火拳が転生しました。   作:しろろ

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2日連続で投稿です!


1話 火拳、思わぬ収穫

 

 

 時は進んで7年。

 

 何でも良いから動き回れるようになりたかったおれは、壮絶な努力でハイハイと掴み立ちをすっ飛ばし、直ぐ様歩き出す事に成功した。

 

 言葉も話せるように特訓した。

 

 お袋はおれを天才だと歓喜してたが、まず有り得ないだろ。こんな赤ん坊。

 変に疑われるよりかはマシだけどな。

 

 不便な赤ん坊姿には、つくづく苦労したもんだ。

 特に風呂と飯が⋯⋯。

 

 白ひげ海賊団の二番隊を任され、火拳のエースとも言われたおれが、歳の似た女に服を脱がされて隅々まで洗われたんだぞ?

 

 ましてや、飯の時なんか⋯⋯いや、思い出すのは止めとこう。

 

 まあ、兎に角だ!

 大変だったんだよ!色々とな!

 ⋯⋯けど、だからってお袋を無下にするつもりはない。ここまでおれを育ててくれたんだ、当然恩義がある。

 

 それに、どこかほっとけないんだよ。

 大胆なのに抜けてる部分があるしな。見てて危なっかしい。

 

 ま、ガキの姿のおれが言えたもんじゃないけどな。

 

「んじゃ、お袋。いつもの場所に行ってくる」

 

「こら!お袋じゃなくてママって呼びなさいって言ってるでしょ?⋯⋯まったく、どこで覚えたんだか」

 

「ぐっ、行ってくるよ⋯⋯母さん」

 

「はぁ、それで許してあげる。気をつけて行ってきなさい」

 

 “母さん”と呼ぶのは百歩譲って良いとして、“ママ”はないだろ。ママは。

 男としてのプライドを潰す気か。

 

 苦々しく言った後、おれは玄関でスニーカーを履いて、笑顔のお袋に見送られながら外に駆け出した。

 後ろを振り返り、塀に付けられているネームプレートを見る。

 

 ━━━━“兵藤”

 

 そう、これがおれの新しい姓。

 ポートガス・D・エースではなく、兵藤エースだ。

 

 この世界には、ややこしい文字が幾つも存在している。殆ど似通った文字もあるが、そうじゃないものもあって非常に厄介だった。

 

 勉強なんざ御免蒙りたいが、ここで生きていく上では必要不可欠。

 お袋にはその面でも大分世話になったぜ。

 

 生憎、言葉は通じるもんでね。そこんところはラッキーだった。

 

「うし、取り敢えず行くか!」

 

 目指すはここから少し離れた場所にある山だ。

 体を鍛えるなら、やっぱ山に籠るのが一番だろ。

 生前のガキの頃の環境に比べればあまり満足は出来ねぇけどな。

 

 それと、お袋には公園で遊んでるとしか言ってないから、万が一バレたときは覚悟しとくしかない。

 

 怒ったときが怖いんだ。本当に。

 可愛い顔して迫力が白ひげ(親父)と同等って意味が分からねえ。

 

 これも母の威厳というやつなのか⋯⋯。

 

 

 

 ▽▼▽

 

 

 

 さて、森の中に入った。

 

 家からここまで走ってきて息が乱れるが、直ぐに整えられる。

 生前に比べたら遠く及ばないが、この2年間の特訓で多少は体力がついた。

 成長を妨げない程度の筋力もつけてある。

 

 ⋯⋯一応の下地はこれでいいか。

 

 これから始めるのは、おれが最も慣れていて、ある意味一番信頼しているもの。

 

 おれは右手を前に出す。

 

 おれの代名詞。おれの力。

 

 右手は次第に熱を帯び、具現化する。

 

 へっ、生まれ変わったってのに、どうやらまた世話になりそうだな。

 

 

 ━━━次の瞬間、右手は炎に包まれた。

 

 

 初めて気付いたのは、3歳の時。

 癖と言ってもいいくらいに何の気なしに炎を出そうとしたんだ。

 

 結果、出た。

 

 その時は直ぐに火を消したからお袋に気付かれなかったけど、見られてたら騒ぎどころの話じゃなかったぜ。

 

 まあ、つまり、何故だか知らないがメラメラの実の能力が健在って事だ。

 因みに、容姿もまんま生前のおれ。

 生意気そうで目付きの悪いガキの頃のおれだ。

 

 もう偶然で片付けられるレベルを越えている。

 だからって、あれこれ考えても埒が明かないけどな。

 

「ふぅ」

 

 一息吐いてから灯した火を消す。

 

「⋯⋯」

 

 それから何度も炎を出したり、抑えたりを繰り返した。

 やはりと言うか、案の定、火力が思ったより出ない⋯。

 

 恐らく器⋯⋯肉体が問題なんだろう。

 上手くコントロール出来るだけの肉体になっていないから、火力もそれに比例する。

 

 言い方を変えれば、体が幼いからだ。

 

 つい眉間に皺を寄せてため息をついてしまう。

 勿論、体を鍛えればそこそこ火力も上がるが、それでも()()()()

 この2年間鍛えてそれが分かった。

 

 「あと7、8年は必要か」

 

 だが、それだけ時間があれば体は十分に鍛えられる。覇気の方も習得しておきたいしな。

 何だかんだ言って、直ぐに時間が過ぎちまいそうだ。

 

 

 こうしておれは、空いた時間があれば山に籠って修行。

 

 服を破って帰る度にお袋からお説教。

 

 そして、疲れて寝る。

 

 これの繰り返しをしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正直きついぜ⋯⋯。

 





描写してませんでしたが、エースはちゃんと小学校に通ってます!

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