オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし   作:ArAnEl

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ゲートみたいな体験がしたい?そんな貴方に朗報です。
The Elder Scroll V: Skyrim に現代銃 mod を入れましょう。もはや別ゲーになります。


どうしてこうなった

 

約10年ほど前

 

 

「何でわざわざ海自さんとこ行かないといけないんだろ」

 

 

貸切バスの中で若かりし頃の伊丹陸曹長が呟く。

 

大学卒業して就職活動もめんどくさいので何やかんや安定している公務員になろうとしたのだ。そしたら陸上自衛隊幹部候補生学校に入校してしまって数ヶ月がたった。どうしてこうなった。

 

自衛官に向いてないと自負している。なのにいつの間にか募集事務所のおじさんたちに外堀を少しずつ埋められて気がつけば後に引けない状況で入隊してしまったのだ。

 

来る日も来る日もランニング、筋トレ、体力錬成、プレス(アイロン掛け)、ベッドメイキング……数を上げればキリがない作業のため時間などない。俺が望んだ生活ではないと思いつつも何やかんやで続いてる。

 

そして今日は陸海空の幹部候補生の顔合わせのような行事に参加するため、はるばる福岡県久留米市から広島県江田島市まで行くこととなった。今ここ。

 

毎年行われるこの行事だが、なぜ江田島かというと地理的に陸上自衛隊幹部候補生学校と航空自衛隊幹部候補生学校の中間辺りにあるからだとか。真相は不明である。アウェーの身からしたらとんだ迷惑である。

 

と色々思いにふけっているとついてしまった。陸自とはまた異様を漂わせる海上自衛隊幹部候補生学校、旧海軍兵学校に。

 

海軍マニアなら一度は訪れてみたい場所である噂の赤レンガもある。もしこの頃に『艦これ』みたいなものがあったなら伊丹ももう少し興味は持ったかもしれない。

 

さて、荷物置き各々がお世話になる部屋へと案内される。航空自衛官の幹部候補生もいる。

 

 

「いいか、伊丹。海自は基本変人が多いから気をつけろよ」

 

 

と防衛大卒の同期が囁く。変人とはどういう意味だろうか。同族(オタク)なら逆に仲良くなれるかもしれないと思うのであった。事実、陸自でもオタクは少なくないから別の意味の変人かもしれない。

 

 

「「こんにちは、短い間ですけどよろしくお願いします」」

 

「こちらこそー」

 

 

迎えてくれたのは優男系の男だった。自衛隊の平均よりは優しい顔している。身長は伊丹よりほんの少し高いぐらい。そしてお互い簡単に自己紹介することになった。

 

 

「加藤海曹長です。座右の銘は建前上は『尽力』、本音は『楽勝』。趣味は色々。よろしくー」

 

 

これが、後ほど腐れ縁となる二人の出会いである。伊丹はなんか自分に似てるなと思うのであった。

 

 

「ところで加藤曹長は一般大出身?」

 

「よく間違えられますねえ……」

 

 

***

 

 

「いててて」

 

 

目をさますと辺りが暗い。そして全身の痛み。また気を失っている間に過去の夢を見ていたらしい。走馬灯でなければよいが。

 

夜なのか閉め切った部屋なのか、とにかく薄暗い。しかし自分が柔らかいベッドの上にいることに気づき、周りの様子から監獄のようなところにいるわけではないようだ。

 

そして周りにはメイドさんたちがいる。

 

 

「こ、ここはどこ?」

 

「ここはフォルマル伯爵家のお屋敷です」

 

 

なるほど、状況を整理してみるところ、自分は今イタリカのフォルマル伯爵家の屋敷で看病されているらしい。

別に捕らえられているわけでないので無理に逃げ出す必要もないと思われる。

 

周りをよく見ると変わったメイドさんたちであることがわかる。

 

 

「どうかしましたかにゃ?」

 

「いや、別にお構いなく」

 

 

そう、猫耳、うさ耳、しかも天然のケモノ系メイドさんたちなのだ。一応ヒトもいるが、なんか髪の毛が蛇の子もいる。

 

うん、異世界だからこんなこともあるんだろうなと伊丹は納得する。伊丹はこういう時はかなり余裕があったりするようだ。

 

老メイドから得た情報であるが、伊丹はピニャの命により丁重に客人として、それもVIP扱いするよう念を押されているという。さらに伊丹に暴行を働いた女騎士(ボーゼス)たちはお叱りを受けたとのこと。

 

いずれにせよ、最悪の事態を免れたのは確かなようだ。

 

 

「この度は、イタリカをお救い下さり、真にありがとうございました」

 

 

メイド長の言葉と共にその場にいたメイド全員が深々と頭を下げる。

 

 

「イタリカをお救い下さったのは伊丹様とその御一同であることは我々を始め、街の者全てが承知申し上げていることでございます。このような無礼、許されるはずなどございません。もし伊丹様のお怒りが収まらず、この街を攻め滅ぼすと申されるようでしたら、我ら一同伊丹様にご協力申し上げる所存。ただ、フォルマル家のミュイ様に対してだけはそのお怒りの矛先を向けられることなきよう、どうかお願い申し上げます」

 

 

とさらに深々と頭を下げるのであった。それは見事な90度を超える日本人も顔負けのお辞儀である。

 

この言葉から、この家の者は帝国やピニャなどには忠誠心の欠片もないことがわかった。これはもしミュイに不利益が生じると分かればピニャを背中から刺すことも躊躇わないだろう。恐らく伊丹自身にも。なので調子に乗れば痛い目に遭うだろう。

 

 

「伊丹様。モーム()アウレア(蛇の髪)ペルシア(猫耳)マミーナ(ウサ耳)の4名を伊丹様専属と致します。どうぞ心安く、何事であってもご命じ下さい」

 

「ご主人様、宜しくお願い申し上げます」

 

(な、何でも!?)

