オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし 作:ArAnEl
後半はおふざけ回と思います。すみません、苦し紛れに好き勝手やってます。
あと実は某映画の怪獣が進化の際二本立ちしたの見て、老山龍思い出してしまいまして、前回出させていただきました。
「なんじゃ、ありゃ……」
アルヌスへ向かう陸自ヘリ、チヌークの窓からはっきりとそれは見えた。
巨大な龍が二足で立ったと思ったら地面を叩きつけるように倒れこむところも。
その音は予想を遥かに超えていた。ある程度帝都を離れ、しかもヘリコプターのローター音を上回るほどなのだから。
「とりあえず、まずは民間人を基地に降ろしてからだ。そのとき指示があるかもしれな……」
伊丹の言葉は突如現れた戦闘機の爆音によってかき消される。
2機のF-4ファントムが亜音速で帝都方面へ向かっていた。
「こちらパイロット・ワン。帝都爆撃任務への途中だが、想定外な事案が生起した」
2機の戦闘機のうちの一人のパイロット、神子田が管制塔に連絡を入れる。
「ゴジラ級の赤茶色の龍が帝都近くにいる。指示送れ」
『こちら管制塔。それは確かか?そのような情報はこちらにない』
「目視にて確認。なお、相手からのアプローチはない」
『了解。その場で待機せよ』
「こいつに攻撃しても良いか」
『それは認められない。次の指示を待て』
「了解」
戦闘機と管制塔とのやり取りを終えると、戦闘機は低速で周囲をぐるぐる回るように待機する。
「どうする?爆弾こいつの頭に撃ち込むか?」
「やめてくれ。
パイロットの後方にい
そんな周囲のやり取りを気に留めず、
そんな様子をアルドゥインは戦闘機よりもさらに上の高度から見下ろしていた。
「ふむ、呼びかけてみたが反応が薄いな。
そして巨龍の進行先を確認する。
「いずれにせよ、計画には問題ない。奇妙な
そう言って静観するのであった。
***
「伊丹2等陸尉、以下第3偵察隊只今帰隊しました!」
アルヌス駐屯地に着き、狭間陸将に報告する。
「うむ、ご苦労。そちらの帝都での件も問題だが、今はそれより優先すべき事案が生起した。すぐに作戦室へ向かえ」
言われた通り作戦室へ行くと、幹部やオペレーターが慌ただしく動いていた。モニターには航空自衛隊の偵察機から映し出されている巨龍の姿が見える。
「今回の地震との関係があるとされる超大型龍、通称巨龍だ。今の所直接な人員への被害などはないが、こいつによる地震、移動等による被害が懸念される。それに人への攻撃が無いと判断されたわけでもない」
柳田が伊丹に説明する。
「でっかいな。ゴジラみたいだ」
「ああ、俺も見たときは驚いたよ。光線や放射能撒き散らさないといいがな」
「ほんとそれな。ゴジラが出ると自衛隊って、咬ませ犬だもんな」
「まあ今回の事案はこれ以降、お前さんたち第3偵察隊が出る幕はないな。出るのは
「そうならないことを祈るよ」
「今日は帰って休め。まあしかし、ちょっとあの金髪エルフに問題が起きたから休めないと思うが」
「……テュカがどうしたんだ」
伊丹は急に嫌な予感がした。
そして急いで様子を見に行ったが、そこにいたのは精神の崩壊したテュカだった。
「ほら二人とも見なさい!お父さんが死んでるわけないじゃない。おかえりなさい、お父さん!この二人ったらお父さんが死んだんだっていうのよ!悪い冗談よね。お父さんが死ぬわけないじゃない。絶対そんなことない。だって昨日もいたし一昨日だってその前の日もいたし、ねえ、そうでしょ?いなくなるわけないじゃない。それにお父さん……」
もう目が完全にイってた。
「ちくしょう!テュカをこんなことにしたのはどこのどいつだ!?」
「あいつなんだけどぉ……」
ロゥリィ気まずそうに部屋の隅を指差す。
そこにはこの前酒場に現れたダークエルフのヤオが膝を抱えて震えていた。ガクブルというやつだ。
