オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし   作:ArAnEl

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お久しぶりです。
最近我が主、アルドゥインの存在が(物理的にも)薄いですな。でも一応原作はゲートだから(震声)。



救援隊は?俺たちさ

健軍1佐以下10名はなんとか形を残しているUH-1Jの後部で固まっていた。

 

機体が粉々にならなかったのはパイロットの力量だろう。燃料に引火しなかったのも運が良い。それにより、この残骸が現在彼らの最後の砦なのだ。

 

幸い死者はいないが、両パイロットを含む4名が重軽傷。その内の2人が脚の骨折を負っている。

 

彼らが出られない理由にもう一つある。

 

 

「ちっ、まだいやがるぜ。もう6時間は経っているってのによ」

 

 

ヘリからそう遠く離れていない場所から翼竜が2頭こちらを見張っている。

 

元々3頭いたが、墜落直後に襲ってきた個体の頭部に集中的に攻撃することでたまたま目に致命傷を与えたおかげで撃退に成功したのだ。その個体はどっかへ行ってしまった。

 

そして残り2頭は同じ過ちを繰り返さないよう学んだらしい。

 

 

「くそトカゲどもめ……ずる賢いぜ。俺たちが出てきた瞬間にゴチになるつもりだ」

 

 

隊員の一人がつぶやく。6時間も10人の男が密集していればさぞ大変だろう。しかし健軍はそんな中でも現状を冷静に分析しつつ、今回の事案についても分析していた。

 

確かに油断というか楽観視し過ぎたことは認める。そしてここが元の世界と常識の異なる世界だという事を忘れていた。しかし楽観視と言ってもそれなりの緊張感ももちろんあったのは確かであり、多少の問題にも対応できるよう日々訓練を積み重ねていたことは自負できる。

 

では他にどんな原因があるのだろうか。まず今までの情報が十分でなかったと思われる。銀座事件、アルヌス戦における経験から翼竜はそれほど速くないという情報があった。しかしこれはあくまでも人が騎乗している場合であることを見逃している。

 

人という物理的な重りがなくなった上、さらに彼らは本来人間なら耐えられない速度、動きができるようになったと考える。

 

そして予想以上の知能。野犬のように一気に襲いかかるのではなく、人間のような高度な戦術。波状攻撃がまさにそれを証明していた。彼らが元から知能が高いのか、それとも知能の高い個体が指揮していたかは謎である。

 

他にもなぜレーダーなどに反応してないかや、 そもそもなぜ得体の知れないヘリに攻撃を仕掛けたのかなど疑問の余地はあるが、それ以上考えこもうとしたところ突然の銃撃の音で我に返る。

 

 

「どうした!?」

 

「奴らがまた近づいて来たんで威嚇射撃しました!」

 

「そうか……次は緊急時以外は一報入れるように」

 

「わかりました!」

 

 

翼竜たちはこの威嚇でまたしばらく様子見することにしたようだ。もうこうなれば我慢比べだ、と健軍は思った。

 

まだ彼は諦めていない。無線が壊れ、連絡手段を失っても一つだけ分かることがある。自衛隊は仲間を見捨てない。救援隊は必ず来る。

 

 

***

 

 

「隊長、あれです」

 

 

加藤は双眼鏡で言われた場所を見ると、なるほどヘリの残骸から少し離れた場所に2頭の翼竜がそれを監視するように待機していた。

 

 

「あれSM-2やシースパロー(艦対空ミサイル)あれば楽勝で倒せるのになあ」

 

「隊長、そんな高価なもの我が社(防衛省)が認めるわけないじゃないですか」

 

「冗談だよ」

 

 

でもやっぱりミサイル欲しいなあ、と小さくつぶやくあたり多少は本気かもしれない。

 

 

「それはおいといて……」

 

 

加藤は部下に向かって最終的な打ち合わせを行う。

 

 

A(アルファ)班及びB(ブラボー)班から2名ずつ俺の直接の指揮下に入れ。うち、1名は特殊選抜射手とする。他は各班長の指示に従ってイタリカへ行け。後は事前に指示した通り」

 

 

それだけ伝えると各人は覆面に着ける。ドーランを塗った顔の上にさらに覆面を着けるのでなかなか奇妙である。逆に目立っている気がしなくもない。

 

指示通り加藤以下5名以外はそのまま自転車でイタリカへと急いだ。

 

 

「A1とA2は俺についてこい。B1とB2は射撃地点へ移動せよ」

 

 

指示通り2人はどこかへ走っていき、3人はほふくで目的地へとゆっくりと向かう。

 

