Outsider of Wizard   作:joker BISHOP

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第十七章 少年少女の歩む先は……

マックス、ジャック、ジェイリーズの前には五人の魔法使いが立ちはだかり、全員の杖先が三人に向けられている。

 

そこへ、後ろからディルが追いついたのだった。

「おい、後ろはもう大丈夫・・・・」

その場の光景を目の当たりにした彼は、言葉もなかった。

 

ディルも揃った所で、デイヴィックの隣にいる、短髪でがたいのいい男子が話しだした。

「聞くところ、お前達がずいぶん邪魔をしてくれたようだな。お前達だな、ナイトフィストの仲間になったという生徒は。」

 

「そうだ。そして邪魔をしていると言えば、お前達もだろ。グロリアの手先だからな。」

マックスは言った。

 

そして次に、見たことのない校章がついた、グレーのワンピースの制服の女子が口を開く。

「下手な真似をすれば、相手が素人でも手は抜かないわよ。」

「でも、必要な情報を提供してくれたら、あんたらの事は忘れてやっても良いけど。ナイトフィストは何をさせてるの?魔光力源とかいうものを知らない?」

同じ制服を着た隣の女子が続きを話した。

 

「知ってて言うと思うかい?」

ジャックが言った。

「あたし達はどうしても、それを見つける必要があるんだ。力ずくでも聞き出すよ。」

 

その時マックスが杖を上げた。だが、あえて何もしない。

攻撃させるかと、すかさずデイヴィックが杖を振った。

「エクスペリアームス」

 

これを狙っていたのだ。

「今だ!」

マックスの一声でジャックが素早く攻撃を仕掛けた。

ジャックの無言の魔術はデイヴィックに迫り、ガードを予期していない彼に命中して後方に倒れた。

 

「よくも素人が!」

グレーの制服の女子が前に出た。

そこにディルが立ち向かう・・・

「素人ねぇ。結構美人なんだけどなぁ・・・言葉には気をつけてもらいたい。」

その彼女の顔立ちや髪型、どこかジェイリーズに似ているように見えた。

 

「それはどうも。で、あんたは誰だ。」

しかしその喋り方はまるで違うようだ。

「ディル・グレイクだ。覚えておくと良いだろう。」

「はぁ?あたしが覚えているといいけどな。エクスペリアームス!」

「プロテゴ!ペトリフィカストタルス!」

 

ディルはとっさに反応し、続けて動きを封じようとしたがそう簡単にはいかない。

彼女はガードしてすかさず反撃する。

「コンファンダス!」

 

だがディルはよけて、杖をすぐに向け直す。

「ステューピファイ!」

彼は必死で攻撃に繋げた。

 

しかし相手は身軽な足取りでよけて、またすぐ術を放った。

無言呪文での攻撃にディルは対応する余裕がなく、光があっという間に目の前に訪れて命中した。

 

瞬間にディルは固まり、その場で仰向けになった。

 

身動きも、声も出せない彼の近くに女が歩いて来るのが見えた。

「ついさっきまでの元気はどうしたのかな?あたしはロザーナ・エメリア。覚えておくと良いだろう。」

そう言い残し、ジェイリーズのように茶髪で波打つ髪の彼女は、他の皆の戦いに参戦した。

 

そしてジャックの方では・・・

 

「マグルの生活をしてきたあんたに、魔法界で生きてきたあたしと戦えますかね。」

頭の後ろで髪を結んだ、もう一人のワンピース制服姿の女子が向かい合っていた。

 

「そっちがその気なら、容赦無くな。」

そしてジャックは杖を軽く振り、無言呪文を放った。

しかし彼女は難なくガードして、直後に呪文を放った。

 

ジャックはこれを当然だと思い・・・

「エクスペリアームス!」

ほぼ同時に発動した二つの呪文がぶつかり、光線が繋がった。

ジャックは呪文が繋がったのを見ると、杖に魔力を込めながら左右に大きく振った。

杖から発せられる光線が壁に当たり、左右で火花が飛び散る・・・・

 

