オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし   作:ArAnEl

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安心してください。遥か彼方の銀河ではございません。別に新しい作品が始まる訳でもありません。続編です。

「スゥームが共にあらんことを」

ん?


龍撃編
遠い昔。遥か彼方の別世界で


あの囚われし絶望から救われた

あの呪われた運命を捨てられた

あの怒りにまみれた炎を鎮められた

あの出会った日が我を変えた

我の火で地を焼き尽くそう

我の牙で血を(すす)ろう

我の爪で敵を引き裂こう

我の翼で空を()けよう

その目から光が奪われるのなら

その肌が血に染まるのなら

その剣が重いのなら

その口が物言えぬのなら

この身体が燃え尽きようとも

この言葉が奪われようとも

この契約が果てるまで

この暖かさが失われるその(とき)まで

 

 

***

 

 

世界が滅亡しようとしていた。

その解決策が見出せず、その場にいた誰もがうな垂れた。

 

そこで我が口を開いた。

 

 

「また進めぬようになった。……暖めてくれぬか?」

 

 

そう言うと、目の前の騎士風の男が我の(こうべ)を優しく、暖めるように撫でる。

 

 

「……もう大丈夫だ」

 

 

我は決心した。もう、何も思う事はない。彼の温もりが全てを決意させた。

 

 

「我を封印に使うがよい。精神力、生命力、すべてにおいて人間の比ではないぞ」

 

 

男は声こそ出さなかったが、戸惑いの表情を見せる。もう1人の司祭の男も驚く。

 

 

「……我の気が変わらぬうちに済ませた方がよい」

 

 

そう、これでよい。これでよいのだ。

 

 

***

 

 

身体中が熱い。否、我は火を司る者。この世で最強の生命体のさらにその頂点に君臨する者だ。熱いなどありえぬ。しかし、この表現しがたい苦しみは熱いとしか例えようがなかった。

 

司祭が我を封印のために使うために呪文を唱えるのが聞こえる。

 

そして横たわる我の首に男が寄り添っているのが感じる。

 

そして呪文の終わりと共に我の身体に刻印が焼き付けられる。あまりの感覚に我は声を上げてしまった。

 

ふと首元を見ると、男の目からなにか落ちて我の身体に当たるのを感じた。

 

 

「おぬしの……涙……初めて見る……な……」

 

 

男は何も答えない。涙で一杯になった瞳で我の瞳を見つめるだけであった。

 

ゆっくりと首をあげると、男に面と向かって語る。

 

 

「……覚えておいて……もらいたいこと……が……ある」

 

 

男は我に何かを訴えかけたい表情をしているが、それは叶わなかった。おぬしの声を奪ったのは我同然なので仕方はない。しかし、最後に一言聞きたかった。

 

 

「アンヘル……それが我の名だ」

 

 

男は我から顔をそらすと、さらに瞳から涙が流れるのが見えた。

 

 

「……人間に名を名乗るのは最初で……最後だ」

 

 

我のためでもない、この世界のためでもない。ましては他のだれでもない。

 

 

「さらば……だ、馬鹿……者……」

 

 

唯一我の背を許した男、カイム。おぬしのために、我は犠牲になろう。

 

これが我の最後の意識であった。

 

 

***

 

 

「何なのだここは」

 

 

そこは何とも言えない混沌とした空間だった。

 

ここは世界の終わりなのか、異世界なのか。それとも「神」の世界なのか。それはわからなかった。

 

 

ふと、周りが明るくなる。

 

そして目の前に金色の龍が現れた。

 

 

「何だお前は!?」

 

 

しかし目の前の金色の龍は何も答えなかった。敵意もないが、じっと我の目を見る。その目を見つめると吸い込まれそうな気分になる。

 

否、意識は文字通り吸い込まれていったようだ。周り視界が渦を巻いたように変化する。混沌とした空間も徐々に無くなり、今度は真っ白な空間だ。ある色は白と黒のモノクロのみ。我の赤かった色も灰色に見える。

 

 

「何をするつもりだ……?」

 

 

と思考をめぐらしていると突如猛烈な痛みが全身を襲う。

 

 

「ウグゥ!?何だこれはぁぁあ!?」

 

 

目の前にモノクロの景色が映る。否、景色だけではない。背中にはかつてお互いの命を預けあった男がいる。

 

 

「カイム!?なぜおぬしがここに?」

 

 

しかし彼は聞こえなかったかのように振る舞う。何度声をかけても同じ反応であった。どうやら本当に聞こえてないようだ。

 

 

おかしい。まるで夢のような世界だ。しかし夢にしては嫌に現実的である。

 

突如、空中にいる我等に対し何者かが襲う。

 

体勢を立て直し、()()を直視する。

 

 

「な……おぬしは……まさか……」

 

 

そう、見覚えのある顔だ。見覚えのあるどころではない。今背中に乗せている男の妹なのだ。少なくとも、()()()()

 

 

身体は人間とは思えないように変わり果ててしまった。複数の巨大な白い翼、どこからも伸びる触手たち、としてサソリの尾やムカデを想像させるような尾。

 

 

もはや我の知る小娘どころか人間ですらない。これが俗にいう()()

なのか?

