今回は、『おーるゆーにーどいずぐだ』の前日譚的な剪定事象です。
七星国家が一国、
そこでは、今日も賢王と元老院【賢老七十二臣】による、国政が行われていた。
「では、本日の議題だが……まずは『兵装舎』に任せていた各種計画についての進捗を聞かせてもらおうか。」
「ラウム、頼むぞ。」
「任された。」
議長である【ゲーティア】、兵装舎の長である【ハルファス】両名から促されると、【ラウム】は手持ちの資料を広げつつ立ち上がり計画の進捗を述べていく。
「まず、都市間の連携についてだ。諸君らの快い協力に伴い、兵装舎が独自に予測していた想定を上回る速度で各種配備が進んでいる。このまま進めば、月の終わりには完了する予定だ。」
「それは何よりだ。いつ、何が起きるかわからぬからな。」
「備えあれば憂い無しという。ぜひ、そのまま進めてくれたまえ。」
「一方で、義勇兵の募集については芳しくない。こちらは義勇兵の人数というよりは事務側の処理能力の問題だ。【兵装舎】が用意している窓口から悲鳴が上がるほど殺到している。こちらについては、【情報室】の協力を要請したいがいかがかな?」
「あいわかった。早急に人員を手配しよう。正式な書類は後々承認をいただくとして、よろしいですなソロモン。」
「あぁ、異論はないよ。後で書類を持ってきてくれ。」
「練兵計画の方についてはどうだ?」
「そちらは私が答えよう。親衛隊による教導を試験的に行ったが、対象となった五都市中四都市の防衛隊から『業務に支障をきたしかねない訓練は控えてほしい』と苦情が入った。後日現場の意見を反映させた練兵計画を親衛隊側に提出させる予定だ。」
「よろしい。では、続いて姫様の前線巡回についてだが――」
所々で他の【柱】が言葉を挟みつつ話が進んでいく中、とある項目でラウムは額を抑え、呻くように言葉を漏らす。
「どうしたラウム、疲れているのか?【賢老七十二臣】が倒れては元も子もないぞ?気分転換が必要なら手配をするが?」
「「「ゼパル、今は真面目な話をしているのだ。娼館の話は止せ!!!」」」
「雌堕ちさせるぞ貴様ら?????」
「いや、心配は無用だゼパル。」
もはや恒例となりつつある【溶鉱炉】ゼパル弄りをよそに、ラウムは苦々しい表情で言葉を紡いでゆく。
「……姫様から、巡察と現地守備隊と共同による対邪龍戦演習の提案があった。場所は、【例の都市】だ。」
――そして、刻が凍りついた。
「「「「「「「「「「――試練だ。彼の者に試練を」」」」」」」」」」
「待て待て待て待て待て待て待ってぇっ!?君達、アイコンタクトからの結論がぶれなさすぎるよ!?」
そして、再起動が完了した後。元老院の意思が物騒な方向で一つとなったことに、【賢王】ソロモンは冷や汗を流しながら場を落ち着けようとする。
「ソロモン!貴様にはわかるまいソロモン!実の親だからといい気になっている貴様には!」
「不敬にあたるがあえて言わせてもらおう!『私には武力しかないから』と前線に自ら志願した姫様がこのような提案をなさる訳がない!誰だ姫様に余計な知恵を植え付けたのは!」
「そんな姫様も尊いがそれはそれ、これはこれというやつだ!」
「【兵装舎】!親衛隊は何をしていた!親衛隊は件の兵士と姫様を可能な限り近づけさせぬよう一致団結したと報告を受けたのだぞ私は!?」
「まてしれっと重要な情報を口にするんじゃないフラウロス!?貴様、独自に情報を得ていただと!?まぁそれはともかくとしてこちらもそういった報告を聞いたのだぞ!?」
堰を切ったように、混乱する元老院達は議論による殴り合いを始めていく。その様子を呆れながら観ていたソロモンは、ふと元老院達の議論に参加せず、ただその推移を見守る【議長】――弟でもあるゲーティアに、こっそり声をかけた。
「ゲーティア、君は参加しないのかい?」