更に杖を大きく揺さぶり、相手の戦闘態勢を崩そうとする。

しかし相手は魔法界で育った、魔法学校の生徒だ。

マグルの学校にいるジャックには魔法で負けるわけにはいかないというプライドが高まり、より自分の術に力を入れるのだった。

 

しかしそこまでがジャックの思惑だ。

向きになって対抗する彼女の術が更に激しい火花を散らす。

 

彼が大きく杖を横に振ると同時に呪文を切り、相手の光線だけが勢いよく壁に直撃した。

壁の破壊音と共に、目の前に火花と煙が発生する。

マックスやデイヴィック達全員が振り向いた。そしてこの隙にジャックはその場を離れようとようとした。だが・・・

 

「なにっ!」

煙の向こうから彼女が走って接近し、ジャックの腕を掴んで行かせなかった。

腕をしっかり掴んだまま、彼女はジャックに杖を構える。

彼はその手を掴んで彼女の背中に回して固めた。

彼女は痛みで杖を取り落としたが、同時に後ろ蹴りで彼を突き放させる。

 

「しぶといな・・・」

 

しかし今、相手は無防備だ。ここでジャックは拳を握り、パンチをしようとかかった。

だが、打てなかった・・・・

 

ジャックには女子を殴ることは出来ない。

 

その隙に、彼女は床に転がった杖を取ろうと急いだ。

ジャックは杖を持ち直して呪文を唱えた。

「オブスクーロ」

 

杖先が一瞬光り、アイマスクのような黒い目隠しが彼女の目を覆った。

前が見えなくなった状態で、必死で外そうとするが、これは取れないのだ。

 

今のうちに動きを封じようと、ジャックは呪文を口にしようとしたその時だった。

「エスクペリアームス!」

どこからか呪文が発動し、ジャックの杖は手から離れて廊下の先に吹き飛んだ。

 

見ると、それはリザラの仕業だとわかった。

その瞬間に次の呪文が放たれ、ジャックは対応することが出来ずに食らった。

彼は瞬時に固まり、ゆっくり床に横たわった。

 

その近くではマックス、ジェイリーズがデイヴィックともう一人の男子、それに合流したグレーの制服の女子と共に対戦している。

そこにリザラも加わり、ここで二対四となったのだ。

 

これでは明らかに勝ち目はない・・・・

マックスは相手の数と戦力に押されながら打開策を考えた。

 

デイヴィック達にも、マックスとジェイリーズの焦りは伝わった。もはや二人など脅威でも何でもなくなっている。

 

激しく飛び交う光線が度々ぶち当たっては火花が散る。

四人の攻撃は容赦無くマックスとジェイリーズを襲い、ガードし続けるのがやっとだった。

 

そしてついに、ジェイリーズの杖がリザラの放った武装解除呪文で吹き飛んだ。

リザラは飛んでくる杖をキャッチする。

 

マックスは、とっさにジェイリーズの前に出て集中攻撃をガードした。

 

「マックス、もう無理よ!この場は降参して!」

ジェイリーズは叫んだ。

 

「やめろ!」

デイヴィックの一声で彼らは一旦攻撃を止めた。

辺りは途端に静まり返る。

 

「そうだ。言うことを聞けばいいんだ。大人しくしていればこんな無駄な戦いは避けられる。」

 

マックスは自分の周囲を見渡した。

周りにはジャック、ディルが倒れて動かなくなっている姿がある。そしてすぐ後ろでは、杖を奪われたジェイリーズがなすすべもなく震えている。

 

ここまで追い込まれた事はなかった・・・・

この状況で、どうやってもたった一人で勝てるとは思えない。

 

だが、これは何だ・・・何だこの感覚は・・・?

