東方錬金録   作:水無月幽

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プロローグ 約束

「メリ姉、もうすぐ帰らないと・・・いけないんじゃねーの?」

「え、もうそんな時間!?でもなあ、もう少しここにいたいなあ」

「でも、早く帰んないと暗くなるぞ?メリ姉の能力は戦闘向きじゃないんだから、襲われたらどうすんだよ・・・」

「それじゃ・・・泊まっていい?」

俺はその言葉を聞いた瞬間飲んでいたミルクティーを吹き出・・・

「駄目だ、俺も明日用事があるから」

さずに、冷静に返した。たとえメリ姉が美少女だとしても、俺にとってはただの姉なので

      ・・・・・

泊まることはいつもなら承認しただろう。しかし、今日は明日に向けての準備があるし、メリ姉に明日の行動を感づかれても困る。メリ姉なら「一緒に行く!」とか言ってついてきそうだ。だが、俺の行動はメリ姉には全く関係ないもので、メリ姉を巻き込むべきでは

            ・・・

ない。もし巻き込んだら、あの時の二の舞になってしまう。それだけは絶対に許されない。

「えーいいでしょ、別に。あれえ、もしかして彼女?」

「んなわけあるか。俺に彼女なんているわけねーだろ・・・とにかく、早く帰れ」

「むぅ・・・」

メリ姉が上目遣いしてくる。普通の男なら許してしまうかもしれない。だがメリ姉は俺の中ではあくまで姉だ。悪いが帰ってもらうしかない。

「そんなあざとい真似すんな。俺も早く帰ってもらわないと困るんだよ・・・」

「ええ、そんな私そんな迷惑」

「うん、迷惑」

「そ、そんな率直に言わないでよ・・・」

メリ姉が涙目になる。泣かせるのは心が痛むが、これはどうしても譲れない。

「我儘言うな!」

俺は大きな声で叫んでしまった。それで気圧されたのかメリ姉は先ほどのやり取りが嘘のように素直に玄関に向かった。

「そ、それじゃ、ま、またね」

メリ姉のぎこちない笑顔。

「お、おう。またな」

俺はメリ姉のことを見送る。家まで送っていこうかと思ったがこの状況ではそれは言いにくかった。そして・・・気づけば、メリ姉はもう見えなくなっていた。俺は扉を閉め・・・床を思いっきり叩いた。

あんな風に言わなくてもよかった。もう少し優しく言えばよかった。いくらでもメリ姉を説得できる方法はあったはずだ。俺は自分を責め続けた。本当は準備をしなきゃいけない。そんなことはわかってる。だが、俺は自分を責めずにはいられなかった・・・。

 

 

 

 

 

 

 俺は今、八雲紫に指定された場所に向かっている。俺は自分のバックの中に様々な材料を入れ、彼女との対面に備えた。そして指定された場所は調べてみるとかなり遠い場所でかなりの時間がかかった。

