オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし 作:ArAnEl
私は英語版派なので……
コダ村の皆が避難準備中、少し変わった風情の人がいた。
ほとんどの人が生活に必要な物などを馬車やカートに積み込んでいるのに対し、彼らは本や木箱、袋など、良く分からないものを積んでいた。
魔導師カトーとその弟子、レレイである。
レレイは14〜15歳ぐらいのプラチナブロンドのショートヘアの少女であった。
「お師匠、これ以上積むのは無理がある」
さすがに荷車に詰めすぎたのか、ビクとも動かない。
似たような経験なら他の世界で重量オーバーした
運の良いことに、こちらの世界ではそんなことはないので少女と老人が爆散することはないのでご安心を。
レレイは師匠に荷物の組み替えを行うこと、そして師匠の
レレイは先に荷馬車に乗ると、
「師匠も早く乗って欲しい」
「あ?わしはお前のような少女に乗る趣味はないわいっ!どうせ乗るならお前さんの姉のようにボン、キュ、ボーンな……」
案の定日本ではセクハラ扱いされる発言(下手したら変質者扱い)に対しレレイは冷たい視線のまま空気の塊を魔法で投げつけた。
この子、ドヴァキンの才能ありまっせ。
「これ!やめんか!魔法はそんなことに使ってはならん!冗談の通じんやつめ……だからやめんか!」
「冗談は、友人、親子、恋人など親密な関係があるものにおいてレクレーションとして役立つ。だけどこの手のものの場合、少女にたいしてはかなり不適切」
レレイは至極まっとうなことを相変わらずポーカーフェイスで語った。むしろこっちのほうが怖いと思う。
「それでは、出発するかの」
しばらくすると、すぐに馬車の渋滞に巻き込まれてしまった。
どうやら前の方で荷物の詰めすぎで荷車が壊れてしまい、それが道を通せんぼしているらしい。
「様子見てくる」
レレイは一言つぶやくと荷車を降りて前の方に行った。
事故現場には見慣れない服装と言葉を話す人たちが手振り身振りで村民に何かを伝えようとしている者と、荷車の片付けなどを行っている者、そしてそれを指揮する者がいた。
彼らは緑に黒、茶、深緑色の斑点をした服装をしていた。そして何か長い物を背中に背負っていた。
レレイは直感的にどこかの兵士が何かだろうと判断した。
魔導師である彼女は彼らに興味津々であった。未知の物に触れたりすることは彼女の探究心をくすぐった。
しかし、そのため気づかない内に近づいてしまったのか、一匹の馬がパニックを起こして暴れ出した。そして一番近くにいたレレイに襲いかかろうとした。
パン、パン、パン!
緑の兵士の一人が腰から小さな鉄のような物を咄嗟に出した瞬間に雷のような音が耳をついた。
そして先ほどまで暴れていた馬がその場にどっと血を流して倒れた。
レレイは何が起きたのかを理解できなかった。
それでもわかったのは、彼女はたった今緑の人に命を救われた、ということだ。
***
『パワーバランス』
力の均衡と訳されるこの言葉は、よく国際情勢における国家間、勢力間において良く使われる。
良くある例としては冷戦時のアメリカ勢力とソビエト勢力であろう。
この2つの勢力は全面核戦争、または第三次世界大戦まで一触即発までの状態であったとされる。
しかし、この2つの絶妙なパワーバランスのため、核に怯えつつも世界的には安定していた面もある。
現在このパワーバランスが崩れた結果、各地で紛争が絶えないのは皆様のご存知の通りである。
さて、この
帝国の戦力低下→各地の秩序の維持が難しくなる→盗賊、山賊が活発化
という構図ができる。さらに、脱走兵などの元正規兵が盗賊に転向するといった中世のお決まりパターンがことをさらに複雑化させた。
「お頭、コダ村だそうですぜ」
総勢約20名ほどの盗賊たちが今日の利益の確認、そして次の計画を練っていた。
もちろん村を離れた一家から略奪した物品などである。
「ふむ、炎龍様々のおかげでここいらはちょっと儲けやすくなったな。それに荒くれ者も増えたおかげで戦力もある。明日辺り、やるか?」
盗賊の頭領はニヤっとした。
どしゅ!
そのニヤっとした顔のまま、その男の頭はゆっくりと転げ落ちた。
一瞬、周りにいた部下たちは何が起きたのか分からなかった。
そして彼らは見た。
少女のような容姿に、ゴスロリ風のフリルのついた黒い衣装。白い肌、闇のような瞳、黒いロングヘア。そして何よりもその右手に携えた大型のハルバード。
ロゥリィ・マーキュリー。暗黒の神エムロイの使徒であり、亜神。
そう、アルドゥインによる殺戮の跡地にいた同様人物である。
「な、なんでぇ!てめぇはっ!」
「わたしぃ?」
くすりと愛らしくほほえむ。
「わたしは……」
キーン……
何か不慣れな音を空から聞こえた気がした。
この音、米空軍基地などの近くに住んでいる方は聞き覚えがあるかもしれない。
ロゥリィもその音に何か不吉な気がした。遠くからの音だった。
繰り返す、遠くからの音
ロゥリィがそれを視認した時には既に遅かった。
約1.5マッハで突っ込んできたそれは普通の速度じゃ反応も回避もできなかった(彼女は普通ではないが……)
キィィィイイン!ドゴォォオオオン‼︎
ドォオーーーン!
『ソニックブーム』
戦闘機など音速を超えた時に生じる衝撃波である。
これが先ほどの衝撃によって爆発音が重なって聞こえた理由である。
先ほどの何かの衝突により、辺り一面に少し大きめのクレーターのようなものと、濃い砂煙が舞い上がっていた。
「ふむ、何か強い気配を感じたのだが、気のせいだったかな。ん?おお、あちらか。もう少し先なのだな」
煙が晴れるとクレーター中から
別に彼は新しい必殺技を試したわけではない。
単に着地がすごく凶暴だった、それだけだ。
「いったーーーい!もう、なんなのよぉ!」
しばらくして瓦礫や砂の中からロゥリィが満身創痍で出てきた。
某格闘ゲームでダメージが入ると衣服が破るれるようにアウトにならない程度にぼろぼろになっていた。
一応五体満足なのは、第一の衝撃波でまず身体が吹っ飛ばされていたからだろうと。
さもなくば
「このぉ!おぼえてなさぁい!」
ロゥリィはもう既に見えない相手に叫んだ。
航空自衛隊だと思った?
残念!ワールドイーターでした!
決して描写省略のために入れたわけじゃないよ!直撃したら伊丹たちが危ないからね。
ロゥリィ「へー……私はいいんだぁ?」