魔剣物語異聞録~フラグメンツ・オブ・ラウム~   作:朝陽祭

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イメージ的には劇場版的なノリです。
ちょっと見切り発車な面もあってどういう結末にするか悩んでいる点はあるのですが、それでもよろしければお付き合いください。


Episode :Deus EX machinα ~オワリノハジマリ~

 

 

 

 

 

――その日は、唐突に訪れた。

 

はじめにそれを観測したのは誰だったのか、定かではない。

 

しかし、邪龍に襲われていた都市に光り輝く【獣】達が現れ苛烈な戦いを繰り広げた後、都市に襲いかかっていた邪龍を食らいつくしたという報告が相次いだのは確かだ。

 

そして、その報告に対し七星国家(セブンスターズ)の面々は思案し、対策を取ろうとした。既に『手遅れ』だったとも知らず。

 

 

――それは、唐突に訪れた。

 

それを最初に観測したのは、新たなる熾火(ギムレー)に所属する【賢老七十二臣】、【観測所】の面々だったという。

 

その名の通り観測に優れていた彼らは、まるで『世界の果て』から忽然と現れ、このドラグナール大陸に散らばっていく光り輝く【獣】達の姿を確認した。

 

光り輝く【獣】達は、森を、都市を、人々を意に介さず蹂躙し、ただただ邪龍を狙いとし激戦を繰り広げていった。

 

新たなる脅威に、立ち向かうものも居た。命を落とす者もいた。逃げ惑う者も居た。涙を流す者も居た。

 

 

 

「ちっ、一体何なんだおこいつらっ!?」

 

「やる夫、大丈夫っ!?」

 

 

 

それは、このキングソードの地においても例外はない。

 

最前線で戦う兵士達と共に、ニコル・ボーラスと竜王変生(ドラゴンインストール)し戦闘力を向上させたやる夫と新たな【魔剣】を手にしたユウキは、邪龍と戦いながらも『なぜか』こちらを襲ってくる【獣】達と戦っていた。

 

 

 

「……妙だな。なぜこの【獣】達は兵士達には目もくれないのに、やる夫とユウキと俺を狙う?」

 

「あら、そんなの簡単よ。魔剣を創った私、第二の魔王だったウィリアム、大魔王直々の【魔剣】を手にしたユウキちゃんとそこに居る邪龍王(アジ・ダハーカ)の分体。『魔剣に連なるモノ』を標的としている【獣】達がロックオンするには十分じゃない?」

 

「なんかニヤニヤしてるそこの邪神様、もったいぶってないで知ってること全部話して貰えます???????????」

 

 

 

襲い掛かってくる【獣】に対し疑問を抱くウィリアムに、やる夫の中からニコル・ボーラスが笑みを浮かべながら答えると、やる夫はこの邪神ほんと隠し事多いよなと思いながら説明を求める。

 

そんなやる夫の様子を眺めながらニコル・ボーラスは可憐な少女のように頬に指をあて、自らが知ることを語り始めた。

 

 

 

「――これはやる夫が知る必要のないことだから黙っていたのだけれど、そもそも刻限(タイムリミット)があったのよ。それが、私の予想よりも早く訪れてしまっただけ。だから、私が意図したことではないわこれは。」

 

刻限(タイムリミット)?なんで黙って――」

 

「私の想定だと、刻限(タイムリミット)は『邪龍王(アジ・ダハーカ)がこの星の自転を止めようとした時』だったからよ。それが来る=人類が完全敗北した時(ゲームオーバー)だからわざわざ語る必要ないじゃない?」

 

「あっはい。というかなんかスケールがでかすぎてツッコミ入れる気にもならないや。」

 

「で、その刻限(タイムリミット)とこの【獣】達がどう関係する?そもそも、刻限(タイムリミット)が来たのならば既に人類に打つ手はないが。」

 

「あぁ、星の自転が止まることもないわよ?ユウキちゃんに魔剣を与えてさぁこれからって時にそんな無粋なことする訳ないじゃない。ねぇ、バハムート?」

 

「――業腹だが、ニコル・ボーラスの言う通りだ。私はユウキに機会を与えた。その機会を摘み取るような真似はしない。」

 

「じゃあ、この【獣】達はいったいっ!?」

 

「あら、少し考えれば分かることよ?【魔剣】による被害を『現在進行系』で被っているのは、人類以外にもあるでしょう?」

 

「!?いや、まさか――そんなことが起きうるのか!?」

 

「……え、いやマジ?ファンタジー世界だからそんなこともありえるの?えー?」

 

 

 

ニコル・ボーラスの問いかけに、僅かに思案したウィリアムが驚愕の表情を浮かべ、やる夫は脳内に浮かんだ答えに額を抑える。

 

そして――その時だった。邪龍達を蹴散らしていた【獣】達が、動きを止めたのは。

 