「にしても、かなりの田舎だな・・・」

俺はあたりを見渡した。あたりはかなりの田舎で人が住んでいる様子が全くと言っていいほどなかった。

そして歩いていると、気づけば指定された神社に着いた。現在の時刻は11時半。だが

「いるだろ、八雲紫」

その直後、奇妙な音とともに奇妙なドレスを着た金髪の美女が現れた。

「あら、気づいていたのかしら?」

「いや、誰にも気づかれずに俺を見ていることができるなら、何処かに隠れていられるか、透明人間になれるかどうかのどちらかだ。つまり今ここにいるはずだと思っただけだ」

俺は自分の推理を披露した。すると彼女は微笑みながら

「へえ、流石ですね。腕っぷしが強くて、頭もいいなんて、ますます幻想郷に欲しくなりました」

「うっせ。これぐらい誰でも考えつくだろ・・・。でだ、なんで俺なんだ?俺の能力目当てか?」              

「理由が必要ですか?」

「当たり前だ、」

俺はそう区切り、

「こっちはメリ姉を巻き込まされたんだ。俺がそういうのを好まないことぐらい知ってるよな?」

威圧的な声と表情でそう言う。だが彼女は

「ええ、それは申し訳ございません。そうですね・・・あえて理由を言うとなれば、私の気まぐれですかね?」

何もなかったかのような涼しい顔でしかも「気まぐれ」と言い放った。

「っ、仕方ねえ、あんたの要望飲んでやるよ」

「あら、随分とすんなり受けてくれましたね」

「ああ、普通ならぶっ飛ばしてチャラにしようと思ったが、あんたには俺じゃ歯が立たなそうだ」

「そう言っていただけるととても嬉しい限りです」

「そうか、まあ一つ頼みを聞いてくれたらの話だがな」

「ええ、こちらに来てくれるというならある程度のことは聞きましょう。でも、常識は守ってくださいね」

そう言って彼女は自分の体を守るように体制を作った。

「・・・流石に初めてあった人を襲うほど人に道外れてねーよ」

「そ、そうですか・・・」

彼女は少し残念そうな顔だった。・・・なぜそんな残念そうにするんだよ、意味わかんね

「で、頼み事なんだが・・・」

そして俺は彼女に「頼み事」を話した。

「・・・ええ、いいわ。それぐらいはやるわよ」

そう言って彼女は謎の裂け目を空間に開けてきた。

「それじゃ、ここに入ってください。そしたら幻想郷につきますから」

「ふーん、それじゃあとは任せたぞ」

そう言い残し、俺は裂け目に入った。

~~~

私は銀斗君と別れた後まっすぐ家に帰った。しかし家に帰った後、布団の中で思いっきり泣いた。銀斗君を怒らせてしまった。嫌われてしまった。それだけでも、私を大泣きさせるには十分すぎる理由だった。そして私は、明日絶対謝ろう、そう決意した。

 次の日、私は髪を整え、銀斗君の家へ向かった。しかし・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

彼の家に「青桐」という表札はなかった。私は随分と驚いた。そして近くの家のインターホンを鳴らした。家の人は起きていたらしく、すぐに出てくれた。

「なんじゃ、なんか用かね?」

「え、えーと・・・ここに青桐って人はいませんでした?」    

「ああ、青桐さんね。その人なら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の朝引っ越したよ」

「え・・・」

その言葉に私は唖然とした。

「用はそれだけか、それならさっさと帰りな」

そう言われインターホンを切った後でも、私は魂が抜けたように呆然と立ち尽くしていた。

その後私はいつまでもここにいるわけにもいかず、来た道をとぼとぼと戻っていった。

「なんで、いなくなったのよ・・・。私は謝る権利すらないの?」

私は帰宅し、そう呟く。その直後堰を切ったように涙を溢れてきた。

「ひっぐ、えっぐ。どう・・・して、いなく・・・なっちゃ・・・たのぉ・・・」

ひたすら泣いた。もうこれ以降涙を流せないかもしれない、それほどの涙を流した。

「ふぅ・・・」

 結局私は5分ほど泣き続けていた。そして心を落ちつけようと深呼吸をしようとした時、

・・

それを見つけた。

「うん?」

ずっと泣いていて気が付かなかったが、改めてみると、机に上に一つの手紙が置いてあった。

「誰からだろう・・・」

私は気になり、その便箋の裏を見た。

「!?」

そして同時に視界に入った名前に私は驚きを隠せなかった。

「青桐・・・銀斗!」

そこには、先ほどまで泣いていた原因である彼の名前があった。私はすぐに便箋の封を切った。

『メリ姉へ

メリ姉がこれを読んでいるということは俺は貴方の近くにはいないだろう。

昨日のことがあったのに、こんな形で姿を消してしまって本当にごめん。

俺は今日、ある外国に行かなきゃいけなくなった。言わなかったのはメリ姉にこのことを伝えたら「心配だから一緒に行くとか」とかいうかもしれないと思ったからだ。本当にごめん。でも昨日のことを謝罪できなかったのはかなり心残りだ。だからこうすることにする。

俺は絶対にメリ姉に会う。そして昨日のことを謝罪したい。これは約束する。だからメリ姉、こんな最低なやつの約束なんて信じられないかもしれないけど、どうか待っていて

青桐銀斗より』

気づけば私は涙を流していた。あんな泣いたはずなのに。今日は本当によく泣く日だ。でもそれも仕方ないことなんだろう。私は、彼のことが・・・

 

 

 

 

 

好きなのだ。

だからこんなに涙を流している。愛している人から離れるのは辛いことだ。

「待ってるからね・・・!約束、破ったら絶対に許さないわよ!」

ここにいない彼に向かって、私は叫んだ。そしてその叫びは家中に響いた。




これでプロローグは終わりです。長くてごめんなさい。
誤字、アドバイスなどあったら報告よろしくお願いします。

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