比較的草の多い草原地帯なので無事翼竜に見つかることなくヘリの近くまでたどり着いた。見つからなかっただけで、翼竜は何やら不審に思っている。どうやら視覚以外にも感覚が鋭いらしい。

 

加藤は半開きのドアの縁を軽く叩いた。

 

 

「誰だ!?」

 

 

隊員の何名かが音の方向に一斉に銃口を向ける。

 

 

「味方だ!」

 

「へ、変態!」

 

「紳士!」

 

 

一体誰だこんな合言葉を考えた奴は、とそこにいる隊員のほぼ全員が思った。しかしこれはこれで日本人にしか通じないから秘匿性は高いかもしれない。女性隊員が聞いたらセクハラものであるが。

 

隊員が銃の構えを解くと加藤は少しだけスライドドアを開けると健軍1佐に報告する。

 

 

「特別任務部隊隊長加藤1尉です。救援に参りました」

 

「うむ、待っていたぞ」

 

 

健軍を含む第4戦闘団の隊員は一気に士気を取り戻した。疲労困憊ではあるが、表情に希望が見えたようである。

 

 

「ところで、救援隊は?」

 

「俺たちさ」

 

 

どうやら加藤たちを斥候部隊か何かと勘違いした隊員に対して答えた。それを聞いた他の隊員たちの目から光が薄れたのは気のせいだろうか。まあ予想はしていたが。

 

健軍は斥候部隊であろうとまず発見されたことが大進歩であったと考えているため、落胆はしなかった。彼の自衛隊は仲間を見捨てないという信念は確信に変わった。

 

ただ気になるのは彼らはどこの部隊かということだ。特別任務部隊と言っていたが、アルヌス駐屯地にそのような部隊は聞いていない。覆面をしているところから秘匿性の高い部隊、特殊部隊と予想できる。

 

 

S(特殊作戦群)か?」

 

「……その問いには答えかねます」

 

 

多くは語らない、それが十分な答えだと健軍は理解した。肯定も否定もしない。ご想像にお任せしますと。

 

 

「我々だけでアルヌスに送迎は厳しいですが、そのための基盤なら作れます。まずここから脱出して重軽傷者の手当てをしましょう」

 

「しかし怪我人をあの翼竜が待ち伏せしているなか脱出させるのは厳しいぞ。2人は足を骨折している。それに……」

 

 

健軍は加藤とその部下2人を見る。恐らく人数が足らないとでも言いたいのだろう。

 

 

「健軍1佐、特に問題ない隊員の人数は?」

 

「私を含め6人だ」

 

 

今度は加藤が健軍の部下5人を見る。

 

 

「十分です」

 

 

***

 

 

不穏な気配を察したのか、翼竜がゆっくりと近づいてきた。

 

先ほど威嚇射撃を受けた距離に入っても反応が無いのを確認すると、2頭の翼竜は一気に低空飛行体勢に入り突撃してきた。

 

 

「今だ!てっー!(撃てー!)

 

 

健軍の号令の下、ヘリ内で射撃体勢に入っていた隊員が一斉に64式小銃、軽機関銃(MINIMI)機関銃(M2ブローニング)の弾幕を張る。

 

予期せぬタイミングの反撃に翼竜は驚き、飛行をキャンセルしそのまま地面に伏せる。

 

小銃と機関銃の弾は翼竜の固い背中や頭部の鱗に弾かれる。

 

しかし撃滅が目的ではない。足止めを確認するとすぐに次の行動へと移行する。

 

 

「よし!怪我人を降ろせ!」

 

 

制圧射撃の数名を残し、隊員は怪我人を特別任務部隊の隊員に預けると特務隊のA1とA2はファイヤーマンズキャリーという担ぎ方で特に重傷者の2人を丁寧運びだす。

 

制圧射撃が少し弱まったことと、さほど驚異ではないと認識した翼竜はヘリから人が降りていくのを見るとトカゲのように地を這って進撃を続けた。翼竜には意外と丈夫な腕があるのでこれが可能なのだろう。

 

 

「健軍1佐!また進撃をして来ました!止まりません!」

 

 

第5戦闘団の隊員が叫ぶ。翼竜はトカゲのようにかなりの速さで迫ってきた。

 

 

「いいからそのまま出ろ!」

 

 

加藤は残りの重傷者を運搬中の健軍の部下を叱りとばす。やはり機関銃と小銃各2丁の火力では翼竜2頭の制圧は厳しかったようである。

 

 

「お前たちは先に行け!」

 

