃を乱射する。
不意をついた突然の襲撃に圧倒されるナイトフィストの仲間達は迎え撃てず、ことごとく術の的となった。
そんな呪文の嵐を巻き起こす彼らは皆、それが制服であるかのように全く同じ服を着ている。
足元まで垂れた黒のローブを羽織り、黒のフードを深く被って、その影に素顔を隠す。
そして顔の見えない首元には、独特のエンブレムが彫られた金のネックレスがぶら下がるのが微かに見えた。
そのエンブレムこそ他でもない、グロリアの正統な構成員であるという証なのだ。
呪文の光線がオフィス中に被弾し、床や壁のガラスが音をたてて破損する。
そんな中、ナイトフィストの数人が重要データを記載した本を寄せ集め、飛び交う光線を避けながら脱出を試みる。
それを邪魔させないよう、サイレント率いる残りの仲間が必死で妨害に急ぐ。
間もなく、この騒ぎに気づいた他のメンバーも、別のオフィスから駆けつけた。
「くそっ、なんでここがバレた・・・!」
「どういう事だよこれ!」
サイレント達がグロリアの魔法使いと戦っている光景を見た彼らは、当然困惑した。
「お前達もデータを運べ!奴らの狙いはここにある情報の何かだ!」
サイレントがグロリアに応戦しながら叫んだ。
この瞬間、一筋の光線がサイレントの顔すれすれを横切り、到着した仲間一人に命中したのだった。
彼は言葉もなくドアの向こう側へと吹き飛ばされる。
見回すと、状況は圧倒的にこちらが押されていることがわかる。
人手が足りないのも原因だが、そもそもマグルの町に隠れたここ、ナイトフィストの情報管理所に集団規模の急襲が起こるなど想定外の事態だった。
更には、ここでデータの管理をやっている者達の中に戦闘のプロは少ない。
基本的に戦いが得意な者達は皆、グロリアの情報をかき集める行動班に選ばれるのは当然の事。
十人を超えるグロリアの兵士は次々とナイトフィストを戦闘不能状態に追い込み、いよいよサイレント一人を複数の敵が囲むような状態になってきた。
サイレントは全方位に神経を集中させる・・・
四方から仲間達の叫び声が鳴り響く・・・
時に呪文と呪文がぶつかり、火花がオフィスの天井の高さまで吹き上がる・・・
グロリアの攻撃でオフィス内の机や椅子が吹き飛び、破損した残骸が戦闘の邪魔をする・・・
そして今、敵の何人かが放った緑色の閃光が数人の仲間に命中する光景が見えた・・・・
そしてその直後、自分へと飛んでくる三筋の光線を瞳がとらえたのだった。
この時、サイレントの表情が一瞬にして変わった。
その目は殺意をむき出しにした恐ろしい眼差しとなり、同時に彼の身体の周りの空気が震動し始めた。
そして三つの光線が間近に迫った時、彼の身体から一瞬紺色の波動が発生し、敵の光線を勢いよく弾いたのだった。
サイレントを取り囲むグロリアは目を奪われ、初めて一歩後ずさる。
この時、一時的に戦闘が途切れる。
物はめちゃくちゃに壊れ、割れて無くなったガラス壁の外から風が吹き付け、粉々になったガラスの破片を舞い上がらせる。
倒れたままびくともしない仲間達があちこちに点在している・・・
悲惨なオフィスに群がる十数人の黒衣の魔法使いは、全員がサイレントの方を向き、杖を構えて一斉攻撃のタイミングを待った。
本を抱えた者達は姿くらましで脱出に成功していた。
今この場に残った仲間はたった四人、サイレントから離れた場所に立ち尽くしている。
この状況を前に動くことが出来なくなっている・・・
「ここは俺に任せろ。お前達は行け。」
サイレントが四人に向けて言った。
四人は互いに顔を見合わせると、静かにうなずいてその場を後にするのだった。
彼らが姿をくらましたのを確認した後、サイレントは再び向き直る。
取り囲むグロリアの兵士をぐるりと見渡して位置を把握すると、彼は自分の杖をスーツのポケットにしまった。
「また剣を使う時が来るとは・・・」
これから、サイレントと名乗る男の本当の実力を行使することになるのだった・・・・
それから数日が経過した、今現在・・・・
空一面暗い雲に覆われて、太陽の光は町を照すことはない。その代わりに、今日は朝からずっと雨が降りやまない。
そんな一日の昼下がりの事だ。
少年は今、一人で地下の隠れ家を訪れていた。
誰もいない。そしてとても静かだ・・・
天井上から微かに聞こえる雨音以外、音という音は全くない。
それがより一層、自分を寂しく感じさせる・・・
彼、マックスはのろのろと歩き、中央のテーブルに近づいた。
古っぽい木のテーブルの上には、ボーラーの目線を映し出す丸い黒縁の鏡が仰向けになっていた。
彼は何気なくその鏡面に手を触れてみる。
「やっぱりだめか・・・」
手を当てボーラーを起動させようと念じるも、もうその鏡がセントロールス内の光景を映し出すことはなかったのだった。
ボーラーで校内を監視していた事はレイチェルも知っている。
つまり、彼女がボーラーを探しだして撤去するのは時間の問題だった。
おそらく、彼女が自身の正体を告白したあの日の後に、校内のボーラーを捜索したのだろう。
だが、正直ボーラーなどどうでもいい。
もう黒幕はわかった。他にも色々と・・・
マックスはそのままテーブルの椅子に座った。
今日何か明確な目的があってここへ来たわけではない。
あの日の後、皆と何か作戦を考えたり行動もしていない。
皆とまともに話しもしていない。
だが、なんだろうか・・・
今日は、無意識にここへ体が向いてしまった。と言うのが一番妥当かもしれない。
しかし今から何をしようかと考えてみたところで、これという答えは出ない。
いや、そもそも何をすればいい・・・何をしたい・・・?
