A:PS4の.hack/G.U.やってました。許して!
2017/11/06 投稿
いずくバトラー(前編)
人は生まれながらに平等ではない。
緑谷出久が齢4歳にして突きつけられた現実だ。
その現実は幼い出久を打ちのめすには充分過ぎる事実であった。
緑谷出久は“無個性”だ。
世界総人口の約8割が何らかの特異体質となった超人社会において何の特殊能力もない人間。
それが“無個性”である。
この事実は“個性”を使って活躍するヒーローになることが出来ないことと同義であり、出久の夢を否定することだった。
そんな残酷な現実を突きつけられた出久は――
「僕は……ヒーローになれない……」
立ち直ることが出来なかった。
心の傷は大きく、情緒不安定な毎日。
しまいには、大好きであったオールマイトの姿を見るだけで泣き出す始末だった。
自分がなることが出来ない理想の姿を見ることは既に
ストレスから逃れるにはその原因から離れることが一番だ。
つまり、一番のストレス原因となっているオールマイトを目にしない環境こそ出久が必要な場所であった。
心配した母親は夫に相談した結果、一つの決断をする。
「出久……お父さんの所へ行く?」
「……うん」
オールマイトがいる日本を離れ、父親が単身赴任する海外へ。大きな決断だった。
こうして緑谷家は日本を去り、海の向こうへ。
ユーラシア大陸を挟んだ歴史ある島国。女王が治める連合王国、イギリスの地へと。
イギリスに渡った出久であったが、慣れない環境に捨てきれないヒーローへの憧れと、すぐには元気になれなかった。
見守るしかない両親の下へある日イギリスの友人が一つ提案を持ってきた。
「ヒーローと違う職業、違う世界があることを教えてあげればよいのでは?」
ヒーローになれなければこの世の終わりみたいな顔をしているのなら、それ以外の可能性を教えて世界を広げてやればいい。
そういう友人に母親は不安をこぼす。
「でも、いったい、どんな職業を見せればいいでしょうか? ヒーローに代わるものとなると普通の職業では……」
「ふむ。そうですな……ヒーローに負けないほど特殊なものとなれば――」
友人はその職業を告げる。
すなわちそれは、
その友人の好意により、出久はいろいろなお屋敷を訪れ、その家の執事の仕事を見て回ることとなる。
「ようこそ、出久くん。今日一日、私の仕事を一緒に体験致しましょう」
「は、はい」
「注意点が一つ。地下には決して近づいてはいけませんよ? 怖~い、吸血鬼がいますからな」
「ピ、ピィ!?」
とあるお屋敷では、片眼鏡をつけたオールバックの老執事の仕事を見て回り、
「うわあ、すごいや!!」
「執事たる者、この程度のことが出来なくてどうします?」
「こんなにすごいのに、セバスさんは目立とうとしないんだね」
「あくまで執事ですから」
あるお屋敷では長身痩躯で黒髪の執事から華麗な手並みを見せられ、
「出久、お嬢様はどちらに行かれたか知らないか?」
「おじょーさまなら剣人にいちゃんと『おうどん食べに行く~』って、出てったよ」
「……あのバカ弟め! 出久、少し出かけてくるが留守番できるか?」
「うん、いってらっしゃい」
とある家では兄弟で一人の主に仕える執事の様子を見て過ごし、
「やれやれ、彼女のうっかりは相変わらずだな」
「せっかくのランチ忘れてっちゃったね」
「今晩は腹ペコで帰ってくるだろうからごちそうにしてやろう。お手伝いを頼めるかな? 出久」
「うん!」
ある家では褐色の肌に白髪の執事から料理でもてなされ、
「クラウスさんも無茶振りが過ぎるよ……失敗したらマリアさんから叱られる~」
「ハヤテ兄ちゃん、がんばれ!」
「ありがと、出久くん!」
とあるお屋敷の少年執事からはめげないことを教えられた。
いろいろな執事からいろいろなことを教わり、出久は少しずつ元気を取り戻していった。
これでめでたしめでたし。
と、なれば良い話で終わったのだが、歯車が狂うどころかはじけ飛んだのはある日の夜のこと。
執事同士のコミュニティにて偶然にも出久の面倒をみた面子が集まり、出久の話題で盛り上がったのだ。
最初は「素直な良い子」だとか、「気遣いができる」「才能がある」などの褒め言葉で和気藹々としていのだが、そもそものなぜ、出久が“執事見学”をすることになったのかその理由について話題が飛んでから雰囲気が一変した。
『ヒーローになれない代わりに別の職業を見て回るため』
他人が聞けば納得の理由だが、己の仕事にプライドを持つ彼らにはカチンとくるものがあったらしい。
言ってしまえば、ヒーローの代用という点が非常に気にくわない。
そのとき不幸にも彼らが珍しく酒を嗜んでいたこともあり、話は飛びに飛んで結論は急降下で不時着することに。
『かくなるうえは、各々の技術を叩き込み、史上最優の執事にするしかない』
と……。
こうして一晩の熱狂により最優の執事となるべく教育を受けることが(本人不在で)決められた出久。
ここまで超一流の執事たちから教えを受けることができるなんて、世界のどんな人でも受けられない好待遇だ。
なに? そもそも誰も受けたがらない?
