オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし   作:ArAnEl

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最近ペースが早い?

そりゃ彼女もいなければ夏なのにビーチや花火と見に行かないからね。

結論、暇……(泣)


要約すると一話だけでできちゃったりする

炎龍が倒された。

 

という衝撃的な事実でさえ夢物語であるのに、これに追加して

 

 

悪魔のような漆黒龍が現れた

 

そして炎龍が蘇った

 

炎龍を倒した者が苦戦する

 

しかし必死の末その両方を撃退する

 

 

といったどっかの少年漫画雑誌のシリーズものにありそうな長編ストーリーのような話であった。本気で要約するとたった数行でおわってしまうとは……

 

しかし伝聞とは恐ろしいもので、伝わっていくうちに尾ひれ羽ひれついて、「何それ、すげーなおい!」状態になってしまった。もはやおとぎ話ではなく、神話になってしまった感じである。

 

そのため、伊丹たちと別れたコダ村の避難民たちもこの語り部として今後の生活に困らなくなったという。

 

 

***

 

 

とある町酒場にて

 

 

ピニャは部下の騎士ノーマ・コ・イグル、女性准騎士ハミルトン・ウノ・ローと共に情報収集をしていた。

 

彼らは一応身分を隠して変装しているつもりだが、やはり町酒場に少し華美な鎧をつけた騎士は珍しいようである。まあこの土地の人々はあんまり気にしてないようなので問題はないだろう。

 

 

「騎士ノーマ、どう思われますか」

 

「……これだけ多くの避難民が言うのだから嘘ではないだろう。だが炎龍というのは信じがたいが」

 

「私はここまで皆が揃えて言うのであれば、信じても良いような気になっています」

 

 

ノーマとハミルトンが議論をしていると酒場の女給がワイン瓶を彼らのテーブルにどんと置く。

 

 

「ほんとだよ、騎士さん達。炎龍だったよ〜」

 

「ははは。私は騙されないぞ」

 

 

古代龍、新生龍、無肢竜、翼竜の総称としてドラゴンなので、きっと間違えなのだろうという口調であった。

 

 

「まぁまぁ、気を悪くしないでよ。私は信じるからよかったら話を聞かせてくれないかな」

 

 

ハミルトンはチップにしては破格の額の銅貨数枚を渡すと、機嫌を損ねていた女給の表情はパッと変わった。

 

「これだけ貰ったんだ。とっておきの話をしてやらなきゃね」

 

そう言って話し始めた。

 

………

……

 

 

そう、私たちは炎龍の報告を受けてすぐ準備して避難したね。

 

でも途中で荷車が動けなくなったりした人たちもいたね。私もその内の1人さ。

 

もうどうしようもなく途方にくれてしまったね。もう通り過ぎていく人の目が私たちを哀れんで見るわけよ。

 

でもね、もう諦めようかと思ったとき彼らが来たのさ。

 

誰って?それはまだらな緑色の服を着た連中さ。全部で12人、その内2人が女だったね。

 

なに?女はどんな姿だって?

 

まったく、男ってみんなそれだねぇ……

 

まあいいや。背の高い女がいたね。日中は兜を被っていてよく見えないんだけど、野宿の時ちらっと見えたよ。

 

馬の尻尾みたいに束ねている髪を解いたとき、ありゃ女の私でも見惚れたねぇ。カラスの濡れ羽色と言うのかい?

 

艶の入った黒髪でさ、一体どうしたらああなるんだろうねぇ。体つきもほっそりしていてね、異国風の美女ってああいうのを言うんだろうね。

 

そしてもう1人は猫みたいな女だったね。小柄で栗色の髪で男みたいに短めだったよ。元気で子供達の面倒見もよくて子供はなついてね。

 

そして何よりも腕っ節が強い。男同士の喧嘩があったときなんか目にも止まらない速さで蹴ったり殴ったりしてあっという間に男どもは伸びちまった。

男はそれ以降怖がっていたね。

 

あ、そうそう。体つきはすごかったね。小柄なのに胸が牛並みに突き出てそのくせ腰は細く締まってる。顔は綺麗というより可愛いって感じさ。女としてあれは許せないね。

 

こら、そこ興奮するじゃあない。話が続けれなくなるよ!

 

ま、そういうわけだけどなんとか進んでいけたね。そしたらあいつがやってきたのさ。

 

赤い龍、足と腕がついていてコウモリの羽みたいなのがついてたバカでかいやつだよ。ありゃもう誰がみても炎龍だよ、炎龍。

 

私たちは正直もう完全に諦めたね。なんだって蜘蛛の子散らすように逃げるあたいらを焼いては食う、踏み潰しては食う、そりゃ絶望するよ。

 

でもね、そんななか、緑の連中はなんとあの炎龍に立ち向かって行ったんだよ。

 

連中は馬がいないのに馬よりも速く走る荷車に乗って魔法の杖で応戦したよ。よくわからない魔法だけど、その杖から雷のような音がしたね。

 

でもその程度では効かなかった。それでも連中は諦めなかったね。

 

