オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし 作:ArAnEl
え?ドワーフセンチュリオンなんて弓矢で倒せる?隠密行動取るだけでダメージが倍加したりする超人と一緒にしないでください。
「ヒュウ、F-35に
本土と繋がる門から次々と新兵器が牽引されて行く。でかいものは一部分解されて運ばれて行くものもある。
最新兵器が投入されている一応の建前として、運用試験等を特地で行うためとされている。もちろん建前と本音は別だが。
「フムフム、妙に梱包が厚いトラックは例の物なのかねえ」
他と異なるコンテナも続々と投入される。
「ちわー、ミケ猫タマコ急便です」
「はいはーい、代表は私、加藤3佐です」
「受け取り印お願いしまーす」
民間人はメディア関係者等を除き特地に入れないので門の中でやり取りをする。
「確かに受け取りました。ご苦労様です。では皆さん、これを運んでください」
「了解しました」
そこに待機していたヴォーリアバニーたちがせっせと運んで行く。
「最近の通販は何でも手に入るな。ア●ゾンってステキ♪」
***
『何を今更驚いているんだ?これまで何度も奇妙な体験してるだろう。喋る犬やら猫やら空飛ぶトカゲ。それに
石像からテレパシーのような声が聞こえてきた。
「あ、あなたは?」
『俺か?バルバスから何も聞いてないようだな』
「あいつの知り合いか?」
『ああ、俺は奴のマスター。クラヴィカス・ヴァイルだ』
「えーと……神様という認識でいいのかな?」
一通り特地の神の名前に関しては調べてあったが、漏れがあったのかもしれないと伊丹は思うのであった。
『神?まあお前たち定命の者たちが真っ先に考えそうなことだな。残念ながら、俺は神などではない。デイドラプリンス、またはデイドラロードだ』
「デイドラ?」
それすら知らない伊丹に対して石像はため息混じりの声を出す。
『まあいい、神でもなんでも。そんなものと認識してくれればいい』
「クラヴィカス・ヴァイルなどという名は初めて聞いたわ」
「この身も長く生き、あちこちを旅してきたが初耳だ」
アルペジオとヤオが物珍しそうに石像を見る。
『当たり前だろう。俺はこの世界から来たわけではないからな』
「「「えっ!?」」」
『何を驚いてる。普通のことではないか』
「普通……?」
『まずそこのニホン人。緑の人とか呼ばれているな。まずどこから来た?』
「え、日本……あ……」
伊丹はそもそも自分が異世界から来ていることを忘れていた。一応世界は繋がってるが。
『それにお前の鈍感さには呆れた。ニホンでは異世界に関する書物や物語がたくさんあると聞いてるのに。お前はそれを疑わないんだな』
「え……まあ……すみません」
『なんでニホンのこと知ってるか?という表情をしているな。バルバスのマスターだと言ったろ?俺が何のために奴に力を半分も与えてこの世界に送りこんだと思っているんだ?』
「なるほど……」
子供のような声質だが、上から目線なのがやはり神さまのようだ。ここは怒らせない方がいいと伊丹は咄嗟に判断する。
「ところで、なんで異世界の神様が俺たちみたいなのに関与を?」
『先程俺がバルバスに力の半分を与えたと言ったな?残り半分も他所に貸していて今俺は無力だ。それにちょっと実験に失敗してな、こんなチンケな場所に着いてしまったのだ』
「……つまり帰るための力がないと?」
『察しがいいな、緑の人。それに、今までお前の活躍を陰ながら見て面白い奴だと思ってな。だからお前と一つ取引をしてみたくなった』
(これって、契約したら嫌な予感しかしないんだけど……)
伊丹の脳内を真っ白な地球外生命体の|幼気な少女たちを魔法少女にスカウトするアイツ《インキュ●ーター》が過った。
『お前、今困っているだろう?もし、俺に協力するなら、助けてやってもいい。一つお前の望みを叶えてやろう』
「……」
伊丹は迷った。
大概この手の契約というのは理不尽なものだ。こちらが得すると思わせて結果的に莫大な損害を被る。
しかし、今の彼にとっては自身の損など問題ですらないほどに陥っていた。
「一つ聞きたい。俺の願望を叶えてもらう前に、契約の対価などを確認してもいいか?」
『慎重なやつだな。お前ならアイディールマスター相手でも大丈夫かもな』
「アイディールマスター?」
