私の生まれた理由   作:hi-nya

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nightbird

 近寄ってくるやつらならたくさんいた。

 

 女どもはいつも皆きゃーきゃーうるせーし。

 男どもはぶっとばしてやったらなぜか皆、舎弟にしてくれとかいいだすし。

 

 思わなくても誰かいた。

 だから、敢えて誰かといよう、なんざ、思ったことがなかった。

 

 はじめてだった。

 同年代で、一緒にいてもいいとおもえた奴らなんて。

 

 くっつきそうで、なかなかくっつきゃあしない。

 めんどくせー、うっとーしいやつらだが……

 

 あいつらといる空気は、わるくねぇな、と思っている。

 

 

 

 

 

 気絶させた保乃を抱え病院へと向かう花京院を見送りながらポツリと呟く。

 

「……あいつら」

「承太郎?」

 

 浮かんでしまった言うだけ無駄な文句を呑み込み、帽子を目深にかぶり直す。

 

「いや、なんでもねぇ。行くぞ」

「ああ」

 

 残りの面子でDIOが消えていった塔の上階へと向かう。少し進んだところで螺旋階段のある大広間に辿り着いた。

 さらに上に向かうべくその段差に足をかけた。その矢先だった。

 

「いてぇッ!」

 

「どうした? ポルナレフ」

 

 急に謎の悲鳴をあげた男を全員で注視する。

 

「な、なにかがぶつかってきて……」

 

「……オラァッ!」

 

 すぐさま星の白金(スタープラチナ)で男の示す視線の先に居たその()()()を掴む。

 

「……これは……!!」

 

 それは一匹の()だった。

 

「なーんだ、蠅じゃん」

 

 ポルナレフの後、続いて覗き込んだアヴドゥルも気づく。

 

「あッ! 蠅は蠅でも、この蠅ッ!」

「ああ」

 

 肯く。おれも見覚えがあった。この種類。というか忘れるはずがなかった。おふくろが倒れたあの日、星の白金(おれ)はこの蠅をスケッチまでしたのだから。

 

 嫌な予感が急激に胸中に広がる。それは残念なことに即、当たってしまった。

 

「はぁ、はぁ……」

 

「ポルナレフ?」

「か、身体中が、イテェ! それに、寒い……」

「お、おいッ!」

 

 ガタガタと震えながら、倒れ込んでしまった男をアヴドゥルが支える。

 

「す、すごい熱だ!」

「なんだ……? や、やべぇ……」

「ポ、ポルナレーフッ!!」

 

「……ぐぅ」

 

「……は?」

「ね、寝ている……!?」

 

『……なんだ、蠅か。ポルナレフ、貴方はそうおっしゃいましたが……なんという無知の極み』

 

 一体何が起こったかさっぱりわからず全員に動揺が走る中、どこからともなく男の声が聞こえてきた。

 

「な、なんだ!?」

「何処から!?」

 

 発信源を見上げる。それは天井の一角にぶら下げられたスピーカーだった。

 

『蠅ってねぇ、けっこう危険なんですよ。血を吸うのって蚊やアブだけかと思ってました? この蠅はね、雌雄ともに哺乳類や鳥類から吸血し、血液を栄養源として生活しているんです。一度の吸血で約40~150mgの血液を摂取する……まぁそれはいいんですがね。その際に媒介するんですよ。寄生虫を介して、こわーい病気をね。聞いたことないですか? 睡眠病。地域によっては催眠病とも呼ばれているようですが』

 

「す、睡眠病、だとッ!」

「知っているのか? アヴドゥル」

「え、ええ……」

 

 その説明によると睡眠病(sleeping sickness)とは、アフリカのサハラ以南領域における風土病で、ある種の蠅が媒介する寄生性原虫によって引き起こされる人獣共通感染症である。病状が進行すると睡眠周期が乱れ朦朧とした状態になり、さらには昏睡して死に至る疾患であり、これが名前の由来となっている……とのことだった。

 

『わたしのスタンドが生み出す原虫達は蠅を操り、標的の体内に侵入すると睡眠を引き起こす物質……トリプトフォールを放出する、というわけです」

 

「チッ!」

 

 スピーカー越し、いけしゃあしゃあと語る敵への苛立ちをぶつけるように手の中の蠅を握りつぶす。

 

『おっと、そんなことをしても無駄ですよ』

 

 どうやらこの部屋は盗聴だけでなく監視もされているらしい。同時に敵がいう。

 

『いっぱいいますから』

 

 そしてその言葉はハッタリでもなんでもないらしい。宣言通りどこからともなくブンブンと無数の蠅が飛んできた。

 

「ならばッ! わたしが全て焼き払ってくれるッ! 

