たとえばこんな緑谷出久   作:知ったか豆腐

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思いついたネタ第二弾。


2017/06/14 投稿


その他
いずくキャット


 緑谷出久。14歳。性別は男。そして……“無個性”の人間だ。

 

「無個性でヒーロー目指してなにが悪いってんだよ」

 

 誰に言うでもなくぼそりとつぶやく。

 ああ、嫌になるなぁ。

 バカにしてきた人たちに面と向かって言えずに、こうやって誰もいないところで誰にも聞かれないように愚痴を垂れ流している。

 

 4歳の時に無個性だと知ってなお、ヒーローを目指すと決めたけれど、誰にも認められないのは正直つらい。

 今日も進路調査で、ヒーロー科のトップ校・雄英高校を志望していると言っただけでクラスの笑いものだ。

 かっちゃんにはヒーロー分析ノート(努力の結晶)を爆破されて投げ捨てられてしまったし……そして、そこでなにも反論できない自分が悔しかった。

 

 そんな気分も憂鬱に歩いていたからか、また気が滅入るようなことに出会ってしまった。

 自動車に轢かれた猫の死骸だ。

 かなり酷く轢かれていて、直視するにはキツイ場面だ。

 手足が折れ曲がり、尻尾も千切れてしまって見当たらない。

 

 こんなの近寄らないのが賢明だ。

 でも、この日、落ち込んでいた僕は誰にも見向きされないこの猫のことがかわいそうに思えて……

 その猫のことを弔ってやることにしたんだ。

 

 埋められそうな場所を探して、道具がないから手で土を掘り返して、すこし大きめの石を持ってきてお墓代わり。

 こんなの自己満足にすぎないけれど、ちょっとだけ良いことをしたような気持ちになって家に帰ったんだ。

 

 

    =========

 

 爆豪勝己 14歳。性別男。自他ともに認める天才で、恵まれた個性を持っている。

 今日もモブどもの下らねえ話を聞いて何事も過ごすのだと思っていた。

 

「なあ、カツキ知ってっか? 指島のやつ入院だってさ!」

「アァン? んなもん、俺が知るわけねえだろ。どんなバカやらかしたんだあいつは?」

 

 いつも連れ立って行動している片割れが入院したと四角顔が話しかけてきた。

 モブがどんなドジをやらかして入院したか知らねえが俺に迷惑がかからなければどうでもいい。

 俺はそう思って流そうとしたんだが……

 

「違えよ! あいつ、何者かに襲われたんだってさ。財布や携帯は無事で何も取られてなかったから犯人の目的も分からないって」

「ハァ? ヴィランにでも襲われたか?」

「おかしいのはそいつ、外傷はとくになかったらしいんだが、顔真っ青になって身体が弱ってたらしいぜ。まるで幽霊に生気を抜き取られたみたいだって」

「バカ言ってんじゃねーよ。なんかの個性かなんかだろ」

 

 結局、うさんくさい怪談話になって聞くのをやめた。

 そんなくだらねえことに惑わされるなんざ、ザコのすることだ。

 

 そうやって気にせずに一日を過ごした翌日……今度は四角顔が襲われた。

 連続でウチのクラスメイトが襲われたってことで、学校でも問題になった。

 忌々しいことに二人と仲が良かったからとセンコーに呼び出されて質問攻めにされて俺の気分は最悪だ。

 さらにイライラさせるのが、デクだ。

 不安そうにオドオドキョロキョロと目障りこの上ねえ。

 

「デク、てめェ俺の前でちょろちょろと動くんじゃねえよ。うざってえ!」

「かかかかっちゃん!? えっと、襲撃事件があって大変だね。かっちゃんも気をつけてね!」

「はぁ? てめェが俺の心配とは、ナメてんのか? アァン!?」

 

 無個性のデクの癖に俺の心配?

 バカにされているとしか思えねえ!

 なんで俺が格下にそんなことを思われなきゃならねえんだ!

 

「無個性の癖に何様だよ。てめェごときが考えることじゃねえ。黙ってろ」

「……無個性なのは関係ないじゃないか」

 

 珍しく反抗してきやがった。調子づいてやがるな、こいつ。

 だからいつも通り爆破で脅してやる。

 

「なんか言ったかァ? 無個性のクソナード!」

「えっ、うぅ……」

 

 ほうら、何も言えなくなった。

 こいつに度胸も勇気もねえ。なんの力もない弱者だ。

 弱者は弱者らしく分をわきまえていればいい。

 

 

 

 

「ニャハハ、おまえがご主人の敵かニャ?」

 

 俺はその日、『猫』と出会った。

 人型で動く『猫』の化け物。

 その姿は、数時間前に学校で別れたばかりの……幼馴染にそっくりだった。

 

「おまえ、デク……なのか?」

 

 そう尋ねた俺に、その化け物は笑みを浮かべて言う。

 

「そうでもあり、そうでもニャい。オレはご主人のストレスが限界まで達すると出てくる別人格みたいニャもの。

 そのストレスの原因を排除するために生まれた、ちょっと変わった“個性”ってやつさニャ」

「あのデクに個性? あいつは無個性のはずだろうが! ありえねえ!」

 

 信じられない事実に叫ぶ。

 だが、そいつはまた笑ってこう告げた。

 

「ニャハハ! ありえニャいニャんてことはありえニャい。考えてみなよ。この世界には何十億も“個性”があるんだぜ?

 助けてくれた恩人に寄生するようニャ個性があってもおかしくニャいだろう?

 

 まぁ、オレの正体はどうでもいい。

 用件は一つ。オレのご主人のストレス解消にぶっ飛ばされろ!」

 

 そう言って、猫の化け物は俺に襲い掛かってきた。

 

「上等だ! ブッ殺して、そのクソナードから引っぺがしてやる!」

 

 個性の無許可使用?

 知ったこっちゃねえ! ここでこいつをぶっ飛ばしても正当防衛だろうが!

 




ここまで書いて力尽きた。
元ネタは言わずもがな、化物語の「障り猫」

たぶん、続かない。

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