オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし 作:ArAnEl
そして奴がまた現れる……
あと今回から新章です。
フラグ戦とはフラグを立てまくる戦いではない
「意外といけますね」
「何だろう、蛇のような、鶏のような、魚のような……」
「固いけど味は悪くないね」
壊れたヘリの近くで焚き火を囲んで迷彩服の男たちが得体の知れない肉を頬張っている。何の肉かは知らない方が良いかも知れない。
「おい、あいつらまじで食べてるよ、アレ」
「大丈夫なのか……?」
「俺、レンジャーいたけどあれ無理だわ……」
と別のところで
「お前たちも食えよ!意外といけるぞ」
「「「え、え、遠慮しまーす!」」」
「別にしなくてもいいのに」
「まあ、普通食いませんね、これ」
よく見るとおそらくその肉の主であるとても大きな骨が散乱している。解体は上半身だけで、下は残っている。
「おや、やっと帰ってきたかな?」
しかし双眼鏡に見えるのは73式トラックのみ。
「俺、嫌な予感するわ……」
「隊長、フラグ立てないでください……」
嫌な予感とはホントよく当たるものである。
***
「なんてことをしてくれた!」
ピニャの怒鳴り声が広い広間全体に響く。
目の前いるのは彼女の率いる騎士団の一員のボーゼス・コ・バレステュー。縦ロールが特徴の金髪お嬢様騎士である。どっかの宮殿とバラと革命の少女漫画に出てきそうな女性である。
額からはピニャが怒りのあまり投げた杯が当たって血がわずかながら少し流れていた。
そして隣にいるのは拘束された上で泥まみれの怪我だらけの伊丹耀司。まさにジャ○アンがの○太をギタギタのケチョンケチョンにしたのを絵にした状態である。
「ひ、姫様。我々が何をしたというのですか!?」
ボーゼスは自分が何をしたのかを理解できないでいる。あくまでも自分は敵の捕虜を捕らえただけという認識であった。
「こともあろうに、その日の協定破り。しかもよりによって彼とは」
ピニャはもはやボーゼスの言葉など聞き流していた。怒りと不安と緊張で頭がフル回転しているようだ。
実のところ、これは自衛隊側にも非はある。通信手段の発達した現在でさえも、末端兵士までの連絡は難しいことがある。ましてや相手は中世レベルの文明である。自衛隊ならともかく、即日発効で直ぐに全部隊が停戦できるのはゲームや漫画の世界だけである。事実、第二次世界大戦終結後も敗戦国の一部の軍がそれを知らずに徹底抗戦した事例はある。なのでピニャが要求したとはいえ、自衛隊も少し浅はかだったのかもしれない。
ピニャは直ぐに伊丹の看病を指示してボーゼスたちに振り向く。
「貴様等、伊丹殿に何をした!?」
「わ、私たちはごく当たり前の捕虜として扱ったまでです」
この世界の当たり前捕虜の取り扱い方。それは徹底的に痛めつけることである。例えばあいてが走れなくなるまで馬で追い立てる、鞭で叩く、動かなくなったら槍でつつく、などがある。これは逃亡の意志を削ぐとともに奴隷として売る際に従順にさせるためであるらしい。
まあ、人道的を主張する自衛隊の世界でも、どっかの国では極寒地で強制労働、ガス室送り、情報を吐くまでの拷問など少し前まではあったから何とも言えないが。もしかしたらまだあるのかもしれない。
ちなみに、
「ああ……何て事を、何て事を……」
もしこれが伊丹だけではなく他の連中全員をいっそのこと捕らえてくれたならば抹消してそもそもなかったことにできるかもしれない。しかしそもそもあの
他にも、ピニャが危惧していたことは協定破りを口実に和平交渉の破綻からの戦争である。
まあ、日本だから多分大丈夫だろうが、姫様は知らない。ホントに我が世界の
「ここは、やはり素直に謝罪すべきだと小官は思いますが」
とピニャの側にいたグレイが口を開く。
「妾に頭を下げよ、謝罪せよと言うのか。もし相手が責任者の引き渡しや処刑などを求めてきたら妾は対応できないぞ」
「それでは戦いますか?あの亜神やジエイタイたちと?小官はそれだけはごめんをこうむりますな」
そう言われてしまえば返す言葉もない。戦えば負けることは目に見えている。
「ま、それは伊丹殿の機嫌次第でしょうな」
グレイは何やら含みのある言葉を残すとその場を離れた。
***
「えー、これより健軍1佐の要望により、救出作戦を行う。対象は伊丹耀司2等陸尉。まあ顔や特徴はここ尾行している間に確認したと思うのでわかるだろう。
また、追跡中にかなりの体力消耗及び負傷が確認されている。恐らく自力で動くのは無理だろう。事前に打ち合わせした通り行動を心がけよ。
また、可能な限り非殺傷、隠密行動にて任務を遂行せよ。質問は?」
加藤は薄暗い中僅かな光で部下に指示を与える。
「非殺傷、ノーアラートで達成したら何か特典あるのですか?」
と隊員の一人がジョークをとばす。
「Sランククリアなら帰ったら全員に食いたいもんなんでも奢ってやる」
「「「よっしゃ!」」」
それを聞いた隊員たちはやる気に満ち溢れたようだ。一体全体こんなので良いのか、自衛隊よ。あとなんとなくフラグを立てた気がしなくもない。
そしてミーティングも終わり、装備の最終確認を終えると闇に溶け込むように姿を消していった。
そして別の方向から犬のような動物が姿を表す。
「やっと街に着いたな。それにしてもさっきのやつら闇の一党みたいなやつらだぜ」
そしてとことことイタリカへ向かっていった。
今後ともこのように短めな話で維持するか、それとも長めで投稿回数へらすか、どちらがよいのでしょうね。
何かアドバイス、要望があれば是非ご遠慮なくコメントお願いします。
あといつもながら応援してくださる方、ありがとうございます。