Outsider of Wizard   作:joker BISHOP

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第二十三章 乱れる

嘘だと言ってくれ・・・これは何かの間違いであってくれ・・・

 

事実を知っても、マックスはまだそう願い続ける。

そして彼の目の前には、地下隠れ家に残したはずのレイチェルが立っているのだった・・・・

 

 

「俺達がずっと探していた黒幕・・・何故なんだ・・・何でよりによって、君が・・・」

マックスは彼女の目を一直線に見て言う。

 

「簡単なことよ。あたしも被害者だから・・・14年前のサウスコールドリバーの事件の。」

レイチェルの先ほどまでの不適な笑みは消え、一気に真顔になって喋った。

「あの事件で家族を失ったのは、あなた達だけじゃない。」

 

この瞬間、マックスはだいたいの事がわかった。

「君の親はグロリアの兵士としてナイトフィストと戦った。そして亡くなったんだな。」

 

「そうよ。だからナイトフィストは宿敵・・・・」

彼女は、普段とはまるで違う、沈んだ低い声で言った。

 

「君が黒幕なのはわかった。でもまだわからないことはある。君がテンペストと協力して魔光力源探しをしていた理由はなんだ?君らは何をしようとしてるんだ?そもそも、なぜ魔光力源の場所を知っていた?」

マックスは沸き上がる疑問を問い詰める。

 

「君が黒幕だとわかった今、聞きたいことは山ほどある。今から俺の質問に全て答えてもらおうか。」

 

二人の強い眼差しが双方を見つめあった。

これからマックスはあらゆる事実を聞かされる事となるだろう・・・

 

そしてこの時、姿を消したデイヴィック、リザラ、エレナの三人の状況は・・・・

 

 

「やはり、お前達は道を踏み外したままか。」

男は言った。

 

「それはこっちの台詞だ。それで、何が目的だ?俺達をここへ招いた本人はどこだ?」

デイヴィックが男と向き合って言った。

 

ここは、見たところ窓がひとつもなく、何本かの丸い柱が点々と立っている古びた広間だった。

見たこともない広間だが、間違いなくセントロールス旧校舎の教室であるとは思えない。

 

前方の男から視線を少しずらすと、隣には一人の女子の姿もあった。

見えないロープで縛られているかのように、彼女の手足は一切動かない。

声を出そうともしないようだが、黙らせ呪文でもかけられているのだろうか。

 

「残念だがここにはいない。そしてお前達を呼んだ理由はひとつ。お前達にもう一度グロリアに戻るチャンスを与えるためだ。答え次第でこの女の運命も決まる。」

男は隣の女子に杖を突き付けながら言った。

 

「そんな事だろうとは思った。最初に言っておくが、ロザーナは必ず連れて帰る。」

デイヴィックは目線の先にいる男、ロドリューク・ライバンを一直線ににらんで言った。

 

「じゃあ答えは決まったな。ロザーナ・エメリアを救う道はただひとつ。お前達はグロリアに従うしかないんだ。」

ロドリュークは隣のロザーナからデイヴィック達三人に向き直る。

 

「違うな。」

デイヴィックが言った。

 

「何だと?」

「俺達はもうグロリアには戻らない。そしてお前を打ち倒して、力ずくで彼女を連れ戻してやる!」

 

デイヴィックの力強い言葉に合わせるように、彼の左右に並び立つリザラとエレナが杖を上げる。

 

「やはりそう来るか。」

ロドリュークは鼻で笑い、杖をデイヴィック達の方へゆっくり向けた。

「どうせそんな事だろうとは思っていたさ。その時のために、彼らが来ているんだからなぁ・・・」

 

そう言ったと同時に彼の背後の空気がゆらめき、やがていくつかの足音も聞こえた。

 

デイヴィックにはどういう展開かがわかった。

見ているうちに、ロドリュークの後方には一人、また一人と人間が現れるのだった。

 

最後に姿を現した人物を含め、計四人の何者かがそこに黙って立ち並んでいる。

その皆が同じ黒衣に身を包み、深くフードを被って顔を隠している・・・

 

「返事など関係無しに、最初からこうなる予定だったな。」

一瞬にして不利な状況となったデイヴィックはロドリュークをにらみ、そして静かに言った。

 