「いや、儂は
「あぁ、僕らが選んだあの子から。それで、彼女はなんだって?」
「――多少暴走した輩はいるものの、親衛隊の総意としては姫の恋を応援するとのことだ。おそらく、姫からの頼みならば元老院も断れまいと入れ知恵をしたのも、耳障りのいい報告で撹乱を行っているのも親衛隊だろう。」
「場合によっては派閥争いによる内乱になりかねないんだけどなぁそれ……まぁ、まだこの国が平和を享受できているという証拠でもあるか。」
「そうだな。」
「何をしているソロモン!ゲーティア!貴様らも議論に加われ!」
そんなやりとりを重ね、ソロモンとゲーティアは顔を見合わせ笑みを浮かべると、事態を収拾する為に議論へと挑んだ。
結果、姫君の提案に協力する形でまとまり、元老院達は涙で枕を濡らしたというが――それが真実かは、定かではない。
「えー、という訳で!無事元老院からの承諾は奪い取りました!皆さん、拍手!」
「皆さん、協力してくださってありがとうございます。」
「姫様、安心するのはまだ早いですよ?承諾を取り付けたからには、きちんとした成果を出さねば彼らも納得しませんから。」
――一方、親衛隊達はというと。
姫君と共に
司会と務めるは
「はいはーい、まずはお姉ちゃん達からね♪」
「既に情報操作、及びあちらとの調整は対応済。」
「そちらは私も関わりましたので、問題はないでしょう。」
「三人ともご苦労様です。」
「「「あぁ、姫様の笑顔尊い。」」」
まず口火をきったのは、
三人の報告を聞き、姫が労いの言葉を投げかけると三人は蕩けたように
「……えー、トリップしてしまったお三方はおいといて。では続いて錬金チームの皆さん進捗は?」
「こちらが管理している資料と引き換えに今代の
「いずれ姫様の隣に立つのに相応しい鎧に仕上げてみせるわ。それはそうとお師匠様が悪いお友達となんか変なの作ってそうなんだけど。」
「あ、そっちはこちらで取り扱ってないので見なかったことにしましょう、ネ?」
「アッハイ。」
続けて、親衛隊の中でも有数の実力を持つ錬金術師、
その中で今代の
「よっし!次はアタシ達の番だな!まぁ、アタシ達はこれからが本番なんだけど!」
「然り。我らは姫様の剣。その力を示すのは戦場――件の兵士だけではなく、【戦争狂の守護者】は粒揃いだ……腕が鳴るな。」
「ふ、二人共落ち着いてね?この前やりすぎて怒られちゃったんだからちゃんとしよ?」
「「そうはいうけどあの時一番暴れたのお前だ(じゃん)、
「あ、あぅううう……」
「…………すまん
「苦労をかけて申し訳ありません、
「一応訓練の名目は『対邪龍戦演習』ですからね?そこんとこ履き違えないでくださいよ三馬鹿戦闘民族?」
「「「はーい(了承した)」」」
そして、
事実、【戦争狂の守護者】に教導と称して訓練を行った際。対『魔王』を想定した形式として一対多数の模擬戦形式を行ったのだが、
その様子を思い出し、この三人がまた何かやらかさないかと思案した結果、腹部を押さえ呻く
「さて、あまり元老院の方々を笑えないのだが――隊長、つまるところ結論としては、いつも通り『姫様の為になると判断したら自由に行動してよい』、ということになりますかな?」
「――そうだな。姫様、よろしいでしょうか?」
「は、はい!えぇと、不安がないと言えば嘘になるのですが……私は皆さんを信じていますから。改めて、ご協力をよろしくお願い致します。」
((((((姫様尊い))))))
――そして、親衛隊三番手である
その姫君の尊さに親衛隊の心が一つになった所で、その日の会議は終わることとなった。
それは、欠片のように煌めいた、日常のひととき。
「さぁ、今日もおれと一緒に遊んでくれる
――だが、そんな儚くも尊い日常は、『災厄』によって瞬く間に砕けてしまうのが、この
続く?
・一言メモ的な新キャラ紹介