 

 

健全な男性なら浮ついてはいらない状況であり、伊丹も例外ではない。あまり調子に乗ってはいけないのは理解してるが、ちょっとぐらいいいんじゃないかなぁ、と思うのであった。

 

 

***

 

 

「隊長、今頃死んでるんじゃない?」

 

 

と双眼鏡覗きながら呟く童顔巨乳もとい、栗林。実は第3偵察隊は健軍1佐と別れてUターンして伊丹のことを追跡していたのだ。

 

奪還も考えだが、伊丹が自分たちから手を出すなと言葉を残しているので桑原曹長は隊員たちを制していた模様。

 

 

「あの程度なら大丈夫だろ。あれでも隊長はレンジャー持ちだからな」

 

 

と富田は顔にドーランを塗りながら呟く。

 

 

「え?うそ?」

 

「いや、本当」

 

「冗談?」

 

「マジ」

 

「そのマジ、ありえない〜勘弁してよ〜」

 

 

と富田とやりとりしていた栗林が悲痛の声上げる。脳筋童顔巨乳でその胸の風船も筋肉の塊なんじゃないかと思われるほどの栗林の憧れ、レンジャー徽章を伊丹は持っているという。

 

状況を読めてないレレイ、テュカとロゥリィはレレイを通じて嘆いていて伊丹がレンジャー徽章とやらを持ってはいけないのは理由を尋ねる。

 

 

「伊丹隊長のキャラじゃなのよね〜」

 

 

曰く、レンジャー徽章を持つ者は鋼のような屈強な精神、過酷な環境にも耐え抜いて任務を遂行する猛者、などなど栗林によって存分に美化されて伝えられた。

 

彼女らはファンタジーの世界でいう狂戦士(バーサーカー)のように屈強でありながら、エルフのように環境に馴染み、どこぞの英雄が如く勝利へと導く猛者と認識した。

 

結果、無表情のレレイですら頬をほころばせ、残り2人に至っては笑いを堪えない状況になってしまった。言われてみれば暇さえあれば同人誌を読んでいるような伊丹には確かに似合わないという認識だろう。

 

 

「さて、そろそろ行こうか」

 

 

と富田の声で皆腰を上げる。

 

 

「あれ?あれは一体……」

 

 

テュカの声に全員が足を止め、その方向を見る。

 

暗くてよく見えないが只者ではない集団が音もなくイタリカの城門を通り抜けていく。数にして約10名。と思ったらまた別の方向から同じような集団が城門を超えて行く。

 

明らかに戦闘集団(プロ)である。

動きがかなり洗練されている。

衛兵なとは石などを投げて気を逸らしてその隙に忍び込んだりしている。

 

 

「何だあいつら!?」

 

 

桑原曹長は隠密行動中にも関わらず声を出してしまった。幸い、あまり大きくなかったので周りに特に影響はなかった。

 

 

「もしかしたら新手の敵」

 

 

レレイが呟くと一層空気に緊張が張り詰めた。

 

 

「もしかしたら、隊長を狙って……」

 

「多分隊長はその程度じゃ死にませんよ。G(名前を言ってはいけない例のあの虫)並に生命力ありそうですし」

 

「栗林、さすがに言い過ぎ……」

 

 

富田は隊長も大変だな、とため息をつくのであった。

 

 

「とりあえず、急ぐぞ」

 

 

***

 

 

「ご主人様、宜しくお願い申し上げます」

 

 

と四つの頭が下がる。そしてそのうちうさぎの耳がピクッと立つ。ついでに猫耳もピクピクと何かを察知したように動く。

 

 

「マミーナ、どうしました?」

 

「階下にて何者が鎧戸をこじ開けようとしています」

 

 

老メイドの問いにウサ耳メイドのマミーナが答える。彼女の発する雰囲気は先ほどのぽわぽわメイドから一転して暗殺者のようになった。猫耳メイドらゴロニャンメイドから豹のようになる。何これ、怖い。

 

 

「状況から察するに、恐らく伊丹様の手の者であろう。ペルシア、マミーナ。伊丹様の配下をこちらへ案内してきなさい」

 

「もし、他の者であったら?」

 

「いつも通りです」

 

 

ぽわぽわでゴロニャンな雰囲気はどこへいったのやら。仕方がない。なぜならマミーナはヴォーリアバニー(首狩りうさぎ)で戦闘民族である。ペルシアもキャットピープルというその名の通り猫人間。猫の身体能力なのでかなり強いかと思われる。

 

余談だが、あちらの世界(ニルン)にもカジートという猫型亜人がいるわけではあるが、こちらは頭部は完全に猫のような頭で、ケモノ系というより猫が二足歩行している感じである。猫のように隠密能力が非常に高いのだが、ペルシアも似たようなものだろうか。

 

ちなみに、うちら(現実世界)には猫型ロボット(青いタヌキ)なら次元を越えれば存在する。戦闘力は前者2種族が足元に及ばないほどだとか。

 

というわけで、マミーナとペルシアが迎えに行こうと扉に手を掛けた時、それは起きた。

 

窓に穴が開いたと思ったらゴトリと何かが床に転がった。

 

見た目はジュース缶みたいなもの。もしかしたらスプレー缶の方が近いかもしれない。

 

その場にいた者全員が警戒したが、それが何かはわからなかった。伊丹を除いて。

 

 

「あ……ちょ……おまっ」

 

 

ちゅどーん、という音はしなかったとだけは言っておこう。




次回予告、ついに最強の犬との遭遇!?

???「ああ、犬だよ。犬で悪かったな」

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