『いや、独り言だ。もちろん、問題はない。それどころかやってもらいたいことは一つしかないがな。バルバスをここに連れてこい』
「え、それだけ?」
『そんな簡単なものではないと思うが。で、心から望むものは何だ。どんな取引がしたい?』
ここでも伊丹は迷った。
なぜなら、今彼にとってどうしても必要な望みが3つあるからだ。
1つ目、今苦しんでいるレレイの病を治すこと。
2つ目、ロゥリィの無事。
3つ目、ここから全員が無事に脱出できること。
細かいこと言えば今日本と帝国の紛争を止めてくれとか、一生働かなくても良いとか色々あるが、今
「……この迷宮から、全員が無事に脱出できること……」
考えて考えて、最終的にこれを望んだ。
『なんだ、思ったよりつまらないやつだな。もっと面白いことでも言ってくれるかと思ったが。この場を打開するだけの超能力がほしいとか』
「あ……」
伊丹は心底自分を罵倒した。そう願っていれば万事解決だったのに。オタクを自称しているにもかかわらずやはり常識の範囲内ででしか思い浮かばなかった。
『望みが決まったらさっさと行った行った』
***
「どうする?」
伊丹たちは角に隠れて
本当こっちではなく、横で倒れている
「やはり鉄の逸物ぶち込むしかないとこの身は思う」
「もう貴女が言うと変な風にしか聞こえないわ……」
「よし、作戦はこうだ」
案の定伊丹が囮になる。
そしてゆっくりと匍匐で近づく。
後ろではヤオがLAMを構えており、そして前方にはC4とアルペジオの鉱物魔法の複合
「フシューッ!」
案の定ドワーフ・センチュリオンは伊丹が近くにいることを認識するとまた動き出した。
「うわっつつ!?」
熱い蒸気が伊丹をおそうが、かろうじて蒸される前に有効範囲から逃れる。そしてそのまま脱出で逃げる。
ドワーフセンチュリオンも逃すまいと追いかける。
「アルペジオ、間違っても俺が近くの時に起爆するなよ!」
「わかってるわよ!」
伊丹は地雷の上を走り幅跳びのように飛び越えて地面に着地すると転がりながら角に隠れる。
「今!」
アルペジオを伊丹の号令でC4を起爆させる。
アルペジオの魔法も少し加わったことにより、普段より強力な爆発が起きた。
「プシュー!?」
ドワーフセンチュリオンは足に相当なダメージを喰らい、自重を支えきれずに崩れてしまう。
「ヤオ!」
「分かった!」
ヤオはすかさずLAMを叩き込む。
そしてドワーフセンチュリオンに見事命中する。
「やったか!?」
「ああ、それ言っちゃだめなやつ」
伊丹はヤオの言葉にしまったと言わんばかりの表情をする。
案の定、ドワーフセンチュリオンはまだ動いていた。当たったのは左の斧の腕だった。
倒れてもなお、ゆっくりと這いつくばって近づいてきた。
「ちくしょう、作戦変更!俺が囮になるから二人はあの
「伊丹殿、身体能力はこの身の方が高い。それに伊丹殿は疲れているであろう」
「ヤオ、できるか?」
「ああ、問題ない」
「頼んだ!」
ヤオは伊丹に代わって囮を引き受ける。
そして絶妙な距離を保ちながらドワーフセンチュリオンの注意を伊丹たちから遠退ける。
「なんだこれ、なかなか切れにくいな」
「うん、こんな生物初めてよ」
ギギネブラの身体は絶妙な硬さと弾力を有していたため、なかなか刃が通りにくかった。
「ヒィィッ!?」
「なんだこれ?」
時々毒腺がウネウネと不気味に動いたりして時たまアルペジオが腰を抜かしたりしていた。
「ありがとぉー」
「ロゥリィ!」
出てきたのはロゥリィ……の頭部だった。
「「ヒィィィィッ!?」」
流石に伊丹も腰を抜かして尻餅ついた。
「ちょっとヨウジぃ、酷いわよぉ。いくら私の眷属で死ににくいからってもうちょっと私にもぉ、気を遣ってよぉ」
「あ……」
そういえばそうだった、と伊丹は思い出す。殺人タケ●プターの件についても。
そして二人は急いで首から下の方も引っ張り出して急いでくっつける。
「フシュー!」
「はぁ、はぁ……」
ヤオもかなり頑張っていた。いくら相手の機動力が落ちたとは言え、当たれば一撃のハンマー、そして蒸気攻撃などに手を焼いていた。
「一体このゴーレムのようなものの原動力はなんなのだ……?」
ヤオの世界観的にはおそらく魔法の類で動いていると考えていた。なのでその魔法を遮断すれば解決できると考えていた。
一方、伊丹の世界観的には蒸気を使った原動力のため、エネルギー切れを起こせばなんとかなると思っていた。
