オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし   作:ArAnEl

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思ったようにストーリー進みませんね。でも私は頑張りますぞ、そこに一人でも高評価をつけて待っている人がいる限り!

あとタグ付け変更しました。アドバイスありがとうございます。


どこの世界も政治家は大概同じだったりする

帝国の議事堂にて。

 

「「「……」」」

 

そこにいた元老院議員は誰一人として口を開こうとしなかった。

 

あの皇帝にすら言いたいことはしっかりと言う、で有名なカーゼル侯爵ですら今回は沈黙を保っていた。

 

それほどまでも、帝国は現在危機的な状況であると全員が認識していたのである。

 

今の現状では言葉や議論は何の意味を成さないことを悟ったからだ。直ちに行動を起こす必要がある。しかしその方法が見つからないのだ。

 

異国の地を攻めて失敗したことは過去にもある。そして今回は想像以上に相手が強過ぎたわけで、最初の侵攻で既に帝国の6、7割の戦力を失ったのだ。

 

そして門奪還のために諸王国からなる連合軍約20万もの兵力も編成したが、それも一瞬でまるで元から無かったかのように消滅した。

 

これが、まだ敵国によるものであればよかったのだ。連合諸王国軍の戦力を下げることにより、帝国への反乱する能力を削ぐことも目的の一つであったからだ。そして相手がまだ人間なら他にも手を打つことはできると考えられる。

 

ただ、今回は非常にまずいことに、連合軍を滅ぼしたのは人間ではなく、未確認の漆黒の龍だという。

 

まだ炎龍なら分かる。少し早いだけの目覚めかもしれんし、被害も決して小さいものではないが、国家危機レベルではない。

 

しかし今回報告に上がった例の『漆黒の龍』は、まさに災害レベル、いや、天災レベルであった。

 

これまでの文献に存在しない龍であるゆえ、対策も立てようがないのだ。

 

もちろん、神話やおとぎ話には様々な龍が存在するため、似たような黒龍(ブラックドラゴン)などがあるにはある。

 

しかしあくまでも神話やおとぎ話であり、子供向けで多くは語られない。それでも帝国中の王立資料館から田舎の古書物管理所からかき集めた資料を賢者や学者に解析を急がせていた。もちろん、成果はない。

 

確保された生存者のほとんどは発狂状態か何かに怯えているように黙秘に徹していた。

 

最終手段として拷問も考えたが、自らの兵にそんなことを行えば世間体が悪い。しかも、中には自死や未遂もあり、効果はほとんどないと考えられ、実行はされていない。

 

 

如何(いかが)なものかな」

 

 

重々しい空気の中、最初に口を開いたのは皇帝モルトであった。

 

 

「帝国の危機は今までに何度も訪れたが、その都度我々の先人はそれを防いできた。

 

過去の文献にない?ならば我々がその先駆けになれば良いではないか。

 

災害といえども、あくまでも龍。生けるものは必ずいずれ死ぬ。ならばこの龍にも何か弱点があるはず。

 

発想を変えて何か良い考え、些細なことでも良い、何かないものかな」

 

 

議員が一瞬ざわめく。隣にいるもので小声で相談したり、確認し合っていた。

 

 

「陛下、一つよいですかな」

 

 

一人の議員が提案した。

 

 

「あの異国の兵と漆黒の龍を戦わせるというのはいかがですかな?」

 

「ほう、続けよ」

 

 

皇帝は少し関心を示したように目を細めた。

 

 

「私はあの兵どもと一戦を交えていますからその強大さを知っております。故に、双方が衝突すれば最適な結果であれば共倒れ、少なくとも片方の問題は片付くと思われます」

 

「ふむ、確かに。毒をもって毒を制すると言うわけだな。しかし、そう簡単にはいかないものと思うが」

 

「もちろん、それは承知しております。戦に思うように行かないのも事実。しかしながら、その逆も然り。うまくいかないときに奇跡が起こることもございます」

 

 

確かに、戦争では99.9%の勝機があれど絶対というものはない。それは99.9%の負けの可能性でも0.01%の逆転の可能性があるのだ。

 

ここまでヒドイ比率ではないが、実例としては単純戦力比なら、日本の日露戦争やフィンランドの冬戦争が有名だろう。

 

 

「よかろう、その方針で問題解決に全力を注げよ。また、他にも案があるものは随時報告せよ」

 

 

皇帝が会議の解散を命じようとしたところ、慌しく誰かが入ってきた。

 

 

「陛下!」

 

 

つかつかと皇帝の前に進み出たのは皇帝の娘の一人、皇女ピニャ・コ・ラーダであった。

 

 

「陛下は我が国が危機的状況にあるというのに、まだ会議など口先の対策を練られておられるのですか?」

 

 

赤紫色の髪に芸術品とも言われるほどの容姿を持つ美女であったが、ご覧の通り多少気の強いところがあるのが玉にきずであった。

 

ただ、一部ではそれが良いという紳士の方々もいるようだが。

 

 

「ピニャよ、ここは議事堂だ。そなたのお小言なら皇城にて後で聞いてやる。もうそろそろ終わるのでしばらく辛抱せよ」

 

「いいえ、辛抱なりません。帝国の皇女として今の現状に黙ってはいられません。異国の兵に一方的に負けた上、さらに龍に兵力のほとんどを奪われたそうではありませんか。これでは無駄死にです!」

 

「無駄死になどてはない。尊い犠牲だ」

 

 

ピニャの眼は鋭かったが、それに屈するような皇帝でもなかった。ただ静かに重みのある声で答えた。

 

 

「ピニャよ、そなたがそのような態度であれば、さぞ何か成果はあるのであろうな」

 

「う、それは……」

 

 

ピニャはたじろいだ。やれやれ、といった風に皇帝は軽く溜息をついた。

 

その意気込みは立派だが、現実と理想は違う。しかし皇帝もピニャはまだ人生経験の少ない(特地での)成人したての者と変わりないのは知っていた。

 

 

「ピニャよ、そなたの言い分も理解できる。ただ、現状では他に当てる余裕がないのだ。そこでだ、一つそなたに頼みたいことがあるのだが」

 

「はい、皇帝陛下。何なりと」

 

「我々はアルヌスの丘に屯する敵兵を良く知らぬ。そして漆黒の龍の情報も足りぬ。ちょうど良いので、そなたがその情報収集をやってくれぬか?」

 

(わらわ)がですか?」

 

「そうだ、そなたとそなたの『騎士団』であれば十分な練度を有しておるであろう。騎士団ごっこの集いでなければ」

 

 

皇帝の試すような口調と眼差しにピニャは唇をぐっと嚙みしめる。

 

色々と不満はあるが仕方がない。逆にここで成果を挙げれば後ほど有利に事が運ぶかもしれない。

 

 

「どうだ、この命を受けてくれか?」

 

「確かに、承りました」

 

 

そして皇帝に一礼をした。

 

 

「うむ、成果を期待しておるぞ」

 

「では父上、行って参ります」

 

 

そしてピニャはその場を後にした。

 




ピニャコラーダはカクテルの名前らしい。初めて知った。

あと個人的には漫画版のピニャが好みです。むしろキャラ全般は基本的に漫画版か挿絵版がいい。アニメ版は、無理とは言わない。

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