 うおおおお! クロスファイヤー・ハリケーンッッ!!」

 

 魔術師の赤(マジシャンズレッド)が蟲達に向け、十字(アンク)状の凄まじい勢いの火炎を吐き出す。

 

「……やったか!?」

 

 それは確かに蠅達を燃やし尽くした。

 

『ククク、そうそう、言い忘れましたが、蠅たちも普通の蠅じゃあないんですよね』

 

「!? は、灰が!?」

 

 しかし、ブスブスと煙を上げる燃えカスが瞬く間に元の形に復元したかと思うと、うち一匹が彼に襲いかかる。

 

「ぐわぁあぁッ!」

 

「あ、アヴドゥルッ!!」

「く、そ……! ね、眠い……ッ!!」

「アヴドゥルーッ!!」

 

『この子達は光栄にもDIO様の血液を頂いた蠅を繁殖させたもの。無敵なんです。一匹一匹が』

 

「吸血鬼蠅ってことか……」

 

『ああ、もちろん、あのお美しい肌に牙を立てさせてなどはいませんよ。そんなことは断じてあってはならない。ククク』

 

「どうでもいい……」

「聞いとらんわい、そんなこと」

 

 こいつもどうやらDIOの狂信者の一人らしい。虫唾が走る。

 

「が、だ。ってことは……」

 

 ならばすなわち、弱点はわかりきっていた。日光に当てるべく、壁をぶちやぶろうと星の白金を振りかぶる。

 

「おっと、やらせませんよ」

 

 拳を振り下ろすその前にぶんぶんという不快な羽音を立てる集団に取り囲まれてしまう。

 

「チィッ!! ……オラオラオラオラオラオラオラァッ!!」

 

「すこしでも刺されたらアウト、ですよ。頑張って迎撃してくださいね。わたし自身は痛くも痒くもないですが」

 

 言っている端からどこからともなく蠅達はどんどん湧いてくる。しかもどうやら脳にあたる部分をきっちりつぶさないと復活してくるらしい。防戦一方だ。

 

「ひ、卑怯だぞ! 出てこい! 姿を見せんか! 名を名乗れ!!」

 

 おれの影に隠れつつ、じじいがわかりやすく挑発する。

 

『どうしてそんな必要が?』

 

 だが残念ながら、敵はそう浅はかではないらしい。その手には乗ってくれないようだ。

 

『まだ、すこしだけ早いのでね……』

「!?」

 

『わたしの目的は貴方たちの『時』をいただく。ただ、それだけ。

 夜。絶対なるDIO様のための時間。それまでの……』

 

「……時間稼ぎ、ということか」

 

『まぁ冥土の土産に、名前ぐらいは教えて差し上げましょうか。

 わたくしはDIO様の御傍にお仕えする執事の一人、ミント・チョコラータ。

 暗示は病気、悪疫をもたらす……セクメト神』

 

「セクメト神……!」

 

『いいんですよ。いくらでもやっていただいて。そうして、疲れたらゆっくりと……おやすみなさい。クク、ククク……』

 

「チッ、こりゃあまさにジリ貧ってやつだぜ……」

 

 全部殴り潰したかと思えば息つく間もなく次の波が来る。まったくキリがないかに思えた、そんな中、背中から声が聞こえてくる。

 

「ふぅ、やれやれじゃの。しかたがない」

「じじい?」

 

「ここはこのジョセフ・ジョースターが久方ぶりにいっちょ本気を出すとしようかのう!」

 

 いいつつ、懐から一本の瓶を取り出し、蓋を開ける。

 

「おい、おまえもじゃ!」

「ぎゃうッ!」

 

 ちゃっかり床に張り付き砂に埋もれて擬態していた(イギー)を引っ張り上げながら。

 

「ただし……ちょこーっとの間、頼むぞ、孫よ」

「ちっ! ……ったく、孫づかいの荒いじじいだぜ」

 

 不敵なウインクに、にやりと笑みを返す。

 

「……しかたねーなぁッ!!」

 

 

 

*         *          *

 

 

 

(日が傾きかけている……急がなくては)

 

