2018/04/07 投稿
桜の花びらが舞う4月。会社でも学校でも新年度が始まり、新生活が始まる人も多いこの時期。
今日から高校生になった出久もまた、新しい環境でやる気を出していた。
それこそ、入学式をすっぽかしてデータを取るくらいには。
「こら、デク、てめぇ、なんでここにいやがる!」
「ひぃ! かかか、かっちゃん!?」
自由な校風を謳うだけあって、入学式すら必要があれば不参加が許される雄英高校。
出久はヒーロー科A組の担任、相澤による独断で行われた個性把握テストに協力者として参加していたのであった。
ちなみに、格下(だと本人は思っている)の幼馴染の姿を見とがめて怒鳴り散らした爆豪は、即行で相澤先生に捕縛されてしまっていたり。
「静かにしろ。サポート科の特待生に協力してもらうために来てもらったんだ。これからも何かとお世話になるだろうから挨拶しておけ」
「こ、こんにちは。サポート科の緑谷出久です。今日はこれからやる個性把握テストのデータ採取をさせてもらいます」
緊張しながら、自己紹介と目的を告げる出久に、A組の面々は友好的に返事をしてくれた……幼馴染を除いては。
「雑用ご苦労さん。これからもせいぜい俺の役に立ってくれよ? ク・ソ・ナ・ー・ド」
「かっちゃん……」
出久の肩に手をのせて耳うちするように告げる爆豪。出久はその見下された態度にうつむいて何も言うことができなかった。
長年格付けされてきた関係のせいで、爆豪に対して出久は苦手意識を作ってしまっている。
そのため、こうして理不尽な言葉を投げかけられても反抗することすら考えられない。
だが、力関係でいえば出久のほうが爆豪よりも圧倒的に格上だったりするのだけれど。
なにせ、出久は学校から求められて入学した特待生である。
授業に使うVR技術の協力を求められており、生徒でありながら学校の運営にも携わるような立場なわけで、これから雄英高校で授業を受けていくうえで出久にお世話にならざるをえない。
現に、今回のテストのデータも、今後のVR授業に使われる予定なのだ。
そんなことを知る由もないヒーロー科のメンバーたち。
真実を知るのはいつになるのだろう……
――――放課後。
今日データを採ったばかりの個性把握テストのデータや身体測定データを元にヒーロー科の生徒たちのアバターを作っている出久。
AIの“アルターエゴ”にも協力してもらい、A組20名全員分を作成していく。
結構大変な作業だが、ゲームを作っていたときの作業とさほど変わらないので特に苦痛に感じずにこなしていく。
むしろ、楽しんでいたり?
「おー! みんな自分の個性を活かしたデザインだったり、デメリットを軽減するような機能をつけてたりとか、いろいろで面白いなあ」
出久が今見ているのはサポート企業から送られてきた生徒たちのコスチュームのデータだ。
生徒本人のアバターと同時に、サポートアイテムも使えるようにしておかなければいけない。
多種多様なヒーローコスチュームを見るのは、オタク気質の出久にとっては楽しいことで、ついつい悪い癖が出てしまう。
「うわ、かっちゃんのデザインらしいっちゃらしいなぁ。籠手は最大威力をノーリスクで出すためのものか。さすが! でも、汗をためるまで時間がかかるから、それを補助する機能があってもいいかも。例えば汗をかきやすくするために籠手の内側の素材をサウナスーツみたいにするとか……個性を活かす方向でいえば、上鳴くんなんかもよさそうだぞ。放電の補助にスタンロッドなんか持ってもいいかな? いや、見た目が凶悪すぎるかも、あまり恐怖感を持たせるような武器はヒーローにはよくないし……でも、指向性を持たせてリーチを伸ばすのは悪くないかも。逆にデメリット軽減の部分でいえば――――」
データをみて分析するだけでなく、勝手に改造案まで想像を広げてブツブツと考え込む出久。
正直、傍から見ると怖い。
それでもキーボードを打つ手は止まらないのだからさすがである。
まぁ、想像するだけなら誰にも害はおよばないから問題ないだろう。
『お父様、いろいろとコスチュームについて考えてるなあ……そうだ! お父様の案を
……想像するだけなら。
後日、“アルターエゴ”からコスチューム改造案のシミュレーションデータを渡された出久が困ってサポート企業に連絡し、ひと騒動起こすのだが、それはまた別のお話だ。
どんな騒動か? それはいろいろなのだが、一つ言えることは、また出久の特許が増えるということである。
出久くんの将来の高額納税者ランキングはいったい何位になるんだろうなー?
PCを新調しました。
こいつ、ぬるぬる動くぞ!?
この土日に投稿しておきたいなぁ。