「隊長が退避するなら自分たちもします」

 

 

機関銃を構えている健軍は他の隊員に退避するよう命令するが、誰一人とその場を動かなかった。

 

そしてヘリからわずか10mほど離れたところまで翼竜来てしまった。

 

飛びかかろうとさらに頭を低くしたそのとき、1頭の翼竜の頭がはじけた。スイカ割で中途半端に潰れたように形を残しつつ弾けた。

 

そしてほんの一瞬遅れてやってきた銃声が微かに響いた。

 

その場から約500m離れたところから2人の隊員が巧妙に隠れていた。

 

 

D(デルタ)1、命中、ヘッドショット、無力化確認。次の目標D(デルタ)2、動きが止まる」

 

 

高性能双眼鏡を覗きながら情報を提供する隊員B1の隣には大きな狙撃銃を伏射で構えるB2が微動だにせず次の目標をスコープ内に捉えていた。

 

バレットM82

 

彼が使っていたのはアメリカ製のかの有名な対物ライフルであるが、様々なカスタムが施されており、恐らくオリジナルかと思われる。

 

報告ではM2ブローニングの12.7mm貫通弾を翼竜の腹部に当ててやっと効果があるとされている。

 

しかし彼が使っているのは本来装甲車など硬い対象を破壊する貫通力を高めた狙撃銃である。

 

さらにもう一つ工夫がされている。

使用弾は『Mk.211 Mod 0』、HEIAP(鉄鋼焼夷炸裂弾)である。

 

戦車や装甲車というものは実は予想以上に頑丈であって、単に貫通力を高めれば倒せるわけではない。この種の弾のように、貫通直後に炸裂や燃焼効果を持たせることにより内部の機関、弾薬、乗員などにダメージを与えるのだ。

 

今回は装甲車ではなく生物である翼竜に使われた結果、効果は抜群であった。頭部の比較的弱い側面から進入した弾は頭蓋骨もろともぐちゃぐちゃにしてしまった。

 

ちなみに、人間に使った場合炸裂する前に貫通してしまうが、下手すればそのままの威力で胴体真っ二つや、最悪何らかの原因で内部に残った場合、仮面ライダーの怪人負けの人体爆発ショーになるかと思われる。

 

 

「健軍1佐!貴方が最後です!」

 

 

健軍は機内に誰も残されていないことを確認すると機関銃を抱えて降りようとする。

 

しかしもう1頭の翼竜がそれを見逃すはずがなかった。怖気付いて止まったと思われていたが、突如跳躍して一気に距離を縮める。

 

その予想外の速さでB2はスコープから対象を逃すがすぐにまた捉える。しかしすぐには撃たなかった。

 

スコープ内にはっきりと見えた。健軍に食らいつこうとする翼竜、それを避けとする健軍。

 

そして翼竜の目にナイフを突き刺す自分の上官。

 

全てはまるでスローモーションのように感じた。極度の焦りからだろうか。いずれにせよ、片目を失い視覚の悪化及び激痛で翼竜は紙一重で健軍を逃す。

それを確認すると、まず翼竜の尻尾の根元辺りを狙う。

 

 

命中、貫通、そして炸裂。

 

 

翼竜は千切れた尻尾によりバランスを崩し、重心が前に傾いたことにより頭から落ちるように転ける。

 

次に右の翼の付け根。

 

 

命中、貫通、そして炸裂。

 

 

右の翼を失い、左右対称のバランスを崩した的はこちらに腹を向ける形で倒れる。

最後に、健軍と加藤が炸裂による危険区域を出たところを確認する。

 

狙うは心の臓。しかし胸の鱗で弾かれる可能性がある。だから腹を狙う。

 

 

命中、貫通、炸裂は確認できず。

 

 

しかし翼竜は体を一瞬うねらすと、そのまま沈黙する。

 

 

「D2の沈黙を確認。制圧完了」

 

 

B1が自らと隊長に報告している声が聞こえた。

 

スコープ内に映る男はゆっくりとこちらを振り向くと、親指を上げた。

 

 

***

 

 

西方砂漠、オブリビオンの門

 

 

沈黙していた門が真紅の光を放つと中からそれは出てきた。

 

 

「ったく、ご主人様はホントひでーぜ。何回喧嘩したら済むんだホントに。また仲裁してくれるやつさがさなきゃな」

 

 

そう言ってトコトコと4つ足で東へと向かった。




またあちこちで映画のネタ使ってしまった。いくつわかったかな?

さあ今回は誰が来たのでしょう。

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