ぬこだって苦労はする   作:葉虎

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さて、これからどうしよう……。

毎日書ける人マジ、神だと思うわ。


3匹目

 

仕事終わりに、またささやかな酒宴が開かれていた。

 

面子は楓さんを除いた前回のメンバー。

 

楓さんはお仕事の都合上、不参加だそうで。

 

んで、俺はと言えば…

 

「…楓の気持ちが分かるわぁ。何このもふもふ」

 

猫状態で瑞樹さんに愛でられていた。

 

「あ、あの、瑞樹さん。俺も飲みたいんですが」

 

「もう少し良いじゃない。前は楓に独り占めされてたんだしさ」

 

「くんくん…全然獣臭くないですよね。っていうかいい匂い……。真夜君香水つけてたりする?」

 

「つけてませんよ。匂いが移ったんじゃないですか」

 

つか、匂い嗅がないでよ。ちひろさん。

 

「あ、瑞樹さん。そろそろ……」

 

「そうねぇ、名残惜しいけど」

 

ふぅ、やっと解放か……「私の番ですよ」「はい」

 

……ブルータスお前もか

 

「ふふ、モテモテね」

 

くすくす笑いながら、瞳さんがグラスを傾ける。

 

「ほらほら、はい、チーズ」

 

パシャッと携帯で写真を取ると

 

参加できない事でかなりゴネていたという楓さんに

送信し煽る瑞樹さん

 

止めてあげて…

 

「あ、そうだ。真夜君。はい、これ」

 

「なんですか?……チケット?」

 

2人におもちゃにされ、ようやく、ゆっくりと飲めると日本酒を飲み始めたところで、思い出したかのように紙切れを渡してくる瑞樹さん。

 

内容を確認するとそれは、ライブのチケットのようだった。

 

「そうよ。私、今度そのライブに出るから。よかったら」

 

へぇ~

 

「ありがとうございます。是非、行かせてもらいます」

 

チケットを眺めつつ礼を述べる。

 

「にしても、良いんですか?ライブなのにこんな所で飲んでて…」

 

「だからよ。これから本格的に忙しくなる前に、飲んでおくのよ」

 

終わったらまた、飲みに来るわ♪とウインクをする瑞樹さん。

 

そこに…

 

「そのライブなんですが、卯月ちゃんと凛ちゃんも出るんですよ。美嘉ちゃんのバックダンサーとしてなんですけど。」

 

「……あぁ、あの公園の」

 

泣いちゃった子達か。

 

「ていうか、真夜君…二人の前で歌ったそうですね。絶賛してましたよ」

 

私も聞きたかったです…とちひろさん。

 

「え、なになに?どういう事?」

 

それに対して瑞樹さんが興味深げに聞いてくる。

 

そんな瑞樹さんに公園でのやり取りを話すと…

 

「へぇ~♪ねぇ、ねぇ。真夜く~ん♪」

 

「……瞳さん?」

 

「駄目よ。他にお客さんが居るし」

 

「なによ…ケチ」

 

瑞樹さんの言いたい事を察して、瞳さんにお伺いを立てればにべにもなく却下。

 

ですよねー。

 

「大体、そのスマホの中に入っているでしょ。SIRONEKOの曲は」

 

「生で聞きたいんじゃない。それに私の知らない曲なんでしょ?」

 

「……そうね」

 

それだけ言って、グラスを傾ける瞳さん。

 

はぁ、仕方がない。

 

「瑞樹さん、ごめんなさい。あの曲は特別なんですよ」

 

「特別って?」

 

drop……あの曲は。

 

今はもう居ない…俺の妹…雫の事を歌った歌だから。

 

「ーーーーっ。ご、ごめんなさい…」

 

「いや、謝らないでください。6年も前の事ですし」

 

でも…

 

「drop……雫の曲を出して、俺の知らないところで流れるっていうのに抵抗があって…」

 

瞳さんからも、シングルとして出さないかという話は過去に合ったが、それを理由に断ってきた。それ以降は、俺の思いを汲んでくれたのか、話題にはしていない。

 

もっとも、レコーディングだけはした。まかり間違って、盗作されたら目も当てられないからと。

 

しんみりとしてしまった空気の中……

 

「あ、そうそう。今日の本題だけどね。真夜にお願いがあるのよ」

 

瞳さんが話題を変える様に切り出したのは…

 

「お願いですか?」

 

「えぇ、あなた…演技には興味はない?」

 

思いもよらなかった一言だった。

 

 

 

 

 

「~~♪」

 

「機嫌が戻ったのは良いけど、いい加減に放してあげてくれない?ぐったりしてるわよ?」

 

「ついキャットなってしまって…ふふ♪」

 

あの飲み会から二日後、俺は美城プロのミーティングルームの一室に来ていた。

 

当初、不機嫌だった楓さんだが俺を暫く、いじくり回した後、話を概要を聞くと嘘のように機嫌が直ってしまう。

 

そう、云わずもがな猫の姿である。

 

「最初、演技とか言うからビックリしましたよ」

 

俺と瞳さんと楓さんの三人しかいない事もあって、猫状態だが喋る。

 

「ふふっ、真夜くんと共演♪」

 

言いながらムギュッと抱きしめてくる楓さん。この部屋に入ってから暫く、ずっと楓さんの腕の中である。

 

このやり取りも何回目だ?

 

「楓、真夜くんじゃなくて、猫状態の時はユキちゃんよ」

 

ユキ。俺の猫状態の名前である。命名は瞳さん。

 

まぁ、真夜と呼ぶわけにもいかないしね。

 

「さて、話を戻すけど。人気小説『ねこの恩返し』の映画化という話が決まってね。2人にはその出演をお願いしたいのよ」

 

『ねこの恩返し』読んだことはないが、瞳さんから大まかなあらすじを聞くと、トラウマにより失語症の女性と飼い猫の絆の物語だとか。

 

「主演は高垣楓、そして…」

 

当然ながら俺は…

 

「猫の役ですか」

 

「そうよ。気まぐれな猫を題材にしたドラマや映画は撮影が難しいの。CMや端役ならともかく、原作を読むと猫の登場シーンが多すぎてね。並の猫では難しいの。だけど…」

 

「まぁ、俺なら普通の猫と比べたら楽でしょうね」

 

なんなら、台詞まで言える。……言わないけど。

 

「そして、真夜くんにはもう一つ。この映画の主題歌をお願いしたいの。SIRONEKOとしてね」

 

猫の状態で出演し、人間状態では主題歌を歌えとな。

 

どうしよ……って、あれだよな。

 

こんな嬉しそうな楓さんの姿を見て、断るのもな。

 

それに瞳さんにも色々迷惑かけてるし…。

 

メディアに露出しない分、他のアーティストよりも時間はあるしな。

 

でも……

 

「瞳さん、一個だけ条件が」

 

「ふふ♪分かってるわよ。その日はスケジュールの調整はしておくから。心配しないで。私だって毎月楽しみしてるのよ」

 

パチッとウインクをしながら微笑む瞳さん。言わずもがな分かってたみたいだ。

流石、出来る大人の女性。

 

「二人して何お話ですか?」

 

俺と瞳さんのやり取りの意味が分からず、首を傾げる楓さん。

 

「ふふ、毎月17日その日はね…」

 

SHIRONEKO……いえ、真夜君のライブがあるのよ♪

 

悪戯っぽい笑みを浮かべながら瞳さんが告げた。




残業が続きそうで執筆時間とれなくなりそう。

テロ等準備罪よりも労働基準法を見直してほしいわマジで。

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