 

仲間が傷つき、悲しくもあり悔しさもある。

しかしそれだけではない。これだけしてやられて、この状況を覆すことの出来ない自分の無力さへの悔しさ、怒り・・・

 

そうだ、怒りだ。

これまでにここまで明確な怒りを特定の相手に感じる事はなかった。

敵が憎い。だが、今はそれ以上に何も出来ない自らが許せない・・・・

 

「大人しく杖をしまえ。そうすればこれ以上戦うことはない。」

デイヴィックが言った。

だが、マックスは何も答えず、目を閉じている。

 

「マックス!」

すぐ後ろからはジェイリーズの声が聞こえた気がした。

だがこの時、別の声が頭の中を占領していた。

 

なぜかはわからない。この時から意識がもうろうとしてきた。そしてなぜ、今あの声が聞こえるのかも、わからない・・・・

だが、そんなことはどうでもいい。今必要なのは力だ。力さえあれば・・・・

 

「自信の判断にゆだねろ。そして全てを動かせ・・・」

 

またこの台詞だ。だが、今はただ頭の中に響き渡る声に従うだけだ。全てを動かす力があれば・・・!

 

「そして覚醒しろ・・・・」

 

その言葉を最後に、身体中が熱くなる感覚がした。

マックスの手から杖が落ちる・・・

 

「マックス・・・・?」

ジェイリーズが声をかけるが、その声は完全にわからなかった。

 

全身からエネルギーが沸くのを感じる・・・

そして次の瞬間、彼の体から赤黒いオーラのような光を放ちだしたのだ。

 

ジェイリーズは思わず後退る。

 

「何だ、この魔法は・・・」

デイヴィックも状況がわからなかった。

 

そこへリザラが杖を上げる。

「インペディメンタ!」

 

光線はマックスに確実に飛んだ。しかしそれをよける気にはならずに片腕を前へ突き出した。

光線はマックスを覆う赤いオーラによって弾かれて消えた。

 

この時、マックスはほとんど無意識の状態だった。

 

その場に立ったまま、突き出した手から光の波動が発し、デイヴィック達の方に向かう・・・

 

「まずい!よけろ!」

高速で迫る波動は慌ててよけるデイヴィック達をかすめ、かわしきれなかったリザラに当たり、彼女を吹き飛ばした後に消失していた。

そのまはま壁に叩きつけられ、リザラは気を失って床に倒れた。

 

同じく、マックスもその場でぐったりと横たわっていた。

もう彼を囲むオーラは消えている。

 

ジェイリーズは目の前で倒れたマックスを起こそうと必死になった。

「マックス!大丈夫?!」

 

デイヴィック達も、倒れたリザラのそばに駆けつけた。

 

するとその時、廊下の先から足音が複数聞こえてきたのだった。

「急ぐぞ!警察だ!」

デイヴィックともう一人の男がリザラを立たせ、彼女の腕を肩に回す。

茶髪の女子は、同じ制服の女子の目隠し呪文を解いた。

 

五人が揃った所で、彼らは順番に姿をくらまし、あっという間にその場から消え去ったのだった。

 

ジェイリーズは急いでジャックとディルの金縛り呪文を解除する。

「二人とも、早く来て。」

立ち上がったジャックが自分の杖を拾い、ディルと共にマックスの所へ駆けつける。

彼はまだ起きない。

 

「いったい何があったんだ?」

ディルが言った。

「説明は後よ。こういう時にどうしたらいいのよ・・・」

「落ち着け、ひとつ方法がある。」

焦るジェイリーズの横で、ジャックがマックスに杖を向ける。

 

「エネルベート」

すると杖先から淡い光が発生し、マックスの体に広がった。

「エネルベート!起きてくれ!」

再び魔法をかける。

「エネルベート!・・・」

「やばいぞ。」

 

警官と思われる足音は近づく。

 

「エネルベート・・・・」

 

その時、マックスはパッと目を開いて慌てて起き上がった。

「あいつらは・・・?俺は何してたんだ?」

「とにかく早くここを離れるんだ。足音が聞こえるだろ。」

 

マックスは我に返り、急いで杖とバッグを取った。

「姿を消して来た廊下を戻るんだ。後の事はそれから考える。」

 

そして四人の姿がその場から消えた。

 

廊下を歩きながら、ジェイリーズ達はまだマックスの身に起きたことに驚きを隠しきれないでいた。

 

 

一方、驚いているのはこっちも同じだ。

「大丈夫か、リザラ。」

デイヴィックが言った。

 

「ああ・・・何とか。何なんだあいつは・・・」

「さあなぁ。見たことがない魔法だった。」

デイヴィックはリザラの体を支えながら、屋上を歩いていた。

 

