オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし 作:ArAnEl
「ところでだ、ヨルイナール」
「何だ、主人殿」
洞窟内で唐突にアルドゥインが話しかける。ヨルイナールは仔龍に餌を与えているところだ。何の肉かは知らないし、知りたくもない。
「仔龍はどうやってできるのだ?」
「え……」
「お前の仔龍を見てると不思議でな。なんせ我は初めて見るものだからな」
え、仔龍を見たことがない?もしかして思った以上にに主人殿は若いのか?それとも
「あ、うむ。それはだな、とある
「ほうほう、とある
「するとだな、ある一定期間経つと、卵ができるのだ」
「なんと、
「そしてさらに時間が経てば卵から孵化するのだ」
「ほう、非常に興味深い」
なんだか話が噛み合ってない気がしたが、あまり気にしないようにした。
「ではその儀式とやらをやって見せてくれ」
「ふあ!?」
もしヨルイナールが人間であればお茶やコーラーを噴き出していただろう。残念ながら、龍なのでそんなことはないが。
ヨルイナールは困惑した。これはどういう意味だ。もしや
炎龍にも関わらず口ではなく顔から火が吹き出そうな勢いで体温が上昇していく。そう、人間でいうドキドキしている状態らしい。
そして勢い余って渾身のブレスを
「ふむ、まずブレスをかけるのか」
ケロリとした顔で言う
へ?と耳を疑うヨルイナール。
マジで
「主人殿、今のは間違いだ。ところで、一応確認したいのだが、私が言ってるの『
「うむ、何をするか知らんが何らかの『
こりゃ完全にだめだ、とヨルイナールは心底思った。
「ではもう一つ確認するが、
「ああ、あの
「ジョール?」
「ああ、すまん。我の言葉で生き物、つまり人間や動物だな。奴らが何やら後ろや前に乗りかかって激しく動いていることだろ?」
知ってるんかーい!とヨルイナールは今度は逆に恥ずかしくなった。何だこの主人殿は、ふざけてるのか。ふざけてる、絶対。
「しかし、やつらはなぜあんな幸せそうな表情をしたり気分になるのだろうな。我には理解できん。まあ我の同族は街を滅ぼしたりすると同じ表情になるが」
なんだか主人殿はとてもサイコな発言をする。嘘でしょ?殺戮と交尾が同じ快感だと?てか同族ってドラゴン?それとも未経験の仲間を同族と呼んでるの!?
「主人殿、もう一つ聞きたい……主人殿の年齢は、いくつだ?」
せめて彼が未成熟龍であることを祈った。もし成熟した龍でこんな状態など悲しすぎる。というかかわいそうである。しかし彼女の予想を大きく裏切る答えが返ってくる。
「何を言っておるのだ?我はそんなことは気にしたこともないし、そのようなジョールの概念などない」
それを聞いたヨルイナールは全てを悟り、大きく畏怖するのであった。
「主人殿、無礼を許してくれ。まさかそこまで大きな存在だと気づかなかった」
「む?無礼?」
「私は主人殿が定命種だと勘違いしていた」
「む、つまり定命種ではなければ例の儀式では仔龍はできぬと?」
「おそらく……」
アルドゥインはううむ、と唸る。
「しかし、ここに仔龍がいるということは、お前は例の儀式を他の龍としているわけだな?」
これは聞いた本人からしたら相当恥ずかしくなる内容だ。人間でいうと「お前子どもいるけど、
「そ、そういうことにしておいてくれ」
「なるほど。ふむふむ、なるほど」
アルドゥインはニヤリと不気味な笑みを浮かべる。大概こういう時は良からぬことを考えているのが世の理である。
「ならば他にも龍がおるのだな。少なくともお前ほどの実力の。我は他の龍を探しに行く。しばらくこの地を離れるが、頼んだぞ」
「あ、うん。分かった……」
ヨルイナールは展開について行けず、とにかくイェスと言うしかなかった。
アルドゥインは物理法則を無視した形で飛び立つとあっという間に姿を消した。
その様子を遠くから見ているものがいたが、アルドゥインは特に気にしなかった。
「何だあの龍は?あんなのみたことねーぜ。それはそうと、炎龍の調子はどうかな?」
と呟くと背中の翼を羽ばたかせて飛んで行った。
アルドゥインが人間だったらコウノトリをガチで信じてる人みたいかな。
あと作者を嫌いになってもアルドゥイン様を嫌いにならないでください。