 背中に照り付ける西日を感じる。

 病院を出た僕は屋根から屋根へ、法皇の触手をつたい、街を飛びまわり、急ぎDIOの館へと向かっていた。

 外壁までたどり着き、先程出る時も使った穴から再び館内に侵入する。

 

「しくしくしく……」

 

 すると階段の踊り場でうずくまり泣き崩れる一人の()()がいた。こちらに気づくと顔を上げ、駆け寄り涙声で訴える。

 

「しくしく……助けて。助けて下さい! あたしDIOから逃げてきたんです。また捕まってしまったら……ああ」

 

「……」

 

 そのまま、僕へとしなだれかかってこようとする()()

 

「……スプラーッシュ!!」

 

 それを思い切り吹きとばす。

 

「ひ、ヒィーッ! 痛いッ!! な、何をなさるのですか!?」

「五月蠅い。くだらん茶番に付き合っている暇は今の僕にはない。ついでにいうと自己ワーストレベルに機嫌も悪い。見逃してやるだけ有難いと思え。背中に女性の顔がついている、それが貴様のスタンドか?」

「へぇッ!? な、何故わかったのですか!?」

「手が裏返し……っと、こんなヌケサク相手にしている暇はないんだった。じゃあな」

 

 一刻も早く皆と合流しなければならない。放っておいても特段問題なさそうなので、さっさと立ち去ることにする。

 そんな僕に後ろから悔しまぎれの捨て台詞が届く。

 

「くそっ! 馬鹿にしやがってよォ! へん、とっとと行きゃあいいさ。花京院、てめーもビョーキになっちまいなーッ!」

 

「……なんだと?」

 

 

 

 *         *          *

 

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラ…………ぐッ!」

 

『やりますねぇーっ! 流石は星の白金! 流石はDIO様も認める男、空条承太郎! でもそろそろ限界ではないですか?』

「……チッ」

 

 額から流れてきた汗が頬を伝う。

 どれくらいの時間が経っただろうか。もはやそれもわからないくらい拳を振るい続けていたおれに耳障りな敵の勝ち誇った講釈が聞こえてくる。

 

『そろそろわたしの時間稼ぎも終了時刻になりました。そして前言撤回させていただきます。この程度ならばDIO様の御手を煩わせる必要すらない。わたしが一気にカタをつけてさしあげましょう! 蠅達よ、総攻撃のお時間ですよ』

 

 おぞましいことに今までとは比べ物にならない数の大群が四方八方から向かってくる。見渡す限りの巨大な黒が周囲をすっぽり埋め尽くすかのようだった。

 

「くくく……」

 

 思わず笑ってしまう。

 

『おや? どうされましたか。どうしようもない事態に直面すると人間は笑うしかなくなるというのは事実ということでしょうか。それとも、ククク、ただ単にお気が触れてしまわれただけでしょうか?』

 

「……やれやれだぜ。勘違いすんな。()()()()が終わったのは、こっちの方ってことだぜ」

 

『……なに?』

 

「……舞い踊れ砂塵ッ!! 黄土色の波紋疾走(サンドコーラルオーバードライヴ)ッッ!」

 

「ッ!? なにィィィィッ!」

 

 じじいとイギーが巻き起こした黄金色の砂嵐が黒き塊を呑み込み一掃する。

 嵐が過ぎ去ったその後には生気を失った蠅達が次々と撃ち墜とされていた。

 

「どうやらすっかりお忘れのようじゃのう。吸血鬼が苦手なのは日光だけじゃあないってことを」

 

『は、波紋、だとぉッ!?』

 

「イギーの愚者(ザ・フール)で発生させた……この砂はただの砂じゃあない。一粒一粒に波紋を伝わりやすくするこの油をたっぷり染み込ませてある。昔はアメリカンクラッカーに使って武器にしていたりしたんじゃぞ」

 

 そういえば昔、よく振り回しているのをみたな……自慢げにいうじじいを見ておれの頭にも幼き頃の記憶が甦る。

 

「とはいえ、これだけの砂粒に全て能力を乗せるのにはちと骨が折れたがの。あーつかれた」

 

『く、くそッ! まだだ! まだ飼育室には予備の蠅達が……ガペッ!?』

 

 するとそこで突然通信が途絶えた。

 

「なんだ?」

 

「う、うーん」

「むにゃ……?」

 

「ポルナレフ! アヴドゥル!」

 

 そして、ふたりが目を覚ましたかと思うと、再びスピーカーが繋がる。

 

『……えー、てすてす。聞こえますか?』

 

 そこから響いてきたのはよく知る男の声だった。

 