 

 

戦闘は苛烈を極めた。

 

空中戦は我の得意分野である。にもかかわらず、この異形の者は我の攻撃を蝶のようにかわし、蜂のように攻撃してきた。

 

我も奴の攻撃をかわしつつ、炎を浴びさせる。しかし効いてるのかどうかもわからない。背中の男を守りつつ戦うというのもなかなか骨が折れる。

 

そして突如奴の周囲に剣のようなものが円状に現れる。

 

 

「ええい、小癪な!」

 

 

自動追尾型多段式の炎を浴びさせる。

他にも、自動追尾の高火力の炎なども浴びさせる。

 

 

このような戦いを続け、やっとの思いで奴を倒した。我も危ないところであった。異形の者になったとはいえ、かつては仲間であったものだ。許せ。

 

そして安堵と悲しみのようなものに暮れていたが、我は見てしまった。

 

先ほど辛うじて倒した異形の者が、()()()湧き出て、空を埋め尽くし始めたこと。

 

 

(ハハハハ……終わったな……)

 

 

***

 

 

先ほどの光景はそれで終わった。その後どうなったかなど知らぬ。

 

そして目の前にはまた別の光景である。

 

薄暗い屋内で、我はカイムと面と向かっていた。

 

 

「カイム……我らの契約はここに終了する」

 

 

待て待て待て、我は今なんと口走った?

 

 

「カイムよ……おぬしは深く生き過ぎた。ここまで来たからには我は本能によっておぬしを殺さねばならぬ」

 

 

待て、カイムよ。理解してくれ!これは我の意思ではない、勝手に口走っているのだ!

 

 

「許せ!」

 

 

カイムはそれを聞いて我に剣先を向ける。

 

しかしその目は殺意ではなく、何かを悟ったような目であった。それは我の本心を理解したということなのか?

 

 

***

 

 

そしてさらに景色が変わる。

 

先ほどの結果はどうなったのだろうか。カイムは我を殺したのか、それとも我がカイムを殺したのか……

 

と考えていると突如全身が食いちぎられるような激痛が走る。

 

否、食いちぎられていた。

 

我に返って状況を把握する。

 

我は現在全身を巨大な赤ん坊のようなものに食いちぎられていた。しかも我の視界のほとんどを遮るような数で。

 

そして地には孕んだ女ような巨大な何かが横たわっていた。

 

なんなのだ、この世界は!?

 

例えるなら地獄。いや、それよりもひどいかもしれぬ。

 

 

そして苦痛に耐えていると、ふと視界の隅に何かが落ちるのが見えた。

 

 

カイムの愛剣。

 

 

「カイム!?」

 

 

まさかと思い背中を見る。

 

 

***

 

 

そしてまとも結果を見ずに次へと映る。なんなのだ、この歯痒い、息苦しい思いは。そして何なのだこの後味悪い光景は。

 

ただ分かったことが一つある。

 

これは夢でもなく、幻惑でもない。

 

おそらく、現実ではないが、それに近しいもの。もしかしたらあったかもしれない道筋というものかもしれぬ。

 

 

今回も景色が変わったが、今までとは全く異なる景色であった。

 

まず、我の知る世界ではない。石造りのような建物はなく、摩天楼がいくつもそびえ立っていた。いくつもだ。

 

そして街と思われる中心に先ほどの光景であった女のようなものが、孕んだ状態ではないが、立っていた。

 

 

「何なのだ、これは!どうすればいいのだ!?」

 

 

この時ばかりは本心の声と勝手に出た言葉が一致した。

 

 

そしてその異形のものは歌い出した。

 

歌といってもそれは滅びの歌であるため、それは誠におぞましいものであった。そしてその声は「音」ではなく、白と黒の波紋となって世界に襲いかかった。

 

我はその「歌」に対抗するべく、こちらもそれを相殺できるエネルギー封じ込めた。はて、我はいつからこんなことができたのであろう。

 

どれほど戦っただろうか。

 

ほんの少しの間であるが、それは何時間も戦い続けたような気分だ。

 

そしてやっとのことで最後の波紋を封じ込めることに成功した。

 

これにより、その異形のものは崩れてゆく。

 

 

「やったぞ、ついに……」

 

 

しかし我の言葉が止まる。僅かだが、2つの何かがこちらに猛スピードで飛んできたことだけは覚えていた。

 

 

爆風とともに我はゆっくりと落下していった。否、ゆっくりと感じただけかもしれぬ。

 

そして薄れゆく意識の中、我よりも早く落ちてゆく()を見た。

 

 

(すまぬ……)

 

 

そして最後に赤い塔のようなものが目の前に現れて意識は途切れた。

 

 

***

 

 

あの光景の数々は何だったのだろうか。

 

もしあれが本当に起こりえたかもしれない未来であったのなら、何とも残酷だ。どれも救いようのない絶望だ。

 

もしかしたら我の元の世界でも絶望的な状況なのかもしれない。

 

 

ああ、神よ。我が一体何をしたと言うのだ。それともこれが罰なのか?それとも運命なのか?

 

 

気づけば、一番最初の混沌とした空間にいる。

 

金色の龍も目の前にいた。

 

 

「一つ聞きたい、お前は神なのか?」

 

 

金色の龍は答えない。じっとこちらをみるだけである。

 

 

「答えぬか。それともそれが答えなのか。我は一体何をしたのだ。どうしてこんなことになってしまったのだ。神は一体何を求めているのだ……」

 

 

それでも彼は何も答えない。

 

その代わり、彼は静かにこう言い放った。

 

 

Tiid-Ahraan(龍の突破)

 

 

すると我の周りは光が包まれ、意識が急速に回転してゆく。

 

 

「な!?何をしたのだ!」

 

 

そして我の存在はその空間から消えた。

 

 

「……レッド・ドラゴンよ、頼んだぞ」

 




どうやら自衛隊と相性が最悪な方がログインするようです。

次回、炎龍(仮)編、始動!

ヨルイナール(特地の炎龍)「えっ?」

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