二人は正しくて、間違えていた。
もし本気でエネルギー切れを狙ってるなら、むしろドワーフセンチュリオンの方が圧倒的に有利なのだが。日本もびっくり、驚異の最低5000年保証の技術。
「シュー!」
「あ!?しまっ……」
ドワーフセンチュリオンは蒸気を放ち、ヤオは目眩しを食らってしまう。そして間髪入れずハンマーを振り上げる。ヤオが視力を取り戻した頃にはハンマーが振り下ろされ始めていた。
しかし金属音とともにハンマーが落ちた場所は幸いにもヤオの目の前だった。
「何してるのよぉ、ばかぁ!逃げなさいよぉ!」
目の前には裸幼j……ロゥリィがドワーフセンチュリオンの壊れた斧を担いで立っていた。
「ちょっと私ぃ、ストレスたまってるのよぉ。楽しませてほしいわぁ」
この後めちゃくちゃフルボッコにした。
***
アルヌス駐屯地、会議室
「他に報告は?」
「はい、例の海上自衛官たちを乗せたSH-60J及び行方不明隊員を本日まで捜索させましたが、未だ行方不明隊員を全員発見できておりません。山岳であるため、困難であることがわかりました」
陸自の幹部が報告する。
「また、ヘリの機体そのものは見つかりましたが、損傷が激しく、一部パーツ等が見つかっていない状況です」
「これをどう説明すべきか……」
狭間陸将が呟く。
自衛官から殉職者を出してしまった。
一人も死なないなど楽観的には考えていたわけではないが、どうすべきなのかが整理できてなかった。
「一つよろしいですか?」
声の主を見ると部屋の奥から青迷彩の男が手を挙げていた。
「加藤3佐、どうぞ」
「このことは、まだ秘匿すべきかだと思います。まず、隊内で殉職者が出たとなれば士気が下がるでしょう。マスゴミ……失礼、マスコミも黙っていません。この件は、我々海自が責任もって処理しましょう。また、捜索は一時中断すべきでしょう。彼らをわざわざ危険に晒す必要は無いかと」
誰もが頷く。狭間陸将を除いて。
「加藤3佐、それは上からの命令か?」
狭間陸将が尋ねる。
そして少しの間が空くと、加藤は笑みを浮かべ、こう言った。
「ええ、上からの命令です」
***
「ロゥリィよく生きていたな」
「私を誰だと思ってるのぉ?亜神ロゥリィ・マーキュリーよぉ」
ロゥリィは伊丹の予備の戦闘服を借りているのでもう大丈夫である。肩にはドワーフセンチュリオンの斧を担いで。
「しかしロゥリィが居てくれると心強いな」
「ふふ、褒めても何も出ないわよぉ。ところで、あの
伊丹は経緯を話す。
「なるほどね。それに私もぉ、あいつにグーでお見舞いしないと気が収まらないわぁ」
そんな感じで4人はバルバスの探索を行うのであった。
実はそんなに時間はかからなかった。
道中に壊れた小型オートマトン(ドワーフスフィア、スパイダー)があったので辿ってみると広場でオートマトンの残骸に囲まれて足を引きずっている
「チャァァアンス!」
作戦を練ろうとした矢先、ロゥリィが飛び出した。
それを察したフルフルは例の甲高い咆哮を上げる。
「頭イタァい!」
そこにいた全員が耳を塞いでしまう。
フルフルはすぐさま体に青白い電気を纏うと、まだ耳を塞いでいたロゥリィに飛びかかる。
「え……プギャァァァああ!?」
「ロゥリィがだいしゅきホールドでやられた!?」
「伊丹殿、だいしゅきホールドとはなんだ!?」
「お前は知らない方がいい!」
フルフルは最初の敵を倒すとすかさず青白い電気玉を吐く。
「ワアァ!?こっち来たー!」
伊丹とヤオは回避できたが、アルペジオを逃げ遅れた。
「フギャァァアア!?」
アルペジオはその場に大の字で倒れてピクンピクンと痙攣して身動きが取れなくなってしまった。
「やべえ、こいつ思ったより強え!」
不幸中の幸いは、このモンスターが動きがそこまで早くなく、単調であったことだ。
「うう……死ぬかと思ったぁ」
つい先ほどまで黒こげだったロゥリィが起き上がり反撃に入る。先ほどより、より慎重に立ち回りながら。
その間、伊丹も小銃擲弾(小銃の先っぽにつけて発射するグレネードランチャー)で支援などした。
最初は有効に見えた。
だが様子がおかしかった。
攻撃したはずなのに、擲弾を叩き込んだのに、ロゥリィが斬りつけたのに。
「こいつ……ダメージを食らってないぞ!」
伊丹は考えた。そのような特性を持った生物なのか?それとも魔法やなんかの作用を受けているのか?
