外伝・短編集(仮題)   作:幻龍

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取り敢えず久しぶりに投稿。

連載を望む声や、自分のやる気があれば独立させて書くかもしれません。そして、どういう方向に話を持っていくか検討中なので、連載になった場合、全く違う展開になるかもしれません。何せ所属クラスを何処にするかで未だに悩んでいるので……。


ようこそ並行世界の忍がいる教室へ
ようこそ並行世界の忍がいる教室へ 


 平和というものは尊く素晴らしい。

 唐突に始まった転生人生は悉く殺伐とした世紀末な世界。それ故に、この言葉の重みを改めて俺は実感できたのである。――そう、例え半ば実験モルモット人生だろうと。

 

 ホワイトルーム。

 人工的に天才を創ることを目的にした施設。

 俺は三度転生(今回は自力で)したが、両親不明のまま孤児院に捨てられ、今の養父や養母に引き取られたが、直ぐにこの施設に売られたのである。

 

 最初はこの現状に凄く絶望したが、数分後には常に命を狙われていた忍世界よりマシと考え、精神を持ち直した。そして、ホワイトルームでカリキュラムに従い、強制的な英才教育に打ち込む日々を過ごす。

 その教育は人権完全無視といえる過酷さで、あらゆることを学ばされ、中には発狂する者も現れ、同期は次々と脱落していった。忍世界の最低な世紀末な人生を過ごしていなければ、俺でも耐えられなかっただろう。

 

 最終的に第四期生で残ったのはこの施設(ホワイトルーム)の創設者の綾小路氏の息子で、最高傑作と称賛されている綾小路清隆と俺だけになった。

 

 そんな英才教育に日々費やす人生を過ごしたが、ある日、俺は綾小路氏から直々に全てのプログラムを終了したと告げられ、晴れてホワイトルームを卒業することになり、孤児院から俺を引き取った義理の両親の元に戻ることになった。

 家に帰宅したら、俺を売って得た金で事業に大成功した義理の両親は、償いのつもりなのか俺に大金をくれた。

 それを使ってホワイトルーム仕込みの投資技術を使い、大金を稼ぐことに成功したので、もしもの時に備えて複数の銀行に口座を作りそこに資金を預ける。――役に立つ日がいつか来るだろし、金はあって損はないからな。

 

「……今日は手持ちの金を使って豪遊するか。忍術まで使ってプログラムを消化したんだ。来年度からは高校生だしな」

 

 俺はネガティブな思考を頭の中から消し去り、ストレスを解消するべく街に繰り出す。

 昼食はラーメンに餃子と炒飯、デザートはアイスクリーム屋でアイスクリーム5つ食べた。

 本屋で暇つぶしの本を数冊買い込み、そろそろ帰ろうかと思った時、――少し挙動不審の少女が目に付いた。

 ストロベリー色の長い髪を肩まで伸ばし、容姿端麗で胸が大きいスタイル抜群の美少女で、少女は注意深く周囲を確認している。

 その様子が気になった俺は、周囲の人々や彼女に気取られないように、気配を消して彼女の側に近づき観察する。

 彼女はそのまま女の子用のヘアピンをバックに入れて、そのままレジがある店の出入り口方面へ向かうと思ったが、レジではなく出口の方へと向かって歩いていこうとしていた。

 

「なるほどな……」

 

 彼女はバックに入れたヘアピンを万引きするつもりらしい。

 見てしまった以上は止める必要があるだろう。忍世界にいたのなら用心して何もしないが、ここでは無駄に勘繰られる心配もないので、店員ばれる前に止めるか。万引きを見逃したことが第三者にばれたら面倒だしな。

 俺は怪しまれないよう美少女に近づき、さりげなく声を掛ける。

 

「レジは向こうだ。行先が違うぞ」

「っ!? ……何のことかな?」

「惚けるな。鞄の中に商品を入れているのを見た。――今ならまだ、成立していない。レジに向かうか、それが無理なら売り場に返してこい」

「はい……」

 

 万引きがばれたことに彼女は驚いた顔をしていたが、俺の言ったことに素直に頷き、そのままヘアピンが置いてあった売り場に戻っていく。如何やら根は悪い子ではないらしい。

 

「この後、如何するかな……。取り敢えず訳を聞くか」

 

 もし、スリルを味わいたいという下らない理由なら、親御さんに報告するつもりだ。

 今回は防げたが、万引きは繰り返すことが多いからな。

 そう考えながら彼女が戻って来るのを待ち、彼女が俺の所に戻って来る。

 

「余計なお節介だが、訳を聞いていいか?」

「うん。……止めてくれてありがとう」

「そうか。少し待って貰えるか? 買いたい物があるからな。この近くに公園がある。そこで待っててくれ」

「分かったよ」

 

 彼女は先に俺が指定した場所に向かった。

 俺はある物を購入した後、店を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

「事情は分かった。見ず知らずの人間を信用して、家庭の事情を話してくれたことに感謝する」

「ううん。止めてくれてありがとう」 

 

 周囲に誰もいない公園で、俺は彼女が何故万引き未遂を起こした理由を聞くことができた。

 彼女の名前は一之瀬帆波といい、互いに自己紹介して友達になった後、事情を聴くと話してくれた。

 このような行為をしたのは家庭の事情で、妹へのプレゼントを買えなくなってしまったことで、妹にプレゼントをどうしても与えたかったようだ。

 

「そうか。赤の他人に言われて腹が立つと思うが、家族のことを思うのなら、万引き等金輪際するべきじゃない」

 

 しかし、彼女の行動は幾ら何でも短絡過ぎる。折角特待生として私立の高校へと入学が確定しているのに、それを棒に振る行いだ。家庭の事情を鑑みれば猶更するべきではなかった。

 

「そうだよね……。今は何でこんなバカな行動したんだろうと自分でも思っているよ……」

 

 俺に指摘に一之瀬は頷き、激しく落ち込み、声も小さく弱弱しいものになっていた。

 ちょっと言い過ぎたと思ったが、彼女のようなタイプの人間は、他人から悪くないと励まされても、引きずるようなタイプなので、はっきりと言ってやった方がいいだろうしな。

 

「もう夕方になる。あんまり年頃の女性が帰るの遅くなるのは良くないだろう。これは友達になってくれたお礼だ」

「これって!?」

 

 俺はそう言って一之瀬に紙袋を差し出す。

 一之瀬はそれを受け取り、袋の中身を見て驚愕する。――何故なら自分が万引きしようとしていた物が入っていたからだ。

 

「素直に受け取っておけ。自分ことを大切にしてくれる家族は大事しろ」

「……うん。本当にありがとう。サスケ君」

 

 俺の言葉に一之瀬は頬を少し赤く染めて紙袋を受け取る。

 

「サスケ君。電話番号交換しない? 折角友達になったんだし……」

「あー。――実は携帯を家に忘れてきてな……」

「そうなの? じゃあ、私の番号を渡すから、登録しておいてね。今日は本当にありがとう!」

 

 別れ際に携帯の番号を書いたメモを受け取り、歩いて自宅へと戻る。一之瀬は俺が見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。

 

「あそこをさっさと卒業して正解だったな……。俺も明日からまた、今の生活を満喫するか。その前にあの学校へと願書を出さないとな」

 

 俺は術を使ってでも、ホワイトルームを卒業したことは間違ってなかったと思いながら、自宅の門を潜るのであった。

 

 

 


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