オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし   作:ArAnEl

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オークの顔が豚なイメージが強いのはニホンジンのせい。多分。


対巨龍決戦兵器の正体

 

アルヌスの危機は去った。

 

現在自衛隊は少しずつまた弾薬等の備蓄を蓄えつつ、今後の作戦のための準備を整えていた。

 

 

「流石だな。よく短時間でここまで兵站を整えたな」

 

「恐縮です。これも草加さんが()と調整をして頂いたおかげです」

 

「謙遜するな。だが予定を早める必要があるな。入念に準備しておくように」

 

「はい」

 

「では例の物を回収してこい」

 

「了解」

 

 

それだけ言うと加藤は部下が待機するヘリに搭乗する。

 

 

全員()()()()である。そして何より、手に持ってるものが何か違和感がある。

 

全員、自衛隊に()()()()()()()()()()の銃を持っており、各種パーツ、アタッチメントなどに個性があった。

 

 

「今回の任務は2つ。邦人(伊丹)の救出及び例の物の回収、以上。質問は?」

 

「「なし」」

 

 

いつもとどこか違った雰囲気である。

 

 

「これより、C(チャーリー)計画に移行する。今回の作戦は我々だけだ。まだ完全復旧してないため、陸自からの支援も一切受けられない。全員に幸運を祈る」

 

 

そして敬礼する。

 

しかし、それは互いにではなかった。

 

ヘリの後部に詰め込まれた大きな長めの袋たちに対してであった。

 

 

***

 

 

なんやかんやで和解(?)したオーク(豚面じゃない)とダークエルフのおかげで、伊丹は無駄な努力を強いられる必要は無くなったと思う。

 

結果的に多少の怪我と小銃と引き換えにだが。

 

しかしこの結果、オークとダークエルフが炎龍討伐に協力してくれることとなった。

 

戦力としては有難いが、正直不安ではあった。

 

別にオークたちの戦力を疑っているわけではない。それは身をもって体験してるので問題ない。必要以上の犠牲がでるかもしれない、と伊丹は思うのであった。

 

 

とりあえず、もう遅いので翌日出発することとなった。

 

 

「ということで、俺はお先に失礼するぜ」

 

 

バルバスが背を向けて去ろうとしたところ、ロゥリィがその尻尾を掴む。

 

 

「……嬢ちゃん、なんのつもりだ?」

 

「あらぁ?私はまだ納得していないわぁ。ちょっと色々説明してもらうわよ」

 

「おいレレイ、ちょっと助け……」

 

「私にも説明を」

 

 

レレイは表情にこそださなかったが、怒っていた。

 

 

「え……ちょ、落ち着こうな?な?」

 

 

そうしてバルバスは少女(?)たちに連れられて洞窟を後にした。

 

 

「お前強いな。名をなんと言う?」

 

 

振り返ると伊丹は驚く。オークと言えば豚顔がしかないと思っていたのでも驚きなのに、流暢な特地語で声をかけてきたのは女オークであった。しかもボン、キュ、ボン。いや、腰はくびれてるというより、腹筋がたくましいのでボン、グッ、ボンかもしれない。

 

 

「女もいたのか」

 

「ん?女がいなくてどうやって増えるんだ?」

 

(あ、はい、そうですね……)

 

 

そんなこと思いながら、伊丹は名乗る。

 

 

「イタミ・ヨウジか。ふむ、兄を殺した男だ。覚えておこう」

 

(ちょっと待て。覚えておく!?それって仇として覚えておくってこと!?)

