※前提条件
1.雄英バリアが破られてマスコミが乱入していない。
2.大分時間が飛んで夏の合宿になっている。
2018/02/08 投稿
――雄英高校 1年ヒーロー科 夏合宿にて
個性強化のための辛い合宿。
その合間の楽しみとして用意された肝試しのレクリエーションは、ヴィランの襲撃にあい、地獄のサバイバルと化した。
「ネホヒャンッ!」
複数の腕に生体チェーンソーやハンマー、ドリルなどの凶器を生やした改人・脳無が襲い掛かる。
唸りを上げる生体チェーンソーを、銀閃が縛り上げて動きを止める。
「百お嬢様、お逃げください!!」
「緑谷さん!!」
「早く! この脳無をどれだけ足止めできるか、分からない!」
自分をかばって脳無の前に立つ出久。
百は手助けしたいが、下手に動けば邪魔になりかねなかった。
鋼糸を指に食い込ませながら、出久は必死に叫ぶ。
「決して振り返らず、全速力で逃げてください。いいですか、振り返らず、全速力です!!」
「そんな……くっ、緑谷さん、命令です。必ず私のところへ生きて戻ってきなさい!」
意を決して駆け出す百。
背後から聞こえる戦闘音に後ろ髪をひかれる思いだが、彼を信じて走り出す。
そうして避難した先で出久を待っていた百だったが……緑谷出久は戻ってこなかった。
爆豪・常闇、ヴィラン連合により拉致される。
緑谷出久、生死不明。依然として行方不明である。
雄英高校の合宿が襲撃された事件は全国に衝撃を与え、同時に雄英高校、ヒーローへの不信感を増すこととなった。
特に雄英高校への批判が大きい。
何せ、二人の生徒が連れ去られ、一人が生死不明の行方不明だ。
そんな中、被害にあったヒーロー科1年A組の一部は独自に動き始めていた。
百が密かに自分の執事に渡していた発信機の情報を元にヴィラン連合のアジトの調査に向かおうというのだ。
メンバーは4人。
補習を受けていたせいで、何もすることができなかったことを悔やむ切島。
爆豪と常闇を目の前で連れ去られた轟。
彼らが無茶しないよう監視の名目でついてくることを決めた飯田。
そして、自分の執事を探す百だ。
教師にもクラスメイトにも告げず、事件へと足を踏み入れた4人。
現場についた彼らが目にしたものは――――
「ゴミだね。ヒーローなんてみんなゴミみたいなものだよ」
ヒーローたちを鋼糸で切り刻む出久の姿だった。
「緑谷さん!? 緑谷さんですの!?」
「こんなところまで来るとは、いけない人だ、八百万百」
思わず自分の立場を忘れ、物陰から飛び出した百。
その姿を見定めた出久はいつもと違い、冷淡に返事をする。
信頼していた執事からの思わぬ対応にひるむ彼女に代わって、仲間たちが出久に問いを投げかけた。
「どうしたってんだよ、緑谷ァ! 正気に戻れ!!」
「緑谷君、こんなことを君が望んでするはずがない!」
「奴らに……奴らに一体何をされたんだ、緑谷」
切島が悲痛に叫び、飯田が信じられないと思いを口にし、轟が静かに怒りを燃やして問いかける。
だが、出久は表情一つ変えなかった。
「“奴らに何を?” 捕え
その言葉に安堵するでも、憤るでもする間もなかった。
「とでも僕が答えれば満足するかな? みんなは」
出久本人が絶望に叩き落とした。
「僕は何者にも命令されずに立っている。緑谷出久として、殺意をもってヒーローたちを切断したんだ」
「緑谷さん、何故ですの? 何故そんなことを!?」
「僕の名前を、気安く呼ぶな! 八百万百!!」
明確な拒絶を叩き付けられた百。
その返答をもって彼女は理解した。
彼は本当にヴィランに、ヒーローの敵になってしまったのだ、と。
――――雄英高校にて
根津校長と相澤先生が二人で話をしている。
内容はもちろん、今回の襲撃事件についてだ。
「USJ事件、そして今回の事件で我々の情報が筒抜けになっていることが確実になってしまったね」
「ええ。前回のUSJの際にもその存在が疑われていましたが……その時教員に疑いがかかった時に校長は真っ向から反対していましたね」
苦々しく校長が告げ、相澤が肯定する。
“内通者”、忌むべき裏切り者だ。
以前、USJが襲撃された際にも、その事件の前後にトラブルはなかったはずなのに、内部情報が流出していたのだ。
カリキュラムをすぐに手にできる教員が真っ先に疑われたが、根津校長が強く反対。
「雄英の教員は僕が見定め、確かな信頼のある人ばかりだよ。君を含めて彼らが裏切るなんて僕自身がヴィランでもない限りありえないさ」
自分のハイスペックも合わせて判断したという校長。
だが、相澤は納得しきれていない。
「しかし、教員でないとするならば内通者は生徒ということになります。まだ10代の彼らにスパイまがいのことができるでしょうか?」
「僕も大切な教え子たちを疑いたくはないさ。でも、僕には一つ危惧していることがあるんだ」
根津校長は自身の最悪の予測を語りだした。
「今年入学した生徒で一人、特殊な経歴の持ち主がいたはずだね? 彼の師匠たちは一部の世界では有名でね。当然裏の分野にも精通しているのさ」
「校長、まさか!?」
「ことをなしえる能力があり、教員からの信頼も厚く、職員室によく出入りする姿が見られていた彼なら可能だろうね」
教え子の一人が裏切っていた可能性を告げられ、さすがの相澤も動揺を隠せない。
校長はその頭脳を回転させ、考察を深めていく。
「分からないのは彼がいつから裏切っていたのかということだよ。
入学時から? 彼が帰国した時から? それとも、もっと以前から?」
すべてはまだ闇の中。
悪堕ちを書かないと、と、悩んでいたらいつの間にか降りてきたネタ。
まぁ、師匠の元ネタからして悪堕ちしてる人いるしね。
続きは書かないので好きに想像してくださいませ。
お嬢様に見敵必殺されるも良し。
お師匠様’sが現れてボコボコにされるもよし。
そのまま悪堕ちさせるも良し。