「スマナイスマナイスマナイスマナイスマナイスマナイスマナイスマナイ……」
壊れたロボットのようにつぶやいていた。テュカほどではないがこちらも目がイっていた。
「……こいつをこうしたのは?」
伊丹は一瞬ちょっと気の毒に思ってしまう。
「えっとぉ、どっかで見たことあるやつだったけどぉ、伊丹の服を青にした男よぉ」
「確か記憶が正しければ私の師匠と同じ名前」
レレイがロゥリィの情報に補足を加える。
「カトー師匠と同じ……加藤のことかぁぁぁぁあ!!?」
そして扉を蹴飛ばして出て行く。
「あ……行っちゃったぁ」
***
「あー、いい指導したわ。いじめをしている人を矯正するのは大変だわ」
青い迷彩の男が呟く。
「隊長、あんたがやってるのもいじめ……」
「何か言ったか?」
「何でもありません」
青迷彩に覆面をした男が視線をそらす。
「いやしかし、ほんとどうして俺たちが来るとこんなことになるのかね」
「そうですね。まるでそこに行けば99パーセント殺人事件が起こるコナン君みたいですね、隊長」
「それ、褒めてるの、それともバカにしてるの?」
青迷彩の男たちが作戦室の後ろで小声で言い合った。
「こんなデカ物、対艦ミサイル使えば迎撃できそうですよね」
「それの承認下りるのと配備されるの待ったら間に合わないから。ま、こんな大規模作戦俺たちは無用の長物だろう。俺たちの出る幕は無いな。ちょいトイレいってくるわ」
そして作戦室を出ると同時に奇声が聞こえた。
「加藤ぉぉぉおおお!」
「ん?…… うぐっ!?」
「いってぇぇぇええ!?」
悲鳴を上げたのは伊丹の方だった。
「素人は殴るときは掌底打ちの方がいいよ。手大丈夫?」
「お前なんなの!?それどころじゃなくて、お前何してくれたの!?」
「ダークエルフのことか?だってお前の恋人候補のエルフが虐められてるのたまたまみたから仕返し、じゃなくて指導してしただけですが?」
「いやね、恋人候補とかじゃないよ……じゃなくて、勝手にやらないでくれる?あんたがやると余計めちゃくちゃになるから!」
伊丹は勢いよく加藤の後ろの壁に手をつけるように威圧する。
「お姉さま!あれをご覧ください」
「まあ!なんとゆうことでしょう。あれが噂の『壁ドン』ですわね。こんなところでお目にかかれるとは……」
「わたくし、もう悔いはありませんわ」
たまたま近くを通った騎士団からの語学研修生たちがなんとも言えない眼差しを向けてきた。
「まあ落ち着け。あのダークエルフならそれほどやってないから。もうそろそろ正気に戻るよ。多分」
「いや、だからそうじゃなくて……」
「いまお手洗い行くから後でな」
そう言うと伊丹の腕を人間とは思えないような力で掴んでどけるとその場を立ち去る。
「あら、振られてしまったようですわ」
「まあ残念。次の展開を期待してましたのに」
女騎士たちは本当に残念そうに見る。
「こんちくしょぉぉおお!」
「「ひっ!?」」
手洗い場では加藤が口をモゴモゴさせて奥歯を吐き出す。
「いって……いいパンチしてんな。合金の奥歯が外れやがった」
***
「あら耀司ぃ、早かったじゃない」
「テュカとあのヤオとかいうやつの様子は?」
「テュカはレレイの魔法で落ち着かせて寝てるわぁ。ヤオも落ち着いて話せるようになったわぁ。まだしょんぼりしてるけどぉ」
ヤオは少し俯いて椅子に座っていた。
「ヤオと言ったかな?少し色々聞きたいことがある」
「ひっ!?スマナイスマナイ……」
伊丹が前の椅子に腰をかけて話しかけるとまた怯え始めた。
「ちょっと落ち着いてくれ。一体どんなこと言われたのやら……」
「う……すまない。少し気を取り乱していたようだ……」
「率直に聞くけど、なぜテュカにあんな余計なこと吹き込んだんだ?」
「余計なことか……真実を伝えたまでだが、余計なことだったか。事実を伝えたまでだが」
「じゃあなんでそんなことを?」