 

「どうした、なぜそんな表情をする?別に敵討ちなどしないから安心しろ」

 

 

伊丹はそれを聞いて安心する。本当に価値観が良い方向に違っていて良かったと思った。

 

 

「私はラーツ。お前が殺した者と血を分ける者だ。ということでイタミ、明日までは時間がある。お前の実力を見せてもらおうか?」

 

 

前言撤回。とんでもない価値観だった。どこか自分の部下の戦闘狂女性隊員(栗林)を思い出した。

 

 

***

 

 

「えーと……どういうつもりだ……」

 

 

右を見ると真っ黒いゴスロリ戦闘狂、ロゥリィ。もちろんハルバードつき。

 

左を見るとプラチナブロンド魔法少女、レレイ。絶賛見えない覇気を放出中。

 

 

「バルバス、今日という今日は、説明してもらうわよぉ!」

 

「な、なんたよ……」

 

「あなた、何か隠してる」

 

「ギクゥ……」

 

「図星ねぇ」

 

「……」

 

「私の予想では、あなたは伊丹と同じく別の世……」

 

 

レレイが何か言おうとしたとき、それは轟音と暴風によってかき消された。

 

爆音の発生源を見ると、黒い影が見えた。

 

 

「炎龍!?」

 

 

暗くてよく分からなかったが、明らかにドラゴンのシルエットであった。

 

 

「何事だ!?」

 

 

洞窟からダークエルフとオークが急いで出てきた。

 

 

「ドラゴンだ!ドラゴンだ!」

 

(あぶねー、危うく殴り合いが夜通し続くとこだった……)

 

 

伊丹も頰の腫れを抑えながら出てくる。はて、なにがあったのだろうか。

 

しかしすぐに気持ちを切り替えて辺りを見回す。

 

 

マズイ。明かりが月と星とわずかな光源でうまく見えない。暗視ゴーグルも試そうとしたが、電源がつかない。壊れているようだ。

 

 

「くそ!」

 

 

伊丹は急いで近くに停めてある車両に駆け寄り、トランクを開ける。

 

 

「早々にこいつを使うことになるとはな……」

 

 

特別に臨時で支給された84mm無反動砲と01式軽対戦車誘導弾(LMAT)を取り出す。はずだった。

 

 

「……」

 

 

木箱を開けて伊丹は困惑した。

 

自分が知っているこの手の武器とはかけ離れた姿だからだ。

 

重火器であることは分かった。ロケットランチャーのようなものであることも分かった。

 

しかしそれ以外は謎であった。大きさは1回りほど大きく、個人携行用なのかも怪しい。しかも筒状ではなく、どこかおもちゃのような構造である。

 

そして何よりも……

 

 

「何だこの弾は!?」

 

 

黒くてズングリムックリした太めの弾。大きさは少し小さめのラグビーボールのようである。

 

 

「くそ……何かのミスか。でもこれしかないなら仕方がねえ!」

 

 

使い方は難しくなかった。恐らく。

 

ロケットランチャーの要領で弾頭(らしきもの)をセットするだけであった。

 

ただ、セットの仕方が空母のカタパルトのように上にセットするだけだったから不安に感じたのは事実である。

 

 

「なんだかホントに大丈夫かな……てかメチャクチャ重いじゃねえか!?」

 

 

伊丹でもやっともって構えられるほど重かった。

 

 

(これ、対戦車兵器じゃなくて攻城兵器とかじゃねえよな?)

 

 

急いで戻るとダークエルフの何人かは既にやられたらしい。

 

オークはもっとやられていたようだが生き生きとしていた。

 

レレイ、ロゥリィも応戦していたが戦果はよろしくない。

 

テュカは一人怯えて固まっていた。

 

側に駆け寄り、ロケットランチャーらしきものをテュカに持たせて構えさせる。もちろん伊丹の補助付きで。

 

 

「テュカ!あれがお前のお父さんを殺した炎龍だ!仇を倒すんだ!!」

 

「な、何言ってるの!?お父さんは目の前にいるじゃない!」

 

「違う!俺は赤の他人だ!お前のお父さんはあいつにやられたんだ!いいからこれを撃て!」

 

 

非常な現実を突きつける伊丹とそれを受け入れないテュカ。もめ合うこと数秒。そしてテュカは泣く泣く引き金に力を入れる。

 

 

()()()伊丹が予想したものとは異なる動きをした。

 

そのランチャーらしきものは弾頭を発射ではなく、投射した。

 

従来の対戦車砲のようにロケット噴射による推進ではなく、単なる物理的な投射。本当に空母のカタパルトのように弾頭は飛ばされる。

 

