オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし   作:ArAnEl

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皆様のおかげでここまでこれました。だいたい構想は3部作、ネタバレしちゃいますとタグ付けされている作品のキャラは必ず出す予定です。少し気が早かっただけです。

あと今更ながらですが、追加設定多いですが許してくださいね。


サルベージ

「対空戦闘用意!」

 

 

伊丹の判断と指示は早かった。連戦で疲労はあるものの、アドレナリンのせいなのかまだ戦える状態だった。

 

 

「黒川陸曹たちは避難民の援護を!あと残りは草むらに隠れて迎撃準備だ!」

 

 

伊丹は的確に指示した。

 

 

「でも対空兵器なんかないっすよ!」

 

 

倉田が草むらに向けて運転しながら叫んだ。

 

 

「なくても小銃と機関銃があるだろ、バカタレ!あるもので対処する、それが自衛隊だ!」

 

 

さすがおやっさんの言うことは違う、と伊丹は少しニヤついてしまった。

 

桑原曹長が倉田を軽くどつき、着々と戦闘準備する。

 

伊丹と勝本陸曹は車両を降りて草むらにホフクの姿勢で隠れた。

 

残りは誘導したり、車両をいつでも動かせるよう準備、待機した。

 

ともかく、何とか未確認生命体が到着する前に木々の生い茂る草むらに皆隠れることができた。

 

 

 

ほんの少しして遠くからバサッ、バサッと羽ばたくような音がした。

 

伊丹は嫌な予感がした。大概こんな時の嫌な予感は当たる。

 

そして未確認生命体の姿が(あら)わになった。

 

それは漆黒の鱗に覆われ、目と口と鱗の隙間の所々が真っ赤な炎のような漆黒の龍だった。翼が体に対してかなり大きく、それを含めば炎龍と大きさはあまり大差はなかった。

 

 

「何すかね、カオスドラゴンですかね……」

 

 

倉田が何かおかっないものを見たような顔をしながら囁いた。

 

まあ、カオスドラゴンという名前のドラゴンはたくさんの作品にいるのであながち間違ってないかもしれない。

 

伊丹たちは息を殺して隙を伺った。

 

もし特に何事もなく済むのであればそれに越したことはない。実際、唯一効果のある対戦車砲も残り2発しかないし、他の弾薬も多いとは言えなかった。

 

なので、可能な限りこちらを有利にするには待ち伏せによる奇襲しかないと判断した。

 

もちろん、先ほどの失敗を繰り返さないよう対戦車砲を担いだ勝本陸曹の後ろには誰も入らないようにしている。

 

その龍は先ほど戦闘が行われた場所で羽をゆっくりと羽ばたかせながらホバリングしていた。

 

あんなゆっくりと羽ばたいてよくホバリングできるな、と思うが、そこは龍だから……と伊丹は思ってしまった。

 

漆黒の龍は辺りをゆっくりと見回していた。

 

そしてこちらを向いた。

 

いや……

 

目が合った。

 

 

「なっ!?」

 

 

伊丹は咄嗟に顔を地面に埋めた。

 

目が合った?いや、気のせいかもしれない。しかし何か心の中を見透かされたような悪寒が一瞬全身を走った。

 

伊丹は思った。こいつはヤバイ。

 

 

***

 

 

アルドゥインが目的地に着いた頃は既に戦闘は終わり、炎龍の残骸が残っているだけであった。

 

 

(ふむ、龍の反応が消えたと思ったらやはり一足遅かったか……)

 

 

頭部に大きくない穴、目に刺さった矢、あちこちにある鱗の傷、かなり激しい戦闘だと判断した。

 

 

(ふむ、珍しい。スカイリムにいるフレイムドラゴンのような種類だが、エンシェントドラゴン並みの年齢だな。しかも鱗に刺さった矢は皆無、目のみの矢による損傷。

つまりスカイリムのドラゴンとは比べ物にならないほどの硬度の表皮か。そしてそれを上回る貫通力を持つ破壊力の武器か魔法……いや、魔法の形跡は無い。ならば武器だな)

 

 

アルドゥインは残骸がまだ新しいこと、そして生命の消失から時間が経ってないことから近くにまだ敵はいると判断した。

 

生命探知龍語(スーム)を静かに唱えると、少し離れたところに何人かが草むらに隠れていた。

 

迷彩が施され、巧妙に擬装された自衛隊もアルドゥインにとっては蛇の熱源探知能力よりも簡単に見破られてしまった。さすがはチート龍。

 

多くの赤いオーラの中に、幾つかの強いオーラなどが感じられた。恐らく兵士か闘争心が強いものだろう。他にもよくわからないオーラがあったが、まあ特に問題はないだろう、と判断した。

 

 

(ふん、こそこそするとは暗殺教団か闇の一党のような奴らだな。しかしそんなことどうでもよい。定命の者に変わりはない)

 

 

アルドゥインは心の中でほくそ笑んだ。そしてその中の隊長と思わしき者に心臓が凍るような睨みを効かせた。

 

案の定、睨まれた相手は顔を伏せて縮こまってしまった。

 

大抵の定命者はこれでしばらく行動できなくなる。

 

 

(グフフフ、定命者どもなどしょせんこんなものよ。我の敵ですらないわ!

Koraav daar ahrk faas, Joor!(これを見て恐怖するがよい、定命者ども!))

 

 

アルドゥインは大きな咆哮上げると炎龍の残骸の上にホバリングした。

 

 

「隊長、あれは一体何するつもりなんですかね」

 

 

パンツァーファウストを構えた勝本が隣の伊丹に質問した。

 

 

「え?あ、えっと、多分つがいとかなんじゃない?」

 

 

蛇に睨まれた蛙のように硬直していた伊丹は部下の言葉で我に返った。

 

 

「そうですかねえ、全然違う種類に見えますが」

 

 

息を潜めていた2人だが、龍の次の行動に度肝を抜かれた。

 

 

Ziil gro dovah ulse!(龍の肉体に繋がれた魂よ!)

 

 

その低音の威圧的な声はまさにラスボス感満載であった。

 

 

「龍が喋った、だと!?」

 

 

伊丹は驚きを隠せなかった。言っている言葉は全く理解できなかったが、明らかに言葉であることは理解できた。

 

 

「隊長、あれ何か喋ってますけど、なんていってるんですか?」

 

「そんなこと知るわけな……い?」

 

 

伊丹が言葉を全部言切らなかったのには理由がある。理解を超えた現象が目の前で起きているからだ。

 

炎龍の残骸がピクピク、と動き始めたからだ。

 

 

(まずい、もしかしたらあれは単なる言葉ではなくて呪文だ!復活の呪文か?それとも何か別のものか?)

 

「パンツァーファウストは待機、その他、目標漆黒の龍!射撃用意!」

 

 

伊丹の号令に皆標準を漆黒の龍に合わせた。主に目などの頭部を。

 

 

Slen tiid vo!(肉体よ時に逆らえ!)

「てい!」

 

 

アルドゥインの呪文と伊丹の射撃命令がほぼ同時にかかった。




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アルドゥイン「我が人間の質問に答えよと!?」

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