彼らが何者かは想像できる。そして実力差も・・・

さすがにリザラとエレナも自信をなくす。

 

しかしデイヴィックは歯を噛み締めたまま、まだその上げた杖を下ろしはしない・・・

 

何か・・・何でもいいから突破口はないか・・・

 

デイヴィックは必死で辺りに目を走らせる。

 

まずここがどこかはわからないが、見える範囲だとロドリューク達の後方には壁がある。

左右に多少の奥行きがあるようだが、道が開けるのか行き止まりかはわからない・・・

 

自分達が来た方にはセントロールスへと通じる扉のみ。

しかしあの扉には空間転移の魔法がかかっていることは明らかだ。また後ろの扉をくぐった先がセントロールスに繋がるとは限らない・・・

 

デイヴィックはとにかく回避行動を模索する。

 

「どうした?もう怖じ気づいたか?」

ロドリュークがにやけながら言うも、デイヴィックの耳には全く届いてはいない・・・・

 

隠れられる場所もない。正々堂々、戦って全員に勝つしかないのか・・・

 

デイヴィック達がその場で手出し出来ずにいると、ロドリュークの背後に並ぶグロリアの魔術師達が杖を握り、前へと進みだした・・・・

 

 

同じ時、依然としてこちらの二人も向かい合っている状況だ。

 

「質問の全てに答えることは出来ないわ。でも気になっている事はいくつか教えてあげる。その為にもあなたをここへ招いたんだから。」

レイチェルが言った。

 

「そもそも、ここはどこだ?」

レイチェルに続いて、マックスの声が暗い部屋に反響する。

 

「あたし達の活動拠点と言ったところね。あなた達の基地にあたしを招いたから、今度はお返ししたまでよ。」

「ありがたいな。おかげで誰にも邪魔されずにいろんな事が聞ける。」

 

マックスは続けた。

「では最初の質問だ。ずばり、君が俺達より先に地下の秘密を知っていたのは何故だ?どうやって知った?」

 

「簡単よ。テンペスト・・・いや、バスクがあたしに教えたからよ。」

「バスク。それが奴の本名か。名まで知っている間柄だったか。」

「そうね。むしろ、パートナーと言うより親に近いわ。」

 

これを聞いたマックスは、更に衝撃を味わった。

「親・・・そうか。だいたいわかった。14年前、家族が死んでから奴が君を育てた。そうだろ。」

 

「察しの通り。あたしの父親とバスクがよく共に行動する仲だったらしいから。そして父親が死んだ後、彼が果たせなかった願いをバスクとあたしが受け継いだのよ。」

レイチェルは言った。

 

「君の父親が果たせなかった願い、それが・・・」

マックスは、これまでの彼女の行動理念が読めてきたのだった。

 

「それが魔光力源の発見、および起動。」

レイチェルは彼の言葉の後を言った。

更に続ける。

 

「バスクは昔から、セントロールスにひとつの魔光力源がある事は知っていたわ。だから時が経って、あたし達はバースシティーに移り住んだ。全ては魔光力源のためにセントロールスの生徒になったのよ。」

 

「君も、結局は復讐のために戦う道を選んだ人間だったわけだ。そして、その復讐心がゴルト・ストレッドという生徒を動かし、そして最後は殺しまでしたというのか!」

マックスの声に怒りと失望が混ざりあう。そして拳を強く握り締めていた。

 

「それは違うわ。彼を殺したのは彼自信。」

「自殺だと?」

マックスには予想していなかった答えだった。

 

「あたしは最後まで服従の呪文で操っていたのよ。彼はずっと使うつもりだったけど、色々と情報がバレそうになったから自害させたのよ。だから、あたしは傷ひとつ付けてないわ。」

 

「傷ひとつ付けてないだと・・・ただ自分の手を直接汚していないだけだ。実際に彼の運命を操ったのは他でもない、君だろ!」

 

「それを言うならあなた達だって大いに関係してるわ!彼を襲って情報を聞き出そうとしたからこうなったのよ!」

 