「もういいよ。」

「まだ体痺れるんじゃなかったのか?」

「これぐらい大したことない。」

リザラは無理矢理自分で歩きだした。

 

そこに髪を結んだ女子がやって来た。

「大丈夫かい?あたし、正直言ってナメてたよ、あいつらを。」

 

そして彼女と同じ、ワンピースの制服を着た茶髪の女が一人、屋上の縁に立っていた。

「変な奴がいたな。ディルだったか・・・あの不思議な力を放った奴は別として、本当にあいつら全員がナイトフィストに・・・・ならば、何か特別な理由でもあるはずよねぇ。」

 

「理由・・・かぁ。まあそれだったら俺達にだって色々あるだろ。ただ、今日ひとつわかったのは、あのマックスとかいう奴は危険だってことだ。」

そこに来たデイヴィックが言った。

 

「確かにあの時にはどうなるかと思ったけど、でも、あの力は自分でもコントロール出来てないみたいだったわ。」

「ああ、今はな。でも、何かあいつからはとてつもなくデカい気配を感じた。」

デイヴィックは真剣な表情になって言った。

 

「何かって?」

「わからないが、何かだよ。」

そしてデイヴィックは何気なく周りを見渡した。

 

「そう言えば、ロドリュークはまだ来てないのか?」

「ああ、周りの警察の様子を見に行ってるんだっけ?もう帰って来るんじゃないの。」

「だなぁ。それにしても、俺達のミッションはどうなるんだろうなぁ・・・・」

 

その後も、彼らはしばらくここで静かにしていた。

 

 

時は刻々と過ぎ、太陽は早々と沈んだ・・・

 

今、彼は落ち着いている。

しかし今日一日でとんでもない疑問と恐怖が生まれた。

それは他でもない、自分自身にだ。

 

マックスは寝室で一人、今日起こった事を思い出していた。

まずは敵が五人いたことだ。

三人はW.M.C.(ワールド・マジック・センチュリーズ)の生徒だった。あと二人の女はまた別の魔法学校の生徒のようだ。

 

恐らく俺達に対抗する為に皆が集まったのだろう。そしてはっきりした事がある。

それは、やはりあいつらの目当ては魔光力源で、五人ともその場所を知らないということだ。

 

何としてでも見つけ出さなければいけないのだろう。焦っているような感じだった・・・・

 

ということは、俺達以外に魔光力源の位置を知り、そこに近づいたのは、ゴルト・ストレッドを操りそして殺した黒幕だけというわけか。

 

探している黒幕が誰なのかは、自分達で判明出来なければ奴らから聞き出すしかない。

しかし今のままでは、また負けてしまうだろう。何せ人数もあっちのほうが多い・・・

 

こちらにももう一人仲間はいる。でも彼女を・・・レイチェルを戦いに参加させるのは絶対に避けたい。

人数で負けている分は実力でカバーするしかないんだ。まだまだ力不足だ・・・

 

敵に抗えるだけの力・・・・というと、今日起こった奇跡はいったい何だったんだ。

 

確かにあれは現実だった。後でジェイリーズから話を聞いた所によると、赤いオーラをまとっていたそうだが・・・正直自分がどうなって何をしていたのか、全く覚えていない。

 

ただ、最近夢でも聞いた声がしてから意識が無くなるまでの間、体に今までにはない感覚が伝わって、怒りと得体の知れない力を感じた。それからの事はわからない・・・

 

どちらかと言えば、今は魔法学校の連中の事より自分の事が気になる。

それにしても、あの声は何なのか・・・

 

ただベッドで仰向けになっていても何の解決にもならない。

 

マックスは、今日はもう寝ることにした。

寝て、また明日気分を入れかえて何をするか考えればいい。そう思って目を閉じるが、途端に悪夢の感覚を思い出す。

 

「気楽に寝ることも出来なくなったのか俺は・・・」

 

いつしか寝ることに恐怖を覚えたマックスは、また目を開いて起き上がった。

 

「こんな気分では眠くもならない。疲れるまで何かするしかないか。」

そしてそれからはいつものように、本を開くのだった。

何もしないよりはましだからだ。

 