そんな細かいことは気にしなくていい。イギリス料理のように大雑把にやればよい。
頑張れ、出久。
君は、最高の執事になれる!
「ど、どうしてこうなったんだろう……」
おまけ ~執事たちの危険な会話~
「フフ、楽しみですな。私ももうロートル。後進の育成には力を入れませんと」
老執事のウォルターが煙草をふかしながら笑みを見せる。
「そうおっしゃるなら教育全体の監督はウォルター殿にお任せしましょう。私は……坊ちゃんの家庭教師の経験がありますから、学問全般を受け持ちましょう」
黒髪をいじりながらセバスチャンが役割を申し出る。
その言葉を受けて若い日本人の執事が自分の役割を申告する。
「ならばオレはマナー全般を。お嬢様より幼いならむしろ変なクセがついていなくてやりやすいだろう」
「良いですな。弟くんにもお手伝いしてもらってはいかがです?」
「……反面教師としてなら役に立つかもしれませんね」
ウォルターに弟のことを話題出され、皮肉げな返事を返す柴田理人。
次々と役割が決まる中、褐色肌白髪の執事エミヤは肩をすくめて、
「やれやれ。このメンバーでは私などが教えられるのは料理くらいのものだな。強いて言うなら弓術と剣術くらいか」
「おや、戦闘技術も教えるので? ならば私の“特技”も伝授してもよさそうですな」
「な、なに? あなたの“特技”だと?」
何気なく口にした武術にウォルターが興味を示す。が、エミヤはそれどころではない慌てよう。
当然だ。この老執事の“特技”は普通ではないのだから。
焦るエミヤに対し、残り二人の執事の反応は逆であった。
「これはこれは。“死神”の後継者でも育てるおつもりで?」
「フッ、なあに。私だけでなくあなたも何か教えて差し上げればよろしい。戦闘技術などいくらでも教えられるでしょう? “黒執事”殿」
物騒な二つ名で呼び合う二人の間に緊迫した空気が走る。
それを横で見ているエミヤの頬を汗が伝う。
「主の敵を殲滅する“死神”に家人の敵を壊滅させる“黒執事”の戦闘技術だと!? ええい、出久を殺し屋にでもするつもりか!」
「ふん! たいそうな二つ名があるのはお前もだろう? かつて紛争地帯を渡り歩いた“掃除屋”」
「……あまりその呼び名で呼ぶな。“本郷家の番犬”め」
こちらはこちらで一触即発の気配。
どうしてこう、危険な執事ばっかりなのか。
「ちょ、ストップ! なんで殺し合い寸前みたいな空気になってるんですかぁ!?」
危険地帯へ見ていられないと飛び込んだのは少年執事の綾崎ハヤテ。
比較的まともな彼だが、比べている相手が悪いだけで充分ビックリ人間に属しているのであしからず。
こんな濃い面々が師匠である。
出久の未来は……ドウナルカナー?
愉快な師匠たち紹介
師匠:ウォルター・C・ドルネーズ(元ネタ:HELLSING)
パーフェクトだ、で有名な老執事。この人に弟子入りしたら無個性でもヒーロー間違いなしやね。人間のまま吸血鬼を細切れにする人ですよ?
全体の教育を監督。戦闘技術なんかも。
先生:セバスチャン・ミカエリス(元ネタ:黒執事)
あくまで執事なあの人。学問全般担当。きっとスパルタ式である。
Mr.:柴田理人(元ネタ:メイちゃんの執事)
俺様系万能執事なあの人。なお、実写版の中の人はセバスチャンと一緒ですね。関係ないけど。
マナー全般と剣術を担当。エミヤの剣術は邪道だってさ。お嬢様付きの執事には
シェフ:エミヤ(元ネタ:Fate/stay night)
アーチャー? え、こいつバトラーだろ? 違うの?
料理および弓術など。そのほか女性の扱いには一家言あるらしい。
先輩:綾崎ハヤテ(元ネタ:ハヤテのごとく)
貧乏執事。不幸体質。割と頑張れとしか言いようがないよね。てか、人外染みた身体の丈夫さである。そういう個性なのさ!
アドバイスや相談役。
こんな人たちに教育されたら無個性とかもはや関係ねーのである。
次回、後編はお仕えするお家へ。
さて、どの家でしょう?
1.轟家
出久「焦凍様、ご注文のオールマイトグッズです」
焦凍「パーフェクトだ、緑谷」
エンデヴァー「焦凍ォォォ! なぜ、オールマイトのグッズを!? 俺を見ろォ!」
2.八百万家
出久「お嬢様、お茶のご用意ができました」
百「パーフェクトですわ、緑谷さん」
3.飯田家
出久「天哉坊ちゃん、カナダ産100%オレンジジュースです」
天哉「うむ。パーフェクトだ。って、坊ちゃんはやめてくれ!」
さあ、正解は!?
答えは明日!