そしてしばらく観察していると、初遭遇時と微妙に雰囲気が違うのを感じた。
何か、オーラが異なる。
初遭遇時と異なる条件は何か。
あの時は……ロゥリィが居なくてバルバスがいた。
そして今はその逆。
「まさか……バルバスが飲み込まれただけでこうなるのか!?」
バルバスがただの犬ではないことも伊丹は薄々感じていたが、ここまでとは思っていなかった。
こうなれば解決方法は一つしかない。
バルバスを取り出すこと。
しかしここで、問題。腹を切り開くにも、そもそも傷すらつかないのだから、取り出すことができない。
「くそったれ!どうしろと……」
「ひっ!?」
伊丹が苛立ちを隠しているとアルペジオがまた変なスイッチを作動して下から突き上げるタイプの槍トラップに尻餅ついていた。
「……これだ!ロゥリィ、奴をこっちに誘導してくれ!できれば奴が天井から落ちてくるように」
「言っていることはよくわからないけどやってみるわぁ!」
ロゥリィは壁キックを利用して準空中戦に持ち込む。
フルフルもその挑発に乗って壁をヤモリのように這いながら戦う。
しばらくすると槍がまた地面に戻る。
「ロゥリィ、こっちに降りてきてくれ!」
「わかったわぁ!」
そしてロゥリィは華麗に着地を決める。
そしてフルフルもそれを追撃せんと追いかける。
位置的にはパーフェクトだった。ちょうど槍が出る穴にフルフルは着地しようとする。
そして最高のタイミングで、伊丹はトラップを作動させる。
「クォォオ!?」
フルフルがまさに地面に接しようとしたところ、槍が複数、フルフルの腹に目掛けて勢いよく飛び出る。
もちろん、伊丹はこれで串刺しにしようとしたわけではない。
「ゲェ、ゲェ……」
フルフルは腹の中の物を戻す。
中から液体まみれの犬が出てきた。
「お前さんたちのこと信じてたよ!」
意外とピンピンしていた。
「バルバァァス!」
そしてロゥリィの怒りの鉄拳によって感動の再会など微塵も残さず吹き飛ばされた。
このあとフルフルはめちゃくちゃボコられた。
***
『まるでいっぱしのおとぎ話だな。勇者が仲間を連れて仲間と王子の下僕を救い出すなんてな』
「おいおい、誰が下僕だって?」
『ふん、お前は黙っとけ。また斧で数世紀死にたいのか?』
「へ、へい!忠犬バルバスでございます。ワンワン!」
『まあいい。なかなか面白かったぞ、緑の人。一時はどうなると思ったが、まさか俺が思いもよらない方法でな』
「見ていたなら助けてくれても良かったのに」
アルペジオが愚痴をこぼす。
『言っただろう、俺の力の半分は犬っころに貸していると。それにもう片方もまだ回収できない状態だと』
「クラヴィカスさんの残り半分、どうしたの?」
『なんだ緑の人、気になるか?ならそれを取り返しに来てくれたら……』
「いや、もういいです!大丈夫です!」
『お前はこういう時はつまらない奴だな。まあいい、お前の望みを叶えてやろう。ここから出たい、だったかな?まあ、久しぶりに面白い物を見せてもらったから、サービスしてやるよ。おい、犬っころこっちにこい』
「伊丹の旦那、亜神の嬢ちゃん、ダークエルフの嬢ちゃん、それとえーと」
「アルペジオよ」
「おお、そうだった。ヒト種のお子ちゃまだった」
「「「誰が嬢ちゃん/お子ちゃまだってぇ!?」」」
「はは、やはりおめえらは面白いな。世話になったな。まあ、これからも大変だと思うけど、せいぜい頑張りな」
そう言い残してバルバスは紫色の渦に包み込まれた。
すると目の前の石像にバルバスの像が追加され、しばらくするとその像そのものが消えた。
そして奥には隠し通路があった。
横には宝箱。
「罠、じゃないよな?」
