オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし 作:ArAnEl
だって日本語版棒読みだもん。
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「燃えてますねぇ」
「燃えてるねぇ」
目的地であった森を前にした第3偵察隊一同の1人、倉田がつぶやき、それに伊丹が答えた。
「こりゃあいつの仕業だなあ」
桑原は見ていた双眼鏡を伊丹に渡し、自分の見ていた場所を示す。
「あれま!」
なんだかドラゴンぽっいものが空中から地面に向けて炎を吐いていた。
というかドラゴンなんだけど。
「首一本のキングギドラか?」
「おやっさん古いなぁ。ありゃエンシェントドラゴンっすよ」
桑原がゴジラの怪獣に対して倉田はそう答えたが、どうやってエンシェントと判断したのかが不思議である。多分かっこいいから付けただけだろう。
余談だが、
前方で停止した73式トラックから小柄なWAC (Women's Army Corps, 転じて女性自衛官)が走ってきた。
このWAC、栗林2等陸曹と呼ばれる絵に描いたような童顔巨乳低身長である(つまりロリ巨乳)。
ただでさえこんな一般女性がいるわけないのに、さらに格闘徽章持ちというまさに『お前のようなWACがいるか!』とツッコミを入れたくなる(見た目は)可愛らしい女性である。
ちなみに、格闘紀章持ちの凄さがイマイチ分からない紳士淑女の方々に補足すると、陸自の戦闘装備一式所持して2、30キロ行軍を、各地点で襲撃してくるゲリラ役の隊員を格闘で制圧しつつ完走するという猛者(バケモノ)である。あくまでも噂だが。
「伊丹2尉、どうしますか?ここでこのままじっとしているわけにはいきませんが」
「適当なところに隠れてさ、様子見よか。ドラゴンがいなくなったら森の中に入ってみよう。生存者とかいたら救助したいし」
***
翌朝、やっとドラゴンが消えて火が収まって森に入ることができた。
中はそれはそれはヒドイ有様であった。だいたい100人程度の村が一個まるまる焼け落ちていたのだから。
「2尉、これって」
倉田は黒焦げになった人の形をした何かを見てつぶやいた。もちろん、これは単に人の形したものではなくて……
「倉田、それ以上言うなよ。あと見過ぎると精神的によくないぞ」
「うへ、吐きそうっすよ」
倉田に吐かれては困るのでこれ以上語るのは止めておこう。
約1時間ほど調査したが、生存者はいないと判断した。
第3偵察隊一同は井戸の近くで腰を下ろして休憩していた。
(こりゃいろいろと面倒な報告書を作成しないといけないなー)
伊丹は自分の水筒の水の中が少し少なくなっているのを気にし、近くの井戸の水が飲めるかどうかの確認も兼ねてそこにあった井戸用の木桶を取った。
「ドラゴンがどこら辺に巣を作っていて、どのあたりにに出没するかも調べとかないといけないね」
そういいながら井戸に木桶を放り込んだ。
するとコーンと甲高い音がした。
「ん?」
「ボチャン」とか「ドボン」と水の跳ね返るような音がすると思ったら何か比較的堅いものに当たった気がした。
持参したライトで奥を照らして見ると、何か人のようなものが見えた。
金髪の長髪、妖精のような白い肌と顔立ち、そしておデコに漫画のような大きなタンコブ。
よくもまあ木桶とはいえ頭に井戸の高さから落ちたものでタンコブで済んだものだ。
これは頭に堅いものが落ちてきたことのある者にしか分かるまい。きっとこの人の頭がすごく丈夫だったのだろう。うん、そうに違いない。
「伊丹隊長!井戸の中から金髪の女の子が!」
倉田が叫んだ。
(倉田のやつ、狙いやがったな……)
伊丹はポツリと小さくつぶやいた。
***
昨日、同じ場所にて
炎龍が空を舞い、森は日の海となっていた。木は火の葉をまとい、火の粉が雨の如く降っていた。
炭素を含む有機物は次々と炭化していった。木々、動物を含め。
「テュカ、君は逃げるんだ」
エルフの男性が隣にいた若いエルフの女性に言った。
「あたしも戦うわ」
「ダメだ。君に万が一のことがあったら、私はお母さんに叱られてしまうよ」
娘に戦う、と言われたが父、ホドリューはそれを許さなかった。
「とにかくここは危ない。急ぐぞ」
そして二人は燃え盛る大地を駆け出して行った。
「いやあぁぁぁぁあああ゛あ゛!!!!」
「ユノっ!」
親友である少女がまさに炎龍に食べられようとしていた。
テュカはとっさに弓を構えて矢を放ったが、狙いはいい。しかし龍の鱗を貫通するだけの威力はなかった。それは他のエルフが放ったものも同じであった。
バリッ!ボリッ!グチャ!バキッ!