いや、【獣】達だけではない。邪龍、兵士達――その場に居る『ある2体』を除いた全ての存在が、何かが近づいていることを感じ取り動きを止めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カシャン、カシャン。

 

 

 

 

 

 

 

 

鎧がこすれるかのような小さな金属音が、先程まで様々な音が混じり合っていた戦場に響き渡る。そして、【獣】達はまるで騎士のように道を作り、頭を垂れる。

 

現れたのは、白銀の騎士だった。

 

獅子のような趣の兜を被り、白い外套(マント)を靡かせ、光り輝く螺旋の槍を携えて。その騎士は、やる夫達と対峙した。

 

誰もが、その幻想的な光景に目を奪われ、動けなかった。その騎士が纏う極光(オーラ)に威圧され、はたまた美しさに目を奪われていた。

 

その様子を、ニコル・ボーラスはただいつもと変わらぬ笑みを浮かべ見つめている。

 

そしてもう一体。

 

邪龍王(アジ・ダハーカ)の分体である彼女は。

 

かつて龍王(バハムート)と呼ばれていた存在の成れの果てである彼女は。

 

 

 

 

 

 

「…………アル…………トリ…………ア…………?」

 

 

 

 

 

 

――あの日見た黄金の記憶を。

 

――腐り果てた魂にそれでも尚焼き付いた輝きを。

 

その存在に見出したのだった。

 

 

 

「――こんな形で再び相まみえるとは思いませんでした。ニコル・ボーラス、そして……『ビィ』。久しぶり、と言った方がよろしいのでしょうか?」

 

 

 

そして、白銀の騎士はその獅子のような兜を脱ぎ、脇に抱える。

 

現れたのは、竜王変生(ドラゴンインストール)したやる夫と瓜二つの少女。

 

 

 

「えぇ、久しぶりねアルトリア。それにしてもご苦労様ね?『星の意思』に残業を要請されて承諾するなんて、お人好しにも程があるわよ?」

 

「――本来ならば、もう少し抑えておくつもりでした。ですが、私にはもう止められない。この『星』は、人類を見限ったのですから。」

 

「まったく、この『星』も我慢弱いわね。せっかくそこの大魔王に新しい玩具が与えられたのだから、様子を見ればいいのに。」

 

「うん、なんか訳知り顔で旧知の仲兼ラスボスムーブしてる所悪いんですけどね邪神様???事情分かってるのあなただけだからちゃんとみんなに説明してくださらない???」

 

「もう少し私に優しくしていいと思うんだけど??????」

 

 

かたや、楽しげな表情で。かたや、さみしげな表情で。周りを置いてきぼりにしてそんなやり取りを繰り広げる二人に、やる夫がツッコミを入れる。

 

そんな二人のやり取りを眺めていた白銀の騎士は、一瞬あっけにとられた顔を見せると、その表情をほころばせた。

 

 

「……ふふっ、ニコル・ボーラスに物怖じせず意見を言えるとは。やはりあなたは面白いのですね『やる夫』。えぇ、だからこそ残念です。もう少し、あなたの物語を見ていたかった。」

 

「やだ、なんか初めて会う人なのに好感度やたら高い。で、この人やっぱりそうなんです???」

 

「えぇ、私をぶっ殺した想定外(バグ)で【聖王】と名高いアルトリアその人よ。そこの邪龍王(バハムート)が星自体を人質に取るような真似をして、悲鳴を上げた『星の意思』が引っ張り出してきたのよ。」

 

「わー、ブラックと言えばブラックだけどまぁ『星はリングじゃねぇ!』って言いたくもなりますよねそりゃ。」

 

「やる夫、もう少し真面目にお願いできるかな!?ボクには衝撃の事実すぎて思考が追いつかないんだけど!?」

 

「なに、かの聖王は所謂旗頭(マスコット)なだけで、そう難しい話じゃない。ようは――こいつらは終わらせに来た、ということだ。」

 

「えぇ、あなたの予測通りです。我が旧友(とも)を打ち倒した森の王にして二代目たる魔王。そして伝えましょう。あなた達に、『星の意思』の宣託(コトバ)を」

 

 

 

ウィリアムから言葉を引き継ぐようにして、アルトリアは謳った。星が下した結論を。

 

 

 

「永きに渡る乾いた戦争も許そう。魔剣の果てに人類(ヒト)が滅びるのならば、それを優しく包み込もう。だが、人類(ヒト)の争いの果てに、この『星』が滅びることは許されないことである。故に――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――この【魔剣の物語】への終止符は、我ら『星の意思』が引き継ごう。愚かで愛しき我が仔(ヒト)よ、もうお前達が戦う必要はないのだ。」

 

 

 

~To Be Continued……?~




次回:激突!大魔王対星の意思!

ちなみに最後のセリフはあくまで星の意思を代弁しているだけなのでアルトリアさんが人類を我が子のように思っているわけではないのです。

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