中身はヘンテコなマスクにロゥリィの神官服(デイドラ製)とハルバード(スタミナダメージ付き)その他諸々どうやって全部入っていたかなど突っ込んではいけない。
ロゥリィはハルバードと服、ヤオはデイドラ製の弓矢、アルペジオは身につけると魔力アップの不思議な首飾り。
そして伊丹は残り物のヘンテコな仮面を貰うことに。
「俺だけ扱いひどくないか?」
給料日や同人即売会で伊丹がこのお面でウハウハになるのはまた別の話。
***
「加藤3佐、今いいかな?」
「はい、なんでしょう、狭間陸将?」
加藤は作業を止めて振り向く。
「さきほど、海幕からの方の連絡で、君の上司の草加2佐は、殉職したと判断され、2階級特進をしたようだ。正式に殉職が認められるのは、落ち着いてからだろうが。つまり、海将補だ」
「しかし、まだ彼は行方不明扱いだったのでは?捜索は一時中断は進言しましたが」
「残念ながら、上の判断で、草加元2佐以下な行方不明者は殉職と判断した」
「そうですか。わかりました」
そして話しが終わったと判断し、敬礼する。
「加藤くん、君は大丈夫か?」
「何がです?」
「上司や部下が殉職して、ここまで感情を出さない人間は初めて見た」
「……そうですか。なぜでしょうね」
加藤は再度敬礼してその場を後にする。
「……あれは鬱の一種なのか?」
狭間陸将はその背中を見送ることしかできなかった。
***
「この謎を解けば、出られるのか?」
「うむ、そうらしいな」
「最近この手のゲームとかやってないから解けるかなあ」
伊丹は小さく溜息を吐くと出口への謎解きを始める。彼らは最後の地上に出るための扉の謎解きをしていた。
「ところで、このスイッチは何だろう……痛え!?」
中心にあった台に触れたところ、大きな杭のようなものが伊丹の手の平を貫いた。
「ヨウジぃ、大丈夫!?」
不思議なことに、直径3センチはありそうな杭が貫通したのにも関わらず、直ぐに傷は元通りになった。ロゥリィに傷が移った様子もない。
そして伊丹の血が台に染み込むと、周りの燭台が紫色に輝きま始めた。そして地面の溝にもその光が滲み出る。
「どうやら、これが謎解きための開始のスイッチみたいだな」
「そうみたいねぇ」
そして燭台を動かしたりして見て四苦八苦する。
やっと正解らしき位置に設置し終えると、中心からいきなり大きな石柱が現れる。
「な、何だこれ!?」
その石柱が勝手に開くと、中から女性が出て来た。
その女性は支えを失ってその場に倒れこむ。
「おい!大丈夫か!?」
肌が白く、髪が黒くて綺麗なお姉さん系の女性であった。服装の雰囲気はどことなくロゥリィの神官服と雰囲気が似ていた。
そしてその女性は目を開けるとゆっくりと立ち上がる。
その瞳は、普通の人とは違っていた。
「ああ……ここは……?あなた、誰に言われていらっしゃったの?」
「誰って……別に誰にも頼まれてここにきたわけではないんだけど……」
「偶然、ということですのね。誰か他の、私と同じ種類の者が来ると思っておりましたわ」
「私と同じ?」
「きゅ……見てお分かりでしょう?吸血鬼ですわ」
「「「え?」」」
「何を驚いてますの?」
「吸血鬼なんてそれほど珍しいわけではございませんのに」
「そ、そんなもんなのか?」
伊丹はアルペジオに小声で確認する。
「いや、私も初めて……」
「で、君は何でこんなところに閉じ込められていたの?」
「それは……複雑ですわ。それに、あなたが信用におけるか分かりかねますわ。でも全てを知りたいのであれば私を家族の住む家に帰して頂きますわよ」
伊丹は強烈な嫌な予感がした。この吸血鬼はクセが強いと。
「ところで、私はセラーナ。どうぞよしなに」
やっと迷宮編(カオス)終わりましたわ。