彼は結局、それから数時間は寝ることはなかった・・・・

 

そして翌日。

「あいつらがナイトフィストから、どんな役割を与えられているのかを知りたいな。俺達に与えられた任務と何か関係がありそうだと思わないか?」

 

それはデイヴィックだった。

彼は、一人の男子生徒とどこかの廊下を歩きながら話している。

その廊下はセントロールスより更に幅広く、天上は高い。そして壁は、より豪華な造形だ。

 

「あの四人が活動しているタイミングを考えてみても、確かにそれは言えてるかもな。学校があんな状況だというのに、校内をうろうろしているのはおかしいからなぁ。」

デイヴィックの横を歩く、がたいの良い男子が言った。

 

「そうだろ。だとすると、あいつらの狙いも俺達と同じかもしれんなぁ・・・」

「ナイトフィストも魔光力源に目をつけたと言うのか?」

「ああ。そして、見つけて所有するためにあいつら生徒を使っている・・・そう考えた。」

デイヴィック達は、正面の巨大な扉へと向かって歩く。

 

「でも、マグルの学校に通う生徒だぞ。ナイトフィストは本当に使えると思ったのか?そりゃ、現地の人間を使ったほうが調査させやすいかもしれないが。」

 

「でもお前も見ただろ、あの男の力を。あのマックスという男の魔力は伊達ではない気がするんだよ。ちゃんと知識を学べば、今後あいつは脅威になるかもしれない。むしろ、あいつらをスカウトした人間はマックスに可能性を感じたんじゃないかな・・・」

 

そして二人は正面の扉を押し開け、その先へと入っていった。

 

そこは、とてつもなく広い空間だった。

広間の中央には数メートルに及ぶ長さのテーブルがいくつもあり、大勢の生徒達がそれらを囲んでいる。

 

そんな彼らは全員が魔法使いなのだ。そしてここはW.M.C.(ワールド・マジック・センチュリーズ)の校内である。

 

「リザラはまだ来てないのか?」

デイヴィックの隣の男が言った。

 

「みたいだな。朝食までには来るはずだが、まぁアカデミーの仲間とのやり取りで忙しいんだろ。」

「そうか。ウィルクス・ウィッチクラフトアカデミーへの連絡は、全部リザラがやってるんだったな。今からはロザーナとエレナにも協力してもらう事が増えるな。」

「それだけ事が本格的に動き始めたってことだ。」

 

そして二人は生徒達の中へ溶け込んでいった・・・・

 

 

そしてここから遠く離れた地には、辺り一面の草原に囲まれてそびえ立つ別の魔法学校、ウィルクス・ウィッチクラフトアカデミーがある。

 

アカデミーへの一本道の先にある、巨大な校門の前にて、三人の魔女達は会話をしていた。

 

「そっちの任務はどう?」

長いブロンドの女、リザラが言った。

「まずまずね。一応仲間は増えたわよ。」

アカデミーの校章がついたグレーのワンピースの女子が言う。

 

「とは言っても、本当の仲間は今のあたし達だけよ。後は言われた通りに人数集めしてるだけ。」

隣で、同じ制服を着た茶髪の女子が付け足した。

 

「今はグロリアからの任務に従っていればいいわよ。」

 

そしてリザラは続ける。

「それで、魔光力源の事だけど・・・」

「デイヴィック達とは話し合った?」

「詳しくはこれからだよ。でも、まず魔光力源を発見した生徒と会って話をすべきだと思うんだ。」

 

アカデミーの二人はうなずいた。

「その通りだね。そんな凄腕の仲間と会ったこともないなんて、ダメだよね。でも、なんでグロリアの人はあたし達とその生徒を会わせなかったんだろうね?」

 

「ロザーナの言う通りよ。学校が違うからと言っても、魔光力源を発見したのよ。そんな生徒をなんで一人で行動させてるのか謎だわ。スカウトした人も、あたし達の時とは違う人だって聞いてるし・・・・グロリアの考えてること、よくわからないわ。」

隣の女子が言う。

 

「ロザーナとエレナも同じこと思ってたんだな。正直、あたしもよくわからないんだ。与えられた任務の意味が・・・・」

 