彼女のその口調と台詞から、昨日までの純粋な少女とはまるで別人のように思えた。

そしてこの瞬間、もはやマックスの中のレイチェルは完全にいなくなったのだった。

 

「そうやって、ジェイリーズもストレッドに襲わせて傷付けたんだな。それも、あくまで自分の手ではなく・・・」

 

「聞きたいことはそれだけ?色々質問があるんじゃなかったの?」

レイチェルがさえぎる。

 

「どうせ、魔光力源について詳しくは喋らんのだろ。」

「まぁ、もちろんそうだけど。でも・・・」

彼女は急に、言葉をつまらせた。

 

「もし、これからあたしに協力してくれたら・・・知ってる事、そしてあなたが知りたい事全てを話してもいい。」

レイチェルは少し目線を反らしてそう言った。

 

「わかったよ・・・」

マックスが、ぼそっとつぶやく。

 

「えっ?じゃあ・・・」

「君が、完全にグロリアの人間だということがよくわかった。今度は俺を利用するつもりなのは考えなくてもわかる。その為にもここへ俺を招いた!」

 

「違うわ!これはそういう意味で言ってるんじゃなくて・・・」

「じゃあ何が狙いだと言うんだ?そして今更、俺に何を頼んで受け入れられると思ってる・・・」

マックスは彼女を強くにらみ、そして杖を握った手をゆっくりと彼女に向ける。

 

「全ては嘘だった。今まで一緒にいる時に見せた笑顔も、言った言葉も、気持ちも・・・・全て演じていたのか・・・」

彼の強い眼差しからは、自然と涙が流れ落ちる。

 

「ストレッドの次は、俺を道具にするために仲良くなったのか・・・そして使えなくなれば、彼同様に・・・」

 

「違う!!」

レイチェルが下を向いたまま叫んだ。

 

「何が違うんだ・・・」

「最初はそんな事も考えていたわ。だからスパイとしてあなた達のチームに入ろうと思った。」

「やっぱりそうじゃないか。」

「でも変わってきたのよ!あなた達と接するうちに、使命に迷いが生まれた。特に、マックスにはあたしと近いものを感じた。だから本当に仲良くなれるんじゃないかって・・・・だから、全てが嘘じゃない・・・」

 

二人の会話は一瞬途切れ、そしてすぐにマックスが口を開いた。

 

「・・・今更、何を信じられる。もう君が何を言ったって信じられないぞ。」

マックスはまだ杖を突きつける。

 

「それは・・・まぁ当然ね・・・」

そう言ってうつ向く彼女の瞳は、微かに涙を浮かべているようにも見えた。

 

「じゃあ、あたし達はもう会えないわ。お互い、信念に従って動くしかない・・・・」

 

「ああ。もうチームに招くことは出来ない。これからは敵として見るしかない・・・」

しかし、マックスの杖先から何の呪文も発動されることはなく・・・

 

「今回は帰してあげる。でも、もし次に会ったら・・・」

「ああ、わかってる。」

 

そして次の瞬間、入り口の扉からとてつもない光が射し込み、目を閉じて再び開いた時にはもう暗い部屋ではなくなっていた。

 

古びた旧校舎の部屋には、当然レイチェルの姿は無く、代わりにジャックとディルの驚く姿が見えた。

 

「おいっ!どこ行ってたんだ?て言うか、今のは姿現しか?!」

ディルが早速口を開いた。

 

「レイチェルだ・・・」

マックスが唐突に言う。

 

「はっ・・・?」

「黒幕は、レイチェルだった・・・」

 

空間転移が解除されて、強制的に戻されたマックスから出た発言にジャックとディルが唖然としている最中、彼らの状況も一変する・・・・

 

 

デイヴィック、リザラ、エレナは四人のグロリアの魔法使いとロドリュークによって、周囲を完全に取り囲まれていた。

 

五本の杖が四方から向けられ、デイヴィック達三人は語る言葉も無くなっている。

状況が覆ったのはこの時だ。

 

誰も術を放っていないはずのこの場に、突然眩い閃光がほとばしったのだった。

直後、閃光の数は二筋、三筋と増えてグロリアの魔法使い達に直撃していった。

 