『……お待たせしました。遅ればせながら、不肖、花京院典明再び参上。……なんてね』

 

「花京院!」

「おまえ一体どこに!?」

『本体の潜伏していた、裏の隠し部屋です。ヌケサクなヌケサクがすべて吐いてくれましたので』

 

 太陽(ザ・サン)の時と同じパターンのようで、セクメト神、その本体それ自体は全く無力、無防備だったらしい。憎々し気にじじいが嘆く。

 

「ま、またこやつ、いいところ持っていきおった! せっかくわし、大活躍したのに……」

『ふっ、さっきの借りを返したまでですよ、ジョースターさん。じゃあ僕もそっちに行きますね』

 

 通信が終了する間際、間抜けな敵の断末魔の叫びに似た呟きが流れてきた。

 

『で、DIO様……万歳……ぐふっ……』

 

 

 

 *         *          *

 

 

 

「ゼヒー、ゼハー、くたびれたわい……

 こんなに波紋練ったの何年ぶりじゃろうか……暫く打ち止めじゃ」

 

「ご苦労だった、じじい」

 

「うん……あのさ、承太郎? 

 こんなときくらい……もっと褒めてくれてもよくない?」

「チッ、おれだって疲れたっての。なげーんだよ……ったく」

 

 合流後功労者である承太郎とジョースターさんを労いつつ、落ち着いたところで僕は改めて口に出す。

 

「すみません、遅くなりました」

「……いや」

 

 皆それを言葉少なに受け入れてくれる中、いつも言葉の少ない男がぽつりと零す。

 

「やっぱり、もどってきちまったか……」

「は?」

「なんでもねぇ」

 

 問うも答えず、承太郎は逆に僕に問い返す。

 

「……おいてきたのか?」

「もちろん」

「いいのか?」

「ああ。……当然だ」

「……」

 

 それ以上彼は何もいわなかった。

 代わりに天を仰ぐ。

 

「やれやれ。しかし、敵の思惑通り、かなり時間をくっちまったな……」

「ああ。外はもう日が沈みかけていた。急がなければ……」

 

「「……さてと」」

 

「……えっ!?」

 

 いつこの場から逃げ出そうか……そんなことを目論んでいるであろう小男にぎろりと揃って矛先を向ける。

 

「なんでてめー、ぶちのめさずにそのままにしておいてやっている思う?」

「迅速にDIOのところに案内しろ、ヌケサク」

 

「ヒィーッ!」

 

 

 そうしてヌケサクの尻を叩きつつ辿り着いた、塔の最上階。ひとつだけある部屋。

 打ち付けられた板を壊し、窓を開放し西日を入れつつ、警戒しながら侵入する。

 

 すると、中央に、煌びやかに飾られた禍々しい気配を放つ、()()があった。

 

(……この中に、ヤツが……)

 

「……」

 

 複雑な表情を一様に浮かべ、全員でそれをみつめる。

 それぞれ皆、思うところがあるのだろう。

 

 

(後悔はない……)

 

 

 無論、それは僕も例外ではなかった。

 

(今までの旅に……

 そして、これから起こるかもしれない事柄に……

 ……僕は……)

 

「……」

 

 ふいに浮かびそうになるものに気づかないふりをする。

 再び押し込める。……奥底に。

 

(……そうだ)

 

 

(後悔など……ない……)

 

 

 

 てきぱきとジョースターさんが配置の指示を出し、全員で棺桶を取り囲む。

 

「ヌケサク、おまえが蓋を開けろ。開くと同時に、一斉に攻撃する」

 

「ひぃい! でぃ、DIO様! 

 わたしは貴方様を裏切ったわけではけっして……! 

 貴方様のお力を確信しているからなんですぅ……!」

 

「つべこべ言っとらんで、さっさと開けんかーッ!」

 

 往生際の悪い敵に、ジョースターさんの恫喝が響く。

 

「でぃ、DIO様、

 ……さぁ、こいつらをやっつけておくんなましよぉおおお!」

 

 棺桶の蓋が、ゆっくりと開かれる。

 

 

 

「……え……?」

 

 

「……オレ……?」

 

 

 しかし、入っていたのは()()()()だった。

 

 今まさに蓋を開けていたはずの()()()()だった。

 

「なっ!?」

「えぇ!?」

「はぁ!?」

 

 意味が、わからなかった。

 

「な、なにィィッ! どうして!? わしは一瞬も目をはなさなかった!」

「超スピードとか、催眠術じゃあ断じてねぇ……!」

「さ、さっきと同じだ……!」

世界(ザ・ワールド)!?」

 

(こ、これが……!?)