そして迫撃砲のような空気を切るような甲高い音、わかりやすく例えるなら打ち上げ花火のような音を出しながら微妙に起動が落ちながら弾頭は炎龍へと向かってゆく。

 

しかし現実は非情で、低速で飛来する弾頭を炎龍は躱してしまう。

 

そして伊丹たちを嘲笑うかの如く鼻で笑った。弾頭が遙後方の地面に着地するまでは。

 

 

「「「「!!!!????」」」」

 

 

明後日の方向へと飛んで行った弾頭は接地と共に爆発した。

 

想像をはるかに超える規模で。

 

 

「何よぉ、あれぇ!?」

 

「……あれは神の(いかづち)か!?」

 

「何という威力だ」

 

「まさか緑の人の鉄の逸物にあれほどの威力があったとは……」

 

「まるでゴミのようだ」

 

「うへぇ!?あんなのデイドラロード級じゃねーか!」

 

 

そこにいた伊丹の連れ(美少女と犬)に留まらず、ダークエルフやオークも口々に叫んだ。

 

 

(え、ちょ……キノコ雲見えるんですけど。大丈夫なの!?)

 

 

撃たせた伊丹も困惑しており、あまりの威力にテュカも驚いて泣き止んでしまった。

 

 

しかし誰よりも驚愕していたのは彼らではなかった。

 

 

(ちょっと待て待て待て待て待て!!あれを私に撃ち込むつもりだったのか!?あれは主人殿(アルドゥイン)並の破壊力を感じたのは気のせいか!?私また死ぬよね、当たったら!)

 

 

炎龍はあまりの威力にしばらく固まってしまい、我に帰るとすぐその場を離脱した。

 

 

「あ、くそ……逃げやがった」

 

 

伊丹は悔しそうな顔をする。

 

 

「うう……嘘よ……嘘よ……」

 

 

テュカは泣きぐずれていた。仕方がないので伊丹はテュカを背負うと、テュカは子供のように眠り始めた。

 

そしてゆっくりとダークエルフたちの洞窟へ戻ろうとした。

 

 

しかしそこには彼が予想していなかった人物がいた。

 

 

「よう、伊丹」

 

「加藤、今度は何を企んでるんだ?」

 

「つれないね。わざわざお前を回収しに来たのに」

 

 

見ると周りに彼の部下らしき隊員が約20名ほどが周りを囲んでいた。銃口こそ向けていないが、すぐにでも戦闘できる体勢であった。

 

 

「あいにく、俺は炎龍を倒すと決めていてね。それまでは拒否するぞ」

 

「まあまあ、別にここにいる全員を皆殺しにしてもお前を回収しようとしている訳じゃないさ。そこはな、冷静に大人同士の話し合いできめような」

 

「どうかね……」

 

 

全員皆殺しにしても回収する。

 

否定しつつもその言葉が出るということは最悪想定はしていると伊丹は判断した。

 

 

「まあ落ち着いて、これでも飲めよ。あとお前の可愛い(美少女)たちにも飲ませろよ」

 

 

そう言って加藤は小さな赤いプラスチック袋に包装された黒くて丸い錠剤をたくさん渡す。

 

 

「これって……」

 

 

伊丹はどこかで見たような気がした。

 

 

「安定ヨウ素剤。5年前に東北での作戦(大災害での活動)の後飲んだだろ?」

 

「え……それって……もしかして……」

 

 

伊丹は嫌な予感がした。そして顔から血の気が引く。

 

 

「だって、ほら」

 

 

加藤は伊丹にトドメをさした。

 

そして目の前にポケットに入っていた()()を差し出した。

 

 

独特の低音の警報音を発しているガイガーカウンター(放射線測定器)を。

 




ラーツはオリキャラですが、脇役のつもりです。オークにも名前付き出したいので。

あと感の良い人はお気づきだと思いますが、名前の元ネタは某ファンタジーの元祖とも言える大長編小説を基にした映画のオークの上位互換の彼です。


あとRAD-XやRADアウェイが開発されていたら伊丹たちは万事解決なんですけどね。

え、対巨龍決戦兵器どっかで見たことあるって?
きっとデイビークロケットですよ(しれっ)。

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