デイヴィック達含め、この場にいる皆が混乱し始める。

魔法の閃光は乱反射するかのごとく、広間の天井や壁に当たると跳ね返り、より加速して慌てている魔法使い達に命中していったのだった。

 

術をくらった魔法使い達は一人ずつ姿くらましで消えていき、その結果攻撃が止んだ時、攻撃をくらわずにその場に立っていたのはデイヴィック、リザラ、エレナ、そしてロザーナの四人だけであった。

 

辺りが静まり返った直後、この展開を起こした人物は彼らの前に姿を現した。

 

「どうやら、もう君達は自分の判断で未来を切り開いたようだな。」

前から一人の男の姿が声と共に出現する。

 

その次は横から・・・

「私達の思いが伝わったようで何よりだ。」

人のシルエットが現れ、最後に反対側からも・・・

 

「さてと、格好は違えど私達の事はもちろんわかるだろう?」

 

そこには三人の男が現れ、デイヴィック達に近寄ってくるのだった。

 

デイヴィック達は彼らの顔を見るなり、何者かはすぐにわかった。

「当然だ。最初に出会った時からあんた達には助けられたんだ。そして今回も、本当に助かったよ。」

 

この危機を救った彼らは、警官に扮したナイトフィストを名乗る男達三人だった。

 

一人の男がロザーナに杖を振って、彼女にかけられていた呪文を解いた。

 

「あれ・・・あたしは、何を・・・?」

ロザーナは、たった今までの事を覚えていないらしい。

 

そこへエレナがいち早く駆けつけた。

「良かった。本当に良かったわ!」

 

しかし、今まで服従の呪文をかけられていたロザーナは何が何だか、状況を理解できずにいるのだ。

 

デイヴィックは改めて三人の男達と向き合った。

「本当にありがとう。俺達はこれからナイトフィストの一員として生きていく事を誓った。だから今度は俺達が組織の役に立つ番だ。」

 

続けてエレナが言う。

「あたし達を助けてくれてありがとう。お礼として、あたし達が知ってるグロリアについての情報を全て話すわ。」

 

デイヴィックに続いてリザラがうなずいた。

 

「それはありがたいな。是非とも聞かせてもらおうではないか。だがその前に、まだ私達の事をよくは知らないだろ?」

一人の男が言った。

 

「それは、まぁな。」

デイヴィックが答える。

 

「ならばまず私達の事について、軽く教えておかないとな。ここで君達を助けたからと言っても、本当に信頼するには早いぞ。」

そして彼は続けた。

 

「そうすると、まずはこの場所についてだ。ここは14年前の惨劇の始まりの場所。元々はナイトフィスト・サウスコールドリバー支部だった所だ。」

 

「ここが惨劇の始まりの場所・・・」

デイヴィックが言った。

 

「14年前、私達はグロリアの情報収集グループとしてここで活動していた者だ。そして、今はテンペストと名乗っているあの男、バスク・オーメットもグループの中にいた。」

別の男が言った。

 

「それじゃ、あの男は元々はナイトフィストだったと言うのか?」

「いいや。おそらく奴はグロリアのスパイだったんだ。そして奴こそ、サウスコールドリバーのナイトフィストを殲滅させる作戦の計画者なのだと思っている。」

男は言った。

 

「ここは、私達が今でもたまに集まっている場所でもある。だからこの辺には一応、魔法の仕掛けを施してあった。今日、私達以外の誰かが近寄った反応があったから来てみたんだが、正直こんなことになっていたとは驚いたよ。」

 

すると、今度は彼の隣の男が話しだした。

「とりあえずここを離れよう。またいつ奴らが戻るかわからん。それにもうひとつ危険視することがあってだな。残念ながら昨日、オーメットを逃がしてしまった。」

 

「そうだったのか。」

デイヴィックは、テンペストがこの三人を相手に逃げきれたのかと、内心驚きながら言った。

 

「オーメットは当時からかなりの腕利きだった。そんな奴の考えることなら、奴もまたここへ訪れることも考えられる。なぜ君達がここにいたのかも、場所を変えて色々話しをしよう。」

 

「わかった。ただ、それならあの後ろの扉には気を付けた方がいい。ここへはあの扉にかけられた空間転移の魔法で来てしまったんだ。」

デイヴィックが言った。

 