 

「野郎……おもしろくなってきたぜ」

 

 瞬間、はりつめたような……悪寒や怖気、そういった類いの不快な間隔をひっくるめたような戦慄が全身を走る。

 

「やばい……」

「なにか……!」

「やばいぜッ!」

 

「逃げろーッ!!」

 

 すぐさま窓から全員で外へ飛び出す。

 

「確かに感じた! 

 今……あのままあそこにいたら確実に一人ずつやられていた!!」

「いったい……なんだったのだ……今のは……」

 

(気配だけで、今まで出会ったどのスタンドをも超えている凄みを感じたッ!)

 

 庭に、皆で降り立つ。

 

「まずい。じつにまずい。太陽がほとんどみえなくなっている……」

 

 ジョースターさんが悲痛な表情で、言葉を続ける。

 

「明日の日の出まで待つ……と言いたいところだが、もう時間がない。

 敢えて言わずにおいたが、実はすでに危篤状態だと、……今夜が峠だと、今朝、連絡が……」

「!?」

「ホリィを救えなくては意味がない。挑むしか、ないのだ」

 

 全員で、頷く。

 

「が、ヤツのスタンド、『世界』に出会ったのにどんな能力なのか欠片も見えない。このままでは全員……」

 

「……」

 

「しかし、チャンスは必ず来る! 

 DIOはこれから必ずわしらを追ってくる。日の出前に仕留めようとするじゃろう! 

 その間に必ず、ヤツのスタンドの正体をあばくチャンスがあるッ! それを、待つんじゃ!」

 

(……ヤツの……スタンドの、正体)

 

 

 

 

 

 DIOとの決着は、館から市街へと舞台を移して行われることとなった。

 

 その辺にあった全員が乗り込める荷台付きの軽トラックを買い取るべくジョースターさんが運転手と交渉をしている。

 先程館の中で、ヤツの『世界』の得体の知れない底のなさを感じた僕らはそれに乗り込み、とりあえずDIOと距離をとりつつ反撃の機会を待つことになった。

 

「よし! 皆、乗れ!」

 

 空を、見上げる。陽が、とうとう、完全に、沈んだ。

 

 薄夜。よるの、はじまり……。

 

「夜が、奴の時間が、やってきてしまった……」

 

 

 

 土地勘のあるアヴドゥルさんの運転で、カイロ市街をひた走る。かなりのスピードで、道行く他車の間をどんどんすり抜けながら。

 

「奴がかもし出しているドス黒い雰囲気は依然として遠くならない……追ってきているのだ。

 奴はわしらを追ってきている!」

 

 頭を抱えるジョースターさんに疑問を投げかける。

 

「……敵は、僕たちの位置が正確にわかっているんですか?」

「いいや、ヤツの肉体は、わしの祖父、ジョナサン・ジョースターの体。不思議な肉体の波長のようなもので存在は感じるが、近くというだけで、場所は正確にはわからない。わしがDIOの館の近くまで来ながら正確にわからなかったようにな。やつが感じているのはなんとなく、ジョースターが近くにいる、というだけで、わしと承太郎の区別もついていないはずだ」

 

 

「……来た! あれか……」

 

 後方に、さらなる猛スピードでこちらへと向かってくる一台の高級車が見えた。

 その距離およそ100mといったところか。

 

「……え……?」

 

 目を見張る。

 後部座席、深くシートにもたれかかり、足を高く組んでいる男……

 

 ……その隣。

 

 僕は信じられないものをみた。

 

「……うそ……だろう?」

 

 見間違えだと思いたかった。

 

 しかし僕は()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……ひ、仁美、さん……?」

 

 

 宿敵を睨みつける、その姿を。

 

 

「……どうしてあなたがここにいるんだーッ!!」

 

 

 

 

 

もうすぐこのお話も完結です……が、性懲りもなく次回作も本作品にちなんだものにする可能性が高いです。どんなのだったら、また読んでやってもいいぜ? と思って頂けるでしょうか?

  • そのまま4部にクルセイダース達突入
  • 花京院と彼女のその後の日常ラブコメ
  • 花京院の息子と娘が三部にトリップする話
  • 花京院が他作品の世界へ。クロスオーバー。
  • 読んでほしいなら死ぬ気で全部書きやがれ!

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