たとえばこんな緑谷出久   作:知ったか豆腐

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なぜか続いたヒロイン。

2017/08/02投稿


いずくヒロイン その2

 放課後。

 出久に呼び出される爆豪。

 

「何の用だよ、クソナード」

「かっちゃん、あのね……」

 

 思い詰めたように言いよどむ出久だったが、少し迷ったあとに意を決して思いを告げる。

 

「僕、僕はヒーローになりたい!」

「いや、無理だろ」

 

 爆豪、即答。

 辛辣な返事に出久が抗議の声を上げる。

 

「ひ、酷いよ、かっちゃん。どうしてそんなことを言うの?」

「うるせえ! いちいち涙目になってんじゃねえ! んなもん考えなくともわかるわ!」

 

 出久の個性ならば、泣きそうな顔になっただけでもうたいていの相手は陥落するところを、さすがは幼なじみ。

 容赦なくダメ出しを開始する。

 

「まず、てめえの個性でどうやってヒーローとして活躍するつもりだオイ!」

「えっと、ヴィランを誘惑して……とか」

「ヴィラン誘惑してどうするつもりだこのバカ!」

 

 幼なじみのとんちんかんな答えに頭痛がしてくる爆豪。

 ヴィラン誘惑するヒーローって、いったいなんだ? どんなヒーローなんだ?

 

「だいたい、てめえヒーローって役柄じゃねえだろうが!!」

「そ、そんなことないよ! ヒーローできるよ!」

「被救助回数全国一位が何言ってやがる!」

 

 緑谷出久、14歳。

 中学に入ってからヒーローに救けられた回数は軽く50回以上。

 つまりここ2年にも満たない期間で、それだけ多くの事件に巻き込まれているのだ。

 約一週間に一回のペースで事件に巻き込まれている計算になる。

 それだけ多くのヴィランを惹きつけてきているのだ。まぁ、同時にヒーローも惹きつけているからか、救出もあっという間なのだが。

 そういうわけで、毎回ヒーローに人質から救助される出久についたあだ名は『ザ・ヒロイン』

 いわゆる、囚われのお姫様ということである。

 

「だからてめえじゃ無理だって言ってんだろうが!!」

「それでも、ヒーローになりたいんだよ!」

 

 頑として譲らない出久に爆豪がついにキレる。

 

「そんなにヒーローになりたいなら、せめてコントロールくらいできるようになれや!

 今の状態でヒーロー目指そうなんざ、100年早いんだよ」

 

 そう吐き捨てて立ち去る爆豪。

 せめてヒーローを目指すなら無差別に撒き散らしている個性の効果をコントロールできるようになれ。

 言い方は荒っぽいが、彼なりの精一杯のアドバイスだ。

 こうやって、見ていられないと最終的には助けてしまうところが彼らしい。

 皆からツンデレいわれるのも仕方ないね。

 

 

 

 出久から爆豪が相談を受けたわずか3週間後。

 

「どうしてこうなった、クソが!」

 

 爆豪勝己は頭を抱えていた。

 

「緑谷、今度の週末に遊びに行かないか?」

「ねえねえ、緑谷ちゃん。美味しいケーキのお店見つけたんだ」

「いずっきゅん、ハァハァ」

 

 いつものごとく人に囲まれている出久。

 だが、以前と違うのは……

 

「うわあ、ありがとう。誘ってくれて嬉しいな。でも、その日は別の用事があるから……」

「み、緑谷の都合のよい日にするよ!」

 

 喜びを満面の笑みで表したあとに、悲しそうな表情を作ってみれば、相手はコロリと前言撤回。

 

「本当!? でも、知らないお店は不安だなぁ。先に様子を知っている人がいたらいいんだけど……」

「調べて来る。今日、すぐに調べて来るから!!」

 

 ギュッと手を握り、少し俯いた後にチラリと流し目を送る。

 それだけで相手の誘いをうまくかわした上に、後からお店の情報をもらえる流れになった。

 

「美浜さんの目、なんかちょっと怖い……」

「いずくんに何してんじゃコラ!」

「アウト、圧倒的にアウトォ!!」

「待って、出来心だったんですぅ!」

 

 言葉一つでセコムが出動。

 不埒者を排除する。

 

 惹きつけられてきた人をコントロールする術を身につけた出久。

 

 頼み事のときに上目遣い、首を傾げて返事をする。

 さりげない仕草で手を握り、流し目を送って微笑む。

 不自然にならないよう体をそっと寄せてボディタッチ……

 

 いわゆる「あざとい」仕草を身につけたわけである。

 普通の人がやったらウザいどころではないが、出久の個性と合わさると途端に人たらしの道具に早変わりだ。

 

 これによってセコムかっちゃんの出動回数は大幅に減ったのだが、これはこれで問題だと思う。

 最初はオタサーの姫くらいの感じだったのに、今じゃ下手すると出久を頂点としたピラミッドが出来上がっているように見える。

 なんというか、カルト的というか。

 

 自分は個性をコントロールしろと言ったのであって、誰が周囲の人間をコントロールしろと言ったのだ!?

 しかも、その効果が洗脳じみていてなんか怖いし。

 

 もう、幼なじみの進んでいる方向性が分からない。

 

「これでヒーローに近づいたよ。かっちゃん!」

「てめえの頭はどうなってやがる!! どうしてこうなった!?」

 

 爆豪の苦労は終わらない。

 なお、出久の方向性の修正はなんとかしたかっちゃんであった。

 

『誰でも分かる心理学入門』

『ザ・人心掌握術』

『気になるあの子を堕とす108のテクニック』

『あざとさ100%』

 その他、少女マンガなど

 ・

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 ・

 

「参考文献がおかしいだろォが!!」




爆豪「(個性の)コントロールできるようになれ」
出久「うん。(周りのみんなを)コントロールできるよう頑張るよ」

ヒロインのデクは若干残念な子になってしまう。
そして、相変わらず性別不明なままです。男として読むか女として読むかはご自由に。

しかし、ボーイズラブとガールズラブの警告タグつけた方がよいだろうか?
判断に迷うところ。

次回は1/2かまたヒロインかな。

キャットが書けぬ……(泣)

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