「なるほど、そういうことか。では安全のために姿くらましで移動しよう。」

 

その後、彼らはこの古びた広間から姿を消すのだった・・・・

 

 

それから数時間が経過した今、マックスはというと、地下の隠れ家に戻っていた。

 

椅子に腰かけて、中央のテーブルに向かっている。

その隣の椅子にジャックが座り、更に横にはディルがいた。

そして向かい合う椅子に座るジェイリーズの姿があった。

 

全員が暗い表情をしている。

その理由は、あれからデイヴィック達が旧校舎に現れるのを待っていたが、結局帰ってこなかった事。それに極めつけは、マックスからあの話を聞かされたからに他ならなかった。

 

「仲良くなってきたと思ったのに・・・まさかあの子がね・・・・」

ジェイリーズがつぶやいた。

 

「それにしても、何でお前だけに話したんだ?」

ディルがマックスに言った後、その答えはジャックがすぐに言うのだった。

 

「レイチェルは、マックスと一番早く打ち解けていた気がしていた。その事は少なからず関係しているはずだ。」

 

「ああ。ゴルト・ストレッドの次の道具にするつもりだったらしい。俺をな・・・・」

マックスは誰とも目を合わせず、ただ壁の一点を見たまま言った。

 

「ゴルト・ストレッドは彼女の道具だった。どこの誰かまでは言っていなかったから、彼がナイトフィスト側の人間か、グロリアか、もしくは全くの無関係者だったのかはわからない。でも・・・犠牲になった事に変わりはない・・・」

 

「まさか、口を封じたのも・・・」

ジャックが言う。

 

「そうだ。レイチェルが彼を操って自害させたらしい。レイチェルが彼の命を切り捨てたんだ。」

「そうか。すると、俺達の最初からの敵はテンペストとレイチェルだった・・・それで間違いないな。」

「ああ・・・そうだ。それから・・・」

 

マックスはジェイリーズの方を向いて話を続けた。

「一時でも、君が裏切者なんじゃないかなんて怪しんだことを後悔している。その場に居合わせなかったという理由だけで・・・すまなかった・・・」

「俺も同じくだ。ごめん・・・」

ジャックも続けて頭を下げる。

 

「もうその話しはさっき終わったはずよ。もういいわ。」

続けてジェイリーズは言った。

「でも、よりによってあたしが用事でいない時に、こんな事になってるなんて・・・あたしが一番驚いてるわ。」

 

彼らは今、自分達がずっと対抗してきた相手の正体をはっきりと認識したのだった。

 

それからマックスは、更に詳しい説明を話して聞かせるのだった・・・

 

その夜、彼は自宅の寝室にて一人、ずっと思い悩んでいた。

 

今となって考えてみると、自分達がゴルト・ストレッドを拘束して情報を聞き出そうとしたことが、後に彼を死なせる結末への引き金となった・・・

レイチェルがそう言ったことは、確かに否定することは出来ない。

 

いずれは殺されていたかもしれないが、それを考えても無意味だし、自分達の言い訳にもなってしまう・・・

 

そして今日まで自分達の間違った推理を信じ続けてきた事への腹立たしさ・・・

敵だとはっきりわかったにもかかわらず、あの場でレイチェルを攻撃できなかった自身の心の弱さ・・・

 

そして一番心配な事がある。

デイヴィック達はいったいどうなってしまったのか。ロザーナ・エメリアと出会うことは出来たのか・・・

 

連絡のしようもなく、ただ幸運を祈ることしか出来ない。魔法使いなのに、これ以上どうすることも出来ない・・・・

 

今日一日で状況が大きく変わってしまった事実を、まだ受け入れきれない・・・・

 

今日という日が夢ならば・・・・

 

 

彼の頭の中で今、今日起こった出来事、特にレイチェルの件が冷静な思考の邪魔をし続けているのだった。

 

黒幕の正体、そして同時にテンペスト関連の事実も明らかになったことで、今後のナイトフィストの為になった事もまた事実。

冷静なマックスならばそう考えることも出来たかもしれないが・・・

 

そして翌日、事態は本当の急展開を迎えることになる・・・

 

 

 

 


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