たとえばこんな緑谷出久   作:知ったか豆腐

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パッとおもいついたので。

※この出久は最初から女の子です。
※悪堕ち注意

2017/08/21 投稿


いずく魔性
いずくヒロイン 亜種 魔■??女


 人は生まれながらに平等ではない。

 

 緑谷出久が齢4歳にして悟った真理だ。

 

 

「出久ちゃん、遊びましょう!」

「出久ちゃん、これあげるね!」

「出久ちゃん、出久ちゃん!」

 

 4歳の誕生日を迎えて、個性が発現してから緑谷出久の人生は激変した。

 

『人を惹きつける個性』

 

 何をしなくとも人の好意が向けられる。

 そんな特殊な環境に身を置くことになった出久は大いに戸惑う。

 

“どうしてみんな僕に優しくしてくれるの?”

“どうしてみんな僕を褒めるんだろう?”

“どうしてみんな僕のために動いてくれるんだろう?”

 

 ……僕がみんなに何かしたわけじゃないのに。

 

 

 過剰なまでの、不条理なまでの人の好意は毒となって幼い精神を蝕んでいく。

 その甘すぎる毒は緑谷出久の精神を歪め捻じ曲げてしまった……

 

「そっか。僕が特別だからだ。僕が特別だから……みんなが好きになってくれるんだ」

 

 緑谷出久は外道に堕ちた。

 

「僕が特別だから、すべては僕のためにある(All For One)んだ」

 

 

==========

 

 ――――折寺中学校 3年教室 放課後

 

 そこに一組の男女が残っていた。

 

「駄目だよ、世春(ぜはる)君。こんな高級なの受け取れないよ!」

「緑谷さんのために頑張ったんだ。ぜひ受け取って欲しい!」

 

 高価な贈り物に戸惑う緑谷少女。

 美しく成長した彼女は異性同性を問わずに好意を寄せられ、大変人気が高い。

 そんな彼女の気を引くために少し背伸びをしてしまった少年の空回り。ほろ苦い青春の1ページ。

 

 普通ならそうなるだろう。

 

「無理しちゃだめだよ。世春君」

「で、でも!」

「駄目だよ! 無理しちゃ。()()()()()()()()()()()()()()()

 

 些細な一言。

 

「嫌だ、嫌だよ! 捨てないで、捨てないで……ボクを見捨てないで、緑谷さん!」

 

 それにひどく取り乱し恐れる男子学生。

 異様な光景だった。

 

「大丈夫。無理しないで、ほどほどの程度なら大歓迎だから……分かるよね?」

「う、うん。わかったよ」

「分かってくれたならいいよ。じゃあ、また今度。ね?」

 

 そう言って男子生徒と別れる出久。

 立ち去っていく男子生徒を見送り、出久はため息を吐く。

 

「あぁ、失敗したなあ。あんな高価なものを贈られると親が介入してきかねないから困るんだよね。

 もうちょっとコントロールする方法を覚えておかないとなぁ」

 

 そう言ってカバンから本を取り出す。

 心理学・人心掌握術・催眠術・暗示・洗脳術……etc

 人を操ることに関した本ばかり。

 

 緑谷出久は、他人から好かれる個性を利用して学校全体で多くの人を自らの支配下に置いていたのだ。

 

 専門書をパラパラとめくって一通り確認した後に、教室を出る。

 

「おい、デク!」

「……あら? かっちゃん? まだ学校にいたんだね」

 

 教室を出た出久に声をかけてきたのは爆豪。

 強く睨みつけるその視線を出久は微笑みで流す。

 

「スカしてんじゃねえよ腹黒女ァ。さっきあのクソモブと何を話していやがった」

「何を話してても僕の自由じゃないかな? それともヤキモチ?」

「ザけたこと言ってんじゃねえよ! てめぇが他人利用して好き勝手やってるのはわかってんだ!」

 

 出久の行いを糾弾する爆豪。

 幼いころから近くで出久を見ていた爆豪は、出久が同級生を始め学校全体で個性を利用して支配を進めていることを知っていた。

 そして同時に、イズクを止められないことを知っていた。

 

「だからどうしたの? かっちゃん」

「な、な……に!?」

「だって、そうするのが当然なんだもの。かっちゃんも将来はその強い個性を使ってヒーローになるんでしょ?

 生まれ持ったものをうまく使うのは当然じゃない?」

「んなわけねえだろうが! てめえと一緒にするんじゃねえ!」

 

 激昂する爆豪。

 だが、出久は笑う。いや、嗤う。

 

「僕が間違っていると思うなら君が止めればいいじゃないか。止められるなら……ね?」

「てめえ!!」

「怒鳴ったって無駄さ。君にはできないよ。僕を止めたければ君を犠牲にしなきゃいけないんだから」

 

 世間的に評価が高い出久。彼女を弾劾するには力ずくでしか方法は無い。

 それは同時に爆豪の人生の終わりを意味している。

 そしていざ爆豪が行動に移そうとするならば、彼女は支配下に置いた人々を容赦なく盾とするだろう。

 無実の人々を倒し彼女を止めたとしても待っているのは、栄光ではない。

 

 プライドが高い爆豪がそれを選べないことは分かっているからこそ、余裕を持っている出久。

 

「じゃあね、かっちゃん」

 

 何もできずに見送るだけの爆豪。

 この日のことを爆豪は後悔することとなる。

 

 緑谷出久。のちにヴィラン名“魔性天女”と呼ばれる、己のために他人を踏み台にし続ける最悪のヴィランの少女だ。

 

 

 

 

「ヴィラン連合かぁ……面白そうだね、トガちゃん」

「そうだねぇ。楽しみですね、イズクちゃん!」




感想を読み返していたら某快楽天だとか、キ〇ラだとかが目に入ったので。
並行世界の可能性をちょっと書いてみました。

次回こそ1/2!

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