The Irregular of IS High school 作:ネヘモス
それは魔法による戦闘演習の際に起こった。深雪が放ったニヴルヘイムが達也に襲いかかった。当然の如く達也はそれを避ける。だが、達也は選択を誤っていた。その後ろにいた俺の存在を忘れていたのだ。
「戒人!?避けてください!!」
「クソッ!」
即座に達也が魔法でニヴルヘイムの分解を始めようとするが、
(ちぃ!間に合わん!)
俺は深雪の魔法により氷漬けにされるはずだった。
ところが、突如俺の時間が止まった。否、俺の脳内で奇妙な現象が起こった。
【異能による敵意を感知、解析開始】
【解析完了。周囲の分子の振動を減速する異能と推定】
【対抗可能な現象を解析、完了】
【これより、対象の異能を相殺する異能を発動する】
瞬間、俺の身体から灼熱の業火が巻き起こり、深雪のニヴルヘイムと衝突、それを相殺した。
「っ!?戒人、何があった?」
俺は即座に思い返してみる。あの時に起こったのは異能の力を逆算してそれの真逆の異能を用いて相殺するというものだ。そして、鮮明にその異能の使い方を覚えている。
それは、間違いなくニヴルヘイムの対になる魔法。
凍結地獄のニヴルヘイムに対抗可能な灼熱地獄。
俺はニヴルヘイムの対になるという意味からこの魔法を「ムスプルヘイム」と名付けた。
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これを真夜さんに報告すると、真夜さんが俺の特異魔法に名前をつけた。
魔法名称は「
対異能者用の魔法であり、発動条件が特殊。
自身に対して異能の類の力が放たれた時、意識の有無に関わらずその異能を解析し、その真逆の異能を作り出す。更に、その異能を限定的に保持することが出来る。
そして、この魔法がある限り、戒人は「異能の力」を以て死ぬ事は無い。
逆に言えば、戒人は現時点で「再成」の対になる「分解」を使えるようになっている。
そして、俺は「更識家直下対異能者用部隊101部隊」の隊員に選ばれてしまった。
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そして、運命は加速する。
ある日、俺と深雪、達也と101部隊の仲間とISの展覧会に向かっていた。
「でも、俺らが行って意味あんのか?」
「あのねぇ、私たちの目的は深雪と達也君、戒人君の護衛よ?そこの所分かってる?」
「まあまあ2人とも落ち着いて」
「それにしても、ISを生で見れる機会って殆ど無いですから、楽しみです」
最初に愚痴をこぼしたのは西城レオンハルト(通称レオ)。がっしりとした体の持ち主で通称「硬化魔法」の使い手。どちらかと言えば物理担当。
次にそれに異を唱えたのは赤い髪が特徴の千葉エリカ。異能の剣術を継承してきた「千葉家」の娘でしょっちゅうレオと衝突する。こちらも物理担当。
それを宥めているのが泣きボクロが特徴的な吉田幹比古(エリカはミキと呼んでる)。先祖代々「精霊魔法」と呼ばれる異能を継承してきた一族の人間で、ある意味このメンバーの中で最も異能者っぽい。
最後にISに興味を示したのは柴田美月。眼鏡を掛けた少女で恐らく、この女性メンバーの中では最も大きい(何がとは言わない)。彼女自体に異能の力は無いが、敵意のある異能を目を使って察知することが出来る。
「でも、私がIS学園に行かなくてはならないなんて…」
「しょうがないだろ深雪。ISは女にしか動かせないのだから」
この展覧会に行くきっかけになったのは深雪の学校でISの適性検査が行われた時のことだった。IS適性A+を叩き出した彼女はIS学園に行くことを国から命令されたのだ。
それに際し四葉真夜は自身の会社(と言っても実質達也が持っているようなものだが)のフォア・リーブス・テクノロジー社で深雪の専用機を作ると言い出し、達也の能力を用いてISのコアを解析するために(表向き)深雪の護衛として101部隊を付けることにした。
達也が(バレないように魔法を使って)解析を行っている間、俺は興味本位でISに触れてみた。すると、
『待っていました』
「っ!?何だ!?」
知らない女性が俺の脳内に語りかけてきたと思うと、莫大な情報が俺の頭に入ってくる。
俺は軽く現実を逃避したくなった。
だが、現実とはかくも残酷なものである。
「嘘だろ!?」
「戒人がISを、動かした!?」
俺は自分が鉄の塊を纏ってることに気がついた。
俺は、自分がISを動かしたことを理解した。
ーーー俺は、IS学園に強制入学を余儀なくされた。「世界初の男性IS操縦者」として…。
一夏の魔法については設定にて追記します。