マックスの意識はどんどん遠ざかり、そのままぼーっとすることしか出来なかった。
そんな彼の目を覚ましに来たのは以外な人物だった。
雨音に混じって、天井の扉が持ち上げられる音が聞こえた気がした。
そしてマックスがそれに反応して振り向く前に、相手が話しかけるほうが早かった。
「やっと来たか!一人なのか?」
一人の男が階段を下りながら言う。
「・・・デイヴィック・・・無事だったのか!」
マックスは一瞬状況が理解できなかったが、今やっと、彼が無事戻ってきていたのだという事実を知ったのだ。
「いったいどこにいたんだ?待てよ、他の皆はどうした?」
停滞していた思考が徐々に活動を再開する。
「まあ落ち着け、皆無事だ。もちろん、バカ者に捕らわれていたロザーナ・エメリアも連れ戻した。」
デイヴィックは嬉しそうな表情でそう言った。
「そうか。それを聞いて安心した。」
マックスが言った。
「それより、あれからずっとお前達に知らせたかった事があるんだ。」
「ああ、聞こう。まあ座れよ。」
マックスが隣の椅子を動かした。
そしてその椅子に腰かけると、デイヴィックは順を追って語り始めた。
「まず良い話からすると、俺達に心強い仲間ができた。ナイトフィストのな。」
「ナイトフィストの仲間?」
「そうだ。俺達がグロリアから抜け出すきっかけを与えてくれた人達でもある。お前も知ってるだろ、テンペストと戦った時に助けてくれた、あの三人がそうだ。」
マックスは誰の事かすぐにわかった。同時にその三人が、いつの日かニュースで言っていた行方不明の警官なのではないかという可能性も思い出した。
「そして彼らからテンペストに関わる情報を聞いた。」
「テンペストの事を知ったのか?」
マックスは言った。
「そうだ。あの三人とは古い付き合いらしくてなぁ。かつて、テンペスト・・・いや、バスク・オーメットはナイトフィストにいたらしい。」
「かつてはナイトフィストだと?!俺の知ってる話と違う・・・」
マックスは、レイチェルから聞かされたテンペストの話との違和感を感じた。
「と言うことは、まさかお前もあいつの事を誰かから聞かされたか?」
デイヴィックは言った。
「まあな。その事についてはお前の話の後だ。」
「いいだろう。じゃあそのバスク・オーメットに関して、まだ情報はある。」
デイヴィックは続ける。
「三人のナイトフィストとオーメットは同じ行動グループの仲間だったらしい。でもある時奴は裏切った。そして同じタイミングで、あの14年前の事件が起きたんだとさ。」
「待てよ・・・それって・・・」
マックスは話の流れがわかった。
「ああ。おそらく、サウスコールドリバーの惨劇を計画したのはバスク・オーメットだろう。」
デイヴィックが言い切った。
「あいつが・・・あの男が全ての元凶か・・・」
徐々にマックスの怒りの感情が高まるのを感じながらも、デイヴィックは話の続きを急ぐ。
「次は悪い報せだ。俺達がエメリア救出作戦を実行したあの日の翌日、ナイトフィストの情報管理所にグロリアの一部隊が襲撃したらしい。」
「そんな事があったのか・・・とうとう本格的に動き出したわけか。それで、その情報管理所とやらは無事なのか?」
マックスが静かに言った。
「三人の話では、幸い重要データをまとめた本は奪われなかったようだ。その代わりに、そこで戦った仲間のほとんどが犠牲になったと聞いた。」
「・・・わかった。情報をありがとな。」
マックスは、部屋の遠くを見つめながらそう呟いた。
「そうだ。あの日、俺達に何があったのかを簡単に話そう。実はあの部屋の入り口には空間転移魔法が仕掛けられていたんだ。そのせいで他の場所に出て・・・」
「ああ、それは知ってる。」
マックスは彼の話をさえぎる。
「そうか、じゃあお前達もあの部屋に入ろうとして別の場所に・・・」
「俺だけだ。特別招待されたからな・・・」
マックスの心が再び締め付けられる。
「どういうことだ?お前、何かあったのか。」
「ジャックみたいな台詞だな。」
マックスは微笑し、またすぐ真顔に戻ってあの事を語り始めた。
「これはバスク・オーメットのパートナーの話だ。そいつは俺達が今まで探していた敵。魔光力源を誰よりも早く見つけた生徒・・・つまりお前達も探していた人物。」
