俺達が見た光景、それはたくさんの人たちがアスレチックに挑戦している光景だった。
空中には大きな立体ホログラムのようなものがあり地球でいうサッカーや野球といったスポーツをおもわせる実況もされていた。
『さぁ本日も絶好調で熱い戦が進行しております!!!』
などと実況がされており、とてもこれが戦だとはおもえなかった。それに、あの立体ホログラムに映っていたエクレールとかいう少女が使った飛ぶ斬撃や槍使いが使ったあの技はいったい...?それに何より気になるのは誰も死んだり怪我を負ったりしていないことだった。
「これが戦?」
シンクもこれが戦だとは思っていなかったようで姫様にそう聞いていた。
「はい、もしかして戦をご覧になるのは初めてですか?」
「えーと、この戦で人が死んだり怪我したりは...」
「とんでもない!戦は大陸全土にしかれたルールにのっとり正々堂々とおこなうものですから。怪我や事故がないようにするのは戦開催者の義務ですから。もちろん国と国との交渉の一手段でもありますから熱くなってしまうこともときにはありますがだけど、フロニャルドの戦は国民が健康的に運動や競争を楽しむための行事でもあるんです」
戦が国民の運動や競争を楽しむために存在している世界か...。こんな平和な世界があるなんて考えもしなかったぜ。地球もここまでとはいかずとももう少し平和にできないのだろうか?
「敗戦が続いて我々ビスコッティの国民や騎士たちはさみしい思いをしています。何よりお城まで攻められてしまったとなればずっと頑張ってきたみんなはとてもしょんぼりします」
しょ、しょんぼりって攻められてもそれだけなんだ...。
しかし、転生してはや14年。たいていのことなら驚かないと思っていたがまさか異世界に召喚されて戦をやることになるとは人生何が起こるかわからないものだと改めて実感したよ。地球じゃ有り余っていたこの力、ここで思いっきり暴れてみるのも楽しそうだしな。シンクもどうせ、こんな面白そうな場所遊ばずに帰るなんてもったいない!なんて考えてるんだろうな。
「シンク、こうなったら最後までやってみるのもいいんじゃないか?」
「うん!こんな面白そうな場所遊ばずに帰るなんてもったいないよね」
シンクは姫様のほうを向き
「えっと、姫様」
「はい」
「僕はこの国の勇者?」
「はい、私たちが見つけて私が迷うことなくこの方と決めたこの国の勇者様です」
「じゃあ姫様の召喚に応じてみんなをしょんぼりさせないように勇者シンク、がんばります!」
「頑張りすぎて変な失敗とかするなよ?」
「し、しないよ」
姫様はそれは満面の笑みを浮かべしっぽもうれしさからか左右に揺れていた。
「では急いで城に戻りましょう。装備も武器もみんな用意していますから」
「あ、でもレンは?」
「俺はいいよ。はじめは姫様と一緒にお前の無双っぷりをみてるよ」
「ではいきましょう。タツマキ!ハーラン!」
そういって姫様はハーランに駆け寄ると手の甲をむけた。向けた瞬間、手の甲に紋章が浮かび上がりハーランの翼が大きくなった。そうして俺たちを乗せたハーランは短い助走をつけたあと大空に飛び立った。
「うわー飛んでる、飛んでるよーレン!」
「あぁ、すげぇなこれは」
「飛びますよーハーランは飛ぶの上手なんです」
俺達はそのままお城に向かって一直線に飛んで行った。
これから起こる戦いに胸を膨らませながら...
今回は少し多めです。