「うう……そんな責めないでくれ。思い出すだけでも……」
伊丹は例の糞同僚が何を言ったのか少しわかった気がした。
「最初は悪意があって……うむ、当初そのつもりだった。もちろん今は反省している。そう言えばこのエルフの心が壊れ、それを救うために御身が動いてくれると考えたからだ」
前言撤回。このダークエルフ糞だわ。すげえ腹立つ。加藤、
「そうしてくれれば、あのエルフは炎龍を仕留めることで心は解放されると思う。そこで交換条件として炎龍の住処を教える代わりにダークエルフの里を緑の蛮族から救って貰おうと思ったのだ。スマナイスマナイ……」
そしてまた小刻みに震える。
(なんだかどんどんムカついてきた。いっそのことあいつに引き渡してやろうかな)
とにかくこんなやり方のやつの願いなど聞くわけがない。ヤオのことは放置して後日テュカのことを相談しに行く。
「謝りに来たのか?別に俺は気にしてないが……俺もやりすぎたかな」
「いやな、少し早まったかな。殴ったことは謝る。テュカのことがおかしくなってな」
「お父さん、お父さん」
伊丹の腕を組んで美女がお父さんと連呼していた。
「リア充爆ぜろ」
「いや、違うから」
「冗談だよ。でもどーせなら『お兄ちゃん』のほうがいいねえ」
「それな。って何を言わせるだ!」
「お父さん?どうしたの?」
とにかく、このままだと仕事もやりづらい。しばらくはこの状態で維持する必要があるが難しい。
「でもなんで俺に。この前言ったけど、おれ心理学の勉強と部隊相談員の講習受けただけだからね。専門家なら別がいいだろうに。お前さんの部隊にも黒川陸曹というべっぴんさんいるじゃないか」
「あいつはだめだ、世間知らずのお嬢様だ」
「うーん、仕方がない。これでも使うか」
そして引き出しからあるものを出す。
「『バーチャルリアリティ』!」
「加藤えもん、それどうやって使うの?」
「耀太君、これはね仮想現実を見せるゴーグルなんだ。このゲーミング用PCのソフトで……」
「あんたそんなもん持ってきたのか……」
「うるせえ、少しぐらいいいじゃねえか」
そしてパソコンのキーボードを叩く。
「昔理沙殿から貰ったお前さんのモデル画像を元に作ったアバターがここにある」
「おおー、でなんでそんなものが……」
「そしてこのモデルを元に男性エルフを作る」
(無視しやがったぞ、こいつ)
「そしてほら、こんな感じ」
「おお、俺に似てる男エルフだな」
伊丹は感心する。すると後ろからテュカが涙を流す。
「お、お父さん!?」
そして画面に顔をくっつける。
「お、似てるみたいだな。そしてこのVRヘッドディスプレイをテュカにつける」
「お父さん……お父さん!」
どうやら目の前にいるらしく、手を伸ばしている。
「よしうまくいった」
「加藤、お前天才だな!」
「こんど薄い本よろしくな」
そんな感じで喜んでいたが、状況は一変した。
「アン……ダメよそんなところ……そんな……親子でこんなこと……」
なんだかテュカ吐息が荒くなり、顔に赤みがかかっている。そしてなんだか動きがすごくいやらしいあやしい。
「ちょっと待った!何かやべーよこれ、何!?何が始まるの!?」
「やっべ、このソフト、エロゲ会社が出しているやつだったの忘れていた」
「どんな映像になってんだ。いいから止めろー!!」
そんなところ、扉の反対側では女騎士たちが耳を立てていた。
「男2人にエルフ女1人……」
「一体何が……」
「きっとあれですわ。この前教官殿が教えてくださった『クッコロ』とやつでは?」
「いや、でも『おとうさん』と聞こえましたわ」
「しかし教官殿の部屋で何が……もしかしたらやはり緑の方と青の方は禁断の関係だったのかしら」
「ああ、禁断の三角関係……」
とんでもないところでとんでもない誤解が生まれていた模様である。
次はシリアス展開になると思います。
ストーリー歪曲していってますが、お許しを。