「ああ。それは知ってる。」
「結果を話す。そいつが俺の前に現れた。そして自分の事を打ち明けたんだ。」
マックスはあの瞬間の衝撃を思い出しながら言う。
「それはまた急な話だな。それも、何でお前だけに・・・?」
「俺が一番騙されていたから。仲良くなったと思われたからだろうな。今までさぞかし面白かった事だろうよ・・・」
デイヴィックはマックスの言葉の意味をすぐに察した。
「そんなまさか・・・お前達のチームに・・・」
「・・・レイチェル・アリスタ。一番、らしくないだろ・・・・」
マックスは今まで見てきた、よく知っている彼女の姿や雰囲気と、つい最近露にした彼女の変貌を交互に思い出しながら言葉をつまらせた。
デイヴィックは、そんな露骨に落ち込んだマックスの姿を見るなり、どんな言葉を返そうかと答えに悩んだのだった。
「・・・まぁ、確かに、彼女が誰よりも先に魔光力源を発見して、かつ君達を欺いていた人物には見えないな。でもどういう事なんだ・・・オーメットとどこで繋がっていたんだ?」
デイヴィックは、テンペストとレイチェル、そしてこの二人と魔光力源との結び付きを考えた。
「奴がレイチェルを育てた。14年前の事件で親を失ったからな。」
マックスは続けた。
「レイチェルの親はグロリアだった。そしてオーメットは父親と仲が良かったらしい。」
「そういうことか。14年前、引き取った時からパートナーだったわけだ。じゃあ、魔光力源とはどういう関係がある・・・その事は言ってなかったのか?」
「レイチェルの父親が探していた物らしいが、それについてはほとんど教えなかった。当然だな・・・」
「そうか・・・でもまさか、こんな事になってるとは・・・そうだ!あの三人に聞けばいい。」
デイヴィックは思いついた。
「オーメットがレイチェル・アリスタの父親と親しかったのなら、もしかしたら同じグループにいた三人が何か知ってるかもしれない。」
「そうだな・・・」
「何か新事実がわかったらすぐに伝える。そして近いうちに彼らを紹介しておかないとな。ジャック達も呼んで、ちゃんと会って話そうじゃないか。」
デイヴィックは、より仲間が団結していく未来を想像した。
しかし・・・
「ああ。ただ、俺抜きでな。」
マックスは依然として、部屋の奥をぼーっと見つめたまま呟いた。
「何を言ってるんだ?お前のチームのリーダーはお前だろ。なぜリーダーだけ抜きにするんだ?」
「もう、俺はリーダーじゃない・・・」
「何だと・・・?」
デイヴィックは話がわからなくなった。
「そして・・・もうここにも来ないだろう。お前達も身のためだ。もうこんな事には・・・」
「許さないぞ。その考えだけは。」
デイヴィックは、彼がそれから何を言おうとするのかわかったのだった。
「俺達を・・・本来グロリアに属するはずだった俺達を説得し、道を正してくれた。それは悲しんでいたエレナをお前達が助けてくれたことから始まったんだ。更にはエメリアの事まで気をかけてくれた。敵対していた人間なのにだ。」
デイヴィックは力強くマックスに言う。
「お前達は俺のチームを見事に守った。それは、リーダーであるお前が正しかったからだ。だからお前に付いて行く仲間も正しくあれるんだ。そんなお前が、ここでグロリアとの戦いを放棄しろだと?今もどこかで傷付いているかもしれないナイトフィストを無視しろと言うのか?つい最近、多くの仲間が信念を持って戦って、犠牲になったというのに・・・ここで裏切るような真似をする気か?がっかりさせること言わないでくれ・・・」
デイヴィックは次々と浮かんでくる本心をぶつけた。
すると、マックスはゆっくり彼に背を向け、静かにこう言った。
「裏切られたのは俺だ。もう、仲間を・・・やっとできたと思った大切な人を失いたくない・・・・」
デイヴィックは、そのままうつ向く彼の背中から今まで抱えていたであろうあらゆる辛さ、悲しさ、寂しさを感じ取れたような気がした。
そしてそんな彼の小さくなった背中越しに、何も言い返す事が出来なかった・・・・
再び静寂が訪れ、また天井上から雨音が聞こえるようになる。
バースシティーの雨は、まだ降り止みそうにない・・・・