そして連中の頭目らしい男が指示出すとアレが出てきたのだよ。

 

特大の魔法の杖さ。あたいらは勝手に鉄の逸物と呼んでいるけどな。そしてコホウノ・アゼンカクニという呪文を唱えるととんでもない音と共に炎龍の頭に穴が開いちまったんだ。

 

そのときは皆が息を呑んだね。炎龍がこの世とは思えない叫びを上げると大きな音をたてて倒れたんだよ。

 

そりゃもうみんな大喜びさ。炎龍が倒された、村に帰れるってね、そしたらやつが来たんだよ。

 

……

 

何?続きが聞きたい?だったらもっと出しな、周りの男ども。

 

あたいはこの騎士さんたちに話してんだよ。これ以上あんたらにはタダ話するわけにはいかんよ。そら、いい子だ。では続きと行こうかね。

 

そう、やつ。それは真っ黒な鱗をした龍が出たんでさ。大きさは炎龍よりほんの少し小さめ、でもその分翼が大きくて飛ぶのは早かったね。そして真っ赤な眼、口、そしてところどころ燃えているような色もあったね。腕は無かったかも。

 

そしたらみんなまたパニックさ。でも今度はみんなわかっていたから比較的早く準備できたよ。緑の人も隠れて機会を伺っていたさ。

 

できれば戦わなくて済むならそうしたかったんだろうね。

 

そしたら真っ黒の龍は炎龍の残骸に向かって何やら言ったのだよ。

 

何?龍は喋らない?あたいが見たんだから喋ったんだよ!黙って聞きな。

 

そしたらさ、あたいら全員目を疑ったよ。炎龍が蘇ったのさ。

 

あんな魔法が世の中には本当にあるんだねぇ。できればそれで亡くなったみんなを生き返らせて欲しいもんよ。

 

もちろん緑の連中も攻撃したさ。あの鉄の逸物が見事真っ黒な龍の頭に当たったさ。

 

ところがどっこい、やつには効かなかったんだよ。まるで何事もなかったようにさ。ああ言うのを魔王って呼ぶんだろうね。

 

そしたら黒い龍は怒ってさ、何か魔法みたいなものを唱えたのさ。

 

そしたら結構多くの人が吹き飛ばされたね、もうそれは竜巻にあったみたいにさ。もちろん緑の連中もさ。

 

すると咄嗟に大きな斧のようなものをを担いだ緑の連中と同じ服を着た正直が応戦するのさ。あとで分かったけどどうやらエムロイの神官だったらしいけどね。

 

それでも苦戦さ。そしたら金糸のような髪をしたエルフと銀髪の魔法使いの少女も援護したのさ。

 

それに気を取られた真っ黒な龍は一瞬油断したのだろうね。

 

エムロイの神官は渾身の一撃を龍の膝に叩き込んだのさ。そりゃ攻撃は効かなかったさ。でも大きな力でものが当たったんだろうよ。

 

その龍、回ったのさ。ホントに。膝を打たれて思いっきり1回転半してさ、仰向けに倒れたよ。あれはすごかったねえ。

 

そして最後の一撃を加えようとしたところ、そいつは幽霊みたいになっちまってさ。一切触れなくなっちまったみたいなのよ。

 

そりゃ、幽霊と戦ってたんだったら勝ち目はないよ、死んでいるんだし。そしてそのままどっか行っちまったね。

まあ、少しは痛い目をみたのかもね。

 

そんな感じで、私たちがなんとか生き延びたってわけよ。

 

……

………

 

物語が終わったが、もはやスケールが大き過ぎて誰もが言葉を失った。

 

 

「鉄の逸物……?」

 

 

確かにわかりやすいと言えばわかりやすい(紳士の方なら特に)が、もうちょっと他の例えはなかったのか(違う単語ならR18タグをつけかねない)と思う。

 

 

「と、とにかく、立派な者達です。異郷の傭兵団のようですが、それほどの腕前と心映えならば是非にも味方に迎えたいと思いますよ。いかがでしょう姫様?」

 

「そうだな、漆黒龍を撃退した能力のあるものたちだ。是非ともそうしたい。それに彼らの武器や魔法に妾は興味がある」

 

 

ピニャはため息をつく。最近神話のような話ばかりで疲れているようである。

 

 

「……ハミルトン、お前確か婚約者がいたな。鉄のイチモツとやらどんなものかわかるか?」

 

 

男性経験のない姫様はまず部下に聞いてみることにした。男性のノーマに直接効かないのは何故か、とか気にしてはいけない。

 

ハミルトンは予想外の質問にスープを吹き出してしった。

 

「ぶぼっ!?確かにいますけど、私は乙女です!あんなものの話を口にできるわけないじゃないですか!……あっ」

 

「ほう、あんなものか」

 

 

ピニャは顔を真っ赤にして小さくなってしまったハミルトンを見て眉をひそめた。




おそらく前の話に出てきた情報幹部のせいで絶賛評価低下中。なのにお気に入りは増える。

情報操作されてるな、こりゃ。

(皆さんありがとうございます)

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