なんともおぞましい音が炎龍の口から聞こえた。
「ユ、ユノが。ユノが……」
テュカは蛇に睨まれた蛙のように恐怖で固まってしまった。
炎龍が近づく、それでも動けない。
「ダメだ、テュカ!」
ホドリューは風の精霊魔法、つまり自然の精霊の力を借りる魔法により放たれようとしていた矢に魔力をかけた。
放たれると同時にその矢はまるで弾丸の如くスピードで炎龍の眼に突き刺さった。
眼という急所をやられた炎龍は苦痛の叫びを上げ、目標をテュカからホドリューに変えた。
彼はまだ固まっている娘を抱えると直ぐに走り出した。
一方、炎龍も他のエルフの抵抗を物ともせず蹴散らしながら自分の眼を奪った者へと迫っていった。
「君はここで隠れているんだ。いいね!」
そして娘は井戸の中へと投げ込まれる。
投げ込まれる最後の一瞬、彼女が見たのは自分の父の背後に大きな牙と真っ赤に染まった底の見えない炎龍の口であった。
(お父……さん?)
父は、最後の最後まで、いつものように笑っていた。
***
「この子大丈夫そう?」
伊丹は気絶中のエルフの女性を手当てしているWAC、黒川2曹にきいた。
ちなみに、彼女は看護資格を有していてお嬢様口調で身長190センチ(伊丹は約170)という、栗林同様『お前のようなWACがいるか!』隊員の一人である。この部隊どうなってんだ。
「ええ、体温もだいぶ上がってきましたし、脈拍、呼吸も安定してきましたわ。バイタルサインに特に問題はないと思われますわ」
栗林とは対称的にゆっくりとした落ち着いたお嬢様口調であった。
実際の自衛隊にこんな女性何人おるのかね。
「この子一人だけ残すのも危ないし、かと言ってずっとここにいる訳もいかないから、保護という形でお持ち帰りかな」
「2尉ならそうおっしゃってくださると存じておりました」
黒川はにこやかに言い、撤収の準備を始めた。
「それって僕が人道的だからでしょ?」
「さあ、2尉が特殊な趣味をお持ちだとか、彼女がエルフだから、とかと申しますと失礼になると存じますので」
黒川の表情はにこやかのままであった。
(ええー……俺ってそう思われていたのか、やはり……)
***
元々予定ではもう2、3カ所周るつもりだったが、事情が事情なのでアルヌスの駐屯地に戻ることにした。
無線で一応その旨を連絡すると、
「まあ、一人くらいなら……」
と返ってきたので問題ないだろう。多分。
ということで、往路の道をそのまま帰ることにした。
途中、行きでも止まったコダ村というところで村長に事情を片言の現地語、ボディランゲージ、そして紙に書いた絵などで伝えた。
さすが伊丹、只でさえ英語ができない人も多いのに、我々の世界にない言語で少なからず意思疎通できるのだから。これも何かの素質だろう。
「そうか、炎龍が……」
村長は炎龍の存在を聞き、伊丹たちに感謝すると血相を変えて村中に避難命令を出した。もちろん村中はパニックであったが、まだ逃げる準備ができたのは不幸中の幸いであった。
ちなみに、村長によれば炎龍のようなクラスになると古代龍になるそうだ。よく分かったな、倉田。
という訳で、村民は村を捨てて避難することになった。
ほぼ原作通りですね。
次から結構変わります。