そして少し黙った後に・・・

「ああ、もう行かなくちゃいけない。」

「それじゃあ、また動く時にはいつでも呼んでよ。」

「ああ、悪いけど力を借りるよ。」

 

そう言い残し、リザラは手にしていた箒に股がり、空高くへと消えていったのだった・・・・

 

 

一方、マグル界でも魔法を独自に鍛える少年達がいる。

 

じっとして、何かを思い悩む時はとことん体を動かして忘れさせればいい。そう思いながら、マックスは今日も廃公園へと足を運ばせていた。

 

そして昨日の戦いで、自分達と相手側の実力の差を知ったジャック、ディル、ジェイリーズも現れ、これまでに増して魔法の勉強に取りかかるのだった。

 

マックスは、無言で術を連発出来るようにひたすら特訓している。

狙う相手はジャック、ディル、ジェイリーズの三人だ。

三人は、マックスが動きながら次々に放つ術に集中し、自分に飛んできた光線や波動をプロテゴでガードする。

 

これを、攻撃役を交代しながら四人で続けた。

 

「よし、一回休憩だ。次は読書で魔法の勉強といこうか。」

マックスがその場で杖を下ろした。

 

「ああ疲れたぜ。勉強だったら、今はマックスの呪文の本とサイレントからもらった戦術の本が一番役に立つかな。」

小太りのディルには良い運動になったようだ。

 

マックス達は地面の一部を開け、地下へと通じる階段を下りていった。

 

地下隠れ家に入ってから、皆休憩しているときに・・・・

「あのさぁ、昨日の事だけど・・・」

マックスはジェイリーズに話しかける。

 

「あの事ね・・・」

「ああ。もっと詳しく教えてほしい。どんな感じだった?俺が魔法を使った時に、何か呪文は唱えてなかったのか?」

マックスは、唯一昨日の自分の姿を見ているジェイリーズの言葉が何より重要だと思った。

 

「昨日も言った通りよ。突然黙ったと思ったら、赤いオーラを放ってあいつらを攻撃した。その時に呪文も何も言ってないわ。」

「それじゃあ、その場にいて何か感じなかったか?君は魔法の感知能力が高いだろ。」

「そうねぇ・・・強い魔力は感じたわ。そして威圧感も。そうだ、サイレントからもらった資料で調べてみたら、何か為になる記述があるかもしれないわね。」

 

そう言って、ジェイリーズは本棚から『魔法戦術』と『魔法全史』を取って戻ってきた。

 

「役に立ちそうなのはこの二冊と、あなたの『魔術ワード集』かな。」

「調べてみるよ。」

 

そこへジャックが近づいた。

「体は大丈夫なのか?昨日のあの時に、かなりの魔力を一気に放出しているはずだ。その後で早速ハードな特訓をしたわけだが、何か違和感とかないか?」

「その点は心配する必要は無い。全くいつもと変わらないな。」

 

更にディルが口を開く。

「それならいいや。あの場で石になってた俺も、ただならない殺気をマックスから感じた。でもあんだけ力使っても平気って言うんだったら、もうあいつらは敵じゃないかもな。」

 

「あれは、自分でもわからないうちに起こった事だ。いくら強い力があるとしても、自分でコントロール出来なければ意味がない。自分の意思で扱えるまでは、あの力に頼ることは出来ない。」

 

マックスは続けた。

「だからひたすら訓練だ。そして魔法の知識をもっとつけないと・・・だが、まずはこれから俺達があいつらと、そして魔光力源の秘密の解明にどう向き合っていくべきかを考えようか。」

 

そして四人は、テーブルを囲むように向かい合った。

 

グロリアに招かれた魔法学校の生徒五人と、ナイトフィストに招かれたマグル界の四人・・・・

 

魔光力源へと迫る彼らは互いに出会い、互いに課題を課せられる。

 

マックスの身に起きた事の意味は・・・・そして、誰より先に魔光力源の元へとたどり着いた、セントロールスに潜むグロリアの生徒は今、どこで何を企んでいるのか・・・・

 

次に彼らが動く時、物語は新たな展開を迎える・・・・

 

 

 

 


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