「……朝……か」
チュンチュンと、庭で鳴く、雀の声で目覚めた。
痛み止めの影響か、疲労のためか……
昨日は丸一日ほとんど眠ってしまっていたらしい。
そして、一昨日の今日だ。
僕の傷病名は全身打撲、加えて額の…裂傷。
未だその身を貫く痛みと闘いつつ、ゆっくりと布団から起き上がる。
「おい……入るぞ」
すると、障子の外からぶっきらぼうな声がした。
「よぉ」
「ああ、おはよう、承太郎」
「どうだ? 傷は? 」
「ああ。だいぶいい。……が、まだ体中がガタガタと悲鳴を上げている。
誰かさんのスタンドの驚異的なパワーの賜物だね」
「ふん……てめーがひ弱なだけだ」
「フッ……繊細と言ってもらいたいな」
「チッ……ほらよ」
いいつつ、なにかをこちらへと放り投げる。
「これは……! 」
あの、ハンカチだった。
―「大丈夫かい? これを使うといい」―
自分で足を切りつけておいて……さらに石段から突き落としておいて、いけしゃあしゃあという『自分』。
そのとき渡した……『果たし状』代わりに文字をしたためた、あの……。
「も、もう、捨ててくれてよかったのに……」
いや、むしろ捨ててほしかった……こんなもの。
ちなみに、『幽波絞』ではない、『幽波紋』だ。
製作中にそう教えてやったら、あの例のびりびり痛いやつ……を喰らわされた。孫悟空気分だった。
まったく、なんてプライドの高いやつだ。……って、自分だった……。
やめてほしい。僕が馬鹿だと思われるじゃあないか。
承太郎はあの誤字に気づいているのか、どう思ったのか……恐くて聞けない……。指摘しないのは彼なりの親切なのか……なんなのか。心遣いが逆につらい。
「元通り……真っ白だ」
そんな僕の気を知ってか知らずか……口の端でにやりと、笑う。
「……! ……ああ。本当だ……」
パリッと糊がかかったそれを広げると、洗い立ての太陽の香りがした。
「……ありがとう」
「洗濯したのはおれじゃあねぇ。礼はおふくろにいいな」
「……」
どうか、ホリィさんが洗う前に広げて確認などしていませんように……切に祈る。
「じゃあ、たしかに返したからな。
おれは今日こそ学校に行くぜ。
……てめーはせいぜいゆっくり養生しな」
意外と真面目なのだな……と、出ていく彼を見送りつつ思う。
(いや、『意外』でもないか……)
レッテルは所詮、レッテルにすぎない。そういうことらしい。
「ああ、そうさせてもらうよ……」
しかし、残念ながら、そういうわけにはいかなくなってしまったようだ。
「――! 」
階下から聞こえる慌ただしい気配。
「……」
立ち上がり、濃碧色の学生服を身にまとう。
「ホリィの命を救う……そのためには……
……エジプトにいるDIOを倒し、この呪縛を解くしかない!! 」
僕の心は、決まっていた。
「……やはりエジプトか。いつ出発する? 」
扉を開け放ちながら、言い放つ。
「……僕も、同行する」
(そうだ。なにひとつ、終わってなどいない……)
(取り戻す。……それだけのことだ)
こうして、僕の旅は始まった。
あの日失ったものを取り戻す、旅が……。
もうすぐこのお話も完結です……が、性懲りもなく次回作も本作品にちなんだものにする可能性が高いです。どんなのだったら、また読んでやってもいいぜ? と思って頂けるでしょうか?
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