フラン「魔法が何か失敗して娘出来ちゃった。テヘッ☆」紅魔館一同「ファッ!?」   作:鋭利な刃

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これの(下)を投稿するのが、現段階での目標。



それはきっと、彼女の真実(上)

 その日、フランは不機嫌だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 別に、レミリアの奇行に嫌気を通り越して怒りを覚えたとか、そういうわけではない。むしろ、その日のレミリアは比較的大人しく、久々に見せる良いお姉様だった。

 

 フランの不機嫌の理由は、彼女ではない。

 

 

 

 咲夜と美鈴にイラついている訳でもない。

 

 確かに、今日もあの二人は色々はっちゃけていた。

 

 咲夜は、お茶の時間にレミリアに時間を止めて目隠しをし、右のお茶か左のお茶どちらかを選ばせ、どちらを選んだとしてもエスプレッソを更に濃縮させたコーヒーを飲むように仕向けていたし、美鈴も美鈴で、門番の仕事を今日もサボり、グータ寝したり湖に釣りに行ったりと、一日を満喫していた。

 

 だが、咲夜の方は、むしろレミリアの方がイタズラを仕掛けてくるのをワクワクしながら待っていたし、何だかんだ楽しそうだった。

 

 美鈴も、今日はちゃんとじぶんの気を実体化させて門の前に配置していたし、帰ってきてからは釣った魚でBBQしながらも、ちゃんと門番をやっていた。

 

 フランの不機嫌の理由は、彼女たちでもない。

 

 

 なら、パチュリーや小悪魔はどうだろうか?

 結論から言おう。彼女たちでもない。

 パチュリーは、今日も本を読みふけっていたが、話しかけてもちゃんと反応を返してくれた。というか、いつもよりも反応がよかったぐらいだ。

 

 小悪魔は、フランのことを一目見るやいなや、なにかを察したのか、ちゃんとパチュリーの許可を取ってから司書の仕事を中断し、フランに構ってくれた。

 

 フランの不機嫌な理由は、彼女たちでもない。

 

 ……つまり、紅魔館一同のせいでフランは不機嫌なのではない。

 

 

 

 ……もしかしたら、誰に対しても、何に対しても、怒っているわけではないのかもしれない。

 

 何かを為せなかった自分自身、それか、もっと他のくそったれた者に、物に、自分でもよく分からないまま、イラついているのかもしれない。

 

 多分、おそらく、きっと、それが答えなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ねぇマー。絵本読んで」

 

 

 

 

 ミンミンミンミンとうるさく鳴く蝉や、ジリジリと照りつけてくるあっつい太陽の季節の終わりを告げる季節、秋。

 

 実りの秋だとか、スポーツの秋だとか、食欲、勉強、読書、怠け、怠惰、特撮、運命、エトセトラ……

 

 まぁとりあえず○○の秋っていっときゃ、何とかなるだろう。という考えがはびこるらしい秋。

 

 そんな秋の、とある一日の、間もなく夜更け。まだ幼いレナにとっては、もうおねむな時間。

 

 既にレナはパジャマに身を包み少し目をトロンとさせている。だけどまだ寝たくないらしく、隣で同じくパジャマに身を包んだフランに絵本を読んでほしいとねだる。

 

 ああ、この瞬間こそ、自分の娘を見ていて一番微笑ましい瞬間じゃなかろうか。

 

 少なくとも私は……この子の母娘としての自分の中では、トップクラスに微笑ましい瞬間だ。

 

 「んー、どの絵本を読んでほしいの?」

 

 「えっとね、これ!」

 

 そういって、レナが差し出してきた絵本を受けとるフラン。その顔は、ほんの少しだが驚いているようだ。

 

 「……マー。ダメ?」

 

 ハッとする。見ると、レナが少し不安そうだった。慌てて笑顔を浮かべる。ほんの少しひきつった気がするのは、気のせいだと願いたい。

 

 「ダメじゃないわよ。……でももう遅いから、眠くなったら直ぐに寝ること。いい?」

 

 「うん!」

 

 

 

 

 

 「むかーしむかし、あるところに、一人の女の子がいました。女の子は、お母さんと、お姉ちゃんと一緒に仲良く暮らしていました。

 ある日の事です。

 女の子は、お母さんたちとはぐれ、迷子になってしまいました。途方にくれる女の子でしたが、ふと気がつくと、吸血鬼の少女と出会いました。女の子と吸血鬼の少女は女の子のお母さんたちが見つかるまで、二人で遊ぶことにしました。

 二人は、直ぐに仲良くなりました。朝になりました。夜になりました。まだ、女の子のお母さんたちは見つかりません。

 女の子は泣いてしまいました。いっぱい泣いてしまいました。

 吸血鬼の少女は困りましたが、直ぐにあることを決め、女の子に囁きました。

 『わたしが、あなたのお母さんになってあげる』……と。

 そうして女の子は吸血鬼になり、少女の娘として生きることになりました。

 女の子は、もうお母さんがいないと泣くことはありませんでした」

 

 ふとレナを見ると、もう目が開いてなかった。

 

 「……おやすみなさい。レナ」

 

 目を細め、少し微笑んだ。今度は、ひきつっていないはずだ。

 頭に手を置き、ゆっくり撫でる。いとおしい。そんな気持ちを込めて。

 

 「また、明日」

 

 そして、フランも目を瞑った。寝られるかどうかは疑問だったが、案外直ぐに眠気は来てくれた。

 

 せめて明日は、こんな不機嫌じゃありませんように。

 そう願いを込めて、フランは眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絵本には、まだまだ続きがあるようだった。

 誰もいないのに、絵本のページが一ページ、また一ページと捲られていく。

 ゆっくりと、ペラペラと、捲られていく。

 

 ーー女の子は、幸せだった。

 ーー少女も幸せだった。

 

 ーーじゃあ、お母さんとお姉ちゃんは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーー多分きっと、幸せじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「見~つけた♪」

 

 




このフランとレナは、果たして前話までのフランとレナなのでしょうか?

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